ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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感想などは見返していつも励みにさせてもらってます!(返信が出来ないものもあって申し訳ないです……)
これからもマイペースに執筆していきますので、どうか読んでくださると嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)







賽を投げようか

 

 

 

 

___翌朝8時。

 寸分の狂いなく携帯が鳴り、メールが届く。

 『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした。グループの一人として自覚を持って行動し試験に挑んで下さい。本日午後1時より試験を開始いたします。本試験は本日より3日間行われます。兎グループの方は2階兎部屋に集合して下さい』

 

「こっちは優待者じゃないかー。葛城くんは?」

「俺も優待者ではないな。となると、俺達以外の誰か3人がAクラスの優待者になっているということになる」

「学校側は公平性を重視してるからねー。12グループを4クラスで割ると、1クラスにつき優待者は3人か」

 

 

 そして程なくして、Aクラスの優待者に選ばれたであろうメンツが出揃った。

 子(鼠)グループ、石田優介くん。酉(鳥)グループ、元土肥千佳子ちゃん。亥(猪)グループ、森下藍ちゃん。この子達以外にも、Aクラスの皆には事前説明の際にメモしていたであろう、自分のいるグループのメンバーも聞かせてもらった。

 

 

『……なるほど。単純明快ですね。捻りがいがありません』

「坂柳、もう理解したのか」

『ええ、萌さんも推察できたのでは?』

「うん、なんとなくはね。これは干支の動物の順番と、割り振られた生徒たちの名字が鍵になってるかな。例えば子(鼠)グループは干支で言う1番目。そしてこのグループの名字を『五十音順』で並べた時、石田くんが1番目にくるよね。だから石田くんが優待者に選ばれた。元土肥ちゃんと森下ちゃんも同じ理由で当てはめることができるよ」

「しかし、偶然ということもある。Aクラスの情報だけで判断していいものか……」

「それについてはこっちに“秘策”があるから安心してよ。じゃあ私は、龍園くんとお話するための時間について連絡してくるね」

『萌さん、くれぐれも足をすくわれないようにしてくださいね?貴女が龍園くんにやられるとは思いませんが、私の役目を奪われては困りますから』

「おー、怖い怖い。電話切っちゃうよ有栖ちゃん」

『ええ、構いませんよ。それでは、ご健闘を期待しています』

「赤井、お前に任せてしまってすまない。特別試験中の皆の態度については、俺に一任してもらっていいのだな?」

「うん、葛城くんが本来取るであろう戦い方をみんなに共有してきてよ。じゃ、行ってくるねー」

 

 

 そういい、私は部屋を出た後龍園くん……ではなく櫛田に電話をかける。

 

 

「もしもし、櫛田ですか?ええ、少し頼みたいことがありまして______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___正午。

 

「クク、ランチの呼び出しにしては随分と狭っ苦しい場所だなぁ。そんなに俺と一緒になりたかったのか?赤井」

「そんなところかなー。君とはもう一度お話したいと思ってたからね」

 

 

 護衛的な役をしているのか、アルベルトくんを連れてカラオケの個室にやってきた龍園くん。もしかして私、力でねじ伏せられちゃうのかな?

 

 

「で?俺に話ってのは何だよ。ボロクソに負けたくないから命乞いをしようってのか?」

「君の冗談に付き合ってもいいんだけど…無駄なことは嫌いだから単刀直入に言うね。龍園くん、私が君を…いや、君達のクラスを勝ちに導いてあげるって言ったらのんでくれるかな?」

「ハッ、口では何とでも言えるだろ。俺は今回Aクラスと組むつもりはねぇ。むしろお前達を潰すつもりでいるのさ」

「前回の無人島試験で、葛城くんが勝手に結んだ契約のことは覚えてるかな?」

「ああ、それがどうした」

「アレは確かに契約として互いの了承を得た。でも、契約の内容が確実に履行されたとは言えないよね?私達が毎月2万ppt(プライベートポイント)を渡す条件は『正確な』BクラスとDクラスのリーダーの情報提供だった。でも龍園くんは、結果的にポイントを得ることが出来なかった。これは何より、クラスのリーダーを間違えたことの証左じゃないかな?」

 

 

