ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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物凄くお久しぶりです、イノセといいます。
書く暇がなくて何だかんだと忙しさにとらわれていたら、あっという間に9月になっていました。時の流れって怖いですね……。






新たな出会いと寛大(笑)な少女

 

 

綾小路くんと連絡先を交換したからと言って、特に連絡を交わすわけでもなく。ただただ、私は普通に日々を過ごしていた。

 

「今日の放課後は何しようかな〜……」

 

 ピリピリとしたAクラスの雰囲気の中にこれ以上いたくない私は、最近早く帰るという術を覚えた。なので放課後を告げる鐘の音がなった5分後ではあるが、もう既に寮についていた。

 

「……そういえば、今話題の須藤くんってバスケ部の子だっけ。バスケはあんまりやったことないんだよなー」

 

 あそこでやるスポーツは個人技ばかり。チームスポーツは連携をとるのが難しく、チームメイトとの意思疎通が出来ないと成り立たないスポーツだと聞く。果たして暴力事件なんか起こしてしまう彼に、そんな芸当が出来るのだろうか。

 

「……よし、行ってみよう」

 

 須藤くんがバスケをしているであろう体育館を目指し、自分の部屋を出た。

 

「夏、って感じの葉の付き方だな〜」

 

 今は7月。時期的には夏と言われる季節だ。緑葉が目立つこの並木道は、私が散歩するのに好きな道だ。うん、気分が和らぐ……。

 ……ん?前から誰か……。

 

「わっ!?」

「いたっ……あ、ご、ごめ、ごめんなさい!」

「あ、いや……こちらこそごめ……」

 

 

 ……えっ、えっ?いきなりぶつかってきたと思ったら泣いてるんだけど、何事……ですか?

 

 

「…………えっと、大丈夫、ですか?」

「わ、私は大丈夫です、あのっ、あっこれは、その……」

「……とりあえず、ベンチに座りますか?」

 

 

 思わず戻っていることにも気づかず、そう提案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___落ち着いた?」

「は、はい……すみませんっ……」

「まあまあ、傷心してたみたいだし仕方ないよ。はい、これココア」

「……ありがとうございます。あの、お名前は?」

「私は赤井萌。君は?」

「白波千尋です……」

「白波さん、か。よろしくね」

「はい……」

 

 引っ込み思案、大人しくて感受性豊か。ぱっと見た感じのイメージはこんなものかな。……もしかしたら、無理に話させるのは良くないかもしれない。そう思って沈黙のまま夕日を見つめていると、あちら側の口が開いた。

 

「……私、今日告白したんです」

「告白。それはまた勇気のいる……」

「はい。でも、やっぱりダメで。気持ちが先走っちゃって……」

「えぇ?白波さん可愛いのに……」

「……仕方ないんです。私なんかが、好きになっちゃいけない相手だから」

「……そんなこともないんじゃない?」

「えっ……?」

「私はしたことないから実際の気持ちとかは分からないけど、告白ってすごく勇気がいることだと思うよ。自分の気持ちが迷惑にならないか、すごく考えて。それでも抑えきれなくて、苦しくて。……この感情を相手に伝えたい。受け入れて欲しい。……そんな感じかな」

 

 告白。小説などでしかその追体験はしたことはないが、そのどれも緊迫した雰囲気で、何度も考えて。告白する側がすごく葛藤していたのを覚えている。きっと、私が思っているよりも一筋縄ではいかないのだろう。

 私は立ち上がり、隣に座らせていた白波さんの頭に手を置く。何だか妹みたいで、庇護欲を感じさせる人だ。……身長的には、私の方が小さいんだけど。

 

「だからさ、そんなに自分を卑下しないで。君のやったことは正しいよ、君にとってね」

「……赤井、さん……」

「ん、元気は出たみたいだね」

 

 よかったよかった、あのまま泣き続けられてても良心がいたんで帰れなくなってたし。元気になったはずの白波さんは中々帰ろうとせず、何か考え込んでるようだった。そして顔を上げ、一言。

 

 

「…………あ、あの……も、萌ちゃんって呼んでもいいかな……!?」

「え……?うん、別にいいけど」

「萌ちゃん!……ありがとう」

 

 

 そう、白波さんに手を握られる。何だか急に距離感が近くなったな……大人しめだと思っていたが、案外そんなこともないのかもしれない。

 

「……私、今日のこと、忘れないよ……!」

「う、うん。白波さんが元気だしてくれたならよかった……」

「あ、萌ちゃん。もう暗いし、一緒に寮に帰る?」

「…………そうだね、そうしようか」

 

 

 ……今断ったらなんか面倒そうだし、バスケ鑑賞はまた別の機会にするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、あっという間に時はすぎ、裁判の1日前になった。綾小路くんの話では、今は須藤くんが訴えている冤罪だ、という証拠を探している段階。ベストはそのDクラスの目撃者がいち早く出てくれることだけど……まあ、初日に出ない時点で証言したとしてもあまり効果は見込めない、かな。なにか決定づけるものがあれはまた話は別だけど。

 ……さて、そろそろ登校するか。休憩していた重い腰をあげ、最低限の身だしなみを整える。そういえばここ最近、有栖ちゃんと話してないなあ。挨拶くらいはするけど、特段話す内容がないから自ずと話す機会も減る。それに比べてほにゃと話す機会は増えた気がする。今回の須藤くんの件のことも、色々と聞いている。……逐一私に報告する必要も無いと思うが、言わないとすまない性分なのだろうか。隠し事は苦手そうだ。

