バトルスピリッツ 契約編:界 X《クロス》   作:置き物

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第1話 「その名は契約者エックス」

 

「まさかこんな早くここに戻ってくるとはねー」

 

トア達が訪れたのは岩の荒野が広がるポイント・ゼロと呼ばれる大地。

ウィズに契約煌臨したトールが放ったハンマーによってこの大地が割れたのは彼女達の記憶に新しい出来事だ。

 

「……とは言ったもののレジェンドスピリットがどこにいるかなんて分からないよ〜」

 

そう言いながらきょろきょろ辺りを見渡すトア。

そんな姿を後ろから眺めるウィズだったが……。

 

次の瞬間、彼の視界に映ったのは数発の黒色の球体が彼女に襲いかかろうとしている様子だった。

 

「……トア!危ない!」

 

ウィズは咄嗟にブレイヴを構え、トアに襲いかかる攻撃を薙ぎ払う。

 

「な、なにっ!?」

 

突然の攻撃に驚くトア。ブレイヴを持ったウィズに続き、ガットとフラウが彼女の周囲を警戒する。

 

「お初にお目にかかる。契約の巫女よ」

「……!!」

 

トア達の前に現れる仮面を付けた一人の青年。突風によってなびく髪が見せるのは艶やかに輝く黒。ポイント・ゼロにそびえる岩のアーチの上で彼はトア達を出迎えた。

 

「あんた何モンよ!」

「フフ……俺か?俺は契約者X(エックス)!」

「契約者エックス……!?」

 

(新しい契約者……?まさか、契約調停機関の差し金……!?)

 

契約調停機関に属する彼女はダンとカイの2人をこの世界へと呼んだ。それぞれの契約は契約調停機関によって認可されているものの、トアには納得のいかないものも多々あった。その事で組織と一悶着あったが、それの報復としてエックスが現れたのではないかと彼女は勘ぐる。

 

「契約調停機関など関係ない!()()()この世界(レクリス)の深淵から生まれた()だからな!」

「影ェ?あんた意味わかんないこと言ってるとぶっと……」

 

エックスは彼女の考えを見通すかのように否定する。しかし、エックスの言葉がトアに理解出来ないものであったためか、少しイラつきながらも返答しようとした。その時、彼女の傍を横切る一つの影があった。

 

「ファーストアタック!」

「ガット!?」

 

即座に敵だと判断したのだろう。ガットが契約者エックスの傍へと飛行し、自身の持つブレイヴ《サベッジアックス》を振るう。

 

「……早いな。だが!」

 

叫ぶエックスに呼応するかのように、彼の背後から現れた何かがガットの戦斧を受け止め、はじき返す。

 

「ワッツ!?」

「ガット、助ける〜!」

 

続くフラウの攻撃。エックスへと接近したガットとは反対に、遠距離から《リコリスボウ》にて矢を放つ。まるでたんぽぽの綿毛のように拡散した矢は敵へと向かってゆく。しかし、その矢がエックスへと届く事はなかった。彼の身体へとたどり着こうとした矢はことごとく、目の前で叩き通された。

 

「な、なんで〜?」

 

(この動き、どこかで……?)

 

先程から突如現れてはこちらの攻撃をいなし消える影。トアはその影の動きに既視感を感じていた。

 

「ハハハ!そうだな。紹介するなら今か!」

「紹介……?何言って…」

「キミ達に紹介しよう!俺の相棒……()()()だ」

「!?」

 

エックスが手を打ち鳴らすや否や、再び現れた影。姿はウィズそのもの。だが、その色はまるで墨にでも染め上げられたかのような黒だった。沈黙を貫き続ける影は相棒(エックス)の隣へと静かに侍る。

 

「黒いウィズ……!?」

「ウィズ〜これどういうこと〜!?」

「まさか生き別れのブラザーかい!?」

「そ、そんなわけない!」

 

突然現れた黒いウィズに困惑するトア、ガット、フラウ。何よりもウィズ自身がこの状況を飲み込めずにいた。

 

「言っただろう!俺たちは影!全ては光の写し身だ!」

 

影は今なお言葉を発することなく、その瞳はウィズの姿を見つめ続ける。

 

(まさか僕の姿だけじゃなくて、剣の腕も同じなのか……?)

 

先程のガットやフラウの攻撃をいなした黒いウィズの剣筋を見た彼は自分と剣の腕が同じではないかと考えていた……。

 

(……だけど、立ち止まる訳にはいかないんだ……!!)

