レイを墜としたい   作:三白めめ

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デストロイには乗りません。


デストロイ

 最適化で寝ている間に、ステラが返還されたらしい。なんか彼女のことを思い出した気がしたけど、寝ている間にまた忘れた。

 というのも、寝起きですぐに航空機へ乗ってロシアまで行くことになったからで。いい感じの気候だった黒海から、雪の降りしきるロシア平原の落差だ。目的は、地上空母《ボナパルト》。二人席が三セットという状況で、アタシが窓側でスティングは通路側だ。通路は死にかけっぽい病人の収容ベッドを積んでいる。

 持ってきた画集を開けば、何度も読んだ跡があった。……読んだことも忘れてるから、いつも新鮮な気持ちで絵を見ることができてるんだ。嬉しくはないな。

 

 着陸後は防寒着を着るけど、やっぱり寒い。吐いた息が白くなる。

 ステラやアウルの記憶を消されているスティングは、当のステラを見て死にぞこないとか言っているけど、アタシの興味はそっちじゃない。

 今通っているこの場所にある、布のかかったモビルスーツだ。アタシたちには記憶も過去もないんだから、思いもあったものじゃない。残っているのは力だけなんだから、力に惹かれるのは当然だろう。

 

『《デストロイ》だな』

「アタシは使いたくないけどねー」

 

 アタシとスティング、ステラはまた調整用のベッドで寝ることに。念のために寝起きに確認しているけど、アタシの人格に変な部分はないらしい。サブ人格ちゃんがチェックしてくれてるから間違いない。なんでいきなりそんなことを思ったかというと、なんかステラの言動がとっても幼くなってるからなんだよね。

 《デストロイ》の前でネオとステラが話している。それをアタシとスティングが横で見ているんだけど、やっぱりそうでしょ。子供が親の言葉に反応して単語を返してるというか、「キミの、新しい機体だよ」って言葉に「ステラの……新しい……?」って返答からしてそうだろう。

 アタシは今後デストロイに乗る予定はないから関係ないけど。もし宇宙に上がるなら、クシャトリヤだっけ? あの《ザク》を使えるのはアタシだけってのもあるし。

 

「生体CPU、リンケージ良好」というアナウンスを聞きつつ、機体を起動させる。

 

「非常要員待機。X1《デストロイ》。プラットフォーム、ゲート開放」

 

 雪が吹き込んできた。それはそれとして、アタシたちの機体は空母横に展開された発進スペースへ、ベルトコンベアに乗って出てくる。

 

「よし、こちらも出るぞ」

「はいはーい」

「けどなんで俺にはアレくれねーんだよ」

 

 発進前、スティングがそう口を挟んできた。やっぱり記憶や過去の記録がないと子供みたいな性格になるのかな?

 

「あんなわけわのかんねー病み上がりより、俺の方がよっぽど──」

「適正なんだ。ステラの方が効率がいいと。……データ上でな!」

 

 ネオはそう話を打ち切って、機体を発進させる。直後にアタシたちも。

 今回の目的は《デストロイ》の援護。とはいえ、いつも通りにエース級が出てきたときの対処になるだろうけど。《デストロイ》の火力はすさまじく、二門のビームで並み居る敵を鎧袖一触。照射され続ける赤い閃光はザフトの《バクゥ》や地上空母を消し飛ばした。射線上は爆発し、街は火の海に包まれている。大型というだけあって殲滅力に長け、今のところ見ているだけで通り道の都市が三つくらい壊滅した。

 

 赤い閃光が《デストロイ》へ向けて放たれた。それを機体前面に展開した陽電子リフレクターが防ぐ。

 

「うわ、出た」

 

 《フリーダム》。《デストロイ》の周りを360度くるくる回りながらビームライフルを撃っている。その一機だけならステラに任せてもいいんだけど。

 

「眼中にないってのかよ……俺は!」

 

 スティングは真面目に《フリーダム》へ射撃を行う。挟み込むように、下からはネオの《ウィンダム》が。アタシは敵の後ろからビームライフルを撃って、三方向からの攻撃にする。それでも躱されるあたり、やっぱり強い。

 《プロトセイバー》と《カオス》はMA形態に。

 

