レイを墜としたい   作:三白めめ

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改めてアニメを見返すと、地球で戦ってた期間が長いですね。


ありがとう、プロトセイバー

 スティングは《カオス》から新たに《デストロイ》に乗るらしいけど、こっちは変わらず《プロトセイバー》のままだ。そういえば、アタシからそのスティングの記憶が消されたっぽい。あと、ネオのことも。サブ人格ちゃんはオクレ兄さんとか言ってたから、兄貴分というか纏め役だったりしたんだろう。ネオは、仮面で正体がムウ・ラ・フラガ。

 

 先手から敵軍に甚大な被害を与えるのが役目の《デストロイ》と違って、アタシの方は対エースが仕事だ。だから、出撃していく5機を見てるだけで大丈夫だったりする。

 海上の艦隊を《デストロイ》が主砲で消し飛ばし、宇宙から降下してくる部隊は今なんか壊滅した。雪山がスライドして、中からパラボラアンテナみたいなのがせり出してきたから、それが原因だろう。

 

「そろそろ、エースのお出ましかな?」

『おそらく新型だ。お手並み拝見と行こう』

 

 レーダーを見れば、味方機が次々と墜とされていってる。MA形態に切り替えて、一気に前線へ。指揮官(ネオ)も他のエクステンデッドも残っちゃいないけど、ファントムペインとしてある程度自由に行動できる権限はある。

 《デストロイ》の一機と赤い羽根付きの機体が戦っている直上を通り過ぎ、目指すは巨大な背部装備を持つ機体。

 

『今のがデスティニーで、目的のがレジェンドだ。ラウ・ル・クルーゼのコピー……伝説(レジェンド)に縛られるのは、ガンダムの皮肉かな』

「不自由だね、お互いさあ!」

 

 MS形態に変形して、両手に持ったビームサーベルで斬りかかる。《レジェンド》は両腕のビームシールドでそれを受け、迫り合いのような状態となった。

 

「また会ったね! 作り物の兄弟!」

「お前は……ッ、何を!」

 

 一瞬だけ開いた接触回線の直後、背部のドラグーンシステムがアタシの方へ向いて砲撃を行う。本来は大気圏内で使えないはずのドラグーンを、プラットフォームごと90度倒すことによってアクティブな武装として使用しているそれ。初見なら引っかかる一手だけど、それはサブ人格ちゃんから聞いている。

 右足での蹴りで体勢を崩させ、ビームの軌道を逸らす。ついでにと両脇のプラズマビーム砲を撃つが、それは躱された。

 一度距離が開いたことで、周辺の状況を把握する。《デスティニー》は《デストロイ》の撃破に向かっていて、《インパルス》はモビルスーツ隊を率いて防衛部隊と戦闘中。だから、ここはアタシとレイの一騎打ち!

 

『あの機体、たしか核動力だったはず。長期戦は不利だ』

「りょうかーい! それじゃ、ステージ3!」

 

 空間認識能力をアクティブに。さっきの声で分かってるとは思うけど、この感知感覚でちゃんとアタシが来たって理解させる。

 

「あのときステラと一緒にいたから、気づいてると思うけどね」

 

 サブ人格ちゃんの言い分も分かる。ただ、くどいぐらいに示さないと伝わらないことだってあると思うんだよね。

 

「それはそう。言ってくれなきゃ分からないじゃないかって言葉もある。この世界、何気なく出た発言がいつもキラを傷つけるけど」

 

 それで頭おかしくなっちゃって、《フリーダム》はいたずらに戦場をかき乱し続けたのかな……人工子宮で生まれたから、血の繋がりなんてないみたいだし。ちょっと同情するけど、今は目の前の相手が優先だ。考える暇ばかりあるからこんな思いが頭を巡る。

 両手のビームサーベルを肩部に戻し、機体の背部スカートにマウントされたビームライフルを取る。お互い、射撃戦では決定打にならないことは分かっているはずだ。アタシやレイが防御や回避で失敗するわけがない。それはそれとして。

 

「どうしよう……今、最高に楽しい!」

 

 相手を殺す。その一点でこの瞬間、アタシとレイの考えは同じだ。産まれた日も知らないし、覚えていない。そんなアタシたちがここにいると証明できるのは、こうして戦っている時だけだ。敵を倒すって存在意義しかないから、こうして通じ合っている実感がある。頭が痛い。息ができず、吐き気も催して。けど、生きてるって感じがする。この痛みが、アタシたちの存在の証明だ。他のエクステンデッドにはない、世界への楔。

 

