山賊ロールプレイしてたら、何故か勇者が襲いかかってきたんだが!?   作:蓼食う裕太さん

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 お久しぶりです。現実(リアル)大変(ハード)不運(バッドラック)見舞われ(ダンス)っちゃったので更新遅れました。
 ご容赦をば…不定期更新のタグつけるので許して…36協定仕事して…

 本話について、ちょっと後付け感ありますが2話の執筆中に思いついた設定です。

 ついでにティナの口調を変更したので、後ほど幕間①の方も修正させていただきます。

 一人称の書き方よく分からないので、ご指摘やアドバイス等があれば是非…

 それはそうと、レン君はまだしばらく海には行きません。
 積み残していることもあるので。


 私事ですがTwitter(X)始めましたので、近況報告などが見たい方はこちらへ
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幕間②

 

  「そうだな今日の題目は────、お前は神を信じているか?だ。」

 

 「ぇ……?」

 

 今更ながら男と会話をしてからというもの、意味のわからない事ばかりだと思う。

 特に男の言葉は興味深いと同時に謎めいている。

 ある意味で禅問答のような問いかけであり、何故今になってそんなことを聞くのかと問い正したくなる。

 

 それに…だ。

 この世界に生きる人間ならば、誰しもが神を信じている。

 

 …尤も私は例外(・・)と言えるだろうが───

 

 「わた、し、は…」

 

 言葉に詰まった。

 

 ()()()()()()のならば問題はない。

 

 隠し通せるのならば問題はない。

 

 けれど一度口に出す、つまりは外界にその意思を発して仕舞えば他者からの認識がより容易くなる。

 

 たとえばこの目の前にいる男、山賊王は恐らくこの世に存在しているあらゆる罪を犯している。

 けれどこの男を見たとしても、危険な雰囲気を感じたとしても、この男が山賊王だと認識できない。

 

 何故ならこの男は、今までに出会った身内以外の人間、多分例外を除いてほぼ全て(・・)を殺すか廃人にしているから。

 

 三年近く足取りを見せなかったレンが表立って略奪を行わずとも、山賊団は維持できている事から、私は一つの推測を立てている。

 

 これまで魔人の襲撃として地図から姿を消した複数の街。

 

 もちろん魔人の襲来が原因の場合もあるだろうけど、そんな街の一部はこの男の部下達の仕業なのではないか?と。

 

 丁度、山賊達が私の故郷とも言えるバーレンを襲う数年前は魔人達の襲撃の頻度が増え始めた頃で、奴らの殲滅対象は人間だった。

 

 魔人達の進軍に乗じた形での略奪を行えば、山賊達は形跡をほとんど残す事なく目的を達成できる。

 

 けれど初めて形跡を残した三年前、バーレンを襲った年に魔人の襲撃の頻度は急速に激減。

 

 魔人達への対応に追われていた王国や聖教国の軍に余裕が生まれて、長期的に街に滞在することが出来なくなった山賊団は形跡、つまりは生き証人を残してしまった訳になる。

 

 生き残った人々は皆口々に山賊の脅威を流布し、瞬きの間に人類の敵として数えられるようになった。

 

 とはいえ統領のレン自体が表立って略奪を行うことはない、精々交渉程度に留まる。

 

 だから奴の名前自体は広まれど、その素性は広まらない、誰も知らないから。

 

 でもこれは存在の認識という問題であって、精神的な認識…特に自認という観点では存在の認識という問題とは大きく異なる。

 

 この理論の根底には私達の扱う魔法の『詠唱』があった。

 

 人間やエルフなどの亜人ではその音を認識できない魔術言語。

 

 有識者達は魔術言語を、より高次元な概念に干渉する為の言語と考えているみたいで、その学説に私も概ね同意している。

 

 要はある意味世界へと語りかける事で、様々な事象を引き起こしているに過ぎない。

 

 例えばエルフの精霊術。

 エルフ達の扱う精霊術は呪術や魔法とは異なっていて、古代エルフ語によって発音されている。門外不出とはいえエルフの言葉を学べば誰でも精霊術を使えるという事。

 

 精霊術も魔法も同系統の効力を有するものは、殆ど同じ効力しか発揮できない。

 

 つまり種族によって魔術言語や古代エルフ語といった詠唱言語を限定する必要はなく、極論になるけれど私達の発音する通常の()()()()()()()ではない、()()()()()()()()()であれば…つまりは世界に語りかける事のできる言語ならばあらゆる魔法、いやあらゆる事象を引き起こせる───ソレを引き起こした人間こそが神なのではないか?

 

 かつて教鞭を払っていた教師の言葉を反芻する。

 

 数百年前にとある分野で魔法が研究されていた、それは『無詠唱』、『詠唱破棄』といった技術。

 

 結局のところ実現はしなかったようだけれど、原因は言葉にする必要…つまりは語りかける必要があったからというのが今の主流な学説らしい。

 

 そう。だからさっき言ったみたいに、内心に留める(・・・・・・)のならば問題はない。

 問題なのは言葉にすること。

 

 東方では言霊という、言葉に宿る力が信じられていて噂ではコトダマ使いという術師が存在している。

 

 しかし彼らが用いるのは私たちでも理解できる言葉。

 

 これが意味するのは私達の普段使う言葉でさえ、微弱ながら何らかの現象に働きかけている可能性があるということ。

 

 

 

 

 

 ──なら、ここで私が『神を信じていない』と口にすれば?

