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___2日目。
ビニールのマットが幸をなしたのか、思ったより悪くない寝覚めだ。他の子達は……まだ寝てるのか。
「まあ無理もないよね。こんな環境だし」
そう言いながら外に出て伸びをする。確か点呼は午前8時だったよね。私は腕時計を確認する。まだ午前5時……猶予は沢山ありそうだ。
「じゃ、ちょっと運動でもしてこようかな」
最低限の荷物を持って、私は森の中を走り出した。
__午前7時30分。
「ただいま〜、いやー楽しかった」
「あんた遅いわよ!どこほっつき歩いてたの!」
「あれ?紙にメモを置いて言ったと思うんだけど」
「誰が“ちょっと出かけてくるね〜”でどこに行くか分かるってんのよ!」
「そりゃ……有栖ちゃんとか」
「坂柳はここにいないでしょ、ったく……。ほんとに奇想天外ちびなんだから」
「ひっどい!!謝るからそのあだ名やめてよ〜」
「あちゃー、朝から揉めてんなー赤井。でも神室ちゃんも中々可哀想なんだぜ?葛城に詰められてさ」
「詰めてはいない。赤井はどこだと聞いた迄だ」
「えー可哀想。葛城くんでっかいし威圧感あるから、見下ろされるだけで怖いよねぇ」
「む……そういうものなのか?」
「いやあんたがどっか行かなきゃ済む話だから」
「だって、こんなに自然が沢山あるんだよ?歩いて見たいと思うのは人間として当然だよ!それに点呼前には戻ってきたじゃん!」
「それは当たり前だっつってんの!」
あれま、こってり怒られちゃった。しかしまあ、有栖ちゃんから命じられたとは言え真澄ちゃんもここまで躍起になる必要ないのに。もっと放任主義かと思ってたよ。
「あの…大丈夫ですか?」
真澄ちゃんのところから少し離れていると、美紀が心配そうに声をかけてきた。
「真澄ちゃんに怒られたこと?大丈夫大丈夫、真澄ちゃんっていつも怒ってるから大したことないよ」
「それはそれで問題なのでは…?」
「まあまあ、気にしない気にしない。それより美紀こそ大丈夫?慣れない生活で体調とか崩してない?」
「はい、何とか…。シャワーもトイレもありますし、寝床も安定しているので、思っていた以上には快適です」
「そっか、よかったよかった。あ、ねえ美紀。これ持っててよ」
「え…?あ、はい、これは……?」
「後で細かいことは伝えるよ。大丈夫、いずれ
そうして点呼が終わり、自由時間。私は出かける準備をする。
「あんた、またどっか行くの?」
「うん、Bクラスの偵察に行こうかなーって。お昼くらいには一旦戻るよ」
「あっそ、勝手にすれば」
「あ、そーだ真澄ちゃん。帰ってきたら一緒に釣りいこーね、約束だよー!!」
「は?いや私は……って早っ!?」
私はある昨日見かけた1点へと一直線へ向かう。龍園くんたちCクラスが拠点としていた浜辺へ向かう途中、折れた大木があった。土に触れた瞬間の歩きやすさ。あれは大勢が踏みならした形跡だろう。
「確かこの辺に……お、あったあった。相変わらず、この先にスポットがありますよーって言ってるような不自然さだよね」
私は木の上から飛び降り、土を確認する。うん、やっぱり踏みならされてる。あとはこの土感を頼りにすれば、Bクラスの拠点にたどり着けそうだ。予想通り、少し歩くとBクラスの活気に溢れた声が聞こえてきた。
…同じ試験なのに、うちとは大違いの仲睦まじさだ。
「やー帆波。元気にやってる?」
「あ、萌ちゃん!やっほー!何とかね、知恵を絞ってってるところだよ」
「それはよかった、帆波には生き残って欲しいからね」
「それはお互い様だよー。って、Aクラスの子たちはそんな心配ないか」
「んー……そんなこともないかな?ほら、こっちは内輪揉めが酷いからさ、Bクラスの団結力が羨ましいよ」
「あっははー、それもそっか。萌ちゃんも大変だねー」
「一之瀬、何をやっている。……赤井か」
穂波と話していると、気になったのか紫髪の男の子がやってきた。……私のこと知ってるみたいだけど、話したことあったっけ?
