ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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本文が、かなり長くなってしまった…。やっぱり試験の説明パートは長くなりがちですね。
各キャラのセリフが多いため読みずらいところもあると思いますが、ご了承ください(*_ _)









船上試験
革命


 

 

 

 

無人島試験から早3日。

 最初こそ試験が続いているのではないか、また別の試験があるのでないかと警戒していたAクラスの生徒たちも、今ではすっかり船上での娯楽を楽しんでいた。

 当の私はというと……。

 

 

 「……っが、頭が、頭が割れる……」

 「だ、大丈夫ですか……!?」

 「まるで二日酔いのサラリーマンですね赤井萌。普段のイキイキとした貴女は無人島で遭難中ですか?」

 「いや、心配しなさいよ……」

 

 

 部屋の中で絶賛船酔いと格闘中だった。

 私のルームメイトは他の子から見事に感知されていなかった山村美紀、そしてこれまた見事に余っていた神室真澄。そして、今私のことを罵倒してきた人物。

 

 

 「……森下藍ちゃん、そんな間近で何してるの?」

 「赤井萌のつむじの形を観察していました。右巻きですね。少なくとも将来ハゲになる心配は無さそうです」

 「……それはどうも。森下藍ちゃんの形も見てみようか?」

 「いえ、結構です。私の家系にハゲはいませんので」

 

 

 お返しのつもりで本名を呼ぶも、何もダメージはないらしい。森下藍。私はあんまり知らないが、普段から変なことをしていて皆からは不思議ちゃんだと言われている(らしい)。部屋決めの時に余っていたので、こちらも誘ったのだ。つまり私たちはチーム溢れ物である。

 

 

「みんなは娯楽、楽しみに行かなくていいの?こんな豪勢な船に乗る機会なんて滅多にないと思うけど」

「私はパス。今は寝てたいの」

「わ、私も……外は人がいっぱいいますから、疲れそうです……」

「私は外の娯楽より今の貴女を観察している方が有意義ですから」

 

 

 ……溢れ物になる理由がよく分かる。というか森下藍ちゃんが一番タチ悪いよね?有栖ちゃんに言って説教してもらおう、絶対。私がベッドとお友達になっていると、キーンという高い音と共に、みんなの携帯が一斉に鳴った。これは確か…学校からの指示とか、行事の変更とかがあった時に送られてくるメールってやつだっけ?一番最初に有栖ちゃんが教えてくれた気がする…。

 

 

 『生徒の皆さんにご連絡いたします。先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。また、メールが届いていない場合には、お手数ですがお近くの教員まで申し出てください。非常に重要な内容となっておりますので、確認漏れのないようお願いいたします。繰り返します____』

 

 

 船全体のアナウンスが流れる。また特別試験か…。行きの船では無人島か船内かで何かあるだろうな、とは思っていたけど、まさかその両方とは。

 

 

「ねえ真澄ちゃん、メールってどうやって開くの……」

「はあ?あんた、この夏休みまでどうやって生きてきたわけ?」

「だって、連絡先の交換と電話が出来れば十分だと思って……メールなんて1回しかしたことないよ……」

「……あのね。この学校で端末を使えないって、致命的でしょ。……ほら、これ」

 

 

 真澄ちゃんにメールを開いてもらい、見る。

『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合して下さい。10分以上の遅刻をした者にはペナルティを科す場合があります。本日18時までに2階201号室に集合して下さい。所要時間は20分ほどですので、お手洗いなどを済ませた上、携帯をマナーモードか電源をオフにしてお越し下さい』

 

 

「これ、皆のにも同じ文なの?ちょっと見せてー」

 

 

 私がみんなの携帯を覗き込むと、基本となる文章は同じだったが、皆指定された場所と時間が異なっている。

 

 

「特別試験って何だろーね?このメール文には説明とか載ってないし…生徒が隔離されてるのも気になる」

「行ってみればわかるんじゃないの?無人島ではクラス協力って感じだったけど、この試験は案外個人戦だったりするのかもね」

「あー、確かに。それか少人数のグループ制っていうのもありそうだね。……ま、今の時点ではよく分からないし、真澄ちゃんの言う通り行ってからが本番って感じかな」

 

