どうも、前書きに本文を書いていたイノセです。コピーペーストの機能があってよかったです、そうでなければ丸一日は絶望してました。
___入学式を終えた私たちはまた、Aクラスの教室へと戻ってきていた。ふむ、どうやら先程のスキンヘッド君が提案した自己紹介は少し進んだようで、2、3組ではあるがもう集団ができている。やはりあそこは自己紹介に乗り気ではなくとも参加すべきだったのか……。そう考えていると、救いの一声がかかった。
「そうだ、入学式は既に終わったが先生が来るまで時間がある。どうだ、もし良ければ先程自己紹介してない者達も多い事だし、自己紹介の続きをしないか」
そんなスキンヘッド君の提案に、男子中心に賛同の声が上がる。どうやらある程度の人望を獲得したようだ。それは何より。すると隣の有栖ちゃんが、音を大きくたてながら椅子から立ち上がった。
「それでは先手は私からでよろしいでしょうか?私は坂柳有栖と言います。先天性心疾患を患っていて見ての通り杖を使用しています。体育などの身体面ではお役に立てませんが、それ以外はお任せ下さい」
そう完璧な自己紹介をした有栖ちゃん。周りからの評価は高いようで、可愛い、とか、天使、とか。色々賞賛の声が聞こえてくる。まあ確かに、傍から見たら有栖ちゃんはすごく可愛い。日本人離れした美貌に、低身長であることから掻き立てられる庇護欲、なんてものもありそ……!?
「あぶなっ」
「む、避けられましたか」
「そりゃ痛いからね、それ」
「…………それでは次は萌さん、どうぞ?」
「え?なんで指名制?絶対これそういうのじゃないよね」
……さては有栖ちゃん、意外と負けず嫌いだな?指名されたかにはやらないわけにもいかない、というか指名されてる時点で不自然なのにそれでやらないというのは不自然極まりない気がするので観念して私は立つ。うん、私は普通の女子高校生、赤井萌。青春を謳歌する女……!!
「……えーっと、何故かご指名されました。赤井萌でーす。得意なことはスケボーとか運動全般かな。面白いことが好きなので、たくさん遊んだり話しかけたりしてくださーい」
……ふう。何とか乗り切った。周りの反応や拍手から察するに、失敗はしてないみたいで安心した。その後何人かが自己紹介を終えたあと、前の戸がガラガラと開き、ガタイのいい男の人が入ってきた。
「初めまして、新入生諸君。今日からAクラスの担任を務める真嶋智也だ。まず初めにこの学校はクラス替えが存在しない。よって卒業までの3年間、お前らの担任は私となる。以後よろしく頼むぞ。そして今からこの学校に関する特殊なルールを説明する」
そう真嶋先生が言い終わると、資料と共に一人一人に携帯のような機械が渡される。……ふむ、大切なお話そうだ。私は持っているペンをカチッと押す。
「まず初めに、この学校は全寮制となる。在学中は敷地外へ出ること、そして外部との連絡を制限している。しかし安心してくれ、学校の敷地内にはあらゆる施設が完備している。不便を感じることはまずないだろう」
ふむ、全寮制というのは聞いていたけど……まるで小さな都市みたいだな。それで、この機械は……。
「そしてこの機械。今渡したのは、学生証の代わりとなるものだ。身分証であると同時に、敷地内の施設を利用するのに必要となる。くれぐれもなくさないように。学生証端末にはポイントが保有、蓄積されており、これがお金の代わりとなる。この学校では、あらゆる物がポイントで買うことが出来る。このポイントは毎月一日に支給されることになっている。晴れて入学した君たちには、現在既に10万ポイントが支給されている」
わっとざわつき出すAクラスの生徒たち。……まあ臨時収入とはいえ、10万円なんて大金、驚くには十分すぎる額だろう。実際私も少し驚いている。
「支給額の多さに驚いただろうが、この学校は実力で生徒を測る。この学校に入学を果たしたお前達には、それだけの価値があると評価された。遠慮なく自由に使うといい。使う必要の無いポイントは誰かに譲渡するのも構わない。無論、カツアゲや横領の類いは禁止だ。……さて、ここまでで何か質問があるか?」
この質問に、2人の生徒が手を挙げる。
「ふむ。では葛城から」
「先生は毎月一日にポイントが支給されると仰っていましたが、来月支給される額はいくらになるのでしょうか?」
「……それはまだ言えない。あくまで、君たち次第だ」
「……なるほど、ありがとうございます」
「次は坂柳」
「はい。先程先生はあらゆるものをポイントで購入できると仰っていましたが、限度はあるのでしょうか?」
「もちろんある。基本的な売買は常識の範囲内だ。例えば、人の命などは当たり前だがポイントで買ったり売ったりすることはできない」
「それはそうですね、ありがとうございます」
「他には……ないようだな。今日はこれまで。後は各自、好きなようにしてよしとする」
……こうして、長い長い真嶋先生のお話が終わった。私はペンを筆箱にしまう。
「萌さん、なにか掴めましたか?」
「ん?んーいや、お生憎様。私はそんなに頭良くないし」
「頭が働かない方は真っ先に真嶋先生の話を録音しないと思いますが?」
「いやいやー、これが後々私にとって必要になるかもしれないじゃん?ルール忘れちゃった時とか」
「……白々しい方ですね」
「はは、どの口が言うんだか」
そう皮肉を言った直後、私の背中に悪寒が走った。これは、そう。いうなれば私にとって面倒くさいことになる予感。それとなくクラスメイトの動きを見てみると、明らかにこちらに向かってくる挙動をしていた。正確には私に、ではなく私の隣の白々しいお嬢様だけど……っと、あぶなっ!?だからその杖痛いんだって。
