暗闇の中でしか生きられないダーク系魔法少女だけど、エッチな事にすぐ負けそうなエロゲ系魔法少女拾った(更新停止中)   作:名護十字郎

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第2話 淫魔に抗う魔法少女ホーリースタイン(敗北済み)

普段通い慣れている帰路でもその日にやった事によって歩き心地は全く違う事を、アズサは今日もまた思い知る。

暴走魔法少女の成れの果て「レムナント」。

その「対処」に当たった日の帰りはいつも最悪だ。

 

『私はもっと熱かったよ』

 

「……っ」

 

脳裏には、先程「対処」したレムナントの言葉が何度も反響する。

街の皆のためだった、私も殺されかけた、そもそも、既に。

いくら美辞麗句を並べたところで自分があの少女にした事は変わらない。

アズサは、自分の右肩に視線を向けた。

そこから下は、「まだ無い」。

先程の戦いでレムナントに放った「グリードハート・バーン」は使用者の反動など一切考慮しない必殺技だ。

その代償は片腕の喪失。

最も、アズサは……魔法少女スターボイドは並外れた回復力を持ち合わせているため明日には回復している事だろう。

これで何度目かも分からない右腕の再生の末、現在では腕が消し飛ぶ痛みに何も感じないほどだ。

そんな彼女でも、腕が無くなる痛みに慣れてしまった身でも心の痛みにだけは慣れることができなかった。

腕と一緒に胸の痛みまで消えてくれたら。

腕と一緒に心まで元通りになってくれたら。

何度そう思ったかは分からない。

 

「はぁ……うん?」

 

右腕の断面から響く痛みに僅かに顔を顰めながらため息をつくと、道端の奇妙なものに目がついた。

 

「……魔法少女?」

 

倒れているのは、アズサより3〜4年くらい歳が上であろう少女だった。

それは僅かに蠢いており、耳を澄ませると荒い吐息がよく聞こえる。

倒れている相手に向ける表現ではないだろうが……同性のアズサでもつい嫉妬心を覚えるくらいには豊満な身体付き。

そんな肢体が纏う服装は普段着にはあまりにも派手すぎるし、こんな服装で働く仕事をアズサは魔法少女以外知らない。

そんな少女が倒れ伏し、コスチュームも所々破損している。

 

(コスチュームが破けてる割に肌に傷はない、格上に喧嘩売って歯が立たずにすぐ逃げた?

でもこの液体は……毒?)

 

そう思いながら様子を見ていると、まだ通すもののない右袖が、倒れている魔法少女の身体、その至る所に付着している液体に触れる。

次の瞬間、ジュッ!という音と共に袖が溶け落ち、アズサは慌てて距離を取る。

ある程度以上の強さを持って酸を武器にする、その上同じ魔法少女に平然と攻撃する癖に、逃げ出す相手を追いもせず好きに行かせるような魔法少女はアズサの知る限りではいない。

つまりこの行いの犯人は……。

 

「その子、こっちに渡してくれないかしら?」

 

……魔法少女ではない、ということになる。

この街に魔法が持ち込まれた時、この街に現れたのは魔法少女ばかりではない。

人為的、または偶発的に生まれた魔法生物もいれば、他の世界から訪れた来訪者までいるという。

アズサに声を掛けてきた女もまた、そう言った非友好的魔法種族なのだろう。

その姿は、頭部に角を生やしてコウモリのような翼に矢尻のような尻尾を持つ女……典型的な「人外」だ。

 

「何者?」

 

「そうねぇ……そこに倒れてる子の親愛なる隣人」

 

「隣人ってのがこんなに人を痛め付けるとは初耳だわ」

 

「痛め付けてなんていないわよ?私はただ……」

 

そう軽口を返しながら、内心でアズサは舌打ちを打つ。

まだ右腕が再生していない上に相手の手の内は知れない。

戦うべきか、逃げるべきか?

そう逡巡する中で、背後から大きな悲鳴が上がった。

 

「……ハッ!

