ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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前回の最後に次は中間テストと言ったな?
あれは嘘だ(ごめんなさい)

原作をある程度取り入れつつオリジナル要素も出しつつ……ってやってたら思ったより進行が遅くなってしまってます。許してください。







勉強会と文学少女

 

 

 

翌日、3週間後の中間テストに向けた各派閥の勉強会が行われた。基本的には学力の低い生徒の底上げ。学力が高い生徒は勉強会の時間分自己犠牲を払うことになるが、日頃からの勉強が身についていればそれは些細な問題だろう。……それにしても、とても居心地が悪い。真嶋先生から話があった昨日以降、坂柳派閥と葛城派閥の仲はより一層悪くなった。どうやら有栖ちゃんがSシステムの真意に気づいていたにもかかわらず、それを黙っていたことにご立腹らしい。

 

 

 

「ほんと面倒なクラスだよね、うちってさ〜」

「……あの、それをなぜ私に?」

「え?言ったじゃん、今度どっか行こうって」

「……昨日の今日で行くとは思ってませんでした」

 

 

 私たちのような無所属の人たちは勉強会への参加は特に強いられておらず、自由参加となっている。それならば、とまだ中間テストまで余裕がある内に山村ちゃんをカフェへ誘ったのだ。

 

「それにしても、ここ……パレットとは逆に、閑静な雰囲気ですね……」

「うん、山村ちゃんああいう人が多い場所は得意じゃないかと思って。かくいう私もあんまり得意じゃないしね」

「そう、なんですか?」

「意外だった?」

「そうですね、そういうの得意な方かと思ってました」

「あはは、まあ高校デビューってやつだよ」

 

 ……この言葉に嘘偽りはない。高校デビュー……そう捉えてもらってもいいくらい、私は変わっただろう。今だって、山村ちゃん(興味のない相手)に対して笑顔を向けている。

 

「そういえば、山村ちゃんはお勉強できるんだよね?小テストも高かったし」

「……見てたんですか?」

「まあざっとだけどね〜。上位にいたから、もしかしてお勉強できるのかなって」

「……運動よりかは、出来ると思います。それでも、得意ではないですけど……」

「山村ちゃんは自己評価が低いな〜……よし!」

「……?」

「山村ちゃんは頭がいい!山村ちゃんは観察眼がすごい!山村ちゃんは洞察力が高い!山村ちゃんは……」

「ちょ、あ、赤井さん!?」

「え?……山村ちゃんは可愛い!」

「あ、あの、もうやめてくださいっ……!」

 

 顔を真っ赤にしながら山村ちゃんが私のことを制止する。……何だ、これからが本番なのに。

 

「山村ちゃんの自己評価が高くなるまで、褒め続けようかな〜?」

「も、もう勘弁してください……」

「あはは、面白い。やっぱり山村ちゃんって面白いね〜」

「……そんなこと言われたの、初めてです。そもそも私の事、気づいてくれる人の方が少ないですから」

「そう……っぽかったね?まあその分隠密行動が得意ってことだよ。何にせよ、自信を持ちなよ!私の友達なんだから!」

 

 何故かそういう衝動に駆られて、私は椅子を引いて立ち上がる。山村ちゃんはそんな私に釘付けになっていた。

 

 

「友達……ですか?」

「そう!私と山村ちゃ……山村ちゃんっていうのもなんか距離感あるな。……美紀ちゃん?」

「え、あ、私、名前で呼ばれた経験がなくて……」

「……ふーん?なら、あえてちゃん付けはとっぱらおう。美紀!」

「は、はい!」

「これから君はちょっとでもいいから自信を持つように。最低限……学力と隠密行動に関しては多分得意だし、長けてると思う!……多分」

「……ふふ、確証はないんですね」

「だって私には分からないし。……あ、座ろ」

 

 座って私は頼んだアイスティーを飲む。うん、美味しい。

 

「ここのチーズケーキ美味しいかな?」

「甘いの、お好きなんですか?」

「んー……そうかも。長い間食べてなかったから、その反動?みたいな?」

「ああ、ダイエットでいうリバウンドのような……」

「……ちょっと〜?」

 

