暴力表現があるため、苦手な方は回れ右推奨です。
今回から数パート、夏休みの様子を書いていきたいと思います!
今アンケートを取っているデート回は夏休み最後の回の予定です。意外と神室、一之瀬、櫛田あたりも人気ですね。萌ちゃんとの絡みを好いてくれてる方が多いのかな?
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青春といえば部活!
夏休み真っ只中。特別試験が終わった今、生徒たちは各々の休みを満喫している。……はずだったのだが。
「……暑い…なんで私はこんな暑い中外に……」
「だってもえぴー、インターハイ近いのに全然部活に来ないんだもん!
「……まー、そうだね。ありがたく出場させてもらうことになってるし、練習に行かないとか」
同じAクラスの元土肥ちゃんに声をかけられ、惰眠を謳歌する予定の夏休みが部活漬けになってしまっていた。くそう、こんな事になるなら「青春っぽいから」という理由でテニス部に入るんじゃなかった。4月の私を恨む。
……まあでも、お小遣い稼ぎしたいと思ってたし。ちょうどいい機会ではあるか。私たちがテニスコートにつくと、もう既に集まっていたテニス部のメンバーと合流する。
「あ、もえぴー!今日もよろしくね!」
「よろしくお願いします、先輩。あ、これ昨日頼まれてたノートです」
「うわ、助かるー!もえぴーのノート、めっちゃ正確なんだよね」
「それわかる。私ももえぴーノート参考にしてから勝率上がりまくり!」
「あはは、先輩の役に立ってるなら良かったです!部長さんにも先輩方にも申し訳ないことしちゃいましたし」
「いやいや、部長……いや、元部長の体制より今の方がよっぽどいいって!もえぴーが来てくれて助かったよ。それに可愛いし〜」
そう言って先輩方から頭をわしゃわしゃされる。自分の見た目を気にしたことはなかったが、割と可愛がられる方の見た目で良かった。印象に身長も相まってると思うと少し複雑ではあるが。
「……よし!みんな集まりましたね!じゃあ今日も張り切って部活していきましょーう!!それと…インターハイも近いので、毎月恒例『萌ちゃんカップ』を今日の練習の後やっちゃいますよー!!」
私がそう言うと「うおお!!」「きたわね!!」「今月こそ勝つ!!!」という声があちこちから聞こえる。うんうん、みんなやる気でよかった。私はどこか怯えているような部長を一目見て笑いかけたあと、練習コートへ向かった。
___練習後。
「はぁ〜、今日もキツかったですねぇ」
「でもでも!この後は!」
「はーい、やっちゃいますよー。萌ちゃんカップのお時間でーす!今回も全員参加しちゃいますかー?」
「もちろん!!今回こそ萌に勝つんだから!!」
「おー、やる気ですね先輩!私も負けませんよー!!」
萌ちゃんカップとは何か。それは表向き、私主催の強化試合である。
私と元部長を含めない女子テニス部員16人で勝ち上がり戦の1ゲームを行い、優勝した1人が私と対戦。もし私に勝った場合は多額のプライベートポイントを貰える、何とも夢のある戦いである。私がこの大会を発案した当初はみんな反対していたものの、桁外れの額を聞いた瞬間やる気になった。世の中、結局お金なのである。
もちろん、負けた時のペナルティーもある。最後に優勝した人、もしくは納得が行かない場合は準優勝者までは私に挑戦することができ、それでも私に勝てなかった場合、参加者全員が、私がみんなに払う予定だった額のプライベートポイントを均等に出し合うのだ。例えば私が優勝景品として100万プライベートポイントを提示していた場合、16人が6万2500プライベートポイントを均等に出し合う。誰がそんなものに参加するか…と反論が出そうなものであるが、面白いことにそうでもない。