な、何でここまで追ってくるんですかぁ!?」

 

声の主はつい先ほどまで倒れていた魔法少女、気を失っていた割には随分元気のいい叫び声だった。

目が覚めたら追手がすぐ目の前にいて困惑、といったところだろう。

……これまでの緊迫した雰囲気が一気に台無しになった気がする。

 

「何でって、全身から滴るスライムの雫を辿ったらすぐに分かるわよ」

 

「……あっ!

い、いやでも私は逃げも隠れもしません!

私の背中には守るべき人が!」

 

「いや貴方さっき逃げてたじゃないの」

 

「……あ、揚げ足を取るのはやめてください!

そ、そこの貴方、危ないから下がってて!

この淫魔は私……が……」

 

……本当に、大丈夫だろうかこの魔法少女は。

第一声から始まる敵とのやり取りは正直かなり頼りないものだったが、それとは裏腹に使命感は強いタイプなのかすぐに立ち上がりアズサの前に躍り出た。

だが、

 

「あ……あれ?杖が無い……」

 

「……え?」

「……は?」

 

カッコよくアズサの盾になるように構えたかと思えば、両手は虚空を掴んでいる。

パントマイムにしても出来が悪いそれを前に、ついうっかり追跡者(正体不明)とハモるアズサ。

 

「え、ええい!例え武器がなくても私は、負けま!ひゃあっ!」

 

その決意の言葉を言い切る事すら出来ず、相手の掌から放たれた触手に四肢を掴まれて吊り上げられる様は、最早そういう様式美があるのかもしれないと思うほど。

 

……変身に初めて成功した魔法少女が最初に覚える魔法は武器の生成、とよく言われている。

魔法に完全な定義などできないため勿論例外も有るのだが、アズサ含め魔法少女の大半は当てはまる。

魔法少女にとって呼び出した武器とは自分の願いのために戦うという意志そのもの、具現化と言ってもいい。

つまり逃げる時に武器を……戦う意志をその辺に無くしてきた時点で、この結果は決まっていたようなものだ。

 

「……はぁー。

『スターボイド、リザレクション』」

 

思わず呆れのため息をつきながら、左手に集めたキューブを揃え、即座に砕く。

アズサは瞬く間に全身に黒を纏い、左手に爪を備えたスターボイドへと姿を変えて向き合った。

 

「改めて聞くわ、何者?」

 

「あ、私はラフィ……いえ聖石の騎士ホーリースタインとは私の事で」

 

「あのね……この流れで貴方に聞いてるわけないでしょ……」

 

「……えーっと、私の事なら……」

 

「貴方に名前なんて要りません!淫魔AとかBで十分ですっ!べーっ!」

 

「んもう五月蝿いわよさっきから!少し静かにしてなさい!」

 

とうとうキレたのかラフィ……さんことホーリースタインの口に触手を突っ込んで黙らせる淫魔A(仮称)。

一瞬でも自分を庇ってくれた相手、自分がこれから助ける相手、自分と同じ魔法少女に対してこんな事思うのは極めて不謹慎だと思うが正直スカッとしないでもない。

 

「……話が逸れたわね。

私はファマ、マリスフィア様に仕える淫魔よ」

 

「マリスフィア、ってのが貴方達の首領ね。

目的は?」

 

「さぁ?あのお方の考える事は私にはよく分からないわ。

ただ、マリスフィア様の下だと楽しくて美味しい思いが沢山できるのよねぇ」

 

そう言うと淫魔ファマは薄い笑みを浮かべながら視線をアズサから逸らす。

その先には、触手に四肢を戒められた哀れな魔法少女がひとり。

 

「例えば、こうして捕まえた魔法少女ちゃんを調教するのとか、ね?」

 

「……っ!む、むーっ!」

 

ようやく状況を理解した、と言わんばかりにホーリースタインが暴れ出すがもう遅い。

彼女を持ち帰った後の「お楽しみ」に心が躍っているのか上機嫌に笑うファマは視線を戻す。

彼女の目に映るのは単なる「もうひとりの獲物」だ。

……それが何者なのか、考えもしない。

 

「……それに、今日はラッキーだわ。

可愛い魔法少女を二人もゲットできるなんて」

 