「……よし、じゃあ有栖ちゃん、また!」
「はい?……って、ちょっと萌さん?!」
そう言い残し私は教室を一目散に出る。危ない危ない、政権争いに参加させられるところだったよ……。私の足をロックオンしていた杖は簡単に椅子の足の間から抜け出せないようにしておいたので、多分歩いても追いつかれることはないだろう。
「……んー、これからどうし
敷地内を見てまわるのもいいが、この学校で先輩となる人達の階も見ておきたい。私たちの教室や廊下にあった監視カメラは先輩たちのところにも……あるみたいだな。なんなら階段にも。
「……徹底した監視ぶり。まるで刑務所
苦笑いした私はさらに上の階、3年生の階へと上がる。ふむ、ここも私達の階とそんなに変わらなさそう……。
「そこのお前。何をしている。ここは1年生の階ではないぞ」
「…………生徒会長さん、でしたっけ」
入学式の時、壇上にあがってスピーチをしていた眼鏡の人。流石に人の顔を覚えるのが苦手な私でも独特な威圧感やオーラを放たれればいやでも覚える。隣の紫おだんごの人は誰かわからないけど。
「いえいえ、学校探検をしているだけですのでご安心を〜」
「学校探検、か。ここの学校の資料に学校の全体図が乗っていたはずだが?」
「それだけじゃ分からないところもあるじゃないですか〜、例えば生徒会長さんの上にある監視カメラの位置とか。先輩方の様子とか」
「……なるほど。面白い。既にSシステムについて勘づいているな?」
「Sシステム……あぁ、この学校の特殊なルール、とかいうやつですか。いやあどうでしょう」
「隠さずに話せ。お前はどこまで理解している」
「…………この学校は実力で生徒をはかる。そして今日支給された10万円、このポイントが来月全く同じ額が支給されるとは限らない。この2つから考えられることは、生徒の実力をはかる試験や何らかのイベントのようなものが学校側から下され、その結果に応じてクラスや個人が貰えるポイントが大きく左右される……そんなところですかね?」
個人の見解を話すと、紫おだんごの先輩が驚いたように口を開ける。わかりやすい反応する人だな、この人。
「ふむ、完全に理解したとまではいっていないようだが……今日だけでここまで理解し行動に移しているとは、実に興味深い。……橘」
「は、はい!」
「書記の席が一つ空いていたな?」
「はい、空いていますが……」
「お前、名前はなんと言う?」
「赤井萌、普通の女子高校生でーす。いえーい」
「そうか、赤井。お前が望むのなら、この書記の席をお前に譲ってやってもいい」
「会長!?本気ですか!?」
「不服か?」
「……いえ…会長がそう仰るなら、私に異存はありません」
「いやー、嬉しい提案ですけど私、生徒会には微塵も興味が無いので。紫おだんごちゃん先輩にも歓迎されてなさそうですしー」
「誰が紫おだんごちゃん先輩ですか!?私の名前は橘茜です!!」
「え?でも似合ってますよ、おだんごちゃん先輩」
「……ありがとうございます……ってだから!私の名前は橘茜です!タ・チ・バ・ナ・ア・カ・ネ!」
必死の訴えに思わず笑う。何だこの人、面白い。こういう反応をする人は今まで身近にいなかったし少し新鮮で面白い。
「……なるほど、なら今はやめておこう。だが興味を持ったらいつでも生徒会の扉を叩け」
「……考えておきますね、茜ちゃん先輩にも会いたいですし」
「だから……って、な、名前になってる?でもちゃん付けは余計です!!」
……やっぱり面白い、この人。生徒会長さんもやれやれと言った様子で見ている。
「自己紹介は必要ないと思うが、改めて。堀北学だ」
「生徒会長さんって呼んだ方がいいですか?それとも堀北先輩?」
「お前の好きにしろ」
「じゃあ生徒会長さんで。あ、よければおふた方の連絡先、教えて貰ってもいいですか?」
「連絡先ですか?それくらいなら構いませんよ」
「そうだな、渡しておこう」
やった。思わぬ収穫だけど、2人の連絡先ゲット。
……ってあれ?もしかして私、同級生はおろかこの2人以外にまだ連絡先交換してる人、いない?……これは大変だ。今すぐ有栖ちゃんのところに向かおう。……といってもどうせ移動してるだろうし、どうしようか……。そう悩んでいると、今日は入学式だからと気負って着たブレザーの胸ポケットに紙が入っていることに気づく。……これは。
「有栖ちゃんの、連絡先。……いつの間に?」
……末恐ろしい人だ。全く。
何はともあれ、これはありがたい。早速有栖ちゃんに連絡するとしよう。そう思い一応校舎の外に出てから電話をかける。
「あー、もしもし?有栖ちゃん?」
『萌さんですか。どうやら胸ポケットの紙には気がついたようですね』
「いつの間に入れてたんだか……ってそんなことより、今どこにいるの?」
『今はケヤキモール内のカフェにいますよ。場所は……今送りますね』
「それはどーも。今から向かうね〜」
そう言って一方的に通話を切る。えっと……ここかはそう遠くないな。まあ有栖ちゃんの足のことを考えたら妥当な距離か。待たせてたら悪いし、このくらいの距離なら走ればすぐだから運動がてら走ってくか。
夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)
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坂柳有栖
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