ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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ご縁があってドデカ有栖ちゃんのアクスタをお迎えしました!!
デカい!!!!!!!!!!!!










体育祭(前編)

 

 

 

 

 時が過ぎるのは早いもので、あっという間に体育祭本番の日が訪れた。ジャージを身にまとい、周りを真似する形で開会式に参加する。開会式が終わると、簡易なプログラム表を見ながら時間を確認する。体育祭の開幕を飾る競技は100メートル走。1年生の男子から始まり、その後に同学年の女子が続く形になるため、男子に続く形でグラウンドに並ぶ。男子の結果を見ると、葛城くんが3位になったり、橋本くんと鬼頭くんが1位になったり。飛び抜けていいわけではないが、練習し初めの頃の想定よりかは皆良い順位につけていると言っていいだろう。これも独自に作って配布した分析ノートの結果だろうか。

 5組目の並ぶ位置に着くと、隣に椎名ちゃんがいることに気づく。

 

 

「あれ、椎名ちゃんじゃん。もしかして5組目?」

「あ、赤井さん。はい、5組目です。赤井さんも同じですか?」

「うん、そうだよー。最近体育祭の練習ばかりで図書館に行けてなかったから、久しぶりに話せて嬉しいよ」

「私もです。……あ、でも赤井さんと同じ組、というのは悲観すべき事態ですね。勝てるわけもありませんし、せめて最下位にならないようにしないと……」

「あはは、まあお互い頑張ろうね。そうだ、同じ組の中で椎名ちゃんの知ってる速そうな子っている?」

「さあ、私はあまりお友達が多い方ではないので……ただ、あちらに並んでいるDクラスの小野寺さんは運動神経が良い方と伺っています」

 

 

 椎名ちゃんが目を向けた方に目線を向けると、同じ組の並びのところにショートカットで高身長な女の子がいることに気づく。おお、見るからに運動できそう。これはあんまり油断しない方がいいかな。

 

 

「そっか、ありがとうね椎名ちゃん!熱中症にならないように気をつけようね!」

「はい。……あ、もうすぐ女子が始まりますね」

 

 

 特に大波乱や怪我などもなく、すぐに私たちの組となる。Aクラスからは私と白石ちゃんが出る。身体能力の高い生徒がお互いを潰し合わないよう、同じ組の組み合わせは身体能力の高い生徒と低い生徒で組み合わせるようにしたのだ。程なくして、スターターピストルが鳴らされ私たちはスタートダッシュと共に走り出す。

 

 

 「なっ___!?」

 

 

 後ろの小野寺さんから、驚愕の声と思われる音が発される。100メートル走は短時間での早期決着となる。ならばやることは簡単だ。スタートダッシュで突き放し、その優位を保持すればいいだけ。もちろんこの優位は身体能力の差によって埋められてしまう危険性があるものだが……身体能力において私に勝てる女子は、この学校に()()()()()。驕りなどではなく事実。上級生だろうと、私に勝てる存在はいないだろう。

 序盤に作った優位を維持したまま、私はゴールへと辿り着く。それから少しして、小野寺さんも2着でゴールした。走り終わった小野寺さんからは悔しさの感情が滲み出ていたが、それよりも好奇の目が私に向けられていた。

 

 

「赤井さん、すっごい速いんだね!運動では誰にも負けない自信があったのに、悔しいなー!」

「運動は数少ない私の長所だからねー。小野寺さんもかなり速かったよ。スタートダッシュが上手くいって良かったって感じかな」

 

 

 小野寺さんとの会話もそこそこに、私はAクラスのテントに目をやる。そこには既に競技を終えた男子たちと、杖とお友達の少女がこちらを面白そうに観察している。私が手を振って勝利のピースをすると、満足気に笑った後膝の上の本に視線を落とした。有栖ちゃん、退屈なのは分かるけどせめて今くらいは本じゃなくて競技を見ようよ。

 1年女子の番が終わったため、私は椎名ちゃんに別れを告げてテントに戻る。その後全学年の100メートル走が終わり、次の競技の前に赤組白組の点数が表示される。赤組2011点、白組1891点。赤組が若干優勢のまま、次のハードル競走が始まる。……ああ、女子は男子の次だから待機列に移動しないと。