 笑みを浮かべていた龍園くんが、真顔になる。

 そう、この契約は端から成立していないのだ。彼がDクラスのリーダーを間違え、その誤った情報を葛城くんに提供した。この時点で契約は『破綻』している。

 つまり、私達がこの契約に応じる必要はない。

 

 

「……それで?その無人島での契約を破棄しろって言いたいのか?」

「勿論、何もなしにとは言わないよ。君がこの条件を突きつけたってことは、多額のプライベートポイントを欲しているって事が容易に理解できるからね。だから、ここからは“交渉”の時間だよ」

 

 

 私は机に両手を置き、龍園くんを真っ向から見つめあげる。『逃さない』、そんな視線を送りながら。

 

 

「私たちAクラスと、君達Cクラス、そして私が個人的に持っているDクラスの優待者の情報を合わせて、優待者の法則性を確実に炙り出す。そして無人島試験で結んだAクラスとCクラスの契約、これを無効にしてもらう。その上で、今回の試験では『結果3』を駆使してCクラスに必ず“200CP”を得られるような環境を保証するよ。それなら、私達との契約が無効になっても毎月2万プライベートポイントが入ってくるでしょ?更に、Cクラスの優待者がいるグループでは絶対にAクラスのメンツは君達の指名をしない。『結果2』を追い求める形だね。どうかな?悪い契約ではないと思うんだけど」

「……クク、ハハハ!面白ぇ。葛城の指図か?」

「ううん、私の独断だよ。葛城くんには思いつきもしないだろうね」

「1つ追加しろ。結果3で指名する優待者のうち3人はAクラスのメンツだ。残りはDクラス、あいつらを狙う」

「中々君も抜け目がないね。いいよ、その条件でのもう。はい、これは書面に残すための契約書だよ」

「ああ。しかし、お前も大胆なことをするな。葛城を潰す絶好の機会にこんな事をして、坂柳が怒るんじゃないのか?ククク」

「まあその時はその時だねー。将来的に見たら、君の契約は厄介極まりないからさ」

「それで、優待者の指名はどうする。俺にも事情があるからな。この試験を秒で終わらすことはしたくないのさ」

「うーん……そうだね。じゃあ試験最終日の終了目前にしようか。2回目のグループディスカッション時、もしくは終わった後。その4つのグループの優待者指名のタイミングは龍園くんに任せるよ」

「しかしお前も食えねぇ女だな。無人島試験の時といい、今回といい。俺にはどうにも、葛城よりお前の方が余程魅力的に見えるぜ」

「褒め言葉をどうもありがとう。あぁ、そうだ。これは優待者のリストと、優待者の法則性を書いた紙だよ」

「……メールで送った方が早いだろ」

「何を言うの龍園くん!私がフリック入力?なんてしたら、1つのメールを作るのに5時間はかかるんだから!!私の機械音痴を舐めてもらったら困るよ!!!」

「ああ?知らねえよ、原始人かてめぇは」

「それ、うちのクラスのツン…女の子にも言われたよ。龍園くんが狙うなら……子(鼠)グループ、午(馬)グループ、酉(鳥)グループ、亥(猪)グループの4つになるかな?兎と龍にもDクラスの優待者はいるけど…私も試験を楽しみたいし、龍園くんは『事情』があるでしょ?」

「ああ、それで構わねえよ」

「そっか、良かったー。じゃあお互い、この試験を楽しもうね!ばいばーい!!あ、アルベルトくんもシーユーアゲイン!」

「Yeah,see you.」

 

 

 龍園くんとアルベルトくんに手を振ってカラオケの個室を出る。ふう、あんな男2人の空間、むさいったらありゃしないよ。早く出るに限るね。

 廊下を歩くと、私は早速Aクラスの清水くんに電話をかける。

 しばらくして、学校側からメールが届いた。

 

 

『丑グループの試験が終了いたしました。丑グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 _____________________

 

 

 

 

 

 第1回ディスカッション前。

 私たちAクラスが3人で兎グループの部屋に入ると、既にBクラスのメンツが揃っていた。何やら話していた様子だけど、作戦会議でもしていたのかな?