 

 私は外に出ると、中間テストの時に連絡先を交換した男に電話をかける。

 

 

 「あ、もしもーし。葛城くん?今ちょっといいかな。そうそう、特別試験のことで____皆に学校からの呼び出しが終わったら、どこかに集合するように伝えてくれないかな?」

 

 

 

 この試験から、試してみようか。Aクラスの新体制を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___18時。

 指定の部屋につきノックをすると、中から声がする。

 

 

「はぁ〜い、入って〜」

 

 

 ……げ。この間延びした声と緊張感のない話し方。

 

 

 

「あ、残りの1人は赤井さんだったのねー!ほら、座って座って〜!それにしても、みんな集合時間までに来れて偉い!」

 「……まあ、遅れたらペナルティーとも言われてますから。それで星之宮先生。試験についての説明をお聞きしたいのですが」

 

 

 待ちきれない、というように町田くんが口を開く。

 

 

「もう、真面目なんだから。じゃあ確認ね〜。君たちはAクラスの赤井さん、町田くん、森重くんで間違いないかな〜?」

「はい、全員合ってます」

「ではこれより、特別試験の説明を行いまーす。質問は後でまとめて受け付けるから、まずは聞いちゃってねー」

 

 

 星之宮さんが手元の資料を持ちながら姿勢を正す。質問は後で受け付けるらしいし、まずは黙って頭の中に記憶することに専念しよう。

 

 

「今回の特別試験では、1年生の全員が干支になぞらえた12のグループに分けられて、そのグループ内で試験を行うの。あ、干支って分かる?あの十二支の、子・丑・寅・卯・辰……」

「先生、それは分かります。続けてください」

「もう、折角ボケたのに。町田くんは真面目だなあ。……コホン。この試験の目的は、各自のシンキング能力を問うものになってまーす」

 

 『シンキング』。つまり、物事を論理的、または批判的に分析し、本質的な課題解決に向けて考え抜く力。

 

 

「社会人に求められる基礎力は、大きく分けて3つ。アクション、シンキング、チームワーク。学校側はその3つが揃って初めて大人になるって考えてるのね〜。ほら、無人島の試験だとチームワークが大事になってきたでしょ?でも今回はこの3つのうちのシンキング、つまり現状を分析して課題を見抜いたり、問題解決に向けた力や準備力が必要になってくるの。そこで、今回の試験では12のグループに分けて試験を行うってなったわけね。……ここまでで何か質問はある?」

 

 

 沈黙の中ソワソワするように星之宮さんが声をかけると、町田くんが手を挙げる。

 

 

「はい、そこの町田くん!」

「1年生全員を12グループに分ける、とのことでしたが、俺達3人は同じグループになると言うことでしょうか。その場合、グループ全体では他のクラスと合同ということに?」

「そうそう、大正解!はなまるあげちゃう!君たち3人は同じグループのAクラス代表として選出された子達ね〜。今この時間、『君たちと同じグループになる』他のクラスの子達も同様に説明を受けてるはずよ〜」

「つまり、12グループで何かを競い合う?いや、同じグループ内の別クラスと敵になる可能性もあるか……」

「私は後者の可能性を推すかな、町田くん。前者だったらいつもみたいにクラス単位でやってればいい話だからね。そこら辺もこの後、星之宮先生からお話があるんじゃないかな?」

 

 

 そう星之宮さんに視線を向けると、待ってましたと言わんばかりに資料に目を通し口を開く。

 

 

「じゃあ質問は終わったみたいだから、続きの説明に入るわね。君たちが配属される干支のグループは『卯』、つまり兎グループね。そしてこれが、君たちのグループに配属されてる他のクラスの子たちのリストでーすっ」

 

 

 そう言ってハガキサイズの紙を渡される。退却時に返却するようにも言われたので、ここで覚えておいた方が良さそうだ。

 