 

 

 

 

 

 

 激しい動悸が全身を振動させ、脂汗が額に滲み出る。

 心臓が脈打つ音が、うるさい。

 

 体中の汗腺が開いて、汗が止まらない。

 

 無信仰(ソレ)を口にしたら最後、もう今までの私ではいられない…

 決して口に出してはならない、禁忌ともいえる信条。

 

 そうだ。私は神を信じていない。

 

 私はこの広い世界で多分、1人きりの無神論者。

 

 いつか理論だけで神の不在を証明してやると誓った幼き日々の記憶、魔法の世界に魅入られた私は神の存在を決して認めず、内心ではあらゆる奇跡を否定し続けた。

 

 故に偽りを口にすればいい。"私はお前達と違って神を信じているぞ"と言ってやればいい。

 

 けれど偽証(それ)はダメだと、自分の直感が警鐘を鳴らす。

 

 きっと、いや確実にこの男は私を殺すはず、それじゃダメ…

 

 こんなところで終わらせて、たまるものか。

 

 私はこんなところで志半ばに死ぬつもりは毛頭ない。この男を殺すために全てを捨てて、ここまで食い下がって来たのに……

 

 神なんて知らないし、興味もない。

 私の邪魔をするならどんな奴も糞喰らえ。

 

 「私はっ、神なんて信じて…いないッ!」

 

 そう言ってまた一つ、鉄柵の向こう側にいる男に奪われた事に気づく。

 

 家族、夢、恋、仲間、そしてたった今、私は帰るべき場所をも奪われたのだ。

 

 信仰心は行動に現れる。

 

 そう言っていたのはクリスだったろうか?

 

 彼女の言うことは確かで、異端認定された人間の大半は背信者だったり呪い付きだ。

 

 彼らは無自覚に神への不敬を働く。信者達の不興を買ってしまうような行いをしてしまう。

 

 故に決して他の人々とは馴染めない。

 

 それは無神論者(ワタシ)も同じ、これからは私も素性を隠しながら怯えて生きていくしかない。

 

 バレるとかバレないとかそういう話ではない。

 どう足掻いても無理なのだ。

 

 何せ、散々異端者達が裁かれる瞬間を目の当たりにしてきたのだから。

 

────────────────────────

 

 父は聖教の処刑人で、私はそんな父の義理の娘だった。

 

 血は繋がっていないけれど、誰に対しても親切で当たりの良い人で周囲から慕われていた。

 ただし、その慈愛の精神は異端者達に注がれる事は決して無いと言い切れる。

 

 父は彼らに対してだけは執拗に敵意を剥き出しにしている、慈悲なんて生優しいモノはない。

 聖教の人間の多くは異端者を苦しめて殺せと宣い、父もそれに応じて、残虐に処刑…いや拷問を実行した。

 

 幼い頃にその光景を見ていた私は、復讐に身を委ねるまでの長い間、心の底からジワジワと迫り来るタイムリミットのような恐怖を、その身に抱いて生きていたと言っても過言ではない。

 

 正直に告白させてもらうと、私は周囲の人間を恐れていた。

 

 異端者と言っても同じ人間なのに、教徒の皆はまるで悪魔のように下卑た笑みを浮かべながら、その命を弄び、蹂躙する姿がとてつもなく恐怖を掻き立てる。

 

 けれどその恐怖()以上に私を恐れさせたのは、皆が私をまるで怪物を見るかのような目で見つめてくるかもしれないと想像してしまう事だった。

 

 だって彼らにとって異端はあり得ざることで、非人間的なもの。

 

 だから私は魔法しか使えない(・・・・・・・・)のに、奇跡も魔法も使える賢者を名乗って、今までなんとか誤魔化してきた。

 

 バレてしまえば最後、異端者として処罰される可能性があって、運良く生き残れても私には家族も友達も何も残らなくなる、きっと果てしない孤独だけが私を待つと思う。

 

 そんな思いを抱く日々を何年か送り続ける中、ある日突然、私のいた街───バーレンは山賊王レンが主導するおよそ1000からなる軍勢の襲撃を受けて一晩で占領された。

 

 

 あの日の夜は決して色褪せることない地獄だった。

 

 その日の夕方、急に雨が降り始め、近所の商店を営む店主の断末魔が街中に響き渡り、それが開戦…いや蹂躙の合図になった。

 

 悲鳴を聞きつけて、100を上回る聖騎士達が集結して突如現れた山賊達と対峙する。

 

 今の私からみても聖騎士達の練度は山賊達に劣る事なく、寧ろ優位に立ち回れるはずだった。

 

 けれど屈強なはずの聖騎士達は神の加護も奇跡もないと証明するように、一人また一人と山賊達の凶刃の元に倒れ伏す。

 

  "魔法学院には結界が貼られている。そこにいればお前は安全だ。"

 そう言った父はその場にいた私を魔法学院に押し込んで、その場を離れ戦場へと旅立つ。

 

 バーレンに駐在する聖騎士の数は200に満たず、戦況は当時の私から見ても芳しいとは言えない。

 

 けれど、その時はまだ私たちには希望(・・)があった。

 

 聖堂の儀式場。

 そこで行われる司祭達の決死の大儀式となる召喚の儀。

 

 魔王が復活した同時に現れるはずの勇者が現れなかった時の代替処置。

 

 一度利用すれば周囲のマナが死滅し、バーレンの近くでは今後数年間は魔法を扱うことができなくなる禁術。

 

 呼び出されるのは異世界からの転移者。

 

 歴史上、勇者が姿を現すまでの繋ぎとして呼び出される彼らの多くは戦闘経験がないにも関わらず、万軍にも匹敵するとも称されていて、その戦力は絶大なものだった。

 

 けれどそんな彼らの多くは傲慢で稚拙な精神をしているらしく、その大半が勇者が現れる前に命を落としている。

 

 その結果召喚の儀は緊急時のみ使用が許される禁術という特殊な枠組みとして存在していて、その儀式場がバーレンには存在していた。

 

 だから期待するなという方が無理だ。

 

 何せ万を超える魔軍を撃退するほどの戦力をたった千人程度の山賊に向けるのだ、敗北を想像する方が異常。

 

 そして時間が経過して、戦火が聖堂区画に及ぼうとしたその時、魔法学院の窓に聖堂からの光が差し込み、私達は一斉に歓喜し学院の外へと勢い良く飛び出した。

 

 皆がこう思った。

 

 転移者だ!転移者達が私達を助けてくれる!

