ガラガラ、と戸を開ける。有栖ちゃんは未来のクラスメイトを観察している様子だった。えっと……とりあえず有栖ちゃんを席まで運ぶのが先、だよね。有栖ちゃんの席は……あった、あれか。
「……あら」
「ん?どうしたの有栖ちゃん」
「いえ、つくづく貴方とは縁があるなと思いまして」
そう言ってクスクスと笑い出す有栖ちゃん。……これ、私の席確認してないんだけど……反応的に有栖ちゃんの隣か前後ってことだよね。
「お隣の席として、よろしくお願いしますね?」
「はは、すっごい偶然……」
「人はこういうのを運命とも呼ぶそうですよ?」
「運命……運命、ねぇ」
それなら私はとことんまで天に見放されているということだろうか。……いや、きっと有栖ちゃんはクラスの中心人物になるだろう。その前に仲良くなっておけば、私の普通の学生生活をする為の隠れ蓑となってくれるかもしれない。……うん、そう思おう。
「それにしても、入学式まで暇だねぇ」
「そうですね、早くついてしまったものですから」
「まぁこんな早いのに何故か人は沢山いるし。どんな人がクラスメイトになるかでも見ておいたらー?」
「……萌さんは何をするんでしょう?」
「私は寝る……早く起きた代償が割と来てる……」
「……またですか?……って、もう寝てますね……」
萌が寝てから、坂柳は考える。なぜ、自分にクラスメイトを見ておくよう提案したのか。普通に考えれば新しい環境に慣れるため、と考えるが提案するほどの事でもない。
「……私がクラスを掌握しようとしていることを、見抜いていた?そうだとしたら、この人は……」
すやすやと気持ちよさそうに眠っている一人の少女。その少女の寝顔に、バスの中で抱いた不服とは真逆の高揚感を抱いていた。
____________________
「少しいいだろうか」
そんな渋めの声で目が覚める。有栖ちゃんはずっと私の寝顔を見ていたのか見ていなかったのか、顔を起こすと目が合った。
「おはようございます、萌さん」
「……おはよう」
……有栖ちゃんの声で起きた訳では無いよね。もっと低くて、男の人っぽかった……。
「クラスメイトになるであろう生徒も揃ってきたことだし、まだ入学式まで時間がある。そこで、一刻も早く親睦を深めるため、自己紹介をしようと思うがどうだろうか」
あぁ、あのスキンヘッドの……。それにしても自己紹介、か。この手のものはあんまり慣れていない。一応私も思春期。誰かと違う自己紹介をして友達を多く作りたいという理由から自己紹介のいろはを教えた動画を何回か閲覧したことはある。……まあ、そんなことを試す機会はなかったわけだけど。隣の有栖ちゃんは……うん、つまらなさそうだな。私は席を立つ。
「む……どこに行く?」
「あーごめん、ちょっと小用〜」
……はぁ。自己紹介、確かに何よりも自分を知ってもらう絶好の機会なのだろうけど、私的には気が進まない。隣のあのつまらなそうな瞳を見たら尚更だ。
「萌さん」
「……有栖ちゃん。有栖ちゃんも出てきたの?」
「ええ。それより御手洗に行くのですか?」
「……そっちの意味じゃないから」
……この子、デリカシーって知ってる?……いや、2人だし友達間での「ちょっとトイレ行ってくるわ〜」くらいの感覚か。……入学式までまだ時間はある、よね。
「ちょっとだけ散歩しようかな」
「それなら私もついていきましょう」
「自己紹介しなくていいの?」
「知っていますよ、私の顔を見てから席を立ったの」
「……有栖ちゃんだって便乗して出てきたくせに」
「お互い様です」
折角だし、同じ学年のクラスの様子でも見ようかな。有り余るほど時間があるわけでもないし。早めに済ませるに越したことはない、か。そう思い有栖ちゃんの手を取る。
「よし、じゃあ行こう有栖ちゃん」
「……」
「……?有栖ちゃん?」
「あ、いえ……なんでもありません」
「……???変な有栖ちゃん」
面白そうに笑ってるし、多分機嫌を損なうことはしてないと信じていいだろう。えーっと、Bクラスはここか。廊下越しからしか見れないけど、仲が良さそうだな。あの金……ピンク?髪のロングの女の子が特に人望に厚いって感じか。それにしても、スタイルいいな……まるで私や有栖ちゃんとはおおちが……!?
「ったぁっ、いったいよ有栖ちゃん!」
「何か余計なことを考えてそうでしたから」
「だからってそんな容赦なく杖でやるかなぁ!?」
……全く、これからは気をつけよう。攻撃してこないとは限らないって訳だ。
「……萌さん、そろそろ戻りませんか?」
「あれ?もういいの?」
「ええ、私としては少し暇が潰せれば十分でしたから」
「……そうだねぇ……あ、でも教室に戻るよりこのまま体育館に向かった方が早いんじゃ?」
「……それもそうですね。では、このままお願いしますね」
「……ワガママなお嬢様だこと…」
面倒事は厄介なことに、1度や2度では解放されないようだ。
夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)
-
坂柳有栖
-
神室真澄
-
一之瀬帆波
-
椎名ひより
-
櫛田桔梗
-
白波千尋
-
綾小路清隆