 ハードル競走は『ハードルを倒す』ことで0.5秒、『ハードルに接触する』ことで0.3秒のペナルティがタイムに加算される。こう言った類のものはやってこなかったため、練習の時に感覚を確認することに重きを置いた競技の一つだ。練習が功を成したのか、難なく1位を取ることに成功する。それにしても……。

 

 

「先に走った堀北、あれ陸上部の人と当たってたよなあ……」

 

 

 部活中、グラウンドの方で走っているのを見たことがある人がいた。多分陸上部の人……だと思うが。さっきの100メートル走もかなり接戦だったし、何か裏があると見るべきなのか、それとも運が悪いと見るべきなのか……。

 

 

「……ま、私には関係ないか。今は自分のことに集中しないとね」

 

 

 そう呟き、私はテントに戻っていった。

 

 

 ________________

 

 

 続く玉入れ、男女別綱引きではどちらも赤組が勝利を収める。学年別最優秀生徒に向けて着々と結果を積み重ねられていると思うが、他の生徒に取られてしまう可能性も充分有り得るため気を抜いてはいられない。 有栖ちゃんとの約束で個人種目で1位を取ることは勿論だが、学年別最優秀生徒、と言うからには団体戦でもそれなりに活躍をしなければならないのだ。さーてと、次は障害物競走か。1組目だから早めに並ばなきゃ。

 

 

「あれ、堀北ちゃんじゃん。やっほー。堀北ちゃんも1組目?」

「……ええ。貴方も?」

「うん、お互いがんばろーねん。……あ、そっちのCクラスの人はさっきも堀北ちゃんと一緒だったよね!」

「え!?う、うん……偶然ね……」

「陸上部の子だよね?負けないよー!」

 

 

 そう話していると、指定の場所に整列するように言われる。障害物競走は正に熾烈な戦いだった。スタートダッシュを決めたつもりだったが、Cクラスの陸上部の1人が喰らいついてくる。平均台に足をかけ、網をくぐり抜ける。最後のズタ袋を装着する際に後ろを見ると、先程まで抜きん出ていた陸上部の子が少し順位を落とし、堀北がそこに並んでいた。2位以下は混戦ってところかな。少し身体の自由が奪われたところで、自分の身体を隅々まで理解していれば問題ない。と、その時。

 

 

「___きた!堀北!」

 

 

 後ろから声が聞こえ、若干振り返る。声の主はCクラスの陸上部の子だった。ゴールに辿り着き、完全に後ろを振り返ると、堀北と先程叫んでいた陸上部の子が絡まるように共倒れしていた。

 

 

「わー……大丈夫かな?あれ…………」

 

 

 遠目だからあんまり分からないが、起き上がるのに時間がかかっている様子。堀北はなんとか足を動かしてゴールするも、大きく順位を落としてしまったようだった。対して陸上部の子は起き上がれず、続行不可能で最下位。どちらにも怪我が残った様子だけど……まあ、他クラスがお互いを潰し合ってくれる分には私に問題はないだろう。そう思い、変な歩き方をする堀北を残してテントへと戻った。

 

 

「お疲れ様でした、萌さん。どうやら怪我人が出てしまったようですね」

「そうみたいだねー。なんと言うか、堀北も可哀想だよね」

「ええ。先程から運動自慢の生徒ばかりを当てられているようですし……これも龍園くんの策略でしょうね。露骨に堀北さんを狙っています」

「となると……Dクラスから参加表が漏れてるのかな?」

「恐らくはそうでしょう。多額のプライベートポイントを積まれたか、あるいは堀北さんに相当な恨みのある方による犯行か……赤組にとっては堀北さんへの一点狙いは少し痛手ですね」

「ま、そこは萌ちゃんがカバーするから!有栖ちゃんに言われてる通り、ここまで全勝だよ!!」

 

 

 有栖ちゃんに向けてピースを突き出すと、有栖ちゃんは冷たく笑いその手をそっと押し返す。あ、パーだから私の勝ちだね。

 

 

「まだ競技は残っていますよ。慢心するには早すぎます」

「えー。ちょっとは褒めてくれていいのにー」

「私が褒めたところで、貴女の結果は何か変わるのですか?」

「もちろん!やる気がブーストされて、めちゃつよ萌ちゃんになるよ!」

「であればやめておきましょう。私は杖とお友達でいたいですから」

「むー、いじわる!……あ、もう二人三脚並ばなきゃ!じゃあ有栖ちゃん、次も見ててねー!!」

 