 

 

「あ、萌ちゃーん!やほー!!同じグループだね〜」

「やほー、帆波。中々大変そうな試験だね」

「うん、本当に……一筋縄じゃいかなさそうだよね。あ、隣座る?」

「うん、お邪魔するよ。……じゃあ、皆が来たら起こして……」

「えぇ!?寝るの!?」

「頭が痛くて船に戻ってから全然寝れてないんだよ…大丈夫、目を閉じるだけだから……」

 

 

 相変わらず自由だなあ、と帆波が笑う。

 目を閉じて机に伏し耳だけ済ませていると、程なくしてCクラス、最後にDクラスが男女別々にやってきた。そのタイミングで帆波に肩を叩かれ起こされる。私が伸びをすると、船内スピーカーの音が部屋に響いた。

 

『ではこれより1回目のグループディスカッションを開始します』

 

 簡潔で短いアナウンスが流れた後、グループ内では重たい空気が流れ出す。今回私がこのグループで何かをするつもりはないから、誰かに任せるかな。そう思って机につっ伏し直す。このまま誰も話さないかと思ったが、隣の少女は違うらしい。

 

 

「はいちゅうもーく。大体の名前は分かっているけど、一応学校からの指示もあったことだし、自己紹介したほうがいいと思うな。初めて顔を合わせる人もいるかも知れないし」

「今更自己紹介の必要なんてあるのか?学校側も本気で言ったとは思えない。自己紹介をしたいヤツだけがすればいいんじゃないのか?」

「町田くんがそうしたいなら、私には強制することは出来ないね。だけど、この部屋のどこかに音声を拾うマイクがセッティングされてあるかも知れないよ?そうなった時に不利になるのは自己紹介しなかった人だし、グループ全体の責任になるかも知れないよね」

 

 

 上手い切り返しだ。やっぱり、帆波は本質的に知能が高い。こういう話し合いや他者の心理思考を読み取るような試験では一枚上手になるだろう。町田くんが折れた様子を確認し、帆波を皮切りに自己紹介がされた。一周回ったところで、再び帆波が口を開く。

 

 

「さてと、これで学校からの言いつけは果たせたかな?それでこれからのことだけど、どうやって進めていこうか。私が進行役をするのが嫌なら言ってもらえる?」

 

 

 誰からも反論は出ない。当然だろう。見ず知らずの生徒たちが大半の中、自ら進行役を行うことは隙を生むことにも繋がりやすい。帆波は私がやると思ったのか一瞬だけこちらを見たが、私に意思がないことを確認するとまた話し出した。

 

 

「特に希望者がいないようなので私が進めるね。まず今回の試験を始めるにあたって、分からない点や疑問点、気になる部分があったらみんなで話し合うべきだと思うの。そうじゃないといつまでもシーンとした状況が続いちゃいそうだし。誰か質問はある?」

 

 

 ……誰も挙げる様子はない、か。葛城くんの沈黙作戦の誘導のためにも、私が舵を切ることにしよう。

 

 

「はい、しつもーん」

「お、萌ちゃん!何かな何かな?」

「帆波は…ううん、皆は今回の試験、どの結果を求めるのが最善だと思ってるのかな?」

「そうだね、私も皆に質問しようと思ってたよ。私としては、みんなが優待者じゃないという前提で、この試験を全員でクリアする…つまり結果1を追い求めるのが最善の策だと思ってる。みんなはどう思う?」

「なにそれ。そんなの当たり前のことじゃないわけ?」

「僕はもちろん肯定です。グループとして組む以上協力するのは当然のことかと」

「同意見だ。折角グループになったわけだし、プライベートポイントも不足してる。出来れば協力していきたい。博士は?」

「もちろん、俺もポイントが欲しいから協力するぜ」

 

 

 わらわらと結果1についての肯定意見が溢れ出す。しかし、ここまで様子見していた町田くんが声を上げた。

 

 

「一之瀬、その言い方はずるくないか?『自分が優待者でない』なら利点があるグループ報酬を期待したくなるのは当然だろ。それに堂々と裏切りを宣言する人間も普通いない。これじゃまるで優待者と悪人の炙り出しだ。とても適切な質問とは思えないな」

