ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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ペーパーシャッフルでは櫛田さんが色々活躍してますが、萌ちゃんはノータッチです。櫛田の過去になんて興味ないし、知らないからね。






ペーパーシャッフル

 

 

 

 期末テストまであと1週間。私たちはそれぞれの教科に教師役を1人か2人つけ、順調に勉強会を進めていた。期末テストの8科目は1日目が現代文、英語、日本史、数学。2日目が化学、生物、世界史、古典である。

 私は現代文と英語担当だ。どうにも得意、とまで言える生徒はいないらしく、有栖ちゃんに兼任をほぼ強制的に任された。勉強会の後は限られたメンバーでの問題作成もあるし、中々ハードな労働である。……私、文系科目そんなに好きじゃないんだけどなあ。

 

 

「なあ赤井。ここの文法、なんで未来形じゃないんだ?こいつ、未来のこと話してるだろ」

「竹本くん、この文章はIfで始まってるでしょ?Ifとか、あとWhen節の中では単純未来を表す未来形は使えないんだよ。『時』とか『条件』を表す接続詞の時は、その副詞節の中では現在形を使ってね」

「あー、なるほどな!なんで間違えてたのか理解がいったわ。サンキュー」

「な、なあもえぴー!現代文の問題終わったんだけど、どうかな!?」

「お、里中くん解くのが早くなってきたねー。ちょっと待ってね、今採点するから」

 

 

 私が里中くんのノートを採点していると、隣の有栖ちゃんから話しかけられる。

 

 

「中々教師役も板に付いてきましたね。今後も定期的に勉強会を開いてはいかがですか?」

「有栖ちゃんが命令したから仕方なーくやってるんだよ、というかこんなの有栖ちゃんが全教科やればいいのに」

「あら、私に過労死させたいのですか?既に4教科受け持っているのですから、文句は受け付けませんよ」

「前に言ったでしょ?私勉強会アレルギーなんだよ、こんな酷使されたら期末テスト始まるまでに死んじゃうよー」

「それは大変ですね。どうか萌さんが当日までにお亡くなりにならないことを祈ります」

「酷い!!非情だよ有栖ちゃん!!私が居なくなってもいいの!??」

「まさか。退屈しのぎが減っては困りますからね。萌さんの言葉が事実であれば、真摯に向き合っていましたよ」

 

 

 有栖ちゃんとの雑談もそこそこに、私は里中くんに採点したノートを返す。

 

 

「はい、ありがとう里中くん。苦手だった漢字もだんだん正答率が上がってきてるね。これならBクラスから難しい問題を出されても半分は正解できるんじゃないかな?」

「ほ、ほんとか!よっし……!!」

「頑張ってる里中くんには花丸あげちゃうね〜」

 

 

 そう言い、付箋に花丸を書いて渡す。学校という施設に入ってから気づいたことなのだが、教師という立場は本来、出来の良い子や成長した子に対して花丸マークを書いてあげるらしい。目に見える勲章があることで生徒たちのモチベーションを操作する、何とも合理的なシステムだ。里中くんは嬉しそうに付箋を受け取ったあと、ノートに大事そうに貼っていた。そんなに頑張ったことを認められたのが嬉しいのだろうか?私には経験がないから分からないけど……。

 

 

「じゃあ今から私が作ってきた問題をやってきてもらうよー。知識として定着してるか見るだけじゃなくて、ちょっと聞き方を変えたような問題もあるから注意してねー」

「…………先程までとは、まるで違う問題だな」

「お、気づいた?さすが鬼頭くん!Bクラスが図書館で問題作成してるのをちょーっとだけ覗かせて貰ったんだよね、本棚の上から」

「いや、あんたそれ司書さんに怒られるでしょ」

「真澄ちゃん、師匠が言ってたんだ。バレなきゃ犯罪じゃないんだよ……」

「はあ?」

 

 

 困惑してる真澄ちゃんは置いといて、私はみんなに問題を配る。Bクラスの問題の丸パクリ……という訳では無いが、傾向はかなり似せて作った。この問題を解けるようになれば、80点以上は軽く取れるだろう。私は問題を解いている生徒たちを観察しながら選別に移る。

 

 

 (応用もできるようになってる子達は何人かいるけど、やっぱり素の学力が低い子は全然基礎で躓いてるなー。清水くん、戸塚くん、吉田くん、西さん……。この子達には後で基礎暗記用のノートを渡しておくか。無理に応用を解かせるのは得策じゃない)

 

 