 そういえば、その正直者から学校の掲示板で何か募った……って聞いた気がする。その時は話半分でスルーしていたけど、なにか有用な情報はあるのだろうか。

 

「…………あ、これ___」

「……あ、おーい!」

「……げっ」

 

 噂をすればなんとやら、当の本人が手を振ってきた。運命とは数奇なものか、綾小路くんと……誰だ?あれ。

 

「げっ!?げって何ー!?」

「……いや、なんでもない。それよりどうしたの?こんなに集まって」

「今ね、掲示板の方に神崎くんが色々としてくれたから見に来たの。そしたら綾小路くんもいたって感じかな。ね、神崎くん」

「ああ。神崎隆二だ。よろしく頼む」

「えーと……赤井萌です、よろしく……」

 

 冷静であり、橋本くんとは正反対のような寡黙な態度。口ぶり的にも、ほにゃがクラスで信頼している生徒と見るべきかな。

 

「……あ、それ!私が募集をかけた掲示板!見てくれたの?」

「……ほにゃ、プライバシーの侵害」

「にゃはは、ごめんごめん〜……なにか来てた?」

「さあ、自分で見てみれば〜?それじゃあねー」

 

 一刻も早くこの場から去りたい。主に綾小路くんの怪しむ目から。私は終始態度を変えず、綾小路くんとは一言もかわさず。クラスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 __Aクラス。

 

「おはよー……」

「…………おはようございます、萌さん」

「あ、有栖ちゃん。おはよ……って、なんで真澄ちゃんはそんなに顔がひきつってるの?はい、笑顔笑顔〜」

「……あんたのせいでしょ」

「えぇ?いきなり人のせいにされても……」

「うっさい、後はあんたが坂柳の相手しなさいよね」

 

 ……行ってしまった。何かいつもよりご立腹だったなあ、今日の真澄ちゃん。どうしたんだろう。

 

「……有栖ちゃん、真澄ちゃんどうしたの?」

「知りません」

「……ふぅん」

 

 知らないならいいや、と思い先程見つけた掲示板の書き込みを流し見する。

 

「最近は随分とDクラスの問題に関心があるようですね」

「んぇ?別に……」

「私の連絡も無視するようですし、余程大切なのでしょう。さしづめ最近会話の頻度が高くなっている一之瀬さんへの信頼関係の構築を狙っているといったところでしょうか、さぞ楽しいでしょうね」

「……有栖ちゃん、なんか怒ってる?」

「私のどこが怒っているのでしょう?私は連絡を無視された挙句私には挨拶しか交わさないのに他の方とは会話の頻度をあげたり新たに友達になったりするくらいで怒るような心の器はしていません」

 

 ……怒ってるじゃん。がーっつり怒ってるじゃん。それにしても、有栖ちゃんから連絡来てたのか……全く気づかなかった。私がこの端末をあまり見ないっていうのもあるけど、連絡アプリとか必要時以外使わないからな……。どうやら、今の有栖ちゃんにとって新たな出会いというのは怒らせてしまう要因らしい。

 

「えーっと……ごめんね?」

「それだけですか?」

「…………あー………お詫びと言っちゃなんだけどさ、今度放課後にカフェでも行こうよ、2人で」

「ふむ、及第点ですがまあ良しとしましょう。私は寛大な心の持ち主ですからね」

「……寛大(笑)な心……」

「何か言いましたか?」

「いえ、何でも……」

 

 ……寛大な心の持ち主は自称しないんだけど。これ以上なにか言ったら更に言われそうだし、大人しく口を噤んどこう。

 

「それで、学校の掲示板など見てどうしたのですか?」

「……何でそう、人のスマホを横から見るかな……一之瀬が掲示板で暴力事件の目撃者について聞いてたから、その書き込みを見てるんだよ。ほら」

 

 私は先程見ていた書き込みを見せる。そこには、暴力事件に加担したと思われるCクラスの石崎という生徒が相当な悪だった、という証言が書かれていた。

 

「喧嘩の腕が立つ悪ですか。今問題となっている須藤くんが余程喧嘩に長けていると言えど、多対一で一方的にやられるにしてはおかしな相手ですね」

「うん、私もそう思うよ。十中八九、Cクラス側の策略だろうね」

「あそこには龍園くんがいますから、手荒な真似をしていたとしても違和感はありませんね」

「龍園くん?」

「Cクラスの独裁者です。暴力でクラスメイトを支配する、野蛮な方ですよ」

「それで独裁体制を維持できてるっていうのはすごいねぇ」

 

 恐らくかなり頭の切れる人物なのだろう。だからこそ、Dクラスに復帰の余地を与えないためにこのタイミングで仕掛けてきた。

 

「……ま、私はこれ以上興味はないかな。そもそもこれは問題解決と再発防止がイコールで結びつかないし」

「と言いますと?」

「今回の事件は須藤くんの人間性故に狙われたものだってことだよ。彼は粗暴で凶悪、自分に楯突く相手には誰であろうと噛み付く、短絡的な思考の持ち主。自分でその事に気づかなければ、また仕掛けられて策にはまって終わり」

 

 堀北ちゃんならそこの理解も出来てそうだけど、どうかな。最も、彼女だけが理解出来ていても意味は無いのだけれど。

 

 

 

「……ま、どうでもいっか」

 

 

 

 

 数日後、再審の後Cクラスが裁判の申し出を取りやめたと聞いた。

 








新たな恋フラグ、たちました。




夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)

  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 櫛田桔梗
  • 白波千尋
  • 綾小路清隆
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