ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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坂柳さんといちゃつかせたかったッッッッ!!!!







お出かけ

 

 

 ……よし、荷物の準備よし。まだお昼だけど、明日に向けて準備が早すぎたかなあ。まあ、今日は何も無いから家で過ごす予定だったし、ただダラダラするよりは有用なことをしておいた方がいいだろう。

 

「お出かけ、かあ……」

 

 こうやって休日に誰かとお出かけって、そういえばしたことないかも。初めての体験、わくわくとドキドキなのかもしれない。そう思っていると、真澄ちゃんから電話がかかってくる。

 

「……?はーい、もしもーし」

『ねえ、あんたどういう系統の服が好み?』

「……えぇ?どういう系統、って……?」

『色々あるでしょ、カジュアル系とか……大人しめとか、派手めとかでもいいから』

「服の系統なんて分からないし好みなんて考えたことなかったよ……なんで急にそんなこと聞くの?」

『なんでもいいでしょ』

「えぇ……?私が着る上で?それとも他人に着てもらう体で?」

『他人に着てもらう体で』

「よく分からないけど、その人に合ってれば何でもいいんじゃない?とは思うけど……」

『……それじゃダメなのよ』

「なんで……??……うーん、大人しめ、なのかなぁ。派手なやつより控えめって言うか、大人しめの方がどちらかって言うと好き……かも」

『あっそ、ありがと』

 

 ……通話が切れた。何だったんだ……?服と言えば、私も私服増やした方がいいかなぁ……。系統、とかあんまり考えたことなかったけどそういう観点から服を選ぶ人もいるって聞いたことある。

 

「……ま、いいや。眠いからちょっとねよう……」

 

 この後仮眠から目覚めた時、5時間すぎていて休日をほとんど無駄にすることになるのだが、眠りに入る私には知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __翌日。

 

「荷物よし、髪よし。準備完了っ」

 

 ただのお出かけにしては気負いすぎな気もするが、こういう経験がないからかそわそわする気持ちを抑えるために、最後の確認をする。

 

「えーっと、時間は……もう出発しても大丈夫そう?待ち合わせは9時だもんね」

 

 少し早い気もするが、まあ日程とかは多分有栖ちゃんが決めてると思うし。有栖ちゃんなりの予定があって、その為の集合時間なのだろう。待ち合わせ場所であるロビーに行くため、私は部屋を出てエレベーターに乗る。それにしても、なんでいきなりお出かけしよう、なんて言ったんだろう……?有栖ちゃんなりの策略とか……?

 そんなことを考えていると、エレベーターが1階につき、ロビーへと出る。そこには私服姿の有栖ちゃんの姿があった。大人しめ、落ち着いた感じのロングワンピースだ。

 

「おはようございます、萌さん」

「……私、少し早めに出たと思ったんだけどなぁ」

「ふふ、それより私が早かっただけですよ」

「そっかー……ごめんね?待たせちゃった?」

「いえ、先程来たばかりですので」

 

 意図せず、付き合いたてのカップルみたいなやり取りをする。うわぁ、こういうやり取り少し憧れてたからやれてよかったぁ……相手が有栖ちゃんとは思わなかったけど。

 

「それでは行きましょうか。エスコートはお願いしますね?」

「お嬢様のおーせのままに……」

「何だか懐かしく感じてしまいますね。最近は中々こういうこともなかったですから」

「有栖ちゃんが勉強会ばっかりしてたからね〜?」

「ふふ、寂しかったですか?」

「寂しかった寂しかった、萌ちゃん泣いちゃいそーだったよ〜」

 

 わざとらしく泣くジェスチャーをすると有栖ちゃんがおかしそうに笑う。こんなに可愛くて可憐なお嬢様が腹黒なんて、天は二物を与えずというか、有栖ちゃんに関しては与えすぎたというか……。

 

「今失礼なことを考えませんでしたか?」

「いやいや、今日も有栖ちゃんは可愛いなーと」

「……ありがとうございます」

 

 意外にも素直に感謝を述べる有栖ちゃん。……珍しいな。2人だとこういうこともあるものなのだろうか。

 

「それで、今日はどこに行くの?」

「特に決めていませんが……萌さんはどこか行きたいところはありますか?」

「ううん、特にないかなー」

「では、自由にまわるとしましょうか」

「お〜」

 

 まずはケヤキモールに行くことにした私達は、雑談をしながらその道のりを辿っていく。

 