 Aクラス ・ 赤井萌 町田浩二 森重卓郎

 Bクラス ・ 一之瀬帆波 浜口哲也 別府良太

 Cクラス ・ 西野武子 真鍋志保 藪菜々美 山下沙希

 Dクラス ・ 綾小路清隆 軽井沢恵 外村秀雄 幸村輝彦

 

 各クラスから均等に選出されていると思っていたが、そうでもないみたいだ。まあそれもそうか。各クラス40人、全クラスで160人。均等に割り切れない分、どこかのクラスの人数が増えることもある。しかし清隆と一緒なのか……本当に運が悪い。

 

 

「今回の試験では、君たちはAクラスとしてじゃなくって、兎グループとして行動してもらいまーすっ!試験の合否はグループ毎に設定されるから、クラスの枠組みは無視しちゃってね〜。じゃあ今から、特別試験の本格的な説明をしちゃいまーす」

 

 

 そう言って3人分プリントを渡される。これも持ち出しは禁止らしい。こういう所、徹底してるな。

 

 

「各グループの結果は4通りね。このプリントに記されてるから、よーく読んでおいてね〜」

 

 

 プリントに記載されている基本ルールの概要は以下の通り。

『夏季グループ別特別試験』

 〇試験開始当日午前8時に一斉メールを送る。『優待者』に選ばれた者には同時にその事実を伝える。

 〇試験の日程は明日から4日後の午後9時まで(1日の完全自由日を挟む)。

 〇1日に2度、グループだけで所定の時間と部屋に集まり1時間の話し合いを行うこと。

 〇話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねるものとする。

 〇試験の解答は試験終了後、午後9時30分〜午後10時までの間のみ優待者が誰であったかの回答を受け付ける。なお、解答は1人1回までとする。

 〇解答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。

 〇『優待者』にはメールにて答えを送る権利がない。

 〇自身が配属された干支グループ以外はの解答は全て無効とする。

 〇試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。

 

 そしてここからは結果の例だ。

 〇結果1・グループ内で優待者及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員にプライベートポイントを支給する。(優待者の所属するクラスメイトもそれぞれ同様のポイントを得る)

 〇結果2・優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合、優待者には50万プライベートポイントを支給する。

 

 

 結果1、結果2は試験終了後の優待者の正誤により、プライベートポイントが支給されるというもの。これだけであるなら、自分が優待者であることを明かすだけの簡単な試験に思えるが……。

 

 

 

「更に更に!残り2つの結果はプリントの裏に書いてありまーす!ここまで2つの説明は理解したかな?」

「町田くん、森重くん、分かった?」

「ああ、問題ない」

「俺も……多分大丈夫だ」

「2人とも良さそうなので、次の説明にいっちゃってください」

「はーいっ。前2つの結果は試験終了まで待つ形だったけど、いち早く優待者を暴くことで第3、第4の結果になるわよ〜」

 

 〇結果3・優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合。答えた生徒の所属クラスはクラスポイントを50ポイント得ると同時に、正解者にプライベートポイントを50万ポイント支給する。また優待者を見抜かれたクラスは逆にマイナス50クラスポイントのペナルティを受ける。及びこの時点でグループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが正解した場合、答えを無効とし試験は続行となる。

 〇結果4・優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合。答えを間違えた生徒が所属するクラスはクラスポイントを50ポイント失うペナルティを受け、優待者はプライベートポイントを50万ポイント得ると同時にに優待者の所属クラスはクラスポイントを50得る。答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、答えを無効とし受け付けない。

 

 

「以上がこの特別試験の説明になるわ。この2つの結果はさっきの2つの結果とまた違うから裏面に記載したけど……あ、禁止事項もそこに書いてあるからよーく読んでおいてね!集まる時間は午後1時と午後8時、指示された時間に必ず皆で向かうこと!」

「それ以外は自由時間、ということですか?」

「そうね〜。あ、でも初顔合わせの時は室内で自己紹介を行わなきゃダメなのと、試験時間内の退室は認められてないの。事前にトイレとかは行っといてね。1時間お話したら、部屋に残るも退室するも自由だから安心して〜」