「試験としては妥当な質問じゃないですか?そちらのクラスの方も質問していたようですし、正直に答えなきゃならない脅迫のようなことも一之瀬さんは言っていません。嫌なら答えなければいいだけです」

「赤井と一之瀬では誘導の仕方が違うと言っているんだ。だが……確かにその通りだ、嫌なら答えなければいいだけだな。なら俺たちAクラスは全員沈黙させてもらうことにする」

 

 

 そう腕を組み、真っ向からの拒否姿勢を見せる町田くんに苦笑いを浮かべる帆波。どうやら私の切り口を、町田くんは上手く使ってくれたみたいだ。

 

 

「ちょい攻めすぎた質問だったかな?」

「いえ、一之瀬さんの質問は至極普通かと。ただ想像以上に彼らの警戒心が強かっただけです。でも町田くん、教えてもらえますか。適切な質問とはどんなものがありますか。好きな食べ物や趣味の話をしても試験に繋がることはないと思いますし。拒否する以上は話し合いをするための代替案がなければこちらとしても納得しかねるのですが」

「話し合いのための代替案?そんなものはない」

「一之瀬さんがどう考えて今の質問をしたのか、その本質は僕にも分かりません。ただ、この試験において、話し合うことが解決へと繋がる唯一の道と僕は考えます。このまま無言を貫き通した場合には、Aクラス抜きで僕たちだけで話し合いを持つことになるんじゃないでしょうか。せめてどんな議題の内容を話すかを一緒に考えて頂かないと」

 

 

 浜口くんの質問にも、町田くんは腕を組み答えない。元々町田くんは葛城くんに付き従っていたこともあってその破綻は硬い。そんな町田くんを見て埒が明かないの思ったのか、帆波が再び口を開く。

 

 

「そうなると、不本意だけど場合によっては多数決で最終的なジャッジを決めることになるよね。質問に答えてくれない人たちを疑うことになるし、優待者を当てずっぽうで指名するかも。それで納得できる?」

「……脅しか?」

「勘違いはしないでね。私たちは話し合いがしたいだけ。何を話すのも答えるのも自由だけど、この試験で求められる舞台への参加、つまり土俵には上がってもらいたいの」

「この試験、本当に話し合いで解決することか?話をしていくうちに優待者が安易に正体を認めるとでも?それとも徹頭徹尾頭を下げて頼めば教えてくれるのか?」

「なら、他に方法はあるのかな?」

「____ある。この試験を確実に、簡単に、そしてプラスでクリアする方法がな」

 

 

 何の躊躇いもなく口にする大言。帆波も浜口くんも驚きを隠せない様子だった。そうだろう、Bクラスの提示する話し合いを真っ向から否定するのだから。

 

 

「……聞かせて貰えるかな?その方法ってヤツ」

「もちろんだ。俺たちはグループだからな、貴重な情報は共有しよう。俺たちが推奨する試験攻略法とは……最初から最後まで話し合いを持たないことだ」

「なかなかユニークな話ですね。話し合いを持たないでどうやってこの試験を攻略すると?誰かも分からない優待者に勝ち逃げを許すんですか?」

「そうだ。余計な話し合いをせず試験を終えることこそが勝利への近道だ」

「俄には信じられませんね。これじゃ、Aクラスに優待者がいると思われても仕方ありません。この段階で優待者の情報を共有し守ろうとしているのでは?」

「どこのクラスに優待者がいるのか、そんなことはどうでもいい。いや関係ない。話し合いを持たなければ絶対に勝てる。それが葛城さんの提唱するやり方だ」

「葛城くんの……?なるほど、ね」

 

 

 帆波も葛城くんの名前が出たことである種の結論が出たようだ。町田くんが丁寧な説明をしている中、私は考える。この試験で、いやこのグループでどう立ち回り、どう発言していくべきか。このグループで追い求めていくべき本当の答えは何なのか。龍園くんとの契約で200CPを彼らに約束したと同時に、Aクラスには-150CPが約束されている。先手はうっておいたからある程度被害は減らせるとしても、この試験でそこまでクラスポイントを減少させるようなことはしたくない。……ならば。私はこのグループで『結果3』を求めるべきだ。重要なのは、いつ、どのタイミングにするか。