「そういえば、なんでお願い事をお出かけしたの?」

「……気になりますか?」

「そりゃまあ、ねぇ」

「ふふ、考えてみてください」

「えぇ?考えても分からないものはいっぱいあるんだよ?」

「もちろん、萌さんなら分からないと思って言ってますから」

「いじわる〜……」

「それが分かるようにならないと、私の想いも分かりませんよ」

「有栖ちゃんの想い〜?そんなのあるの?」

「ええ、萌さんに対する不満がたっぷりと」

「え?怖い、急に怖くなってきたよなんか!?」

 

 そうリアクションする私を面白そうに笑う有栖ちゃん。いや、人の命の危機かもしれないんだよ、不満って何さ不満って!……と思ったけど、派閥に入ってない以上何かしら不満を持たれていてもおかしくないのか……。

 

「……おや、見えてきましたね」

「ケヤキモール、相変わらずでかいよねぇ」

「そうですね、寮生活を行う上で不便を感じないお店を詰め込むとしたら、やはりこの大きさになってしまうのでしょうか」

「いやぁでも、カフェとかたくさんあるし……余計な施設も混じってそうじゃない?」

「一人が余計だと感じても、1人には必要、というケースもあるものですよ」

「……そうかもだけどさ」

 

 ふと、服屋さんを見かける。そういえば、昨日私服増やそうかなあって思ってたんだよなぁ。どんな系統かは決めてないけど……。

 

「服屋が気になるのですか?」

「あーうん、私服増やさないとなぁって思って。まだ上下それぞれ3着くらいしかないんだよねぇ」

「それはまた、随分と少ないですね」

「まあ、私服着る機会少なかったしね〜」

「では、一番初めは萌さんの服を選びましょうか」

「えぇ?でも、折角なんだからもっと他の……」

「萌さんも、一人では選べないのではないですか?」

「……それは、そうだけど」

「では行きましょうか。これは絶好の機会ですよ?」

 

 ……なにか言いくるめられた気がするけど、一人で選べなさそうなのもまた事実。……従うしかない、か。

 

「……じゃあ、一緒に考えてもらおうかな」

「任せてください、私があなたに似合う服を見繕います」

「なんで有栖ちゃんがそんなに気合入ってるの……?服なんてなんでも……有栖ちゃん引っ張らないで、こけるこけるっ」

 

 有栖ちゃんに引っ張られ、お洒落そうな服屋さんに入る。うげぇ、なんかこういう雰囲気、苦手かも……いつも雰囲気もクソもないところにいたから感覚が鈍ってるのかな……。

 

「萌さんはどんな服が良いなどの意見はありますか?」

「え?うーん……動きやすい服、とか?走ったり運動したり……そういうのができるやつがいいな」

「なるほど、機能性重視ということですね」

 

 有栖ちゃんはこういうところに行き慣れているのか、多くの服が並べられている中を迷わず突き進む。

 

「あの、有栖ちゃん、服いっぱいあるけど選べるの?」

「私を誰だと思っているのですか?これでも、自分の身なりには気をつけている方ですよ」

「まあ、確かに。有栖ちゃん可愛いしなぁ」

「………萌さん、少し黙ってください」

「……なんで??」

 

 何故か叱責をくらったので大人しくついていくことに徹する。その間にも有栖ちゃんは服を何着か選んでいる様子だった。

 

「動きやすい服装と言えばオーバーオールやニットでしょうか。しかしドロップショルダーにズボンという簡素な服装でも良さそうですね……」

「あ、あの……有栖ちゃん?」

 

 いつの間にか全く分からない呪文を唱えだした有栖ちゃんに、私はただ困惑しか出来ないでいた。しばらくして上下各4着ほど見繕うと、私に差し出す。

 

「萌さん、あそこに試着室がありますので私が選んだセットで着てください。分かりましたね?」

「あ、は、はい……」

 

 有無を言わさぬ圧力に、頷くしか無かった。

 

「有栖ちゃーん、いいー?」

「ええ、いつでもいいですよ」

「それでは……じゃじゃーん。どー?」

「ええ、似合っていると思います。通気性や機能性はどうですか?」

「うん、バッチリだよ。流石有栖ちゃん!」

「これから暑くなりますから、通気性が良い方がいいかと思いまして」

「うんうん、これなら残りの3着も大丈夫そうだね〜」

「……いえ、待ってください」

「……?どうしたの、有栖ちゃん」

 

 待て、というと有栖ちゃんは先程の服達の中から、1着を取り出す。

 

「萌さん、これを着てみてくれませんか?」

「これは……ワンピース?」

「ええ、ぜひ今着てみてくだい」

「ええ、でも私、もう満足……」

「いいですから」

「…………はい」

 

 お洋服のようなお洒落関連では、私に意見をする権利はなさそうだ。

 

 

「……あの、なんかこれ、違和感が凄いよ?」

「素晴らしいくらい似合ってますよ、萌さん」

 