 

「姿は真似れても、コレまでは真似出来ないだろ……!!」

 

黒い影を睨みつけ、ウィズが取り出したのは《星零剣フォーアンサー》。エンゲージブレイヴと呼ばれる唯一無二の存在。自身の姿と仮に剣の腕が同じであろうとエンゲージブレイヴまでは真似出来ないと踏んでの事だろう。

 

「ハハハ!!それはこちらにもあるよ!」

 

狂気に満ちた叫びと静寂を貫く黒の沈黙。相反する動作が共鳴するかのように、 黒い空間が生み出される。そこから取り出したのは影の身体と同じように闇へと染まった《星零剣フォーアンサー》。それを携え、黒は白の前に立ちはだかる。

 

「そ、そんな……!!」

「さぁ、我が相棒の光よ。存分に剣を振るおうじゃないか」

 

黒の青年の笑いは止まることはない。その無邪気な笑みはこれから始まるであろう戦いを心待ちにしているようだった。

 

 

「そこだッ……!!」

「……」

 

トアとエックスの前で繰り広げられる剣戟。ウィズと黒いウィズの打ち合う剣の数は既に二桁台へと到達していた。全く同じ構えから放たれる白と黒の剣はそれぞれの剣筋を弾き飛ばす。両者共に決定打は与えられず、拮抗を表していた。

 

「フフ、やはり互角か……!!」

「互角なんかじゃないわよ!」

「……!!」

 

剣戟の最中。エックスの言葉を聞いたトアは身を乗り出し、黒へと向けて言葉を放つ。

 

「ウィズはね……子どもの頃からブレイヴを使う練習してたの!剣の腕は相当なものなのよ!ぽっと出のあんたなんかに負けるわけないんだから!」

「トア……!!」

 

「ハハハハハ!!言ってくれるじゃないか、契約の巫女ォ!」

 

(……ありがとう、トア。僕を信じてくれているトアのためにも……絶対に負けられない!!)

 

黒は嗤う。影は光の写し身であり、その力は同等なのだと。

白は誓う。自分を信じてくれている存在の為にも。

 

「……トール。トアを守る為に……再び力を貸してくれ!」

 

眼を閉じ、ウィズは自身の肉体に想いを募らせる。巨神機の白く煌めく姿が瞳の裏に映り、彼はその声を聴いた。突如として曇る空。集まる雲から放たれた雷がウィズの元に落ち、彼とトールは一心同体となる。

 

「おお!トールを契約煌臨したか!それでこそ我が相棒の『光』だな!」

「笑ってられるのも今のうちだ!僕がお前達を倒す!」

 

トールを契約煌臨させたウィズの姿を見て、歓喜に浸るエックス。対するウィズは黒いウィズを眼中に捉え、雷の轟音と共にハンマーを振りおろす。巨神機の一撃が黒いウィズを砕いた……筈だった。

 

「……何!?」

 

土煙から現れる黒いウィズは全くの無傷。大審判官ゲフェン・グニスさえも圧倒したトールの一撃。それが防がれたとあればウィズのみならずトア達が困惑するのも無理はないだろう。

 

「みんな、アレ見て〜!」

 

フラウが指さすのは黒いウィズの背後。巨大な亀のようなスピリットが漆黒の戦士を包み込み、強固なバリアを形成していた。

 

「”極甲王グラン・トルタス”。トールと共にこの地に眠っていたもう一つのレジェンドスピリットさ」

「……なるほど。あんたは既にレジェンドスピリットを手に入れてたってわけね……!!」

 

得意げに話すエックス。それに対してトアはエックスに1歩出し抜かれていた事に気付き、思わず拳を震わせる。

 

「そんな……。防がれるなんて……」

「ウィズ!ヘルプするよ!」

 

僅かではあるが戦意を失ってしまったウィズの姿を見て、再び加勢するガット。武器を自身の持つエンゲージブレイヴ《廻天刃ツヴァイザー》へと持ち替え、先程と同様に敵へと勢いよく飛行する。

 

「……!」

 

黒いウィズは自身へと接近するガットに気づく。そして飛び回る蝿を落とすかのように漆黒の尾を振り回し、ガットは遠くへと吹き飛ばされる。

 

「ガハッ……!!」

 

(悔しい……!もっとミーに力があればウィズを助けられるのに……)

 

一度ならず二度までも自身の剣を弾かれた事。そして仲間の助けになれない悔しさがガットの中で募り始める。……そんな彼に近づく足音が聞こえた。

 

「私が突破口を開こう」

「ユ、ユーは!?」

「自己紹介は後だ!このままだとウィズは手も足も出せずに負けるぞ!」

 

質問にも答えないものの、ウィズの敗北を訴える青年の必死さにガットは思わず口を止める。

 

「そのためにガット……君の力を借りたい」

「ミーの……?」

「ああ、君は既にこの局面を勝利に持つピースを持っているんだから」

 

ガットへと手を差し伸べるサングラスの青年。

この男、希望か。絶望か。

 

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