 邪悪な異端者達を殺してくれる!

 と。

 

 凄まじい光輝が世界を包む。

 

 "なるほど…この莫大な魔力、これほどの魔力なら世界を超える事も可能かも知れない。"

 

 当時期待と同時に視界に広がる魔力光を見ながら私はそう考えていた。

 

 一部の司祭だけが閲覧できる禁書とされる空間魔法の魔導書。

 その原理を用いた禁術のようだけれど、門外漢の私にその術理の何たるかは理解しようとなく、ただ時間だけが過ぎる。

 

 数秒間続いた光は徐々に収束し、元の世界へと回帰した。

 

 学院の外から私達が目にしたのは、薙ぎ倒されていく山賊達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ではなく、跡形もなく消し飛んだ聖堂区画だった。

 

 かつて聖騎士達が集い競い合っていた修練場も、神父や修道女達が営んでいた孤児院も、父が刃を振るった処刑場も、全て、全て跡形もなく更地となっていた。

 

 魔法学院から辛うじて見えた聖堂区画に残ったものと言えば、山賊の群れ。

 

 奴らは想定していた。

 

 商品価値のある女子供は既に避難している可能性があることを、兵力に余裕がないとはいえ、驕りのあるバーレンの騎士団は必ず全部隊が前線に立ち迎撃に向かうと。

 

 奴らの狙いは単純。

 

 聖騎士達ならば辛うじて勝てる兵数で挑む。そうすれば聖騎士達は全軍を集めて賊を迎え打つ。

 

 そんな聖騎士らは私達を安全な区域に移動させてから、戦闘を始めるだろう。

 

 ならば丁度いい(・・・・)女子供(商品)を傷付けずに聖騎士()だけ薙ぎ払えばいい。

 

 考えある限りで最悪の手段を打った聖騎士達に向けて放たれたのは広域殲滅魔法。

 

 街の区画一つを吹き飛ばすなんて訳なく、屈強な聖騎士達はなす術もなく蒸発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後は分かりきった顛末を迎える。

 

 バーレンが陥落してからは奴隷のように隷属の首輪をつけられて、山賊達に慰めものとして扱われる日々が続いた。

 

 屈辱の日々を送り、一年程が経ったのだろうか、薬を使われて記憶が曖昧だった私は運良く、奴らのアジトから抜け出す事ができた。

 

 正直どうやって抜け出したのかも覚えていない。

 とにかく我武者羅に走り、気がつけば森の中。

 

 それからは山賊達の首領であるレンを殺すためだけに生きてていた。

 

 旅先で魔導書を読み漁り、禁じられている魔法も読み漁ろうともした。

 禁書庫だけには立ち寄らなかったが、世界最高峰の魔法使いであると言う自覚はあった。

 

 旅を続けて2年近くが経った時、勇者達が私の噂を聞きつけて仲間になってくれと頼み込んできた。

 

 勇者を私の復讐に巻き込めるなら、どれだけ有利に事が進むだろうか。

 

 考えるまでもないと判断した私はそのまま、勇者と共に半年程魔軍との戦いを経験した。

 

 幸い勇者のレベルが私と同等であったためそこまで過酷な旅ではなく、寧ろ心休まる旅となった。

 

 なにせ勇者パーティの多くは神への信仰がそこまで強くない者ばかりだったから。

 

 神の使徒である勇者パーティの一員なら、私が背信者と勘繰られることもないし、奇跡があまり得意ではないと公言していれば、使えない奇跡をせがまれることもない。

 

 それに聖女クリスは神の愛によって死なないと言う話もあって、私が奇跡を使わないといけない場面はそうそう訪れないと思っていたし、実際に一度も奇跡の使用をせがまれた記憶はなかった。

 

 ある程度私達のレベルが上がってきた頃、勇者が山賊王の言葉を口にした。

 漸く目的を果たせると躍起になった私は、広域殲滅魔法の術式をより簡略化し、奴らを殺せるように術式の改善を図った。

 

 気がつけば、アレン達に連れられるまま山賊達の根城に到着し、戦闘が始まっていた。

 

 乱戦の中、様子のおかしい私を心配してか、アンナは私に姿隠しの呪術をこちらにかけてくれていたようで、事無きを得て、山賊王に対してとっておきの魔法をぶつける事ができたけど、バーレンの街に封印されてた禁書を読んでいたあいつは、理外の魔法を用いて私の放つ魔法の悉くを弾き、アレンの頭を抉って………

 

 奴に再び敗れた私はここに囚われ、訳のわからない問答を繰り広げている。

 

 

 「クッククク…いや、全くもって期待通りだぜぇ嬢ちゃん。」

 

 堪えるように声を振るわせる山賊王はどこか愉快気であり、それをまた私は若干の苛つきを覚えて、奴をキッと睨む。

 

 何がそこまで面白い?

 

 

 

 そう口を開こうとした途端、私の言葉を予期していたかのようにこの男はとんでも無いことを口にした。

 

 「ああ、やっぱし、あの時お前を逃してやって(・・・・・・)正解だったわ。」

 

 は?

 

 突然のカミングアウトに意図せず思考が停止する。

 いや思考だけではない、文字通り視線が目の前の男に固定されてしまった。

 

 コイツが逃した?

 私を?

 何で?