 

 

 基本的に生徒の自主性に任せる、ということか。……ふむ。私がこの試験で使える手段は、優待者であるか否かで分かれるとして…後はどうやって彼に交渉を持ちかけるか、だな。説明が終わった気配を感じ、私は席を立ち部屋を出る。

 

 

「おい、赤井」

「ん?どうしたの、町田くん」

「葛城さんから、学校側からの呼び出しが終わった後に集まるよう、赤井から連絡があったと言われた。何を企んでいる」

「企んでいるだなんて酷いなあ。私は私で、クラスのために動くつもりだよ」

「また葛城さんを嵌めようとしているのか?」

「逆だよ、逆。葛城くんを助けるために行動するんだよ。ま、詳しいことは集まったら話すよ。じゃあまた会おうね」

 

 

 手を振って町田くんに別れを告げる。

 私はこの試験、クラス単位で勝ちを狙いに行くつもりはない。この試験はあくまで「新体制」を定着させるための、最初の一歩に過ぎない。そのためにまずは…葛城くんを救いに行こうか。龍園くんの魔の手から。

 

 

 

 

 

 

 

 ___22時。

 全員の試験説明が終わったタイミングで、私はAクラスの面々に1箇所に集まってもらった。私は壇上に上がり、皆の視線を一斉に浴びる。

 

 

「皆、遅い時間にも関わらず集まってくれてありがとう。今日は特別試験のことと、あと1つ大事なことを話し合いたいと思ってるんだ」

「……赤井がか?今回の特別試験は葛城さんが仕切るんじゃないのか。坂柳はいないだろ」

「正にその事だよ。今クラスは葛城くんの派閥と有栖ちゃんの派閥に分かれてる。それは言うまでもなくみんなが理解してるよね。そして、その発端が2人の両極端な考え方なことも」

 

 

 保守派で堅実な葛城くんと、革新派で好戦的な有栖ちゃん。2人は高いポテンシャルを持っているものの、相容れない思想から対立。互いの魅力に惹かれあって、クラスメイトは派閥という概念に落ち着いた。

 

 

「でも、考えてみてほしい。この学校はクラス単位で対立することが多いことは、これまでの特別試験やクラス間ポイントの争奪で理解できたよね。いつまでもクラスで対立していられない」

「そうは言っても、もえぴー。そのリーダーが決まんないから対立してるんじゃないか?2人の考え方も真逆だし……」

「そうだね。でもそれは、2人に歩み寄りの姿勢が…いや、訂正するよ。最初こそ葛城くんは食い下がってたものの、有栖ちゃんが考えを変えずに対立という状況になってしまった。でも、この学校の特質から考えると、葛城くんの考え方では甘いところがあるのも事実なんだ」

「……どういうことだ、赤井。坂柳のように、誰彼構わず攻撃しろということか?」

「違うよ葛城くん。確かに堅実なのはいい事だよ。リスクを減らせるし、周りからの信用も勝ち取れる。1回1回の報酬こそ少なくなれど、塵も積もれば山となるで総合的に見たらメリットとなる場面も多いだろうね。でも、それはあくまで『普通』の話。この学校における常識とは違う。龍園くんたちのように、いつ他クラスが攻撃をしかけてくるかも分からない。無人島での特別試験のように、意図しない方向からの攻撃があるかもしれない。その際に、葛城くんの堅実な考えだと隙をつかれやすいんだ」

 

 

 葛城くんは黙る。きっと龍園くんや堀北たちにやられたことで思うことがあるのだろう。

 

 

「……でも、2人のリーダーの素質が異なることも理解できる。有栖ちゃんの考え方はこの学校に沿っているとも言えるし、その圧倒的な知性で他クラスを凌駕する戦略や対策を思いつくだろうね。ただし、葛城くんのような人と寄り添う力は皆無。有栖ちゃん派閥の皆、この夏休みまでの間、有栖ちゃんの意見に対抗したり、有栖ちゃんに相談したことが1回でもあったかな?」

