村に着いたら、やたらギラギラした石ころを身に纏ったデブが待ち構えていた。
「やっと来おったか! 余をさんざん待たせよって!」
「も、申し訳ありません領主さま!」
おいなんだこのデブ。
オークの方がまだ痩せてるぞ。
ダップンダプンの腹しやがって。
成人病ですぐ死ぬぞ。
明日死ぬぞ。
今死ぬぞ。
むしろ死んでしまえクソデブが。
「な、なんだこやつはぁぁぁぁぁぁ!?」
「も、申し訳ありません領主さま!」
顔真っ赤にしてぶちギレてやんの。
そこまで赤くなったら火が通るんじゃねえの。
切り分けて村人全員に分けても2日くらいは食べるのに困らなさそうだな。
「ムキィィィィィ! 余を食料扱いしおったぞこの小娘ぇぇぇぇぇぇ!!」
「も、申し訳ありません領主さま!」
おいおい、鳴き声が違うだろ?
もっと「ブヒィィィィィ」って鳴かないと。
解釈不一致はオタクの対立を煽るだけだぞ。
「よ、余を豚扱いとはおのれぇぇぇぇぇぇ!!」
「も、申し訳ありません領主さま!」
「それしか言えんのかこの猿ぅぅぅ!!」
村長に何言っても無駄だぞ。
死んだ魚のような目をしてるから。
もう人生すべてを諦めてるからな。
「なんでこんな絶望してるんだこのジジイ!?」
知らん。
「ま、まあ良い。おい小娘」
誰が小娘だクソ豚。
「口が悪いな貴様! 貴様が『癒しの使い手』だな!?」
違います。
「違うの!?」
違います。
『癒しの使い手』? 何それ美味しいの?
私はどこにでもいる村人Gですが。
「おいどういう事だ! 話が違うぞ!」
「も、申し訳ありません領主さま!」
「もうやだこの村長! 壊れちゃってる!」
ハハ、ワロス。
「なに笑てんねん! 早くこの村長を直せ!」
いやそんな壊れたテレビみたいな言い方されても。
まあ叩けば直るっしょ。
そーれ!
ボギィッ!
あっやべ、首の骨折れちった。
治れ治れ、ナンマンダブ………………
「────ハッ!? ここはどこ!? ワシは村長!?」
よし、治った。
「な、なんか首が曲がっちゃいけない方向に曲がっていたような……」
気にするな。
そんなことよりクソデブ、村長に言いたいことあったんだろ?
「そ、そうだ! おい村長、この小娘『癒しの使い手』ではないそうだな!? どういう事だ!」
「え? いえ、たしかにこのアオイが『癒しの使い手』ですが……」
そうです。私が『癒しの使い手』です。
「なんでさっき1回嘘ついたの!?」
認めたくないものだな。若さ故の過ちというものを。
「それは答えになってない!」
本当の答えはオムロン電動歯ブラシ。
「ところでアオイ。ワシの肩こり腰痛とかその他諸々が治ってる気がするんじゃが、ひょっとして治癒してくれたんかのぅ?」
あぁ、間違えて首の骨折ったから蘇生ついでに全部治しといた。
「知らない間に1回死んでた!?」
もう1回生きれるドン。
良かったじゃないか、お得で。
「ま、まあいい。貴様が『癒しの使い手』だというのなら、偉大な余が命令してやろう」
家畜以下のクソデブが偉そうにしてんじゃねえよ。
「りょ、領主さまになんて不敬なことしとるんじゃ!」
「あ、もうそういうのは良い」
「え……?」
おう。もう今さらすぎるからな。
「ワシが正気を失っとる間にドエライやらかしとった!」
「……また気をおかしくするんじゃないか? 大丈夫か?」
だいじょーぶだいじょーぶ。
いつものことだから。
「……少し税を低くしてやるか」
おっ、太っ腹だね領主さま。
いやもともと太ってたわ。
そんな太ってる領主さまの用件って何よ?
言っとくけどそのデブは治さないからな。てめえの不摂生の後始末は自分でやりな。
「安心せい。そんなしょうもない事ではない。………………そっか、無理なのか」
治"さ"ないって言っただけで治"せ"ないとは言ってないけどな。
それで、デブを治すのが違うってんなら何の用だ?
「下賎な貴様を、余の養子として迎え入れてやろう!」
あっ、結構です。