 有栖ちゃんが取り出したワンピースは、白いブラウスとセットになっている黒いワンピース。心做しか今日有栖ちゃんが着ている白いロングワンピースと対になっている気がする。

 

「有栖ちゃん、私にこういう女の子らしい格好は似合わないよ〜……」

「そんなことないですよ、ではお支払いを済ませましょうか。そこにずっといると私がお支払いをすませてしまいますが、良いのですか?」

「だ、だめだめっ、ちょっと着替えるから待ってっ」

「いえ、今日はその服装のままお出かけしてもらいますよ。店員さん、もしこの服を購入するのであれば彼女はこのままでも構いませんか?」

 

 店員さんは大丈夫ですよ、と言い決まり文句のような接客と笑顔でお似合いですね、と言った。……何故だろう、なんだか凄く惨めな気分だ。

 

「お買い上げ、ありがとうございました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい買い物が出来ましたね、萌さん?」

「……ああ、はい。おかげさまで……」

「疲れてますか?」

「いや、大丈夫……それより、私の買い物に付き合ってもらっちゃったけど……有栖ちゃんは何か買わなくていいの?」

「買いたいものはとくにありませんし構いません。それに私の方が先に、自分の買い物に付き合ってもらいましたからね」

「……よし、心機一転!めぼしいお店探し開始〜」

「ふふ、楽しみですね」

 

 私たちはめぼしいお店を探すのと同時に、ケヤキモールにどんなお店が入っているのか見てまわった。カフェはもちろんのこと、服、アクセサリー類、電化製品、ゲームなどを売ってるお店。ジムやスポーツ用品を扱うお店など特定の人か行きそうなところ。色々と種類が豊富なことを知った。

 

「ケヤキモールって、改めて見ると色々あるんだね〜」

「そうですね、私も初めて見たお店ばかりです」

「あ、見てみて。あそこ、ケーキ専門店だって。まだ入ったことないよ、行ってみよ?」

「ふふ、萌さんは甘い物に目がないようですね」

「それは有栖ちゃんもでしょ〜?」

 

 他愛もない会話をしながら、お店に入る。お洒落で洋風だが、こじんまりしている。隠れ家、というような雰囲気を醸し出している、少し珍しいお店だった。

 

「すごい、専門店と言うからには、って感じのメニューの豊富さだね〜」

「ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブラン、シフォンケーキ、カステラ……なるほど、これは卒業までの楽しみが増えました」

「卒業までに全部食べる気?」

「退屈な日常にたまには彩りを添えようと思いまして」

「ま、それも楽しみ方の一つか〜……うわぁ、聞いたことの無いケーキまであるよ。シャルロットケーキ……?」

「ビスキュイ生地を並べて中にババロアやムースを流し固めてから、上にフルーツなどでデコレーションしたケーキですね。女性の帽子に見えることが名前の由来だそうですよ?」

「……そんなに帽子に見えるかなあ?」

「感性は人それぞれ、ですよ」

「あ、ねえねえ有栖ちゃん!このチーズケーキ美味しそうだよ!」

「カマンベールのチーズケーキですか。濃厚な味わいのものはあまり食べないですが、いいかもしれませんね」

「やったやった、じゃあこれください!」

 

 カマンベールのカットを2つ買い、店内のイートインスペースでいただくことにする。

 

「わ〜……美味しそう……」

「チーズケーキ、お好きなのですか?」

「うん、ケーキの中だと1番か2番くらいに好きかなあ。有栖ちゃんは?」

「王道のショートケーキでしょうか。モンブランも捨てがたいところではありますが……選べと言われたら難しいかもしれませんね」

「やっぱり選ぶのは難しいよねぇ〜……うん、美味しいっ」

「以前から思っていましたが、本当に美味しそうに食べますね」

「美味しいものは美味しいを前面に出して食べるのが私のモットーだからね、折角の食材を大切にいただかないと」

「ふふ、そうですね……」

 

 2人でチーズケーキを食べ合いながら、ケーキ論争をして盛り上がった。ちなみに議論の結果、万人受けで王道ないちごのショートケーキが1番ということになった。

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

「外もだいぶ暗くなってきましたね」

「ほんとだ。まだ明るい時間は短いね〜」

「これから夏になりますから、嫌でもお日様とお友達の生活になりますよ?」

「う……夏は苦手だなあ」

「おや、そうなのですか?」

「暑いのは嫌だから……不用意に汗かくのは嫌いだし、ベタベタする」

「そこは否定しませんね」

「この後はどうする?もう色々とまわったけど……まだまわる?」

「朝から出かけてますし、もういい時間ですから帰りましょうか。もちろん、寮までエスコートしてくださいね?」

「りょーかいですよっと……」

 