 有栖ちゃん流に言うなら、『切り捨てるべき駒』と『伸ばすべき駒』は区別すべきだ。教えたところで躓くような奴らに時間を割くだけ無駄。それなら確実に暗記をさせて、他の伸びる要素がある子達を優先的に教えた方が効率がいい。

 

 

「そうだ、みんなお腹すいてない?みんなが問題解いてる間お菓子とかアイス買ってくるよー!」

「え、まじかもえぴー!?めっちゃすいてる!!腹ぺこ!!」

「でも赤井一人で大丈夫なのか?全員分となると結構重くなるだろ」

「だいじょぶだいじょぶ、テキトーに何個か買ってくるから、みんなは問題解いててねー!!」

 

 

 私は勉強会から抜け出し、コンビニには寄らずある場所へ行く。目的を済ませるとすぐに退散し、コンビニで適当な菓子やアイスを買って教室へと戻った。

 

 

 

 __________________

 

 

「あ〜〜〜!!!終わった!!」

「やっと帰れるぜー。じゃ、問題制作組は頑張れよー」

「また明日ねー!!」

「うん、また明日〜。ちゃんと早く寝るんだよー」

 

 

 クラスメイトたちが程なく去ったところで、私たちは問題制作に取り掛かる。問題制作組は私、有栖ちゃん、葛城くん、真田くん、島崎くん、沢田ちゃん、福山ちゃんの7人。基本的な問題は私と有栖ちゃん以外がお互いの得意分野の知恵を集め、問題を作成。ブラッシュアップとして私と有栖ちゃんが悪意のトッピングをする形だ。

 

 

「ねえねえ葛城くん、この日本史の問題簡単すぎない?もっと教科書のコラムに載ってあるようなマイナーな人物にフォーカスした方が絶対正答率低いよ」

「ふふ、それは良いですね。もし先生に何か言われたとしても、教科書に掲載されている範囲内と反論も出来ます」

「……ふむ。確かに多少性格は悪いが、攻撃対象がBクラスとなれば単調な問題では突破されてしまうだろう。承知した、問題を変更しておく」

「なあ、赤井。数学の問題作成で少し手こずってるんだが、手を貸してくれないか?」

「おっけー島崎くん、今行くね!」

 

 

 そんなこんなで問題を作成すること数時間。空は茜色から宵の色を見せ始め、寮に帰らないといけない時間になった為、私たちは集団で帰寮する。

 

 

「はー、今日も働いた働いたー。期末テストまであと1週間もあるなんて信じれないよー」

「問題提出はそれより前に締切ですから、作成の手間が省けるのはもうすぐですよ」

「それはそうだけどさー……葛城くんは疲れないの?」

「確かに授業と並行するのは多少疲れが残る部分もあるが、これもクラスの為と思えば造作もない」

「うへー、ほんとに?私は帰って早く寝たいよー」

 

 

 そんな怠惰な会話をしていると、寮のロビー、ポストの前に人だかりが出来ていることに気づく。……何だろう?なにかあったのかな。私は手頃に聞ける人がいないかと、周りを見渡す。

 

 

「あ、おーい!綾鷹くん!ししょーう!!ねえ、この人だかり何なの?」

「……赤井、その呼び方はやめてくれ……」

「む、赤井殿でござるか。どうにも1年生全員のポストに同じ手紙が送られているらしいでござるよ」

 

 

 私は師匠に近づき、手に持っている4つ折りされたプリントを覗く。そこには印刷された文字でこう書いてあった。

 

 『1年Bクラス、一之瀬帆波が不正にポイントを集めている可能性がある。龍園翔』

 

 

「丁寧に名前まで書いて、どういうつもりだ、あの男は。これが何ひとつ根拠のない話であれば訴えられる可能性もあるだろう」

「少なくとも、多少なり事実を含んでるから実行したってことか?」

「そうでないなら愚策。真実かどうかはさておき、不正を思わせる材料があるのなら責めるスタンスだろう。本来なら名誉毀損で違法もいいところだが、ヤツはそんなことも全く気に留めていない」

「ふふ、面白いですね。実に彼らしい……いえ、彼だからこそ出来るやり方とでも言えましょうか。元々悪名高い彼にとっては、無傷で疑いを立てられるも同然ですから」

 

 

 プリントを見た子達がそれぞれ話し合っていると、学校から噂の人物である龍園くんが帰ってきた。龍園くんの姿を見つけると、Bクラスの男子生徒がすごい勢いで掴みかかる。

 

 

