ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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あと1話書いて二学期は終了になります。意外と早かった……。
冬休みは色々楽しいイベントがありますから、いっぱいイチャつかせたいですね。





面談

 

 

 

 二学期も残すところあと僅か。校内は、長かった二学期の終わりを惜しむような、あるいは冬休みという娯楽を前に浮き足立つような、独特の賑やかさに包まれていた。それはAクラスも例外ではなく、クラスメイトたちは冬休みの予定をたてるのに忙しそうだ。

 

 

「ねえ有栖ちゃん、なんで冬休みって夏休みに比べて短いの?夏休みは1ヶ月半近くあるのに冬休みは2週間くらいしかないじゃん?これって冬さんに対する学校側からの挑戦状?」

「勝手に冬を擬人化するのはおやめなさい。正確には夏休みと冬休みの合計日数のみ、各都道府県の教育委員会によって定められているそうですよ。事実、北海道は冬休みが1ヶ月近くあるそうですし」

「え、そうなの!?じゃあここもそうしようよ、冬休みだけ短いくせに課題の量は多いから全然休む感じしないよー」

「どれだけ休みが長かろうと最後に慌ててやる貴女が何を言うのですか。夏休み、私に泣きついてきたのはどこのどなたでしょうね」

「えへ、褒められると照れるなー」

「えへ、じゃありません。褒めてもいません」

「……あ、そういえばクラスの子からそろそろスマホの連絡見てーって言われてたんだった」

 

 

 毒づく有栖ちゃんを無視して、私は学生証端末を取り出す。慣れない手つきながらもどうにかチャットアプリを開くと、そこには大量の未読通知が溜まっていた。思わず固まり、画面を暗転させて目を閉じる。

 

 

「………………私は何も見なかった」

「現実逃避は醜いですよ。大体、貴女が普段からマメにスマホを見ていないのが悪いのでしょう。私の連絡も尽く無視されますし」

「だ、だって文字入力しても私が生成したい文章と全然違う文字になるし!フリック入力に時間かかるし!変なボタン押してすぐに変な画面になっちゃうし!広告の×ボタン押そうと思ったら小さすぎて別の画面に行っちゃうし!!いい事ないよ機械なんて!!」

 

 

 …………あれ、なんか連打してたら画面が真っ黒になってグルグルになっちゃった。私が思わず眉間に皺を寄せて固まっていると、有栖ちゃんが呆れたように尋ねてきた。

 

 

「……それで、今度はそのスマホを相手にどのような格闘をされているのですか?」

「あのね、有栖ちゃん。二学期の終業式前に、クラスのみんなで『冬休みの予定を共有するグループトーク』っていうのを作ってたじゃん?」

「ええ、そうですね」

「そこに私も招待されてたんだけど……なんかボタンをいっぱい押したら、急に画面が真っ黒になって、なんか英語の文字がいっぱい出てきてフリーズしちゃったんだよ!これってアレかな?!他クラスのハッキングってやつ!?!?冬休み前に私を社会的に抹殺しようとしてるのかな!?」

「萌さん。一度落ち着いて、その画面に表示されている文字を貴女のその優秀な頭脳で読みなさい。『System Update. Please do not turn off the power.』……システムアップデート中ですから電源を切るな、と書かれているだけです。どこをどう解釈すれば、他クラスのハッキングになるのですか。彼らを下らない都市伝説の主犯に仕立て上げないであげてください」

「え?アップデート?……壊れたんじゃないの?」

「ただの定期的な自動更新です。貴女が画面の通知を読まずに、適当に連打して承認してしまったのでしょう。貴女のデジタル機器に対する被害妄想は、二学期の終了を目前にしてもなお進化の兆しが見えませんね」

 

 

 私が有栖ちゃんと話していると、真嶋先生が近づいてくる。朝から視線を送ってきていたが、放課後の今接触してきたか。

 

 

「赤井。今から少しいいか」

「……何か用ですかー?私、まだ何も壊してないと思うんですけど」

「頼むから何も壊さないでくれ、後処理は大変なんだ。……そうじゃなくてな、少し着いてきて欲しい。放課後に予定があるなら全て断ってきてくれ」

「真嶋先生、萌さんのみ連れて行く理由は何でしょう?私には教えてくださらないのでしょうか」

「悪いが教えることは出来ない。ついてくることもな」

「そうですか、それは残念です」

 

 

 真嶋先生が歩き出したため、私も有栖ちゃんに別れを告げて真嶋先生を追いかける。

 

 