「えーと……誰だっけ?」
「……神崎隆二だ」
「あ、萌ちゃんひどーい。ほら、掲示板の時にいたでしょ?」
「そうだっけ。ごめん、人の顔と名前覚えるのが苦手でさ……」
「構わない。元々俺は目立つ方でもないからな」
「いやいや、もう覚えたよ!神崎くん神崎くん神崎くん!」
「……そこまでする必要はなかったが。それよりいいのか一之瀬。赤井はAクラスだ。あの時は敵対関係になかったが今は特別試験。不用意に近づけるべきではないんじゃないか」
「うーん…でも、明確な敵意を持って近づいたとは言えないよね?それにAクラスは洞窟にこもってその全容が見えない。だからこそ萌ちゃんと情報共有することで、見えてくることもあるんじゃないかな?」
「それは……」
なるほど。この学校において神崎くんの考えは正しいが、議論では帆波の方が実力は上らしい。帆波は権力もあるだろうし、神崎くんは少々納得が行かなくても従わずを得ない場面もありそうだ。
「ということで、お互い情報交換しない?もちろん、私たちのクラスがどう過ごしているか、どう試験に挑んでいるかを話してからで構わない。Aクラスがどう挑んでるのか、知りたいんだ」
「……いいよ。でも、その話は2人で話したいかな。内緒の話ってことで」
私は人差し指を口に当て、ウインクでアピールをする。神崎くんは何も言う気がないのか元々去るつもりだったのか、足早に去っていった。私と穂波は少し離れのところに移動する。
「ここら辺でいいかな。さて、帆波。情報交換、ってことだったね」
「うん。まずは私たちのクラスのことからだよね」
「あ、ちょっと待って。その条件だけど、少し変えさせてもらってもいいかな?」
「ん?というと?」
「私は君たちのクラスの情報を知る代わりに、Cクラスのリーダーを教える。これでどう?」
どう考えても釣り合わない破格の条件。帆波も想像していなかったようで、驚いた様子を隠そうともしない。
「えっ!?そ、そんな、私たちが提供出来る情報と釣り合わないよ!」
「帆波としては価値が釣り合わないと思うけど、私には帆波に指名してもらうだけで価値があるからね。それに、私が教えるのはあくまで推論。確定での保証はない訳だし、むしろ私の方が得する場合もあるんじゃないかな?」
「……それは嘘、かな。萌ちゃんがそんなことを言うってことは多分、自分の中で確信があるってことなんだよね?もし本当に私たちを惑わすつもりなのであれば、そういう事を言う必要が無いもん」
「どうかな。帆波がそう思うことを見越しての条件かもしれないよ?」
帆波は悩ましい顔で考えた後、「よしっ!」と言ってこちらに顔を向けてきた。
「じゃあ、私たちの条件に一つ加えさせて?私達の物資を、Aクラスに2つ提供する。もちろん、それは萌ちゃんが選んで構わないよ」
「……2つも?それこそ、価値が見合わないんじゃない?」
「ううん、萌ちゃんからの情報なら充分価値があるよ。それに、もし当てたら50CPが貰える。そうなったらお釣りが来るくらいじゃないかな?」
「分かったよ、帆波が納得できるならそれでいこうか」
「……というか薄々思ってたけど、呼び方変わったよね?」
「ん、バレた?やっぱり呼びにくいなーって思って。あんまりあだ名は慣れないみたい」
照れたようにへへ、と笑って返す。帆波もそれで安心したのか、Bクラスの情報提供を始めた。
代わりの条件として私は、“スパイ作戦のことを含めない”Cクラスの状況を踏まえた推察を帆波に話す。そして、今の私の推察を、誰にも話さないことを条件に設定した。
「なるほど、0ポイント作戦…。リタイアしたと見せかけた龍園くんが、私たちのことを監視して情報を集めるんだね。確かに、私達にとってCクラスは戦力外と見なされるから、隙は生まれやすい」
「面白い作戦だと思うよ。ルールの穴を着いた、龍園くんにしかできないやり方だよね」
「確かに、でも龍園くんはリーダーを当てる自信があるってことだよね。凄いなぁ……私たちは無人島でどう生き延びるかで精一杯だよ」
「同感かな。うちのクラスも、今はどう乗り切るかで手一杯って感じ」
「へえ、意外だね。Aクラスの子たちも、苦戦することあるんだ」
「全知全能の神って訳じゃないからね〜。大半はこういうキャンプとかアウトドアが未経験なんじゃないかな?経験したとしても、親に任せきりにしてたから覚えてないとかだと思うな」
「確かに、私たちはまだ高校1年生だもんね」
「……あ!萌ちゃーーーん!!!!」
「ゴフッ」
帆波と話していると、背後から猛烈な勢いで飛びつかれ思わず体勢を崩す。あ、あぶない。受身を取ってなかったらこの抱きついてきた人もろとも怪我するところだったぞ。
「あ、千尋ちゃん。萌ちゃんとは知り合いなの?」