「おい龍園、どういうつもりだ!」

「あ?いきなり何だ?」

「この手紙のことだ!ふざけたもの配りやがって!」

 

 

 なんのことだか理解していなかった様子の龍園くんだったが、手紙を目に通した瞬間肩で笑う。

 

 

「あぁそれか。面白ぇだろ?」

「何が面白いんだよ!やっていい事と悪いことがあるだろ!」

「だったら事実を証明しろよ。一之瀬が不正にポイントを集めていないって事実を」

「それは____」

「どうなんだ?一之瀬」

 

 

 騒ぎを聞きつけてやってきた帆波に対して龍園くんが問いかけ、帆波が応答する。誰もが2人のやり取りに夢中になっている中、隣の少女は何か考え込んでいる様子だった。

 

 

「有栖ちゃん、何か気になることでもあった?」

「……ええ。手紙を目にした際の龍園くんの様子。一瞬でしたが、違和感がありました。恐らく、手紙を入れたのは彼ではないということでしょう」

「そうなの?でも龍園くんの名前が書いてあったし、龍園くんも面白いだろーって言ってたよ?」

「彼は自分にとって面白い方へ進んで乗っかる性質を持っています。それがどれだけ彼の評判を陥れようとも。ですから、これは彼の性格をよく知る第三者によるものと見るべきでしょうね」

「はえー、有栖ちゃんあったまいい〜」

 

 

 ……龍園くんは想定通りだったが、有栖ちゃんの観察力は想像以上だな。流石、天才を自負するだけのことはある。

 

 

「じゃあ龍園くん……じゃなくて、その第三者さんの策略は失敗ってこと?」

「いえ、そうとも言えないでしょう。一之瀬さんはこの学校の誰よりも信頼に厚い生徒と言えます。例え不正疑惑が事実でないと証明されたとしても、疑いをもたれる要素があったと疑念が残る生徒もいる。もし今後同じような噂が立ってしまったら、今以上に疑念が深まることになるでしょうね」

 

 

 私と有栖ちゃんが話していると、帆波が明日学校側へ調査を依頼することで正当性を証明する、ということでその場は解散となった。

 

 

「……ところで萌さん」

「んー?どうしたの、有栖ちゃん」

「先程貴女が師匠とお呼びしていた方とは、どういう関係なのですか?」

「え?師匠は師匠だよ。おーい、ししょー!!有栖ちゃんが呼んでるよー!!師匠の異国語見せつけちゃってよー!!」

「ひょえ!?坂柳殿が(それがし)に何の御用でござろうか!?まさか聖なる裁き(ホーリー・ジャッジメント)が下されようと!?」

「………………萌さん。この方は、何を仰っているのでしょう」

「あはははは!!有栖ちゃん、変な顔!私も八割分かってないけど、なんか面白くない?あとあと、師匠は機械に強いんだよ!ねー?」

「赤井殿のデジタルへの不調和に比べれば皆強くなってしまうと思いますが……まあ、そう褒められるのは悪い気はしないでする、グフフ」

「……萌さん。この方への接触を今後全面的に禁止します。いいですね?」

「えーなんで!?師匠、面白いのに!!!」

「面白くありません。理解も出来ない、まともに話すこともできない方の何が面白いのですか」

「グフぅ!!!クリティカルヒットォ!!!」

 

 

 そして翌日、学校側からは『不正なし』との調査結果が出た。

 

 

 

 __________________

 

 

 

 迎えた期末テスト当日。本番に向けて最後の追い込みをしていると、珍しくインターホンがなる。

 

 

「……?はーい、誰ですかー」

『おはようございます、萌さん。遅刻しないよう、お迎えに来ましたよ』

「え、私の事なんだと思ってるの?試験本番で寝坊なんて………………うん、しないよ?」

『その間は何ですか』

「未来への保険!」

『そんな保険を立てないでください、縁起でもない』

 

 

 寒空の中待たせる訳にも行かないので、身支度をして外に出る。ドアを開けると、制服の上にコートを着た有栖ちゃんが出迎えてくれた。

 

 

「おっはよー有栖ちゃん!今日も寒いねー」

「寒いと感じているのであればブレザーを着用すべきでは?どんなに冷え込んでいてもセーターしか着ない貴女を見ていると、こちらまで寒くなってしまいます」

「ブレザーは生地が硬くて動きずらいんだよねー、あんまり慣れなくて……入学式の時の私はレアだったってことだよー」

 

 

 歩きながら有栖ちゃんを見ると、少し違和感を覚える。……いつもと変わらないはずなのに、なんか違う。何だろう?

