ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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日本を背負う彼と対面します。









ナイトガールは無人島で遊びたい

 

 

 

 __洞窟。

 

 

「あっ!葛城さんありましたよ!」

「弥彦、声が大きいぞ。他クラスに聞かれていたらどうするんだ」

「は、はいっ。でも、ここを占有するってことですよね!?」

「……そうだな。入口は1つしかないし、ここならばいい籠城場所になりそうだ。皆、各自荷物をこの中にまとめてくれ」

 

 目的地に着いたことで、雑談をしていた美紀が私からすっと離れていく。……別に近くにいてもいいのに。

 

「そんでさあ葛城くん、リーダーはどーすんの?葛城くんだと目立ちすぎでしょ」

「分かっている。だから今回、俺がリーダーを個人で指名する。もちろん、リーダーに全責任が行かないよう匿名に、秘密裏にだが」

「あちゃー、俺たちには教えてくれない感じ?」

「リーダーに精神的負担を背負わせたくない。そういう面では、こういう形が一番だと判断した。何か文句があるか?橋本」

「……いや?お前たちも文句ないよな?」

 

 そんな橋本くんの問いかけに無言で頷く有栖ちゃん派閥の人達。……でも、ちょっと引っかかるな。これから団結するのに、嘘はよくないよね?

 

「ねえ葛城くん。それって本当の理由なのかな?」

「どういう意味だよ赤井。葛城さんがそう言ってんだからそうに決まってんだろ!」

「今は戸塚くんに発言を求めてないよ」

「その通りだ、弥彦。……しかし、どういうことだ?俺の発言に何か矛盾などでもあったか?」

「いいや、表向きは葛城くんらしい適当な意見だと思うよ。でも本当の理由はそうじゃない。君は良くも悪くも保守的な人だ、だから有栖ちゃん派閥の人達を完全には信用していない……違うかな?」

 

 葛城くんは私の質問に肯定こそしなかったが、否定もしない沈黙という形をとる。……まあ、みんなの前でその通りだとは言いにくいよねぇ。

 

「おい赤井、葛城さんの邪魔をするなよっ」

「やだなぁ戸塚くん、邪魔をする気なんてサラサラないよ。ただ嘘をつくのはよくないなーって思っただけ。これから団結していくのなら、お互いを信頼するところから始まらなきゃ。ね?」

「……そうだな。だが、リーダーは公表しない。俺と、リーダーに指名した生徒の2人だけの情報だ。どこで盗み聞かれているかも分からないからな」

「そっか、そういうなら私に異存はないよ。くいかかる形でごめんね?」

「構わない、俺も曖昧な態度をとっていたからな」

 

 

 ……さて。ここまで言えば橋本くんら辺がここの上手くリーダーを読み取ってくれるだろうし、あとは成り行きに身を任せようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __ある程度話がまとまり、ポイントの使用は葛城くんに全権を任せることになった。そして今は、食事や焚き火などの必要なものを探索中である。

 

 

「ほらほら里中くん、早く歩かないとおいていっちゃうよ〜?」

「いや、早すぎだってもえぴー……ただでさえこの島、道という道がないんだからさ……」

「もえぴー……?あっ、ああ……まだいたんだね、その奇異なあだ名で私の事呼んでる人」

「結構呼んでる人はいるぞ?元土肥とか、清水とか」

「あの1回以来あんまり話してないのに、律儀だなー」

「はぁ、あんた、早すぎんのよ……」

「あっ、真澄ちゃん。真澄ちゃんも呼んでみる?もえぴーって」

「呼ぶわけない」

「だよねー……あっ、もえぴーにならってますみんっていうのはどう……何でもない」

 

 無言の圧と睨みにより私の提案は却下される。というか真澄ちゃん、運動神経はいいはずなのに。こういう山道は得意じゃないのかな?