「一之瀬さん!うん、お友達なんだ!」
「そっかぁ、他のクラスにも仲良い子が出来たみたいで良かった。それはそうと、萌ちゃんが潰れちゃうから起きてあげてくれないかな?」
「あ、ご、ごめんね萌ちゃん!!」
「う、うん……大丈夫だよ、白波さん……」
私とこの人、こんなに仲良くなかった気がするんだけど。話したことも2回か3回くらい、しかもどれも他愛もない話だった覚えがある。私がジャージに着いた土を払っていると、帆波が何やら意味深な笑顔で見てくる。
「……何?」
「んー?いやいや、萌ちゃんも千尋ちゃんに懐かれてるんだなーって思って」
「いや、そんなことは無いと思うけど……」
「ねえねえ一之瀬さん、ちょっと萌ちゃん借りてもいいかな?萌ちゃんとお話ししたくて…」
「うん、全然大丈夫だよ。じゃあ私は向こうにお手伝いに行ってくるね!またね、萌ちゃん」
「あ、うん。また後で」
白波さんと二人きりにされる方が余程怖いんだけど、こうなった以上はもう逃げられないだろう。観念して私はその場に座る。
「それで?どうしたのかな、白波さん。私に話したいことって何かな?」
「あ、あのね……萌ちゃんにしか言えないというか、相談できないことがあって」
「もちろん、私でよければ相談に乗らせてもらうよ」
「わ、私ねっ、クラスのリーダーになっちゃったんだけど、どうすればいいかな!?」
……!??!!?今なんて??ん????
クラスの、リーダー?私が驚きのあまり固まっていると、白波さんが言葉を続ける。
「あ、あのね、一之瀬さんが困ってたから咄嗟にリーダーを引き受けちゃったんだけど、でも私こういうのやるの初めてで……!」
「え、ええと。でも、私は他クラスだよ?そんなことを教えちゃっていいのかな」
「で、でも…!こんなこと相談できるの、萌ちゃんしかいなくて……」
今にも泣きそうになる白波さん。まずい、ここは荒波を立てない為にも何とかしなきゃ。私は白波さんの頭を撫でる。
「落ち着いて、白波さん。私のことを信じてくれてありがとう、不安になる気持ちもよく分かるよ。経験がなければ、どう動いていいのかも分からないもんね」
「う、うん……私、どうすればいいかな…!?」
「まずは……そうだね。白波さんがリーダーだと悟られない必要がある。その為にも、クラスメイト達となるべく一緒に、普段通りの生活を心掛けよう。そうすれば、まず白波さんに怪しむ目が行くことはない」
「そ、そっかぁ……やっぱり萌ちゃん、頼りになる!」
そう言って思いっきりハグをされる。なんと言うか、この子に危機感というものはないのだろうか。私が葛城くんにこの情報を流すとも……考えてないことはないだろうけど、意図が不明だ。
「長居するのも悪いし、私はそろそろ行くね。白波さんも頑張って」
「う、うん!……あ!萌ちゃん!」
「ん?まだ何か?」
「そ、その……夏休み、一緒に遊ぼうね!約束だよ!」
「う、うん……じゃあまた、その時に」
……何なんだ?あの人間は。私が唯一苦手なタイプかもしれない。思考が読めない。いや、単純ではあるのだろうが、距離感が異常だ。
しかし計画がズレたな。ここで私が葛城くんに進言するとなると、Bクラスからの信用がなくなりかねない。別に他の人が推察した、ということにしておくのもいいが…もしAクラス以外で協力関係なんて作られてたら、真っ先に私に疑いの目が行くだろう。そうなると、今後Bクラスの情報を得るときに不便になってしまうな。葛城くんに、条件の緩和を提案しておこう。
……まあいい。とにかく、帆波のところに行くとしようか。
「帆波、そろそろお暇させてもらうね」
「うんっ!あ、物資そんなのでいいの?もっと豪華なの持っていっても良かったのに」
「いや、これで十分だよ。ありがとうね。……あ、これ良かったら貰ってよ」
そう言い私は道中で見つけたトウモロコシを帆波に投げる。驚いている穂波を横目に、私は洞窟の方へと歩を進める。私が貰ったのは紐とカッター。……これで手筈は整った。無人島試験は……
私がリタイアすることで、
あと3、4話くらい続いて無人島試験は終わりの予定です。
毎回どこで区切っていいのか、どこら辺まで描写すればいいのか悩みがち…。
夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)
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坂柳有栖
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一之瀬帆波
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綾小路清隆