「せんせー、どこ行くんですか?」

「応接室だ。俺もお前を集めろ、としか命じられていないが、非常に大切な案件らしい。……ついたぞ。俺は席を外すから中に入るといい」

「…………??」

 

 

 真嶋先生が去っていったため、応接室の扉をノックしてから開ける。赤井萌としての呑気な雰囲気を纏っていたが、目に入ってきた光景に戦慄し、嫌悪し__瞬時に切り替える。

 

 

「……来たか。本当にここにいるとはな、萌」

「…………先生。何か、御用ですか」

「清隆も揃っていることから推測できるだろう。自主退学をしろ、萌。退学届の用意はもう済んでいる」

「私が戻る理由はどこにも無いと思われますが」

「普通ならそうだな。だがお前は唯一、清隆と遜色ない成績を叩き収めた。お前が手を抜いたことも見抜いている」

「そうですね、私は確実に脱落する成績を教官に提示し続けたはずですから。ですが、それは受理されなかった」

「挙句の果て施設から逃げ出すとは、愚かな奴だ。おまえを逃がすような不始末を犯した教官がどうなったか、分かるか?」

「……勝手な処罰を与えたのでしょう。()()のように」

 

 

 私は初めて、嫌悪感を顕にして正面に座っている男___綾小路篤臣を睨む。

 既に話し込んでいたのか、椅子には綾小路先生が座った跡が深く刻まれている。

 

 

「つくづく余計な手間をかけさせる奴等だ。清隆同様、冗談を好むようになったのか?」

「これで分かっただろ。再三言うが、あんたの命令が絶対だったのはホワイトルームだけの話だ。そこを出た今、オレたちが命令を聞く必要もない」

 

 

 綾小路先生は深く息を吐き、強い圧をこちらにかけてくる。

 

 

「既にホワイトルームは再稼働している。今度は邪魔の入らない完璧な計画だ。遅れを取り戻せるだけの準備もしている」

「なら既にあんたの意思を受け継ぐ者たちは大勢いるってことだろ。なんでオレや萌にこだわる」

「確かに計画は再開し順調だ。だが清隆、おまえほどの逸材はまだ現れていない」

「……それなら、清隆だけ連れ戻せば良いのではないでしょうか。先生の嫌う“無駄”を私にかける理由が理解できませんね」

「清隆を俺の関係者として政府に出せば、身びいきとして批判を浴びるだろう。清隆をホワイトルームの後継者に仕立て、お前を俺が上にあがるための立役者にする」

「相変わらず、貴方のことは好きになれなさそうです」

「好きか嫌いかなど関係ない。最後の言葉だ、清隆、萌。熟考した上で答えるといい。自分からの意志でこの学校を去るのと、親の手で強制的に去る。どちらが希望だ?」

 

 

 親というのは何の冗談だろうか。自分が育て上げたから親権があると、そう主張したいのだろうか。想像以上に、この男は私たちに固執しているらしい。……いや、最悪清隆さえ戻れば何とかなるだろう。私はついでという事だ。こちらが沈黙を貫いていると、綾小路先生は早々に結論をだす。もう私は、この男と言葉を交わすつもりもない。

 

 

「……戻るつもりはないか」

「あんたに救いがあるかは知らないが、オレは学ぶことを放棄したつもりはない。方針は違えど、この学校だって人材の育成をしていることに変わりはない。そこに期待するんだな」

「バカバカしい。この学校がどんな場所なかおまえたちは全く理解していない。ここは烏合の衆の小屋に過ぎない。清隆、おまえのクラスにもいるはずだ、救いようのない底辺共が」

「底辺?そうでもないさ。人間が平等であるか否かを問うひとつの答えが見つかるかもしれない場所だ。なかなか面白い方針だと思う」

「無能が天才と同じ土俵に立つことが出来るようになる、とでも?」

「そうあってほしい」

「どこまでも俺の方針に逆らいたいようだな」

「もう話は終わりでいいだろ。オレも、萌も、あんたも。この話はいつまでも平行線を辿ると気づいているはずだ」

 

 

 話が切り上げられる気配を感じ、私は扉に手をかける。するとそのタイミングでちょうど、応接室にノックが響き渡った。

 

 

「失礼します」

 

 

 ゆっくりと扉が開き、見たこともない男が姿を現す。40代近くだろうか。男が開けた扉とは逆の扉に私が手をかけていることに気づき、こちらに声をかけてくる。

 

 

「出ようとしていたところだったかな。ごめんね」

「……いえ、こちらこそ失礼しました」

「帰るのは少しだけ待って貰えないかい?」

 