 冗談のようなことを言って笑う美紀。本来の性格は、もしかしたらこっちなのかもしれない。……とりあえず、壁は一枚剥けたのかな?それならこちらとしても、誘ったかいがあったというものだ。

 

「……そういえば、勉強会ってどこでやってるのかな」

「図書館でやる、ということを話していたような気がします……行くんですか?」

「うーん……まあ、顔くらいは出してみようかな。美紀も行く?」

「私は遠慮しておきます……いても、いないのと変わらないでしょうし」

「そんな悲観しなさんな〜……あ、チーズケーキ来た。美味しそ〜……」

「………ふふ」

 

 

 そう、平和なひと時を楽しんだ。

 

 食事を終え少し雑談をしてから、私達は別れる。図書館は……学校の方か。……あ、その前に。あの人に連絡しておこう。そう思い、私は滅多に使わない学生証端末のメール機能を使う。……これ、送り方こうで合ってるのかな。まあ、送られてなさそうだったら電話しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __図書館。

 

「えーっと、有栖ちゃん達御一行は……あ、いたいた」

 

 図書館なので静かに、そーっと有栖ちゃんの元に近づく。完全に気配は消してるのでバレることは無いだろう。……よし、ここまで近づいたら大丈夫だろう。私は後ろから有栖ちゃんの目を手で隠す。

 

「有栖ちゃん、だーれだっ」

「…………萌さん、何をやっているのですか?」

「あれ?バレちゃった。これやるの憧れだったんだ〜。それにしてもすごいねぇ、有栖ちゃん」

「私を下の名前で呼ぶ方は貴方しかいませんから」

「あれ?そうなの?私も坂柳さんって呼べばよかったかなあ。それともこれから……」

「いえ、今まで通りで大丈夫です」

 

 少し食い気味に、そう言われる。……有栖ちゃんにしては珍しいな。まあ、普段と違う呼び方って違和感あるし、それが嫌なのかな。……それにしても。

 

「おーい、真澄ちゃん。生きてる?」

「……今話しかけないで」

「いや、そこまで死にそうな顔されて言われても」

「うっさい、てか何であんたはそんなに元気なのよ。……ああ、いつものことだったわね」

「うん、元気が私の取り柄だよ〜」

「赤井、何しに来たんだ?坂柳さんの手伝い……ってわけでもなさそうだし」

「ちょっと様子だけ見にこようと思って。真澄ちゃんと鬼頭くんがどうなってるかも見たかったし」

「……不甲斐ない有様だ」

「まあまあ、鬼頭くんもよく頑張ってるよ〜……橋本くんは何してるの?」

「俺か?俺は自分の勉強しつつ、鬼頭に教えてるって感じだな。完全に教えられるほど頭がいいわけじゃないし。他の奴らも大体はそんな感じじゃないか?」

「ふーん……」

 

 周りを見渡すと、黙々と勉強している子、分からないところを教えあってる子、参考書を開きながら問題とにらめっこしてる子……なるほど、確かに勉強会とは言っても自室でやれそうなことばっかりだ。

 

「有栖ちゃんは2人にしか教えないの?」

「いえ、今日は初日ですからこのお二方に教えてるだけです。別日にまた、他の方の弱点の補強を行いますよ」

「げ、スパルタ教育が俺たちにもまわってくるってことか……?!」

「わーお、橋本くんがんばれー」

「おい赤井、お前だけ逃げようとするなよ!」

「え?いや私有栖ちゃんの派閥じゃないし……そもそも私、勉強会とかアレルギーが出るほど苦手で……」

「勉強会アレルギーとは聞いた事のない未知ですね。ぜひ見せて欲しいものです」

「……うわあ。有栖ちゃん、それ絶対アレルギー持ちの人に言っちゃダメだよ」

「……私だってTPOは弁えます。というか私のことをなんだと思っているんですか」

「……可愛いけど人の心がない閻魔様?」

「はは、確かに人の心がないのは合ってるわね」

「……真澄さん、少しペースアップしましょうか」

「は?いやいや、これ以上やったら死ぬわよ!」

 