 

「……あっ、食べ物発見。ちょっと登って取ってくるね〜」

「……なんかアンタ、猿みたいね」

「なるほど、さるぴーか……って駄目だろ猿はっ」

「猿ってそんな…………お?」

「何、どうしたわけ?」

「……ごめん真澄ちゃん、ちょっとこの木の実落とすね〜!」

「は?え、ちょっ……どこ行くのよ!」

「面白いのが居たから見に行ってくる〜!すぐ帰ってくるから〜!」

 

 困惑する2人をおいて、私は助走をつけ、木を使って移動する。フリーランニング……別名パルクールとも言われるが、この手の動きは感覚に任せるよりもまず、人間の身体の構造を知り、動きをするためにはどこをどう動かせばいいのか頭で理解する方がいい。……まあ、私はフリーランニングと言えるような技は知らないとけど。知識として聞いたものを面白そうだから実践してみただけである。幸い練習場所は豊富にあったし。

 

「おーい、そこの金髪くーん」

「んん?おや、後ろに気配を感じると思ったら……Aクラスのナイトガールじゃないか」

「……ナイトガール?」

 

 金髪くんが止まってくれたため、私もそれに合わせて動きを止める。……っとと、いきなり止まるのはよくないな……。

 

「リトルガールを守っているナイトがいるとの噂だからねぇ。君が噂のナイトガールだろう?」

「……いや、ナイトではないけど……まあいっか。えーっと、君は……」

「これは失敬、初対面のレディーを前に自己紹介を忘れていたね。私は高円寺六助、いずれ日本を背負う男だ」

「すごいすごい、ジャパンボーイだね〜。私は赤井萌だよ、よろしくねジャパンくん」

「フフっ、この学校であだ名を付けられるのは初めてだねぇ。私に着いてきたことも踏まえると面白いレディーだ」

「お眼鏡にかなったようでよかった……えーと、この方角は……もしかしてリタイアするの?」

「ザッツライト。この試験は私にとってつまらないからねぇ。この森を堪能しようと思ったが……こうも退屈な構造だと楽しみようもない」

「確かに、明らかに人の手が加わってるよね〜。私が唯一見たことある森はもうちょっと険しかったし、雑草だってまばらだったし」

「そういうことさ。ではアデュー、ナイトガール!」

「うん、ばいば〜い……あれ?あの子の名前なんだっけ」

 

 自己紹介された気がするけど、彼自身の言動や立ち振る舞いの方が印象に残りすぎてて名前なんて覚えてない。……まあいっか、ジャパンくんで。

 長いジャージのズボンの裾を折りながら、森の中を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___うおっ、眩し……」

 

 騒いでいる人の声に吸い寄せられるように森を抜け海沿いに出ると、そこにはCクラスが豪遊の限りを尽くしていた。

 

「…………何ポイントかかってるんだろ、これ」

「何だおめぇ!何の用だよ」

「…………誰?」

「お前から名乗れよ!」

「何だァ、騒がしいなぁ?俺は必要以上に騒げとは言ってねぇぞ石崎」

「りゅ、龍園さん……うっす」

 

 散れ、という一言で一目散に砂浜の方へ逃げる石崎くん。……なんかかわいそー。どうでもいいけど。私は近づいてくる龍園くん……ではなくその先のCクラスの拠点を見る。

 

「お前が赤井か。騎士と言われるにゃずいぶんちっせぇなぁ?」

「別に自称してないしそのあだ名……。君は……今の会話からして龍園くん、かな?」

「龍園翔だ、王の名前くらいは覚えておけ」

「私は誰にもつく気はないよ……」

「ほう?坂柳にも、葛城にもか?」

「そんなこと聞いて何になるの?私がどっちにつこうがつかまないが龍園くんには関係ないでしょ」

 

 そう言い、Cクラスの拠点の中に入っていく。許可などは貰ってないが、この際どちらでも変わらないだろう。

 

「クク、関係ねぇだぁ?あるに決まってんだろ、俺達は敵同士だ。敵情視察は基本だと思うが?」

「……敵本人に聞くのはどうかと思うけど。それとも……」

 

 私は机の上に置いてあった無線機をとる。

 

「スパイ作戦がバレたら困るから、とか?」

「…………クク、ハハハ!どうやらAにもまだ、おもしれぇ奴がいたみたいだなぁ?」

「……お気に召したのなら何よりだよ」

「だが赤井、お前は1つ勘違いしてる。お前も俺も、今回お互いの敵じゃねえ」

「……どういうこと?」

「契約をしたってことさ。さっきしてきたところだ。これを見ろ」

 

 中にはCクラスがAクラスに対して200Sポイント分の物資を譲渡すること、CクラスがBクラスとDクラスのリーダーの情報をAクラスに与えること。そして……。

 