そして、アズサに掌を向けて魔法陣を開く。

魔法陣の中心にある虚空、そこから伸びる一本の影……ホーリースタインを縛るものと同じく、拘束した相手を淫魔の住処へと連れて行くだろう触手がアズサに迫る。

 

「……フッ!」

 

しかし、そんな単調なものが通用する魔法少女スターボイドではない。

アズサは姿勢を低くして前方に滑り込むようにステップ、その背後で触手の先端が大きく開いて10本近い触手に分裂してアズサを捕らえようとするが虚しく宙を切る。

そこに爪が大きく切り上げられ、触手の体液が撒き散らされた。

中程から切断されて地面に落ちた触手の先端がビチビチと声のない断末魔を上げるのには目もくれずにアズサは嗤う。

 

「安い子供騙しね」

 

「こ、の……調子に乗るんじゃないわよ!」

 

そうして今度は三本の触手がアズサに迫る。

一本は先ほどと同じ、先端が開いて広範囲を絡めとる触手。

一本は後方に控え、粘着性の液体を噴出する砲口を備えた触手。

一本は粘液滴る、パワーに優れ先端が脈動する触手。

 

「まだ無駄って分からないようね……そらっ!」

 

アズサは、今度は後方に跳ねた。

アズサに迫る第一の触手の先端が再び大きく開き、アズサを絡め取ろうとする。

そして、同時に第二の触手から放たれる粘着弾。

アズサは鼻で笑いながら第一の触手、その先端の一本を掴んだ。

そして触手が巻き付く前に触手を引っ張り粘液弾を着弾させる。

液体の粘性の程はすぐに現れ、瞬く間に触手同士はくっ付き絡まり、暴れた末に地面にへばり付いて動かなくなった。

 

「全部集まればどうか知らないけど、一本一本は非力なものね」

 

そう言っている間にも砲台触手は次の粘着弾を構えていた。

だが、アズサは触手から粘液弾が発射される兆候を、予備動作を既に見抜いている。

そうなれば後は容易い。

 

「はっ、たった2発でジャムるなんて平和的で良い武器じゃないの」

 

先程切り落とした触手の先端を発射と同時に投げつけてやれば、後は粘着弾が勝手に自分の砲口を塞いでくれる。

そうしてアズサは全ての敵を排除したと言わんばかりに、一歩また一歩と淫魔へと近付いていく。

第三の脈動触手がアズサの行方を阻もうとするが……爪で先端を軽く撫でるだけで苦痛にのたうちながらアズサから離れていった。

 

「最後の一本、戦闘用じゃないわね。

『お楽しみ』用の触手を見せびらかせば無垢な魔法少女は怯んで離れていくとでも?

まぁ折角だからくだらないブラフに引っかかって、貴方のお遊びに付き合ってあげたのだけどね」

 

「な……、くっ!」

 

行動の裏まで完璧に読まれた上で、あえて自分の思い描いた展開へと持って行き、その上で真正面から破られた。

その屈辱に淫魔ファマは顔を赤くして憤慨するも、既に打つ手は無い。

 

「3度目はないわ」

 

そう言って、スターボイドの鉤爪がファマの腕を掴み上げた。

その爪に宿るは単なる膂力だけではない。

ファマの手に刻み込まれた触手を展開する魔法陣、それを腕ごと破壊しているのだ。

 

「ぎ、あぁぁぁああああああ!!」

 

ファマの絶叫が夜の街に響く。

苦痛に歪むファマの顔を退屈そうに眺めながら、アズサはもう片方の手に目を向けた。

 

「そっちの、私が握り潰してない方の手。

この至近距離から触手を伸ばされたら私でもかわし切れないかもしれないわ。

やってみたら?」

 

一見魅力的な助言にも思える言葉が単なる嘲笑でしかない事は、今のファマにも理解できた。

彼女の言う通り、ホーリースタインを縛っている触手をアズサに向けたら今度こそ捕らえる事ができるかもしれない。

だが、そしたら今度はホーリースタインが五体満足で解放される。

いくら武器を失った貧弱魔法少女でも、その魔力を乗せて殴るだけでも丸腰のファマには十分脅威だ。

 