 ……賑やかだなあ。楽しそう。勉強会も青春のうちの一つかあ。……気が乗ったら参加してみようかな?その時は有栖ちゃんに勉強会アレルギーの恐ろしさを見せつけてやろう。

 

「じゃ、私はお先に〜」

「あ、帰るのか?」

「うーん、まだ図書館にはいるかな。本でも読もうと思って」

「……あんた、許さないからね……」

 

 私が悪いのではなく、私の言葉で調子に乗った真澄ちゃんが悪いのだ。……とは言わないでおこう。

 

「えーっと、どれ読もうかなあ……」

 

 私も一応勉強に精を出すべきなんだろうが、有栖ちゃんにあのハンデ(勉強会)がある以上今はそんなにやらなくてもいいだろう。私も最低限の勉強はしている。

 

「……ん?これ、ミステリーだったっけ」

 

 分厚い本と本の間に挟まれている、1冊の小説。確かこれは啓発本だったはずだ。……うん、D・カーネギーの『人を動かす』。こういった啓発本はあまり読まないし興味もないけど、別のジャンルのところに置かれているのはなんか気持ち悪い。

 

「……あの」

「……?私?」

「それ、ミステリーじゃないので……ミステリーに興味がおありでしたら、おすすめを見繕いましょうか?」

「……ああ、いや。啓発本がここにあったから、元の場所に戻そうかと思って。こういう違うジャンルの本があったら、なんか気持ち悪いでしょ?」

「同感です。……それにしても、よく気づきましたね。普通は気づいても無視されるか、そもそも気づかれないか、なので……本、お好きなんですか?」

「あーうん、まあ。嗜む程度には」

「それでしたら、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』は読まれましたか?あれは時代を超えて読み継がれる名作です」

「ああ、読んだ読んだ。殺人事件の緊迫感?みたいなのが伝わってきていいよね」

「ですよねっ」

 

 食い気味に、謎の生徒が手を取ってくる。……近い。あとこの子、誰だ……?

 

「えーと、一旦落ち着いて。自己紹介からしよっか。私は赤井萌だよ」

「あ、失礼しました……椎名ひより、Cクラスです」

「ああ、あの……」

 

 不良くんが多いところには似合わない、文学少女。しかも丁寧な物腰で少し天然さもかけ合わせている。これまた出会ったことがないタイプの人間だ。

 

「赤井さんはどちらのクラスで?」

「Aクラスだよ〜」

「すごいですね……」

「私としてはどのクラスでもいいから、他クラスとは対抗せず仲良くしたいんだけどね」

「同感です。皆さんと仲良くしたいんですけど……この学校の特質上、難しいですよね」

「まあ、選んだのは自分だから文句は言えないけどね〜」

「……それでも、できる限り争いたくないです」

「椎名ちゃんは平和主義なの?」

「出来ることなら、そうですね」

「平和主義なのはいいことだけど、その考えをいつまでも持てるほど甘い学校じゃないし甘い生徒達ばかりじゃないよ。あ、もし困ったり何かあったら相談してきてね、椎名ちゃんに退学になって欲しくないからさ」

「……あの、私が言うのもなんですが、どうして出会ったばかりの私にそう親切にしてくださるんですか?」

「………実力主義にはもう飽き飽きだから、かな。それよりさ、椎名ちゃんのおすすめの本教えてよ。ミステリー物を読みたいんだけど」

「!はい!まずはこちらの……」

 

 

 

 

 

 

 ……安易に提案するものじゃなかった、と多量の説明を聞いてから後悔する。まあ、内容自体は面白いものしか無かったのでそこはさすが文学少女、といったところか……。また図書室に行ってみよう。

 

 

 ……とりあえずは、この8巻分を寮で読み終わってからだな。

 

 

 






中間テストは次か、次の次か……かなぁ…。



▼ やまむら みき の こうかんど が すこし あがった!
▼ しいな ひより の れんらくさき を げっとした!

夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)

  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 櫛田桔梗
  • 白波千尋
  • 綾小路清隆
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