「俺は死にたくないけどな」

「その理由も覚えてないんだよねー」

 

 死にたくないって言っていたステラに影響されてたのかも。もう顔や声も思い出せないけど。

 

「声は桑島さんだよ。この世界では生き残れないジンクスがある」

「唐突なマジレスはやめて……」

 

 そうしていると《デストロイ》が《レジェンド》を狙い始めたので、二対一になっちゃった。

 

「はぁ……真面目に働こっと」

 

 《デストロイ》の弱点は、至近距離まで寄られたときに対処法がないこと。だから、直掩にあたる機体は必然的に近接戦闘をすることになる。射撃での援護で弾幕を増やすのも選択肢だけど、そもそもあの機体の攻撃を掻い潜れる相手じゃ意味がない。

 今のアタシたちと《プロトセイバー》の機動力なら、砲撃の巻き添えを喰らうことはないから安心だ。それは、レイの《レジェンド》も同じく当たらないってことなんだけどね。

 射線を開けるため、一合だけ交差した後に離脱の繰り返しになる。《プロトセイバー》が離れた場所を、無線誘導された腕部ビーム砲が貫く。もちろん、レイはそれをビームシールドで防御したり、スラスターを吹かして回避していた。その繰り返しが数度続き──

 

「《デスティニー》か!」

 

 光の翼を展開し、残像を残しながら高速で向かってくる機体。《レジェンド》を抑えている状態のアタシでは対処しきれない。

 

「あーっ!」

 

 その手に持ったビームソードで《デストロイ》を貫くと、爆散するのを確認する前に他の機体へ向かって行った。

 

「……通信?」

 

 モニターに命令が表示される。戦場を離脱し、近くにある連合の補給地点へ。追加ブースターを用いて月のダイダロス基地へ向かうようにとのことだ。頼みの綱の《デストロイ》も残り一機だし、ここは捨てるのかな。

 

「次は、全力でやれるね」

 

 宇宙なら、《レジェンド》もドラグーンを使える。同様に、アタシもドラグーンを搭載した《ザク》が使えるから条件は同じだ。

 

 最後の一機となった《デストロイ》の裏に回り。変形時の僅かな減速を隠す盾にした。レイならそこを狙ってくるだろうから。その後は全速力でこの基地から離れる。

 ステージ3を解除。途端に世界が色褪せて見えた。心理的なあれこれじゃなく、色覚の異常として。

『やっぱり、ガンダムの呪いとかだよ。投薬とかで調整しても、身体にガタが来るのはさ』

 それはそう。本気出すたびに死が近づいてくる。ただ、やるしかないんだよね。

 そうして宇宙に上がり、懐かしの母艦《ガーティ・ルー》へ。もちろん、アタシ一人でだ。もう、ネオだかステラだかもいない。アタシが、最後のファントムペインになった。

 最適化されても、色彩は褪せたままで変わりはなかったらしい。モビルスーツデッキに行けば、そこにあるのは《プロトセイバー》ではなく四枚の大型バインダーを備えた《ザク》。一枚ごとに本体に使われているのと同じジェネレーターが搭載されていて、出力は圧倒的だ。

 

「任務は、〈レクイエム〉の防衛だっけ」

『恒例の大量破壊兵器が来たな』

 

 今までガンダムに乗ってきて、最後は一つ目でガンダムと戦う、か。《デストロイ》もガンダムって感じの顔で、そういうのが戦場の主役だった。

 

『逆に特別感あっていいんじゃない?』

「それもそっか」

 

 なんか、難しい事考えるのも面倒だし、そういう風に考えとく。アタシは、決着がつけられればそれでいい。勝たなきゃ死ぬんだ。だから、負けたくない。誰にも、何にも。

 

『たましいの場所って、SEEDのエピソードにもあったな。俺たちの魂の場所は、戦場なんだけど』

「それじゃ、行こっか」

 

 コックピット内で、ドラグーンや機体の調整をする。手持ちの武装はビームガトリングだけだから、もう片方に別の武器を持つことも可能だ。サブ人格ちゃんからのリクエストで、ダガーから撃ち切りのバズーカを引っ張ってきた。

 

『先人の知恵ってやつだよ』

 

 明らかに対《レジェンド》に偏っているけど、アタシたちはそれでいい。どのみち、《デスティニー》は《デストロイ》とか《ザムザザー》とかの大物狙いで動くと思うから。

 

 レクイエムの第一射。それが行われたのだと、アナウンスが聞こえた。




■プロトセイバー 外伝かなにかで本当にあったらしい。今回で出番は終わり。
次回、最終決戦。
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