 

 

 有栖ちゃん派閥のみんなは顔を見合せ、そして横に振る。それもそうだろう。

 有栖ちゃんの魅力は、その圧倒的な知性と頭脳、そして戦略と学校の方針のマッチ。

 対する葛城くんの魅力は、卒のないスペックの高さと『相談出来るリーダー』としての安心感や漢気、そして信頼の厚さ。

 同じ信頼と言っても、有栖ちゃんと葛城くんではベクトルが違う、と言えばいいだろうか。

 

 

「そこで、私は考えたんだ。2つの派閥を1つにして、Aクラスとしての新体制を作る。基本的な戦略は有栖ちゃんの考え方に沿うけど、皆にも意見を求めるし、相談も請け負う。仮の司令塔として有栖ちゃんを置くだけで、実質的な発言権は皆にあるものとする。提案するも良し、主張するも良し。元々皆はポテンシャルが高いから、君達の力が必要になることだって大いにある。だからこそ今、対立していた派閥をAクラスとして、1つにまとめる時じゃないかな?Aクラスの、利益のためにも」

「……Aクラスのためになるというなら、俺は賛同してもいいと考えている」

「か、葛城さん!?坂柳に引導を渡すんですか!?!?」

「赤井が言っていただろう。引導を渡すのではなく、皆が引き継ぐのだ。……だが赤井。言葉では何とでも言える。そこまで言うからには、坂柳を納得させられると考えていいのだな?」

「それについては……てでーん!!この端末を見てください!!……あれ?有栖ちゃん、見えてる?」

 『……貴女が先程からグルグルと回すおかげで、私は酔いが回りそうですよ』

「わー!ごめんごめん!えっと、こうしたら皆に見えるかな?」

 

 

 私は自分の学生証端末を、皆の方に向ける。誰もが驚いた様子で私の端末に釘付けとなった。

 そこには“ビデオ通話で繋がった状態の有栖ちゃん”が、会議に参加していたのだから。

 

 

「……坂柳。聞いていたのか」

『ええ、萌さんの失礼な発言もたっぷりと』

「あははー、でも事実でしょ?有栖ちゃんは派閥の皆に寄り添えてないし、そこは有栖ちゃんになくて葛城くんにある部分だから」

 「坂柳。赤井はこう言っているが、お前はどう考えているんだ。他者を寄せ付けない、一定の距離を保っているお前が、この条件を呑むとは思えない」

『ええ、私も最初はそう考えていましたが……あまりに熱烈なアプローチをされたものですから。お約束致しましょう。Aクラスのために、葛城くんと、そして皆さんと、手を取っていくと。…最初から皆さんの期待に添えられるかは答えかねますが』

「と、いうことで!有栖ちゃんからは了承を得てるよ!後は葛城くんがどう判断するかだね!」

 

 

 実質的なトップを有栖ちゃんに置き、他クラスにアピールする。だがその実は、葛城くんや私を筆頭に、クラスメイトからの意見や相談を受け『Aクラスの民意』としてこれまで以上に固めていく戦略。もちろんこれまで派閥として対立してきた人達にとっては酷な提案でもあるだろうけど、リーダーが納得してくれれば従いはするだろう。

 

 

「……分かった。坂柳がそこまで言うなら、俺も手を打とう。しかし、こちらの意見を聞いてくれると踏んでいいのだな?」

『ええ。書面に残しても構いませんよ』

「遠慮しておこう。本当に仲間となるのなら、疑いたくはないからな」

「よしよし、Aクラスの新体制としてこれから頑張っていこー!おー!!」

 

 

そう言い私が拳をあげると、他のクラスメイトから次々と質問が飛んでくる。

 

 

「待ってくれ。Aクラスの新体制……っていうのはまあ、何となく理解できた。だけど、今はなんでお前が指揮を取ってるんだ赤井。それに特別試験について、っていうのは何なんだよ」