そして何よりこの試験で見極めるべきは____一之瀬帆波の能力。

 そんな事を考えている間に、町田くんと浜口くんの口論は学校が提唱している公平性の話に移る。

 

 

「確かに……公平性を強調していたのは事実です。それを信じるのであれば、確かに考え方は間違ってないと思いますがそれでも確実ではありませんよね」

「お前も理解しているように思えるけどな。話し合いをして相手を疑い騙し合う、潰し合う方が結果的にグループ関係はめちゃくちゃになるだろ。考えても見ろ、確かに優待者を見つけ出して全員で正解する、あるいは裏切り者が一人勝ち抜けを狙う作戦は見返りも大きい。しかし比べ物にならないリスクを抱えることになる。この不透明な試験で無理をする必要はどこにもない」

「そうだね、君たちの話は間違ってないと思うよ。学校だけが負担を負うなら悪くない話だしね」

 

 

 浜口くんと町田くんでは口論で分が悪いと感じたのか、帆波が再び応戦する。ここからは、帆波のお手並み拝見だな。

 

 

「でも、それを実行するには意外と大変。ううん、ひょっとしたら話し合う以上に大変なことかもしれないね。話し合いをしない、相手を疑わず裏切らない。それを一年生全員が守らなきゃいけない。それに優待者の匿名性は学校に保証されているから、クラスメイト間の信頼も問われる。試験終了時に優待者が名乗り出てクラスポイントを分け合えばいいけど、独り占めしちゃうことだってあるんじゃない?」

「我々Aクラスは完全な信頼関係で結ばれている。その点は全く心配していない。内輪の問題は内輪で解決すればいい」

 

 

 町田くんの説得にある程度の納得がいったのか、それとも仕組みが単純明快で考える必要がないと捉えたのか。DクラスやCクラスの子達からもちらほらと賛同が集まり始める。それに対して一之瀬は賛成意見の挙手を募った。Dクラスからは外村くんと幸村くん、Cクラスからは全員の手が上がる。

 

 

「軽井沢さんはどうかな?」

「あたしは……正直言えば不満もある。ポイントが手に入るって言っても、あたしの手に入るかは別だしね。だけど、話し合いをしてもポイントが手に入るのとも限らないわけだし……無理に揉めるのは手間っていうか、こんな試験終わらせて早く遊びたいし」

「浜口くんたちはどう?」

「僕らの方針は一之瀬さんにすべてお任せします」

 

 

 何とも帆波への信頼が厚い発言だ。結束力が高いと思っていたが、その実は帆波への熱狂的な盲信、と分析するべきか。

 

 

「ありがと。じゃあ残りの一人……綾小路くんはどう思う?」

「いいんじゃないか。既に過半数は納得したようだし、元々話し合いは苦手だしな」

「決まりだな」

「待って。町田くんの……ううん、葛城くんの案は確かに悪くない作戦だよ。誰も疑わず、嘘をつかず、傷つけ合う必要がない。そして結果的には平等にポイントも手に入る。多くの人が納得する理由も分かるよ。でもよく考えてみてもらえないかな。この作戦ってデメリットがないように思えるけど、実はAクラスだからこそ提案できる作戦じゃないかなって思うんだよね。私たちには見えないデメリットがのしかかってる」

「見えないデメリット?一体なんだそれは」

 

 

 Dクラスの幸村くんが、焦ったように帆波に聞く。

 

 

「全クラスに均等に優待者がいる、ということを前提に話すと、確かにこの試験単体では、話し合いをしないことで優待者の逃げ切りを許して大量のポイントを平等に得られると思う。つまりメリットだけ。でも、下のクラスの人は限られたチャンスを1つ棒に振るってことなんじゃないかな?」

「それは______」

「卒業までに、特別試験が何回行われるかは分からないよね。Aクラスとの差も顕著だし。極端な話、各クラス足並みを揃える作戦は無人島の時にだって出来たもの。要は試験のたびにこんな作戦を続けたら、最終的なクラスの位置もずっと変わらないってことだよ」

 

 

