ここから、萌ちゃんの物語は大きく動き出します。
__無人島試験、後半。
「真澄ちゃん、ヒットヒット!!今引いたら釣れるよ!!」
「うっさい!あんたと違って慣れてないのよこっちは!!」
「あー魚走ってる!!もっと緩急つけて!!!」
「だからうるさいっての!!!!」
「あちゃー、またやってんなー赤井と神室ちゃんは。鬼頭の方はどうだ?網である程度釣れそうか?」
「問題ない。素手でもいける」
「流石だな。おーい、そっちはどう……って、聞くまでもないな」
橋本くんが私のボックスいっぱいの魚を見て肩をすくめる。
「釣り座は選んでるからねー。それにここは釣れやすいし」
「あんた、それ私に対しての嫌味?」
「えー?いやいや、真澄ちゃんは場所が悪いだけだよ、きっと」
「さっきからあんたと同じとこで釣ってるわよね!?」
「俺と交代するか?そろそろ気分転換したいと思ってたとこだし」
「はあ……いい。こいつに舐められてるのもムカつくし、もう少しやるわよ」
そう言って私のことをキッと睨む真澄ちゃん。おかしいなあ、私は親切に釣りの技術を教えてあげてるのに。それに嫌がる真澄ちゃんのために餌をつけてあげてるのは誰だと思ってるんだ、失礼しちゃうよね。……あ、また釣れた。
無人島試験も終盤になり、龍園くんたちとの契約で生活に困ってない私たちは自由を得た。なので私は嫌がる真澄ちゃんとその他一行を強制的に連れて度々釣りに出かけている。山菜や果実もいいけど、たまには魚も食べたくなるよね。
「うんうん、このくらい釣れば食事には困らないんじゃないかな」
「しかしまあ、ここの水源ほんと綺麗だよなぁ。山ってみんなこんなに綺麗なもんなのか?」
「んー……場所によるけど、ここまで綺麗なのは珍しいと思うよ。やっぱり学校の管轄にある以上、安全性は保証されてるんじゃない?」
「やっぱそういうもんかあ」
「……釣れた。釣れたわよチビ!」
「えっ、あの真澄ちゃんが!?!?!!」
「アンタとことん失礼ね!!」
「……あ?これヤバくないか?」
「は?何が?アンタまでバカにするの?」
「いやそうじゃなくて、もうすぐ雨……」
橋本くんがそう言うや否や、雨がパラパラと降り出す。
「やっば、走って戻ろうぜ!」
「風邪ひいたら元も子もないしねー。真澄ちゃん、おぶろうか?」
「バカにすんな!」
バカにしたつもりはなく単に濡れた森の道は危ないよ、ってことだったんだけど……まあいいか。こうして私たちは全速力で洞窟まで走っていった。
「セーーーフっ!いやー、本降りになる前に戻れてよかったよ」
「赤井、少しは手加減しろよな…速すぎるんだよお前……」
「荷物全部持ってあげたんだから細かいこと言わないでよー、ねー鬼頭くん」
「奪われただけだ」
「えーひどい。鬼頭くんまでそう言うの?」
「どうでもいいけど、ちゃんと拭きなさいよ」
そう言って真澄ちゃんからタオルを投げられたので大人しく従っておく。タオルで髪を拭いていると、濡れた私たちを見て戸塚くんがバカにするように煽ってきた。
「おいお前ら、今日は葛城さんが雨だから不用意に動くなって言ってただろ?葛城さんの言うことを聞かないからそうなるんだ」
「つっても、食料が____」
何かを言おうとする橋本くんを手で制し、私は戸塚くんに一歩踏み出す。これはチャンスだ。私はわざと、笑顔で対応する。
「戸塚くん、君は葛城くんを信用してるみたいだけど、本当に彼って信用できるのかな?」
「どういう意味だよ」
「底の知れないCクラスと無計画に契約なんかして、本当に意味があるのかってことだよ。分からない?」
「あ?俺らは270sポイント節約できる上、他クラスのリーダーを当てたらもっとポイントを貰える。葛城さんの作戦に穴はないんだよ!」
「でも、一番最初に戸塚くんが勝手にスポット占有しちゃったし。その時にリーダーを見られてれば、君たちの想定よりポイントは少なくなるよ?それに龍園くんと葛城くんが当ててくれる保証もないよね」
「お前、葛城さんをバカにしてんのか!」
激昂した戸塚くんが私の胸ぐらを掴んでくる。単細胞は扱いやすくて助かるね。少し言葉遊びをしただけで簡単に感情を覗かせてくれる。
「ねえ、戸塚くん。今両手で掴んでるけど、本当にそれでいいの?私からのカウンターへの準備は大丈夫?掴み方は?手首はこの使い方で本当にいいのかな?本当に君は、優位を取れてる?」
「な、なんだよお前……!」
「やだなぁ、私は戸塚くんにハンデをあげてるんだよ。私の一挙手一投足をよーく観察してなくて、本当に大丈夫?」
私は笑顔のまま、少し目で圧をかける。戸塚くんは蛇に睨まれた蛙のように固まったあと、私を投げ飛ばした。