「……チッ、覚えてなさい」

 

ファマが舌打ちすると同時に、ホーリースタインを戒めていた触手が大きくうねる。

捕まえた魔法少女を一度宙高くに持ち上げてから一気にアズサに向けて振るい、途中で離す……投擲だ。

即座にアズサはファマの腕を離し後退、「ふぎゅっ!」と間の抜けた声と同時に地面に落ちるホーリースタインを尻目に、折角の獲物を惜しむような目線を一瞬だけ向けたファマは翼を広げ夜の闇に溶けるように消えていった。

 

 

「モグモグ……んっ、先程は助けて頂きありがとうございました。

ゴクゴク…っ、私はラフィー・エルカトネットと申します。

輝石騎士……えーっと、貴方の言う魔法少女ホーリースタインとして……あむっ、淫魔と戦っているんです」

 

「分かったから飲み込んでから話しなさいよ……」

 

淫魔ファマを退けたアズサは魔法少女ホーリースタイン……ラフィーに呆れ顔をしながらサンドイッチを頬張る。

あの一戦の後に敵の事情を知っていそうなラフィーに話を聞こうとしたらそれはもう愉快な腹の音と共に崩れ落ちたため、深いため息をつきながら家に上げて餌付けしている最中だ。

アズサは右手はまだ回復していないため、片手で食べられるサンドイッチとおにぎりの山を少しずつ崩している。

 

「マリスフィア、って名前に心当たりは?」

 

「……っ、ごくん。

確か、魔王の最高幹部の一人だったか肉親?かの名前だったかと思います。

人類と魔王軍が終戦を宣言してもそれを認めず、継戦を主張する勢力を率いていたと聞いています」

 

「魔王軍ってまた大きく出たわね……、貴方出身は……いえ、そうね。

貴方これ何か分かる?」

 

「わっ、なんですかこれ?

い、板が光った!?」

 

「あぁそういう事ね……うん、よーく分かったわ」

 

少なくとも日本にもアズサが知っている限りの海外の情勢にも「まおうぐん」なんて今日日子供っぽい名前で活動する組織など聞いたこともないし、そこと真剣に交戦する国家なんて言うまでもない。

まさかと思ってスマホを見せてみるとこの反応。

 

「いやまぁ……魔法があるんだし異世界くらいあるわよね、はぁ。

それで?まさかとは思うけど貴方一人で戦ってるの?」

 

「いえ、三人です。

……とは言っても、一人とはまだ会った事ないんですけど。

この世界に逃げてきた淫魔を追って、まず私の先輩がこの世界に来たんです。

そこで一人適合者を輝石騎士……そう、魔法少女にしたみたいなんですがそこから通信が無くなっちゃって」

 

「で、貴方が来たって訳ね。

そしたら当面の目標はその先輩さんとの合流ね?」

 

「はい!エリィ先輩は凄いんです!

綺麗でカッコよくて強くて、さっきのファマくらいならすぐにやっつけちゃうんですから!」

 

「はいはい……。

ま、乗りかかった船だし途中までは付き合ってあげるわ。

ラフィー、明日管理局に行くから着いてらっしゃい」

 

探し人なら土地勘もないラフィーや相手の情報を知らないアズサが市内を虱潰しに回るよりは、魔法管理局に行った方が手っ取り早いだろう。

本来なら立ち寄りたくもない場所だが、場所だけ教えてもこの異世界系魔法少女が無事に辿り着ける可能性は限りなくゼロと言っていい。

明日必要になる諸々の手続きとラフィーの引率の手間を思い浮かべて、アズサは改めてため息をつくのだった。

 

 

「……ところで貴方、杖は?」

 

「あっ!!」

 

「……一度変身解除してもう一度変身してみたら?」

 

「一度解除して……『ホーリースタイン、ブライト!』」

あ、ほんとだ!アズサアズサ!杖戻って来ましたよ!!すごい!!」

 

「あぁうん、良かったわね……。

もうなんか怒ったり呆れたりするのも疲れたわ……」

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