「……Aクラスの生徒が、毎月2万ポイントを龍園くんに送る……?」

「葛城はその条件で承諾したぜ?今お前が異議を唱えようと無駄ってことだ」

「……なるほどね」

 

 この試験、どうやら私たちの負けらしい。……はぁ、何かやる気失くした。

 

 

「いつ撤収するの?」

「さぁな。今日か明日か……俺の気分次第だ」

「そっかぁ……じゃあ私も遊んでいっていい?2万ポイント君に渡すわけだし」

「クク、好きにしろ」

 

 龍園くんからの許可が出たので、私は砂浜の方へと歩き出す。みんなが海で遊んだりバーベキューをしている中、ビーチチェアでジャージのまま本を読んでいる生徒……椎名ひよりの元へと向かった。

 

「やほ、椎名ちゃん」

「あら?……赤井さん、いらしたんですね」

「まあね〜」

 

 私は砂浜に引かれているマットに座る。砂浜には初めて来たが、意外とマットありでも熱いらしい。じんわりと熱が伝わってくる。

 

「今は何を読んでるの?」

「ルイス・キャロルの不思議の国のアリスです。たまには童話にも手を出してみようと思いまして」

「……それ、持ち物検査の時に引っかからなかったの?」

「龍園くんに頼んで持ち込ませてもらいました」

 

 ……まあ、本1つで試験結果に関わることは無い、か。意外と強引な手を使うんだなぁ、この子……。

 

「それより、そこでは暑くありませんか?」

「んー、まあちょっと暑いけど我慢できるかな」

「もしよろしければ、もう1つビーチチェアがありますので持ってくることも出来ますが……」

「いやいや、そこまでしなくていいよ。私が勝手に来ただけだしね」

「そう、ですか……」

「それより椎名ちゃんは泳いだりしないの?折角の海なのに」

「私は運動が苦手ですから……」

 

 そう、少し苦笑いをして返す椎名ちゃん。なるほど、思い通りの文学少女……というわけか。なら椎名ちゃんにとって、龍園くんの作戦はまさに天国だろうな。……それにしても、勿体ない。私も海で泳ぎたいけど1人じゃ憚られるし……よし。ここは利用させてもらおう。

 

「椎名ちゃん、一緒に海に入ろうよ。要は泳がなければいいんだよね?」

「それは、そうですけど……」

「なら尚更勿体ないよ!この学園生活の中で海に行ける機会なんて滅多にないし、どうせ椎名ちゃんのことだろうから休日にプールに行く、なんてこともないだろうし」

「確かに、そうですね」

「ということで椎名ちゃん!ほら!」

「わっ、ま、待ってください……あと更衣室は逆側ですっ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___着替え後。

 

「いやー、私の分の着替えもあってよかったよ」

「クク、オールサイズ用意してあるからな。ちいせぇお前にもピッタリのサイズがあっただろ?」

「……失礼だね、ほんと。龍園くんはもう少し女心ってものを理解した方がいいよー?」

「女心の理解だぁ?俺にとっちゃ必要ねぇな」

「げっ、モテない男が言うんだよそういうの」

「あ?」

「あ、あの……赤井さん……」

 

 控えめな椎名ちゃんの声で、私たちの下らない言い争いは収まった。うんうん、私が思ってた通りの美少女だ。流石に完全に肌を晒すのは恥ずかしいようでラッシュガード?だっけ……を着ているけど、それも相まって……って、こんな長々と感想を言ってる場合じゃないか。

 

「よし、椎名ちゃん!早速海へレッツゴー!」

「あ、赤井さん、私泳げませんよ?」

「それならそれで浅いところにいようよ。私は水を浴びることが目的だし、結構できる遊びもあるんじゃない?」

「……確かに、それもそうですね」

 

 と言いつつも少し腰が引けている椎名ちゃん。どうやら濡れること自体に抵抗があるらしい。……よし、ここは先陣を切るしかないか。

 

「椎名ちゃん!」

「は、はいっ……わっ!?」

「へへ、ど〜だ〜。お顔に水がかかっちゃったね〜?」

「やりましたね赤井さん……!」

 

 

 椎名ちゃんも意外と負けず嫌いなようで、しばし水の掛け合いが続いた。人生初めての海は思ったよりも冷たかった。

 






次は多分一之瀬さんち。



夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)

  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 櫛田桔梗
  • 白波千尋
  • 綾小路清隆
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