 

 そう私に笑いかけると、男は先生の方へと向き深々と頭を下げた。

 

 

「お久しぶりです。綾小路先生」

「……坂柳。随分と懐かしい顔だな。7、8年ぶりか」

「父から理事長の座を引き継いで、もうそれくらいになりますか。早いものです」

 

 

 坂柳?……坂柳有栖の関係者だろうか。清隆も同じ疑問を持ったようで、理事長を名乗った男を観察している。

 

 

「君が綾小路先生の……確か清隆くんだったね。初めまして」

「どうも。こちらの話は終わったのでオレは帰ります」

「あぁ少し待ってもらえるかな。綾小路先生と清隆くん、そして君も交えて少し話をしたくてね」

 

 

 そう言い、私の方に改めて向き直してくる。

 

 

「初めまして、萌ちゃん。有栖から話は聞いているよ。いつも有栖と仲良くしてくれてありがとう」

「……いえ。こちらが仲良くしていただいていますから」

「立ち話もなんだし、君たちも座って」

 

 

 理事長に言われては断ることもできず、私たちはソファーへと座らされる。

 

 

「校長から話は伺いました。彼らを退学にさせたいとの意向でしたね」

「そうだ。親がそれを希望している以上、学校側は直ちに遂行する必要がある」

「それは違います。確かに生徒のご両親には大きな発言力があります。両親が退学を切望された場合、お子さんの意見が尊重されないこともあるでしょう。しかし、それは様々な理由を考慮しての話です。例として言えば、極端にひどい虐めを受けている、などの事実があれば話も違うでしょう。そういった事実はありますか、清隆くん、萌ちゃん」

「全く」

「一切ありません」

「茶番だ。こちらが問題にしているのは別のものだ。親の許可なく入学した高校を辞めさせると言っているだけだ」

「高校は義務教育ではありません。お子さんがどの学校に進学するかは自由です。無論、進学に伴う教育費等を親が払う必要があるのであれば、それも通りませんが。少なくともこの学校では政府が全額を負担しているので金額による不安材料はありません。あくまでも生徒の自主性が優先されます」

 

 

 少なくとも、生徒が希望しない限り自主退学は受理されないということだ。まあ、自主性を伴わない自主退学とは?というもっともな疑問でもあるが。私はこれ以上同席する必要は無いと判断し、席を立つ。

 

 

「待て萌。どこに行く」

「帰るべき場所に帰るまでですよ。生憎、私には待っているお友達がいるので」

「友達だと?笑わせるな。おまえの帰るべき場所はホワイトルームだ」

「理事長とのお話で貴方に権力がないことはよく理解できました。貴方お得意の権力行使も、おそらくは制限されているのでしょう。であれば、この場に長居は不要です。私は清隆と違って、貴方の子供でも親族でもない」

「……好きにしろ。おまえとの話は終わった」

 

 

 ありがたいお言葉を貰ったため、私は応接室を後にする。廊下に出ると少し離れたところで茶柱先生が立っていた。話し合いが終わるのを待っているのだろうか。それにしたって、一担任が待つほどの事でもない。しかし茶柱先生はどこかソワソワしたような、焦りを隠せないような様子を持っている。……清隆が気になるのか。私は体育祭終わりに聞いた清隆の話を思い出す。

 茶柱先生はこちらの存在に気づくと、話しかけてきた。

 

 

「赤井。話し合いは終わったのか」

「いいえ、まだもう少しかかるのではないでしょうか?」

「……そうか」

「茶柱先生」

 

 

 私は茶柱先生の前を通り過ぎる際、笑顔で会釈をする。

 

 

「清隆を使って何をしようが勝手ですが、あまり

私たちの過去(こちら側)” に踏み込まないでくださいね。すっごく、迷惑です」

 

 

 動揺を見せる茶柱先生を横目に、私はその場を去っていった。 誰もいなくなった教室へと戻り、帰り支度をしてカバンを持つ。……親、か。

 

 

「…………嫌なことを思い出しましたね」

 

 

 私は自分のサイドテール___正確には、髪を束ねているリボンを無意識に触り、自分の部屋へと帰っていった。

 

 

 

 






ペーパーシャッフル後クラスポイント推移

Aクラス: 100CP→1194CP
Bクラス: -100CP→603CP
Cクラス: -200CP→292CP(重大な違反行為により追加で-100CP)
Dクラス: 100CP→262CP


Cクラスの重大な違反行為ってマジで何なんだ。





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