「モビルスーツの性能で、強さが決まるわけじゃねぇ。お前は、俺がァ!」

 

 そう意気込んで《フリーダム》に攻勢をかけるスティング。相手はスーパーなコーディネーターなので、中の人もおかしいスペックしてるんだけど……

 《ムラサメ》三機と《ストライクルージュ》が来た。

 

『キラの代わり? カガリに至っては戦闘もしてないし』

 

 それだけでアタシたちを抑えられると思われてるなら、随分と軽く見積もられているみたいだ。

 

「ムカつく……」

 

 ネオは《フリーダム》を追ってこの場から離れたので、残っているのはアタシとスティングだ。流石に彼だけだと厳しいので、なんとか援護に行きたいんだけど……

 

「《インパルス》……!」

 

 記憶はないけど、アウルって同僚の仇らしい相手。……どうにもしまらないな、そう考えると。

 

『戦闘マシーンだって、モチベーションはあるんだけどね』

 

 パイロットの彼はステラにご執心のようなので放っておいても大丈夫かと思ったら、何条ものビームの網を掻い潜ってコックピットハッチを切り裂いていた。幸いにもステラは死んでいないし、《デストロイ》だってまだ動くのだけど。

 

「もめてる?」

 

 なんか、ネオの《ウィンダム》が《インパルス》に触れている。接触回線みたいだ。その後に彼の動きが止まっていることから、たぶんあれはステラだとか言ったんだろう。

 その後のネオは《デストロイ》を墜とそうとする《フリーダム》へ射撃を繰り返すが、すれ違いざまに背部のジェットストライカーと両腕を撃ち抜かれる。推力を崩してバランスを失った機体はそのまま地面へと落下し……

 

「ネオっ!」

 

 爆発四散した。死んだ?

 

『生きてるよ』

 

 そっか。じゃあいいか。生きてるならセーフ。スティングの方だけど、《ムラサメ》に苦戦しているみたいだ。決定的なダメージこそ受けてないけど、反撃に回らせない立ち回りをされていた。

 

「クソッ、ダメだ! 離脱する。ボナパルト!」

 

 退こうとしている《カオス》の上を二機の《ムラサメ》がとっている。ビームライフルでポッドの一機や脚部が破壊されて、そのまま体当たりで落下していった。確かにモビルスーツは勝敗の決定的な差にならないけどさ。量産機に損傷させられるのはどうなんだろう。

 アタシと戦ってたもう一機が、今が好機とこっちから離脱する。たしかに、ここで《ガイア》を墜とせば三対一だ。けど。

 

「それは悪手っしょ」

 

 狙うのは変形のタイミング。この戦闘中に把握したけど、敵は変形中に一度停止する。アスランやアタシみたいな急制動を活かす回避はできないってことだ。

 だから、そのタイミングで二門の赤いビームを撃てば、ちょうどコックピットに当たる。

 

「ほーら、やっちゃった!」

 

 一機撃墜。このまま戦ってもいいけど、スティングに死なれるのは面倒。しょうがないので回収して帰ろう。MS形態に戻って、落下した《カオス》を掴む。《ムラサメ》はビームライフルで牽制しておけば問題ない。一機で戦況をひっくり返せるエースならともかく、ただの《ムラサメ》がアタシに傷を負わせられるわけがなかった。

 

「《ボナパルト》、《カオス》を回収した。このまま離脱する」

 

 《デストロイ》が派手に戦っているのを横目に、戦場から離れる。……そういえば、またレイと戦えなかった。

 

『そろそろ新型でも持って来るはず』

「……そっか!」

 

 着艦すると、遠くで空に向けて放たれる赤い閃光が見えた。それを最後に訪れる沈黙。きっと、《デストロイ》が機能停止したんだろう。最後まで派手だったなー。アタシはこの機体でよかった。あの巨大なモビルスーツだと、死ぬまで戦うしかないし。

 《ボナパルト》へ帰還すると、《カオス》はもうだめそうとか聞こえてくる。次の進路はヘブンズベース。地球連合の最高司令部だ。

 

「もう後がないって感じ?」

『まだだね。巨大要塞が出てないから』

 

 そういうものかー。




これ以降アークエンジェルと関わることはないです。
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