 上手い反論だ。この場での損得のみに考えがいっていたCクラスとDクラスの連中の視野を広げることで、この先の未来、ひいてはクラス間競争という点に意識をシフトさせた。この試験、Aクラス…つまり守る側は沈黙を貫くことで得るメリットは他クラスよりも多い。一歩抜きん出ていることの状態をキープでき、あわよくばプライベートポイントも手に入る。……まあ、そんな状態は私が龍園くんとの契約でないに等しいのだが。

 

 

「待て一之瀬。言いたいことは分かったが、それだと望める結果は結局1つしかないぞ。全員で正解したとしても、このグループ全員が均等に大金を手に入れるだけ。おまえの望む展開にはならない。それとも話し合って優待者を見つけ出し、Bクラスが一目散に裏切るつもりなのか?お前は結果1を望むか全員に聞いたばかりだ。とても信用できたもんじゃないな」

「差が詰まることはないって言ったけど、それは間違いだよ。このグループの人数はDクラスとCクラスが4人。BクラスとAクラスが3人。つまり結果1でクリアすれば下のクラスは上位クラスとの差を確実に詰めることができるってことじゃない?」

「……確かにな。だがその上位クラスであるBクラスはそれを受け入れると?自己犠牲を払って下のクラスを得にさせるメリットなんてないだろ」

「そうしないとAクラスに逃げ切りを許しちゃうかも知れないからね。特にAクラスに優待者がいた場合、厄介極まりないし」

「僕も同意見です。Aクラスに逃げ切りを許す考え方にはなれませんね」

 

 

 

 なるほど。驚いた様子や考え込む様子はブラフだったか。先程の作戦会議の際、対応に関して打ち合わせをしていた可能性が高いな。こうなっては、町田くんも分が悪い。今まで沈黙させてもらっていたが、私が想像している以上に、一之瀬帆波という人物はコミュニケーションにおいて1枚も2枚も上手らしい。しかし、3クラスで協力されても困るからね。重い腰を上げるとしよう。

 

 

「ねー帆波。1ついいかな?」

「……何かな、萌ちゃん」

「確かに帆波の言う通り、葛城くんの提唱している作戦は上位クラスだからこそ提案できる作戦とも言える。でも帆波の提案する作戦にも穴があるように思えるな」

「それは何かな?」

「結果1を追い求める作戦は、確かに皆に利益があるようにも、下位クラスが優位に立てるようにも思える。でもそれは、帆波たちBクラスに“優待者がいない”からこそ出来る作戦なんじゃないかな?結局話し合いで優待者を見つけ出しても、真鍋さんがさっき言ってたように誰かが裏切ったらそこで終わり。その時に、もしこのグループの優待者が下位クラスにいたら?泣きを見るのは、それこそ君が救い出したいと考えている下位クラスになる」

「確かに、裏切りの可能性があるのも否定はしないよ。でも、何も話し合わなければ、見えるものも見えてこないよ。君たちAクラスにこそ、優待者がいて、その存在を隠し通そうとしてるんじゃないかな?」

「さあ、それもあるかもね。でも話し合いをしたからといって、結果1を目指せる確率は遥かに低い。もし優待者が下位クラスにいるなら、警告しておくよ。この試験で最も危惧するべきは、裏切り行為。そして話し合いによって、優待者の存在が暴かれるリスクが上がることもね。……もしかしたら、話を主導してるBクラスが真っ先に裏切るかもね?」

「……そういうことだ。既にAクラスの方針は今話した方針で固まっている。如何なる理由があっても話し合いによって応じないことを覚えておけ。おまえたちが結束して話し合うなら好きにすればいい」

 

 

 そう言い、町田くんと森重くんは立ち上がって部屋の隅に移動した。

 

 

「萌ちゃんは移動しないの?」

「移動するのも面倒くさいからねー。ま、君たちで好きに話し合ってよ。私は邪魔しないように寝てるからさ」

「さーてと、どうしたものかなー」

 

 

 

 頬を小さくかく帆波。ここから他クラスがどう動き、どの作戦に行動を移すのか。

 船上試験はまだ、始まったばかりだ。

 

 

 






萌ちゃんの知性はあんまりグループディスカッション向きではありません。
どちらかというと龍園くんや綾小路くんと同じ、ルールの穴をつくタイプ。



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