 

 私は自力で逃げ出したんだ、だからそんなはずは………

 

 だってあり得ない。コイツは山賊団の長で、殺戮者で、略奪者で、みんなの仇だ。

 

 だからまるで意味がわからない。

 

 「待って、あの時、逃した?どういう事?説明してよっ!?」

 

 悲鳴にも似た叫びが狭い牢獄中に木霊して、空気を震わせる。

 

 その声が余りにも情けなかったのか、奴はこっちを一瞥して"あ"と溢して、面倒臭気に…それこそやってしまったという風に頭を掻く。

 

 「そらあれだよ、お前から背信者(俺ら)と同じ匂いがしたんだよ。最初はカビ臭くて気づかんかったが…ってかこの話はいいだろ。」

 

 「説明になってない!なんで…どうして私を逃した?答えてっ!」

 

 「あ?利用価値あるなら迷わず利用する。外で虐げられてこっちに流れてくるのも良し、奴隷に身を落としてこっちに流れてくるのも良し、運よく捕まえてこの実験に付き合わせるのも良しだ。」

 

 私の問いかけに何でもないように、まるで当たり前かのように答える。

 奴のそんな答えにもなっていない答えを聞いて、私は一種の納得に似た感覚を感じた。

 

 ああ、この男ならばきっとそう言うふうにするだろう。

 

 自分を信頼する部下であろうとも、目障りならば囮にして殺すし、役に立たない部下は勝手に奴隷の身分に落として売り飛ばすし、弱い女は娼婦にして金儲けをする。

 

 そんな男だからこそ、当たり前のように、気まぐれに、打算ありきで行動する。

 

 分かっている。

 

 分かっている。

 

 けれど、納得はできないし、したくもない。

 

 あの囚われの日々、何処かで誰かが私を助けてくれることを望んでいた。

 まるで白馬の王子のように山賊達を蹴散らして、爽風と私の元に駆けつけてくれる。

 

 そんな夢を昔見ていたが故に、私を助けたのがよりにもよってこんな男だなんて考えたくもないし、受け入れられない。

 

 「だがまあ、あんまりにもこっちに仕掛けてこなかったモンで、何処かで野垂れ死んでると思ってたんだが、また会えて嬉しいぜ。」

 

 生憎と私はお前とは二度と会いたくないし、早く死んで欲しい。

 

 「ふ…ふざけないでっ!」

 

 「おいおい、声が震えてるぜ。それによぉ嬢ちゃんも分かってんだろ?薬漬けで足元も覚束ねぇセックスジャンキーが自力であそこから抜け出せる訳ねぇだろ。」

 

 「…………」

 

 確かにそうだが、この男の言うことも尤もなのが余計に煩わしい。

 そもそも薬を打ち込まれて、一年近く意識が朦朧としている環境にいたのに突然、しかも警備の緩い日に目が覚めるなんて不自然極まりない。

 耐性が出来ていたにしても、そんな幸運はありえない筈…

 

 だがこの男の空間に干渉できる魔法ならば、それも可能かもしれない。

 何せ人里に近い場所にワープゲートを開いて、そこに私の体を投げ入れるだけで話は済む。

 

 「それはいいさ。脱出の真相がお前にとってどういうものなのかなんて、俺には興味ない。結果としてお前は脱出できて、今復讐の機会を手に入れようとしている、それでいいじゃねぇか。」

 

 「それは、そう…だけど…」

 

 話が拗れたと言わんばかりに───いや、実際に拗れていたが───起動修正を図る。

 

 「話を戻すぜ。ともかく俺はお前には大した期待はしていなかった。それこそだな、教師が出来の悪いガキの親の所へ面談しに行った時に言われる"ウチの子供はやればできる"ぐらいには期待してたがな。」

 

 「だがそういう意味ではお前は期待以上、満点だ。まさか無神論者とはな。今までで二人しか見た事ねぇ。で、その感じだと記憶はないようだが、もしかすると日本人(同郷)だったりするかもな…」

 

 「同郷?私とお前がか?あり得ない。」

 

 「だろうな……いやその話は必要ねぇな。お喋りが過ぎた。俺の悪い癖だ、忘れろ。」

 

 

 仕切り直すように奴は暫しの沈黙の後、瞼を伏せ少しの間をおいて、黄金(・・)の瞳を開く。

 

 私は咄嗟に声をあげそうになるのに気づいて口を噤む。

 

 深淵を思わせた昏い瞳は一転して、それこそ神聖さを感じさせる瞳へと変貌していた。

 

 魔眼の類?

 

 いや黄金に輝く魔眼なんて聞いたこともない。

 

 「さてと…そんな無神論者さんに朗報だ。神は実在するぜ。」

 

 瞳を黄金に染めながら、背信者であるはずの男がそんな意味のわからないことを言った所為で、私は思わず目を見開き、吸い込まれるようにしてその眼に焦点を合わせてしまう。

 

 

 

 

 奴の瞳に映る影。

 

 

 

 それは私ではなく…

 

 

 影…それは人ですらない、理解の範疇を超えた存在。

 

 超常現象。

 

 根源的概念。

 

 森羅万象。

 

 そんな脳裏に羅列された言葉が、全て陳腐に思えるほどに煩雑な単純な矛盾したもの。

 

 

 即ち、万識()

 

 

 

 

 それを察してすぐに、精神汚染の類を無効化する心理障壁を形成する。

 

 けれども、それは余りに遅すぎた(・・・・)、抜本的に間に合うなんて有り得ない。

 何故かと言えば、あの輝きはそういうもの(・・・・・・)だったのだから────────

 

 ソレは一瞬にして私の眼に入り込んで

 

 「…っぐぁぁあぁぁぁああぁぁ!!!」

 

 熱い。

 

 

 

 影が、神の姿が目に焼き付いて離れない。

 

 視覚情報として流れ出す森羅万象。

 

 ソレは情報の海、いや宇宙だった。

 

 光となった永遠が、激痛となって脳を苛む。

 

 人間の脳では決して処理し切れない圧倒的な情報量に私の脳が灼ける。

 

 眼球がはち切れそうなまでに膨張するような感覚。

 

 心臓が脈打つ鼓動が、血流が血管を引き裂きながら自分の体を作り変えていくのが分かる。

 

 視界の隅にあの影がくっきりと映し出され、あっという間に私の意識を蹂躙する。

 

 人間とは

 

 勇者とは

 

 魔物とは

 

 魔族とは

 

 魔王とは

 

 魔法とは

 

 奇跡とは

 

 世界とは

 

 生命とは

 

 宇宙とは

 

 理解を拒絶しようとしても、無理矢理に脳内に傾れ込んでくる。

 

 そんな事知らないッ!