 

 私は手を振りテントを後にする。萌が居なくなったテントで、坂柳は静かに呟いた。

 

 

「ええ、誰よりも目に焼き付けていますよ」

 

 

 

 _________________

 

 

 

 続く二人三脚の為待機列に並んでいると、先に競技を行っている男子が悲鳴をあげていた。

 

 

「どわあああ!」

 

 

 その方向を見ると、無人島の時にお世話になったDクラスの池くんと須藤くんがペアになっている。目を凝らすと、どうやら須藤くんが池くんを持ち上げて走っているようだった。

 

 

「あっ、やっぱアレってやっていいんだ!」

「やっていいんだ!じゃないわよ。やったら承知しないからね。分かってる?」

「えー、でも……」

「でもも何も無い!良い!?私はあの男子の片割れみたいに死ぬ思いをしたくないわけ!!!」

「わかった、わかったから、ぐわんぐわんしないで…」

 

 

 真澄ちゃんに肩を揺さぶられ、その必死さに苦笑しながら案を取り消す。私たちと同じ2組目には堀北と櫛田のペアが走るようだった。更にCクラスからは、さっき怪我した子とは別の陸上部の子が片割れのペアもいる。やっぱり堀北が狙われていることに間違いはないようだ。櫛田から手を振られたため軽く手を振り返すと、教員から移動するように伝えられる。どうやら女子の番になったらしい。紐を渡されたため、私がしゃがんで真澄ちゃんの足に結んでいく。

 

 

「よーし、仲良しコンビの実力を見せてやろー!」

「仲良しコンビじゃない」

「えっ、違うの!?私と真澄ちゃん、大親友なのに!?!」

「誰が大親友よこのチビ。勝手にカテゴリーすんな」

「ちぇー、真澄ちゃんはつれないなぁ。意地悪なこと言うなら持ち上げちゃおうかな?」

「何突っ立ってるの萌。大親友コンビの力をあの馬鹿どもに見せつけてやるわよ」

「あっははは!!真澄ちゃん必死!!!」

 

 

 そんな私たちの微笑ましい会話を堀北が心底気に入らなさそうに睨むのを横目に、スタートラインに立つ。ピストルが鳴り、私たちは1歩目を踏み出す。真澄ちゃんは文化部なのに何故か運動能力が高い。しかもその事をあんまり自覚してない。その為、真澄ちゃんが無自覚で動かしていた身体を観察し、この3週間みっちりと鍛え上げてきたのだ。おかげで今は私が多少手を抜く程度でしっかり動きを合わせられるようになっている。出だしから1位を取った私たちはその勢いを殺すことなく走り続ける。スタートダッシュでは2位を走っていた堀北と櫛田のペアだったが、失速したのかいつの間にか2位はCクラスの陸上部の子がいるペアになっていた。1位のまま危なげなくゴールまで走り切り、まだ走っているペアを見る。堀北は足の怪我が響いているのか、どこか櫛田に先導されているようだった。最下位だったBクラスのペアの進路を防ごうとするも、一瞬の隙をつかれ追い抜かれてしまう。こうして、堀北と櫛田のペアは最下位で終わったのだった。思ったよりも堀北の怪我は響いてそうだな。堀北以外にも、須藤くんの気が立っていることを見ると、龍園くんのDクラス潰しの成果は上々と言えるだろう。私はDクラスのテントを見る。今回、この事態に対して清隆は何もしないのだろうか。

 

 

「……ちょっと萌、何ぼーっとしてるの。次の組が来る前にさっさと退散するわよ」

「あ、うん!ごめんごめん!ねーねー真澄ちゃん、勝利のグータッチしよ!」

「しない。調子に乗るな」

「えー、ケチ!折角1位になったのにー!!」

 

 

 二人三脚が終わった後10分休憩が挟まり、騎馬戦、200メートル走と続いてから午後の部に入ることになっている。今のDクラスに私が口を出す利益は何もないし、彼らが自滅するなら願ったり叶ったりだろう。今は少しでも身体を休めて、自分の競技に集中することにしようか。

 

 

 

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