ポートフォリオ理論、という言葉をご存知だろうか。これは金融投資におけるリスク分散の考え方である。複数の金融資産を組み合わせて運用することで、リスクを抑えつつ効率的にリターンを最大化させる、現代投資の基本思想だ。つまり、人というものは本能的にローリスクハイリターンを好むのである。日常的に考えれば少し高い金額であったとしても、目先の多額なプライベートポイントの欲に釣られ、その金額と比較し「このくらいなら……まあ……」と脳が考えることをやめてしまうのである。勿論私も鬼ではない。皆のお財布事情を考えて、毎回優勝景品の額を皆で決められるようにしているのだ。
私が萌ちゃんカップに勤しむ部員たちを見ていると、先程から怯えた様子の部長がこちらに近づいてきた。
「……はい、赤井さん。今月分の参加費、徴収終わったわよ。確認して」
「わー、いつもありがとうございます!猪狩部長!……うん、全員しっかり集められてますね。やっぱり猪狩部長は頼りになるなあ!」
「そ、その……これで、今月も私にポイントをくれるのよね?」
「はい、勿論。私に従ってくれるなら、毎月参加費のポイントを猪狩先輩にあげる。それが取り決めたルールですからね」
萌ちゃんカップの参加費は1万ポイント。つまり猪狩先輩が貰える額は16万ポイントとあまり高くは無いが、快く従ってくれている。……それもそうだろう。恐怖というのは、最大の原動力になるのだから。時は入部当初、4月初めまで遡る。
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私がテニス部に体験入部に来たのは、本当にちょっとした動機だった。個人競技ができ、かつ運動がメインである部活を探していただけ。色々と回っていき、候補となった1つがテニス部だっただけだ。だが、私が体験入部に行く途中、先輩であろう方々が愚痴を言い合っているのが聞こえた。
「ねえ、昨日の部長マジで高圧的じゃなかった?そんなに実力もないのに、態度だけ偉そうって言うかさー」
「わかる。てか部長とダブルス組んだ時、毎回こっちに非があるように言われるから嫌なんだよねー。明らかに部長のミスの時も悪く言われるし」
「あーあ、どうにかなんないかな……」
そんな先輩たちの、日常会話。……これは、チャンスだ。そう思った私は、その先輩たちに近づいた。
「こんにちは!すみません、テニス部の体験入部ってどこでやってますか?テニスコートがこの辺だって聞いたんですけど、私方向音痴で……」
「あ、こんにちは。テニス部に入るの?私たちも今から部活だから、一緒に行こうか?」
「ほんとですか!助かります!ところで、先程は何のお話をされてたんですか?」
「え?あー……あはは、嫌なこと聞かせちゃったかな?ちょっと今の部長がねー、あんまり良い噂は聞かない人でさ。部員内の不満も多くて……ごめんね?今から入ろうとしている子にこんなこと聞かせちゃって」
「いえいえ!先輩の不満も最もだと思いますよ!それに、先輩の嘘偽りないお話を聞けて良かったですよ!」
「そう?そう言ってくれると助かるな」
「もし良ければ、私が愚痴を聞きますよ。無関係の人だからこそ吐ける不満、みたいなのもあるでしょうし」
そこから先輩方と一緒にテニスコートまで行き、体験入部でそこそこやれることを示した後。私は部長であった猪狩先輩を夜遅く、テニス部の部室に呼び出した。
「あー、赤井さんだっけ。そんで何ー?こんな夜遅くに。私だって暇じゃないんだけど?」
「あはは、すみません猪狩先輩。少しテニス部について確認したいことがあって、でも秘密にして欲しいことなんです」
「なにそれ。ま、早くしてよねー」
そう言って部室内のベンチに座り、端末をいじり出す猪狩先輩。……何とも無警戒なものだ。私はその態度を利用させてもらい、猪狩先輩の首を絞めるように掴みあげると、腹に思いっきりパンチをする。
「っ、がはっ……!?な、何!?何なの!??いっ……!」
「あれ?思ったより元気ですね先輩。今の一発で終わらせようと思ったんですけど……手加減しすぎました?」
「な、なによあんた!何が目的なわけ!」