「そうだよもえぴー。私たちはどう動けばいいの?」

「今回は私が作戦を提案させてもらうから、私主導で話を進めさせてもらってるよ。今回の試験、葛城くんならどう動く?」

「……自分のクラスに優待者がいた場合、優待者が割れるのが最も危惧すべき状態だろう。俺であれば、他クラスと話し合いを一切持たない沈黙を貫くことで、優待者を守るべきだと判断する」

「うんうん、じゃあ有栖ちゃんはー?」

『そうですね、私は今回の試験内容を少し耳にした程度ですが…。今回の試験では他クラスの優待者を当てることで多くのクラスポイント、プライベートポイントを共に得ることが出来ます。心理戦、話術。それらを駆使して優待者を炙り出すことが最優先でしょうね』

「あははー、やっぱり割れるよね。でも、今回はそのどっちも目指さない。……いや、ある意味ではどっちもやる、という方が正しいかな?」

「どういう意味だ。何が言いたい」

「今回の試験で、私はクラスポイントを狙うつもりは無いけど、クラス単位でのプラスは狙うつもりでいる。その為に、葛城くんが無人島試験で結んだ契約を無効にするよう、龍園くんたちCクラスに働きかけるよ」

「だが、まだ優待者は分かっていないだろう」

「うん。だから明日の朝、Aクラスの優待者は私と葛城くん、そして有栖ちゃんがいるところでその正体を明かして欲しいんだ。ああ、口頭だと盗み聞きの恐れもあるから……私たち3人が集合しているところで、メモで教えて欲しいかな」

「……なるほど。そこから優待者の法則性を見出すという訳か」

「うん。それを材料に龍園くんと交渉してみるよ。皆に危ない綱渡りはさせないから安心して。……あ、葛城くん。後で龍園くんの連絡先を教えて貰えないかな?」

「それは構わないが……本来は俺の後始末だろう。俺がやるべきだ」

「ううん、私の独断で行ってるっていう体にするよ。その方が、他のクラスに今の状況を悟られにくいでしょ?今他クラスはAクラスの状況を『派閥間の対立状態にある』と誰もが考えている。それをこっちが利用するんだ」

『……なるほど。龍園くんと裏で契約をしながら、表向きには葛城くんの指示に従っているように演じるのですか。中々面白いことを考えつきますね』

 

 

 ふふ、と面白そうに笑う有栖ちゃん。

 そう、これは「勘違い」を逆手に取る作戦だ。その作戦を成功させる為にも、Aクラス皆の協力が必要不可欠。だからこの特別試験は大切な“1歩目”なのだ。

 

 

 

「この試験、もしかしたらクラスポイントはマイナスになるかもしれない。でも、優待者の子には損をさせないから安心して。とりあえず皆は、葛城くんの言った『沈黙作戦』を実行してくれればいい。この試験は、今後のAクラスのための、大切な試験となる。……みんな、私達に着いてきてくれるかな?」

 

 

 

 私が語りかけると、リーダー同士が手を取りあった現状に興奮しているのか、はたまた言葉の節々を感じ取って熱を帯びたのか、「うおおおおおおお!!!」と歓声を上げるクラスメイト達。

 恐怖統制も、対立も、必要ない。

 私の確たる青春のために、坂柳も葛城も、私のための駒となるのだ。

 

 

 

 






▼ えーくらす が だんけつ した!
▼ もえ は りゅうえんかける の れんらくさき を てにいれた!
▼ もえ は えーくらす の たいはん の れんらくさき を てにいれた !



Q.もえぴーって呼んでる人は基本的に誰なの?
A.坂柳派閥の人達。坂柳派閥の人達は最初の作戦会議で萌が同席してたから、萌のことを仲間だと思ってるよ!

Q.もえぴーは葛城派閥と仲が悪いの?
A.完全に仲が悪い訳じゃなくて、人によっては普通に遊びに行ったり話したりするよ。でも葛城くんのことを厚く慕ってる人達からは、無人島の一件であんまり良くは思われてないみたいだね!


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