 そういえば、服を選んでもらったお礼ってしてないよね……?貸し借り、という概念に位置づけていいのかは分からないけど、何だか恩を売りっぱなしというのも釈然としない。……といっても、お礼になりそうなこと、何すればいいか分からないしなぁ。

 そんなことを考えていると、ある1個の存在が目にとまる。……もしかして、これなら。私は有栖ちゃんの部屋を思い出す。

 

「ねえ有栖ちゃん、有栖ちゃんってぬいぐるみとか好き?」

「いきなりどうしたんですか?」

「いいからいいから、女の子は好きな子が多いって聞いたからさ、気になって」

「好きか嫌いかと言われたら嫌いではありませんね。私の家の自室にも置いてありますし」

「そっか〜……あ、そうだ。ちょっとジュース買ってくるよ。そこのベンチで座っててくれない?」

「え?あ……行ってしまいましたね」

 

 私は角を曲がったところのベンチに有栖ちゃんを座らせ、小走りでさっきのお店に入る。……ワンピース、思ったよりも走りにくい……そんな感想を頭の中に秘めつつも走り続ける。……よし、これなら。私はお店に入り、茶色いクマのぬいぐるみを見る。首には赤いリボンが巻かれていて、全体的に見ても可愛いシルエットだ。世の中の女の子の言う“可愛い”や“萌え〜”がどれに該当するのかは分からないが、きっと多分、これは誰が見ても可愛いと思う。

 

「すみません、これ買えますか?」

「ええ、買えますよ。ラッピングはなさいますか?」

「はい、プレゼント用で……」

「かしこまりました」

 

 無事にお会計を済ませた私は、その足でここから最短距離の自動販売機に向かい、適当にミルクティーを買う。有栖ちゃんの好みは知らないが、紅茶を飲んでいたこともあるから嫌いではないと信じたい。

 

「……ふぅ、有栖ちゃん、お待たせ〜」

「随分と時間がかかって……萌さん、それは?」

「ん?これ?ミルクティーだよ、どうぞ〜」

「ありがとうございます。……ではなく、先程までなかったその袋です」

「これね、なんだと思う?」

「……さっぱり見当もつきません。萌さんが行った方角には色々なお店がありますし、そのどれも、まだ購入経験がありませんから」

「正解はね〜……開けてみてっ、ほらほら」

 

 半ば強引に、有栖ちゃんに渡す。こういうときのプレゼントの仕方って分からないし、こういう形でしか私には渡せない気がする。

 

「これは……ぬいぐるみ、ですか?」

「うん。可愛いでしょ〜、それ、有栖ちゃんへのプレゼントだよ」

「……私への?」

「うん。今日は服を選んでもらったし、何より有栖ちゃんのおかげで何気ない休日が楽しいお出かけに大変身したからね〜」

「…………そうですか、喜んでいただけたのなら、光栄です」

 

 

 少し間を置いて、有栖ちゃんが座ったまま話し出す。

 

 

「萌さん、貴方は今日の初め、何故私が貴方を誘ったのか、とお聞きしましたね」

「あぁうん、なんでお願いごとをお出かけにしたの、だっけ」

「私は……いえ、私も少し、寂しかったんです」

「……有栖ちゃんが?」

「私だって、寂しくなることくらいありますよ?」

「いやいやでも、それで有栖ちゃんが私を呼び出す理由にはならなくない?……あ、勉強会の憂さ晴らしとか……?」

「……違いますが、やはり萌さんには分かって貰えそうにありませんね。何でもありません」

「え?有栖ちゃん?……ってちょっと、置いてかないで〜……何なんだ、全く分からない子だなぁ……」

 

 

 どこまでも人の感情を読み取ろうとしない相手に、少し呆れながらも愛しさを覚える。自分の言葉に対して、一切何の感情も動いてないのであろうと、聡明な彼女は理解した。きっと普通の人なら怒るであろう、その行動。しかし、坂柳有栖は違った。

 絶対に、相手の感情を動かしてみせると。人間的な興味と共に覚えた、不思議な感情と感覚。それを忘れないように、彼女はプレゼントされたぬいぐるみを強く抱きしめた。

 

 






「……そういえば、私服が似合っているか聞くのを忘れていました。真澄さんに聞かせておきながら、私もまだまだですね」




今回萌ちゃんが坂柳さんにプレゼントしたぬいぐるみは1年生編11巻に登場したあの子です。大切にしてくれてたら可愛いですよね。


夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)

  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 櫛田桔梗
  • 白波千尋
  • 綾小路清隆
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