 

 

 私は…私はッ!

 

 

 知りたくもない記録、真実、真理。

 その全てが超高速で私の理解が及ばない間に通り過ぎて頭の中を埋めつくす。

 

 実際には数秒にも満たない時間だったのだろう、けれどコレは常軌を逸している。

 

 一秒が何分、何時間、何日、何ヶ月、何年と引き延ばされるような感覚だ。

 そんな暴走する時間感覚に侵されるながら、絶え間なく苦痛が襲い掛かり、遂には全身の感覚が麻痺し始める。

 

 視界はぼやけ、痛みが全身を刺し、脳を溶かされるような感覚を触覚が認識し、私という存在を希釈しにかかる。

 

 

 

 もうダメだ…

 

 こんなの、耐えきれない。

 

 全身がビクビクと痙攣し、指先どころか四肢の制御すら覚束ない中、私は無意識に展開した初級の魔法を自分の喉元へ向ける。

 

 それは簡易な呪文とはいえ、無抵抗な人間ひとりを殺す程度わけなくこなせるもので───

 

 私に齎されたこの苦痛に幕を引くのに、自らの生に終止符を打つのに十分事足りる。

 

 

 

 

 「お゛……ぐふぅっ」

 

 覚悟を決めた直後に襲いかかって来たのは魔法によるものではなく、打撃(・・)によるもの。

 

 「───っと、あぶねぇ。いや、早すぎたか?………って訳ではなさそうだな。そう早まんなよ(タイミングに問題はなさそうだな。流石に生身の人間だと発狂するかもしれんし、潰れても使い道はあるっちゃあるんだが、やはり自我のある方が使いやすいわな。)」

 

 衝撃を受けて真っ白になった頭に響く、重なって(・・・・)聞こえる山賊王の声。

 鈍い痛みが腹部に走り、視界が白く染まり、あらゆる情報が遮断される中、唯一私に届く

 

 そのまま背中を壁に強く打ち付けたのか、肺の中の空気が一気に放出されて、喉元で出掛けたまま窒息する。

 

 「──…ぐ…う…ッ、カハッ ゴホッゴホッ!」

 

 嘔吐くようにして、無理矢理にも喉元に溜まった空気の塊を吐き出す。

 

 

 「さてと…嬢ちゃん、いやティナ。お前さん、どうやらアレが見えたらしいな。(にしてもこいつも運がねぇよな。いや、ある意味幸運か?どちらにしても最悪だろうケドよ…)」

 

 腕を吊るされたまま、髪を乱暴に掴まれ顔を持ち上げられる。

 金色の瞳はこちらを物色するように見つめ、しばし動きを止める。

 

 「──ッ、な…に…を…」

 

 「見れたなら、説明しなくても分かるだろ?ありゃあ神の残滓…影っていえば分かりやすいか?随分とまぁ昔の話だが、(アレ)見てからずぅーーっと視界に残ってんだわ。(神つっても厳密にゃ違うがな…)」

 

 忌々し気にしながら自らの瞳に指差して嘯き、瞳に写っていた影の正体を語りつつ、同時にその正体を否定する奴の姿は何処か奇妙であり、何かを待っている(・・・・・)ようで…

 

 「厳密には…違う?」

 

 不思議な事に奴と同じ声なのに、どうしてか重なって聞こえるその言葉に疑念を抱き、言葉を漏らす。

 

 そして即座に、しまったと気づくも遅かった。

 奴は私の漏らした言葉を聞き取り、顔顰めてこちらを見つめる。

 

 「あ?何言ってんだテメェ(あぁ…そうかよ。ははは、何となく分かってちゃあいたがな。やりやがったな(・・・・・・・)異端認定なんざ比較にもなりゃしねぇ…)」

 

 「さっきから…何を言ってる?なんで、お前の声が重なって・・・・聞こえるんだ?異端認定って何の……」

 

 「…まあいいさ、答えてやるよ。()」

 

 どうやら先の私の質問には答えるつもりは無いようだが、この幻聴のようなものについては奴からして利用価値が低いのか、答えてくれそうだ。

 

 勿論その真偽は定かではないが、判断材料にはなるはずだし、どうにも訳知りのこの男の言葉を少し興味を抱いている私が此処にいた。

 

 「まずはお前さんが陥った状況から説明してやるから、よーく聞いとけ。」

 

 今度は普通に聞こえる。

 一体何が起きたのかは理解できないが、分かっている。

 それにこの幻聴は。

 

 「お前のソレは、幻聴じゃない。恐らくは思考盗聴の一種だろうな。原因は(アレ)の影を見たから…ってこの説明は必要か?」

 

 「いらない。嫌と言うほど頭に叩き込まれた…」

 

 尤も殆ど記憶に残っていない。

 

 速読を習得していない者が、数百ページもある分厚い書物をパラパラと数分で読めるかと言えば否だ。

 

 たった今、私の脳内に押し付けられた知識は、その記憶に止まることなく忘却の彼方へと消え去っている。

 

 正直に言えば、脳に極端な負荷をかけただけであり、幻聴以外なんら私自身に影響はない。

 

 「お前が目撃したのは、かつて俺が目にした神って説明が一番楽だな。まあ実態は違うが大差ねぇよ」

 

 今、奴の目を見ても既に影は見えない。

 瞳は黄金のままだが、私が幻視したあの影はどこへ行ったのか。

 

 「まあだが所詮は影、されど神の影といった所か…見事にお前さんに難儀なモン残していきやがったな…(思考盗聴だったか?正直どうでもいいな。)」

 

 「思考…盗聴?それがこの幻聴の正体か?」

 

 思考盗聴、つまりは相手の思考が読める…という事なのか?