「目的、ですか?そうですね……この部活の部長権限。それを私に譲ってもらいたいんです」
「な、何言って……ぐふっ!?」
「しーっ。大声を出すと、舌を噛み切っちゃうかもしれませんよ、先輩?」
まだ生意気な口を聞ける猪狩先輩に対し、私は連続でボディーブローを入れる。顔には殴らない。重要なのは、見えないところに、どれだけ深くトラウマを刻み込めるかである。
「知ってますか先輩。この部室って、女子の着替えに使われますよね?だから監視カメラがないんです。この意味、3年生の君なら分かりますよね?」
「なっ……あ、あんた、年上を脅すわけ!?」
「年上?少し早く産まれただけですよね。それより先輩、この状況わかってますか?……お喋りが少し過ぎますよ」
これ以上の会話も面倒だ。私は終始笑顔のまま、猪狩先輩を壁に固定しもう片方で拳をぶつける。脇腹、鳩尾、肝臓。その間も首を絞める力を強めながら。
人は、本気で殴られる経験をしていないことの方が多い。最初は威勢のいい先輩だったが、私が冗談ではないと、本気で仕留めに来てると分かったのか、途中からは恐怖で足が震え、声も出せないようだった。頃合いを見て、私は先輩を持ち上げ首を絞めていた手を離す。猪狩先輩は立てないようで、そのまま滑り落ちてしまった。猪狩先輩の瞳に明確な『恐怖』が浮かび上がる。涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにする先輩の耳元で、私は甘く、優しい声で囁いた。
「さあ、最後に聞きますね。……部長の権限を私に譲ること。それを約束できますか?」
「する、するからっ……!」
「いい子ですね、先輩。……今日からこの女子テニス部の実質的な支配者は私です。あなたは今まで通り、表向きは偉そうな先輩として振る舞えばいい。でも、裏では私の指示にすべて従ってもらいます。もし逆らったり、誰かに告げ口したら……」
部長の耳たぶを指先でなぞりながら、笑う。
「先輩が夜、寮に帰る暗い夜道で、何が起こるか分かりませんよ? 私、こう見えてすっごい運動神経いいから、先輩の足の骨を複雑骨折させて、そのまま見つからないように処分することくらい、造作もないんですよねー」
それは単なる脅しではない。本当にやりかねないという絶対的な実力差が、先輩の心を完全にへし折った。先輩は涙を流しながら、ガクガクと首を縦に振るしかなかった。
こうして猪狩部長は
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そこから私は入部から数週間、「明るい後輩」という仮面を被ったまま、部の内部構造、部員たちの実力、そして各々が抱えているプライベートポイントの余裕度を、冷徹に査定し続けた。
『いかにして自身の利益と平穏を、最小の労力で最大化するか』。私の理念に合っていた部活こそが、このテニス部だったのである。
私が追憶にふけていると、萌ちゃんカップの方は最終戦が終わったようであった。
「っしゃあ!!やったわよ萌!!今日こそあんたを負かす!!」
「わー、先輩が優勝しちゃいましたかー。勝てるかなぁ」
「ふふ、今回こそポイントを貰うんだから!!!」
「じゃ、少し休憩したらワンゲームしましょう。準優勝の方の挑戦権は行使しますか?」
「いらないわ!私が勝つもの!」
「すごいやる気ですねー。今日こそ負けちゃうかな?じゃあ、元部長。審判はよろしくお願いしますね」
「え、ええ。分かってるわよ」
私からのサーブでゲームが始まる。今回優勝したのは3年生の先輩。前々から部のエースとして実力はあったものの、猪狩元部長の勝手な体制によって満足にプレイが出来ていなかった被害者の1人らしい。確かに、こうしてテニスをしている時の先輩はかなり楽しそうだ。……私からしてみれば、こんな作業のどこが楽しいのか、どこに感情が動かされるのか、全く理解が出来ない。それにどちらかと言うと、今の先輩の目はギャンブル依存症にも近い。