「っ、あんまり調子乗ってんじゃねえぞ赤井!」
「いったいなぁ戸塚くん……立派な暴行罪だよ」
「何をやっている弥彦」
「葛城さん!赤井の奴が葛城さんのことバカにしてて!」
「だからと言って手を上げる理由にはならないだろう。周りを見てみろ。お前の行動で、皆に必要のない不安を煽らせているのが分からないのか」
「す、すみません……」
倒れた私を一瞥したあと、2人は奥の方へ戻って行った。それを見たクラスメイト(主に坂柳派閥と思われる人達)が、私の元に駆け寄ってくる。
「赤井さん、大丈夫?」
「もえぴー、無事か!?」
「うん、大丈夫大丈夫。でもちょっと足を痛めちゃったかな……」
「戸塚くんまじサイテー。後で坂柳さんに言っておこうか?」
「あーいや、大丈夫だよ。私も戸塚くんの気に障ることを言っちゃったかもしれないし」
「でも……」
「ごめん、少し頭冷やしてくるね」
「え?でも、外は雨だよ!?」
「ごめんね、今は雨に打たれたい気分なんだ」
そう折り合いをつけ、私は足を引きずるようにしながら強引に外に出ることに成功する。本当はこれっぽっちも足なんか痛めてないが、ここで重要なのはそう見せること。
「……さて。Dクラスがどこで過ごしてるかは分からないけど、まあ気長に探してくか〜」
スポットに出来そうなところで尚且つ食料や水源に困らないところをしらみ潰ししていけば早く見つかりそうだ。そういえば、釣りをした時の川が大分下まで繋がってたっけ。
美紀の実力がどれ程のものか、私の期待通りの成果を出してくれるかは未知数だが…失敗したらしたで次を考えればいい。今私が考えるべきことは、私が希望している人物に会えるかどうかだ。
「っと……お、噂をすればなんとやら、かな?」
雨の中ではあるが、下に食料探しに出かけている少人数のグループを見つける。私が探していた人物もいるから、正にDクラスのグループで間違いないだろう。運は悪い方だと自負していたが、今日は天が味方してくれたらしい。
ここの崖は……うん、いい感じにぬかるんでるね。私は崖近くの木に、帆波から貰った紐を巻き付ける。あえて脆弱なものを選んでおいた。理由は簡単。
私が、
「おお、意外といい景色。逆さまの景色も悪くないねー……あ、血昇ってきた…」
私は木の幹に片足を括り付けると、もう片方はいい感じに捻れるよう自由にしておく。後は、あの子たちが通るギリギリを狙ってカッターを……。
ブチッ!!!!!!!
微かな音と共に、私の身体は自由落下していた。
____Dクラス、食料確保班。(side:櫛田)
雨の中、私達は平田くんに頼まれて食べられるものを探しに来ていた。何でも思ったより消費が早くて、明日の分が追加で必要らしい。はぁ、なんで私が……と内心で毒を吐きつつ、先程から間抜け面で私のことを見つめている男子達に笑顔を振りまく。
「池くん、目利きが良くて本当に助かるよ〜!」
「そ、そう?まあ小さい時からこういうのしてたし、櫛田ちゃんが見つけてくれるやつがちゃんと食べれるものだからってのもあるよ!」
「意外と食料も集まってきたんじゃねえか?おい寛治、重いもんは俺が持つから預けろよ」
「いや、健だけに持たせられないって!俺にもカッコつけさせろよ!」
「は?いや、お前に任せる方が不安だろ。俺の方が量持てるだろどう考えても」
「あはは、でも2人が来てくれてほんと助かったよ。私だけじゃこんなに持ちきれなかったし、それに……」
私が言葉を紡ごうとすると、頭上の土が崩れてくる。
ドンッ!!!!!!!
大きすぎる嫌な音。目の前に倒れてきた、小柄な人の影。現実が受け入れられず、私たちは数秒固まる。
「え、は……?今、上から落ちてきたか?」
「え、いや、いやいやいや!!まさか、え、これ人!?」
見上げると、高さのある崖。雨でぬかるんだ拍子に足を滑らせたのか、途中から土が崩れているのが見える。私は思わず、土だらけのその子の近くに駆け出した。
「ねぇ、君!大丈夫!?意識はある!?!?怪我は!?!?!」
「……あ、っつ…私、生きてる…………?」
「良かった、意識はあるんだね!歩けるかな?身体は?痛む?どこのクラスの_____」
その時、落ちてきた子が初めて顔を上げる。その顔を見て、私は息を飲んだ。否、呼吸をすることも忘れていたかもしれない。
見た目は変わってる。どこか愛嬌のある、可愛らしい目をしている。でも、間違いない。
だってソイツは______
____私がずっと探していた、
夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)
-
坂柳有栖
-
神室真澄
-
一之瀬帆波
-
椎名ひより
-
櫛田桔梗
-
白波千尋
-
綾小路清隆