 

 確かにそう考えれば辻褄が合う。奴の声が重複して聞こえるのも、内容も関連性があることから、ほぼ確定と言ってもいいのでは?

 

 けど時々、幻聴が聞こえなくなるのは何故?

 

 何か条件があるのかもしれない。

 

 とはいえ、これは収穫。

 

 思考が読めると言うことは圧倒的なアドバンテージになる。

 この男の考えが分かれば、約束通りに此処から出られるし、復讐にも役立つ。

 

 「にしても、まあ御愁傷様って事だな。お前さん…あれだ、俺程じゃねぇが中々に貧乏くじ引かされたみてぇだな。」

 

 黙考する私を見て憐れむような男の声が耳に届く。

 

 いつも通りの上から目線なセリフも、今ではただの負け惜しみにしか聞こえない。

 つまり情報戦において私はコイツに勝ることはできる。

 

 「お前の目的は何?」

 

 早速私は奴の目的を問いかける。

 口では答えようとしなくても、こう聞かれれば少しは奴の脳裏にそのヒントが浮かぶはずだ。

 

 「は?答えるわけねぇだろ。湧いてんのか?(まさかコイツこれで答えると思ってんのか?馬鹿だろ、本当に賢者名乗ってたのか?奇跡も使えない癖によ…経歴詐称じゃねぇかよ)」

 

 今更すぎるけどこの男、最低すぎる。

 なんで?

 普通人に聞かれれば、少しくらいはその内容を反芻しない?

 人に聞かれたことよりも、相手を罵倒することしか考えてないの?

 

 

 「っていや!普通に答えなさいよ!なんでナチュラルに人をバカ呼ばわりしてんの!?」

 

 「うっせぇな……そういやお前さん無理に口調強める必要ねぇぞ、さっきからブレブレ。もう昔に戻ってるぞ。」

 

 思わず、というより当然のように私の正当な言い分が強い意志を持って奴へと向かうが、取りつく島もなく無視されて話題をすり替えられた。

 

 考えてみれば当然だが、中々に厄介。

 

 相手にその話題を振られるのがいやだから、論点をすり替えるのは誰しもが行う手段といえる。

 けれどこの男にとって既に何らかの程度の目的を達成しているからなのか、少なくとも余裕・・のような雰囲気が外目からでも見て取れる。

 

 だからこそ真の意味で普段通りの態度を取って、普段通りの思考回路で接することができる。

 結果態々私がここを出る為に必要な答えレンの狙いを脳裏に思い描く必要もないし、私に知られる事もなくなる訳。

 

 おそらく奴の目的は黄金の瞳に耐えられる者を利用する事だ。

 

 ここまでは馬鹿にでも分かるし、迷うことはない。

 

 だがここからだ。

 

 私のこの力を奴が知っていた事から鑑みるに、奴が予め知っていた可能性、若しくは候補が存在していてその内から私が選ばれたのか…

 

 前者はあり得ない。

 

 奴が未来を見る力を持っていたならば、敢えて勇者と接触するような愚を犯す筈がない。

 山賊王レンは強く狡猾で獰猛で邪悪で大胆にして最悪の存在だ、何より厄介なのはその用心深さと警戒心の強さ。

 

 私が3年間!奴らの足取りを追い続けていたが、ついぞ山賊団のアジトを見つけることは叶わなかった。

 

 再び相見えた今ならば理解できるけど、多分奴は空間操作魔法で異世界・・・に拠点を作っているのだろう。

 

 故にこそ勇者パーティが山賊共に襲撃を仕掛けた時もその大多数を取り逃がして、勇者の活動後に必ず行われるはずの聖騎士達の調査も虚しく空振りに終わったと考えるのが妥当。

 

 山賊達の根城が異世界にあるだなんて世も末な訳だ。

 

 普段の私なら想像する事すら叶わなかった筈。

 

 けれどあの黄金の瞳を見てからは違う。

 唐突に頭が冴えたような感覚。

 おそらくは濁流の如く押し寄せてきた情報の波濤の残滓のようなものが私の記憶にとどまっているのかもしれない。

 

 だからなんとなく自分が何処にいて、何が起こったのかを知覚できる。

 勘のようなもの、しかしこの感覚は直感というにはやや言葉足らずで、私にとってはほぼほぼ確信的なモノといえる。

 

 原因は簡単。

 信者や背信者ばかりのこの世界で、私は唯一…かはわからないけれども、極小数の無神論者。

 私から見た世界は白黒。

 ある意味別の…それこそ自他の境がより大きくなるほどに隔絶していて、まるで世界が私とそれ以外しかいないような感覚なんだ。

 

 だから無数の人々と私という個の対比が生まれる。

 つまり相対的に私の認識できる私という存在が濃くなったという事。

 

 まあ何が言いたいかというと、私が此処を出るには空間魔法を修めるか、レンの狙いを当てて解放されるか。

 

 前者はそもそも魔導書の在処がわからない…いや、奴が魔導書を焼いているかも知れない、仮に今も魔導書が存在していて、その在処を私が知っていたとしても、この牢から出ることがまず不可能だから無理。

 

 後者は…奴が先程の口約束を守ってくれるのが前提になる。

 だけど口約束とはいえ、無意味に約束を破る事は無いはずだ。

 山賊団は世界全土に蔓延る、聖教に次ぐ組織ともいえる。

 