ここで重要なのはいかに“実力が互角に見せるか”である。全ての部員を瞬殺することなど赤子の手を捻るより簡単だ。しかし、圧勝で勝ってしまったら、そもそもの萌ちゃんカップの参加者がいなくなってしまう。だからと言って手加減して負けても、顰蹙を買うし私の利益にならない。だからこそ、実力が拮抗しているように見せかけるのだ。
「フィフティーン(15)・サーティー(30)!」
「いよっし!!萌、私の方がリードよ!!」
「ナイッショー!!今の先輩のバックハンド、キレッキレでしたね!!」
「ふん、私のこれは誰にも負けない武器なんだから!」
「よーし、私も負けたくないからがんばりますよー!!」
周りの声援もあり、どこからどう見ても拮抗しているいい勝負。これでいい。多少面倒ではあるが、対戦相手をおだてつつ、次こそ勝てる!次こそ勝つ!そう思わせることで、参加率と部員のやる気は飛躍的に上がる。結果的に、この大会を開く前と後では部員たちの腕は格段に良くなっている。大会での勝率も上がっているし、部全体としても利益に繋がっているだろう。お小遣い稼ぎも出来て感謝もされるなら、多少の面倒は目を瞑れというものだ。……おっと、中々鋭い球がきたな。私はわざとラケットの先端ギリギリを狙い、ふわりと浮かぶロブを返球する。
「チャンス!貰ったぁ!!」
しかし先輩渾身のスマッシュはネットの白帯を強打してしまう。当然だ。今までの先輩のボールの回転量とスイングスピードを計算して、ネットにギリギリ届かないスピンをかけたのだから。
「フォーティー(40)・サーティー(30)!セットポイント、萌!」
「わー、運が良かった!あの球返されてたら、私でも取れませんよ!!」
「り、力みすぎたかしら……?今度こそ決めるわよ!!」
「私だって、負けませんよー!先輩!!」
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結果はそのまま私のストレート勝ち。先輩が準優勝者の権利を行使しないと決めたため、私は参加者から均等にポイントを集め、お小遣いを徴収することに成功した。
「今回は80万ポイントかぁ。ちょっと少ないなあ」
そう独り言を呟いた後思考を切り替え、疲れきった様子の部員たちに告げる。
「皆さん、お疲れ様でしたー!!今回の萌ちゃんカップで優勝・準優勝した方には、インターハイのシングルス出場権利が得られまーす!!」
「え!?!!本当に!!!?」
「はい、もちろん!先輩方が努力した結果が目に見えて現れた形ですからね〜。それを無視しない訳にもいきません!」
「やっっったぁ!!萌、最高よ!!!」
「あはは、抱きつかないでくださいよ先輩。私今汗臭いですよ〜??」
「すごいねもえぴー、私も上手くなれるかな?」
「元土肥ちゃんも、確実に上手くなってるからね。後は私が萌ちゃんカップでの皆を見て独自に作ったノートを参考にすれば、今回準優勝した先輩にも届く実力になると思うよー」
「そ、そっか……!私、頑張る!」
「うん、一緒に強くなってこーね!」
「萌、次こそ勝ってやるんだから、覚悟してなさいよ!!あんたのノートは悔しいけど正確なんだから!次回までに読み込んでやるわ!!」
「楽しみにしてまーす!先輩、本当に強いからヒヤヒヤしちゃいますよー!!」
こちらを怯えた様子で見ている猪狩元部長を見つけ、目で言葉を送る。
『どうですか、先輩。貴方が部長になるよりも、よっぽどテニス部は活気に満ちていますよ』
私が笑顔を向けると、猪狩元部長は気まずそうに顔を青くし目を逸らす。……後でまた教育しておこうかな。
「あ、そうだもえぴー。明日、坂柳さんが主催してクラス会が行われるんだったよね。もえぴーも行く?」
「うん、もちろん。……あー、今日も部活楽しかった!」
やっぱり部活は青春だね!!!
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