 

 

「………何ですか、こちらをじっと見つめて」

「うーん……有栖ちゃん、なんか変わった?何だろう、見た目がすごい………いつも可愛いんだけど、今日はいつもより可愛い!って感じがする!」

「……私はいつも通りです。貴女の勘違いでしょう」

「えー、そうなのかなぁ?」

 

 

 顔を逸らして髪を指でいじり始めた有栖ちゃんを改めて注視する。うーん、何だろう。いつもより髪がまとまってる?いつも綺麗だけど、今日は一段と綺麗な感じがするような……。それになんか、いい匂いもする。

 エレベーターを使って寮のロビーに出ると、隣のエレベーターから降りてきた帆波と出くわす。

 

 

「あ、萌ちゃん!坂柳さんも!おはよう!」

「おはよー帆波。朝から元気だねー」

「おはようございます、一之瀬さん」

「2人は一緒に登校?仲良しだねー」

「帆波も一緒に登校する?有栖ちゃんの歩幅に合わせてもいいなら、だけど」

「え?それは全然いいけど……坂柳さんはいいのかな?」

「ええ、構いませんよ。貴方とはお話したいと思っていましたので」

 

 

 杖を用いているため自然と遅くなる有栖ちゃんの歩きに合わせ、私たちは横一列に並ぶ。それにしても、AクラスのリーダーとBクラスのリーダーに挟まれてるって言うのは中々イカつい光景だな。そう思っていると、有栖ちゃんが話し始めた。

 

 

「一之瀬さん。今日は期末テストですね。Aクラスの作成した問題を解かれると思いますが、心境は如何ですか?」

「あはは、直球だねー。皆で頑張って勉強してきたから、八割くらいは取れるんじゃないかな?」

「そうですか、それは良かったです。……ですが一之瀬さん、宣言いたしましょう。今回私と萌さんは正式にペアとなりました。あなたがたがどれ程知恵を集めて難問を揃えたとしても___」

 

 

 有栖ちゃんは私の方を見てフッと笑ったあと、帆波の目を見て一言。

 

 

「___完璧に満点を取って捻り潰して差し上げます。どうぞ、期待していてください」

「…………あはは、やっぱり坂柳さんには敵わないな。でも、私たちも負けないように頑張るよ!」

 

 

 一瞬面食らった様子の帆波だったが、懸命に応えてみせた。やがて教室が見えてきたため、別れを告げる。

 さて、結果はどうなるかな。

 程なくして真嶋先生が入ってきたため、勉強道具をしまう。

 

 

「これより期末テストを行う。1時間目は現代文だ。開始の合図まで用紙を表にひっくり返すことは禁止されている。注意するように」

 

 

 いつものように先頭の生徒に回させるわけではなく、真嶋先生が一人一人の机に問題用紙を置いていく。

 

 

「試験時間は50分。体調不良やトイレは極力我慢するように。どうしても我慢できない場合には挙手をしてから申告するように。それ以外での途中退室は一切認められない。……では、始め」

 

 

 テストが始まり、私たちは一斉に用紙を表に返す。おお、思ったより正統派な問題ばかりだな。小難しい問題もチラホラあるが、これならクラスの学力下位組も赤点の心配はなさそうだ。私は隣の有栖ちゃんがペンを動かし始めたのを感じ、問題を解き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結果はAクラスの勝利ですか、退屈な勝負でしたね」

「平均点5点差だよ?もっと喜んでいいんじゃない?」

「勝利は当然です。ですが、貴女のやる気が続いてくれて良かったですね」

「約束は守るいい女だからね〜、私は!ねえねえ有栖ちゃん、頭も使ったことだしパフェ食べに行こうよ!!期間限定でデラックス山盛り苺パフェが出てるんだって!完食したら1万プライベートポイント!」

「……いいでしょう。貴女が無様に苦しんでいる姿を特等席で見せてもらいましょうか」

「えーひどい!!絶対完食するからねー!!」

 

 

 

……さあ。私が有栖ちゃんの遊び相手になっている間に、清隆は早くカタをつけてくれるといいんだけど。

 

 

 

 

 







原作との相違点①
綾小路くんと遊んで貰えない代わりに萌ちゃんに遊んでもらっているため、坂柳さんが不必要にBクラスを攻撃しない


萌ちゃんの苦手な教科:英語
理由→機械がエラーを吐いた時に英語の長文羅列の画面になるため、高育に入ってから苦手意識がついた。



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