 レンが山賊団を治める支配者であるならば、少なくとも常に暇という訳では無い、むしろ忙殺されている可能性すらある。

 根拠はある、奴が略奪を再開したのは実に三年ぶり。

 これはそれだけの長期間表に姿を現すことができなかった事を意味していて、その間に増加した組織の人員整理や利便性の高さに目をつけて空間魔法を修めていたに違いない。

 

 今に思えば奴が私を犯しに来た頻度もそう多くなかった。

 

 なんだかんだと言って奴は統治者。

 だから無駄な時間を取ることはそうそう無いという事になる。

 つまり奴の狙いはそこにある。

 

 それに…だ。

 そんな大組織の根城が異世界にあるということは、仮に私が解放されても、空間魔法を修めていない私からレンに襲撃を仕掛けることは実質的に不可能。

 

 私はどう足掻いてもこの組織に長期的に関わらざるを得ないという訳になる。

 

 「だっ、黙れ!強がってなんかない!」

 

 「いやどう見ても昔に比べて口調変わりすぎだろ。言っとくがな、強がるも何もヨガってた奴が今更過ぎんだよ。(昔はオホ声で叫んでたし、尊厳とかもうないだろ。見苦しいっていうかいっそ哀れだな……)」

 

 「ぐっ………」

 

 再び聞こえた奴の戯言に、カッとなって指先に魔力が籠りそうになる。

 憐憫の視線を向けられる謂れは、特にこの男にだけは無い。

 お前のせいで私はこんな目に遭っているんだ。ふざけるのも大概にしろ。

 

 「はぁ見込み違いだったか?いや見込み通りなんだがなぁ…あれだ。ティナ、てめぇは勉強はできるけど頭悪りぃよ。」

 

 「うるさい、少なくともお前よりはマシだ。」

 

 こいつは何を言っているんだ?

 私は魔法学院では主席だったし、生徒会長も務めていたんだ。

 そんな意味不明な事あり得るはずがない。

 

 いや待て、なんだこれは…レンの奴の目を見た影響なのか?

 存在しないはずの嫌な記憶が…

 

────────────────────────

 

 「会長ー、この申請書類なんですけど、裏面に何か落書きされてるんですが、コレ大丈夫ですかね…」

 

 もう顔も忘れてしまった生徒会役員が私に声をかける。

 彼は何やら落書きをされた書類を発見したらしく、私へ報告してくれているようだ。

 不安気な彼の表情から件の書類の重要性が窺えるが、私はこの時点で嫌な予感がしていた。

 

 「どれー?って、ゲッ………」

 

 緩い返事でその書類を受け取った私は顔を色を真っ青にして、固まったまま周囲を見渡す。

 

 裏に描かれていたのはデフォルメ化された可愛らしい猫の絵。

 

 この絵は確か、私がその前日にノートに描いた姿と似通っていて………

 

 「こ、これはアレじゃ無い、あのーそ、そうよ!」

 

 汗がダラダラと流れ、茹でられた思考で尤もな言い訳を考える。

 

 内心、終わったと実感しているけれど、人という生物は諦めが悪いもの、如何なる状況下とて生を求め続ける姿勢によって生存競争を勝ち残って来たんだ!

 

 「えーどうしたの会長?って…ははははっ!会長〜また書類に間違えて落書きしたんですか?」

 

 そんな私の決意を一蹴する、ニヤニヤとした笑みを浮かべる副会長。

 彼女は絵を見てわざとらしく大袈裟に笑って、その真実を周囲に曝け出した。

 

 「え、や、ちがっ」

 

 もうリカバリーなんて間に合わない。

 

 というか、もう殺して…恥ずかし……-

 

 「えいっ、可愛い絵なんだから皆に見せとかないと損じゃないですか!ほら皆っ、見て見てっ!会長の絵だよ〜〜」

 

 この女正気?

 そんなに生徒会長の椅子が欲しいの?

 

 「ちょ、待って」

 

 「え!これ会長の絵なんですか?幻滅しました。掲示板に貼り付けてきます!」

 

 私の今後の進退を賭けた決死の制止は今を為さず、生徒会室に集まった生徒達が一斉に面白がりながら集まる。

 

 そんな光景を側で見つめつつ、悶絶する私がそこにはいた。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 そうだ。確か私は生徒会のメンバーからはポンコツだのなんだのと言われていた…よう……な?

 

 いやいや、それは無い…うん、違う。

 

 きっと違うはず。

 

 私は神童で、目の前の山賊は学のない馬鹿だ。

 きちんとした施設で勉強している私の方が賢いし、そうに決まっている。

 

 魔法の理論とか殆どわかってないけど、空間魔法と奇跡的なまでに相性が良かっただけ。

 

 きっとそうに決まっている。

 

 偶々空間魔法にすごい適性があって、魔導書を開いた途端に頭の中に情報が流れ込んでくる類のヤツだ。

 

 そうに違いない、だから私はレンより賢い。

 

 痛い所を突かれたような気がして狼狽としてしまったが、よく考えれば問題ない。

 

 何せ私の方が賢いから。

 

 ………何はともあれ、今はこの男の内情を探る必要がある。

 

 それに、私に新しく身についたこの思考盗聴?という技能を見極める必要もある。

 

 気になるのは心の声が聞こえるタイミング。

 

 さっきまではハッキリと耳に届いていたあの声は、今となっては聞こえたり聞こえなかったり、不定期的に発動するのかそれとも時間帯による制限があるのか。

 

 発動の条件を正確にそして明確に判断しないと、きっといつか痛い目を見るに違いない。

 

 不幸中の幸いというべきか、ある意味安全地帯ともいえる此処ならば、検証にももってこいだし、運が良ければレンの狙いどころか、奴の秘密や弱点を暴けるかもしれない。

 

 「てめぇのポンコツさ加減に比べりゃ、ウチの馬鹿共の方がまだ聞き分けいいんじゃねぇのか?」

 

 冷静に状況を分析する私に対して、先の神々しさは一体何なのか?と体を投げかけたくなる程の悪態をつくレンを見て、私は少し意固地になってしまう。

 

 本当はコイツの言う通りで、私はこの男を殺すために全てを捨てたつもりで生きていた。

 

 だから口調も変えて、髪も切って、態度も悪くして接していた。

 

 でもコイツには通用しない。

 

 憎らしい事にコイツ…レンは私の本性も、弱いところも、何もかも知り尽くしている。

 

 本当に最悪。

 

 この世にいる最大の理解者が最大の怨敵だなんて、そんな事ありえないと思いたいけれど、こうなってしまった以上腹を括るしかない。

 

 「そんなわけない…」

 

 

 「精々調子に乗ってるといい。私がいつかお前を必ず殺してやるから。」

 

 けれどあの鬱屈とした旅の中、自分を押し殺して来た日々と比べて今は───

 

 

 「は、抜かせや。」

 

 どこか清々しい気分だった。

 

 

 

 

 




 いつも誤字訂正、感想ありがとうございます!

 美少女に腹パンするのって最高ですよね?

 補足ですが、幕間②は時系列的には幕間①の直後、全話(ユリアとの対談)の直前です。
 次回も幕間②の直後から始める予定となりますのでご注意下さい。

 誤解を招きそうなので再度書いておきますが、呪い付き≠背信者です。
 呪い付きはあくまで生まれつき呪いを負ったもので、神を憎み敵視しているために背信者になります。


《用語》

魔術言語…プログラム言語みたいな言語で、文字としては認識できるし、勉強すれば意味は分かる。だがこれと言った規則性は発見できておらず、工夫できたとしても範囲や出力の調整が限界。
これが記されている魔導書を記した人物は不明。

山賊団…世界唯一の背信者達の集団。入団条件は基本的に異教徒か背信者のみであり、届出などは不要。自分が山賊として生きたいと思い、山賊的行為(略奪など)を行えば、聖教によって自動的に山賊判定される。
 また山賊団は山賊を束ねるグループの総本山であり、世界中の背信者達が集ることから、所属する団員数は10万を超えているとされる。
 聖教が特化戦力と定めた団員は現時点で判明している限り6人であり涜神する悪鬼レン、咳鉄の魔女オズ、騎士喰らいのルカ、鋲壁の鬼人ジグバルド、青褪めたエルム、繰り出す激震のマルス。(後日登場予定)

Lv…その人物の強さや積み重ねてきた経験などを総合的に示した数値。
 レベル差が開けば開くほど勝率は低下して10も差があれば、余程の幸運か優れたスキルを有さない限りは一対一で勝つことはほぼ不可能。
 鍛えれば鍛えるほど上昇するが怠ければその分下降する、筋肉のようなもの。
 また、個人ごとにレベルの限界が設定されており、いわゆる才能の壁が存在する。
 戦闘経験に乏しい商人や木こりなどもそれなりにレベル上限があり、平均的な数値では10〜15となる。
 レベルの上限が20もあれば地元では負け知らずの存在となり、聖騎士となる者も大体この層の人間である。
 レベルが20を超える者達の層からは聖騎士の中でも中間層の存在となり、30ともなれば国内でも100を下回り、世界全体を見渡しても上位の存在となるだろう。
 40〜50となれば歴史に名を残す領域に達し、英雄や怪物に並ぶ存在と考えられ、聖教と敵対する山賊団にこの英雄クラスの人物が複数いることから即刻征伐すべきだとの意見も挙がっている。
 魔人などは生まれついての強者であるため、生まれた瞬間からある程度のレベルが定まっており、大きく上下することはない。

《人物紹介》

レン…《山賊王》Lv.48
 転生の際に神を目撃したことで発狂。
 神を直視した事で部分的に神の視座を手に入れてしまった(影響は後々)
 剣の鍛錬は欠かさない。
 他人を煽ることに命を燃やしている。

 ──(アイツ)の事を理解できるのは俺だけ。

 【制作秘話】最初期設定では勇者に敗れ、改心して勇者と共に魔王討伐の旅に出る予定だったが、厨二病の作者がこれを拒否した結果、頼れる兄貴分となる予定のレンは消滅した。

ティナ…《???》Lv.34
 イチモツ(黄金の瞳)を見せられて発狂。幸いにも影だけだったので1D30のSAN値チェックで済んだ。
 どうやら特定の条件下で人の心の声が聞けるようになってしまった。
 レンに復讐するためにアジトから脱出したいが、何かと不運。
 実は学歴厨で、調子に乗りやすい(荒療治済み)
 ポンコツなので周囲からペットのように思われていた、勉強はできるが知能レベルが低い…定期的に事の本質を見失う悪癖を有する(致命的)

 *【制作秘話】初期設定では連れ去られた後、ゴンズイ兄弟達に引き渡される。しばらく好き勝手された後性病を患い貧民街に捨てられた結果、貧民街にて性病が流行して未曾有の事態となる(レンは爆笑していた)
  →勇者パーティの人数がそこそこ多く、作者が忘れそうだったため減らそうとしいた。

 
神…《???》Lv.1
 所謂、根源的なもの。
 世界のより良い未来のために絶賛奔走中。
 邪神ではないが根本的に無機質な存在であり、見方によれば邪神であり真っ当な神となる。
 神とは全知全能であり、万物を示し司る存在である。
 神の被創造物である人は神を信じることはできても、認識することはできない。

 コイツを見ると無○空処を喰らう。

キャクターのまとめ回必要ですか?

  • はい
  • いいえ
  • いつも通り後書きでok
  • そんなことより早く書け
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