ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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いつも感想ありがとうございます。モチベになってます。

私は坂柳さんが推しではありますけど全肯定というわけではないので、坂柳さんのことが嫌いな人の意見もよく分かります。どうにか、坂柳さんの魅力が出せるように書いていきたいですね。






傲慢な訪問者

 

 

 

 冬休みを目前に控えたある日。放課後のAクラスに、ある噂が流れてきた。

 

 

「おい、龍園がDクラスにカチコミに行ったらしいぞ!」

「龍園が?それまたなんでだよ」

「分かんないけど、高円寺のこと追いかけていったらしいぞ」

 

 

 そんな話をするクラスメイトたち。隣の有栖ちゃんは面白いものを見つけたとばかりに笑みを深め、いつもの側近たちに声をかけた。

 

 

「私たちも向かいましょうか。何やら面白いクリスマスパーティーの企画を立てられているそうですし」

「は?なんで私も……」

「まあまあ、龍園の不穏な動きは観察しといて損はないだろ?な、鬼頭」

「龍園なら実力行使に出かねん。その時は……俺が対処する」

 

 

 面倒事に首を突っ込みたがるなんて、相変わらず理解できない人達だ。巻き込まれないよう、私は早々に席を立つ。

 

 

「おや、萌さん。どちらに行かれるのですか?貴女もついてくるのですよ」

「あはは、冗談はやめてよ。相手は龍園くんでしょ?私か弱い乙女だから、暴力なんてされたら困っちゃうよー」

「貴女がか弱いとは、面白い冗談ですね」

「とにかく私はパスー。今日はもう疲れたから部屋で寝るって決めてるんだよ、じゃあね有栖ちゃん」

「…………お待ちなさい」

 

 

 有栖ちゃんに背中を向けると、セーターの裾を掴まれる。……何だ?そんなに龍園くんたちのところに連れていきたいのか?私が怪訝そうな顔をしていると、有栖ちゃんは言葉を紡ぐ。

 

 

「そんな顔をしなくとも、貴女を無理やり龍園くんのところに連れていくような真似はしませんよ。私が聞きたいのは冬休みの予定についてです」

「冬休みの予定?というと?」

「12月24日と25日は空いていますか?」

「24日は空いてると思うけど、25日は予定があるかな」

「…………ほう。どなたとでしょう」

「それは秘密ー。でも何で?24日空けとけばいい?」

「ええ。1日空けておいてください」

「おっけー、じゃあまたね有栖ちゃん」

 

 

 何だったんだろう?冬休みは日にち指定で予定を入れてくる人が多いなあ。今までは『空いてる日いつ?』とか『今週のどっか遊び行こ!』とかだったのに。まあいいや、予定を空けておけば文句はないだろう。私は今度こそ教室を出て、自分の部屋へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………はずだったのだが。

 

 

「………櫛田。せめて事前に連絡して欲しかったのですが」

「うっさい、黙って」

 

 

 部屋にアポイント無しで突撃してきた櫛田によって私の平穏は音もなく崩れていき、何故か今はベッドの上で櫛田が重なるように座っている。いや、正確にはベッドに座って足を伸ばしている私の上から重なりながらうつ伏せで寝っ転がり、その顔を私の胸元に埋めて抱き枕のようにされている。

 

 

「はぁ、ほんと腹立つ…………堀北死ね、綾小路も消えろ」

「相変わらず、ストレスが溜まった時の行動は昔から変わりませんね」

「何、悪い?」

「いいえ、面白いなと思ってるだけです」

 

 

 昔から櫛田はストレスを溜め込みすぎるとこうやって私を抱きしめ胸元に顔を埋める。そしてその状態のまま愚痴を吐き出すことで、自分の中で清算するらしい。私は図書館から借りた本を片手で読みながら、もう片方の手で櫛田の頭を撫でる。

 

 

「……それ、何読んでんの」

「恋愛小説です。『高慢と偏見』。ジェイン・オースティンの誰もが知る名作だと、椎名から薦められました。知ってますか?」

「知るわけないでしょ。てか、あんたが恋愛小説?いつも小難しい本ばっか読んでたくせに?」

「最近は“感情”というものをもっと深く知ってみたくなりまして。人間の情動が顕になるような、そんな本を読んでるんです」

「相変わらず変なやつ……」

 

 

 その変なやつに感情の処理を任せてる奴が何を言うのか、と思うが口には出さないでおく。愚痴を言っている時の櫛田を怒らせたら、色々と後で面倒なのだ。

 

 

「ていうかいつも思うけど、あんたの胸硬すぎ。もっと肉つけてくんない?」

「おかしいですね。筋肉なら誰にも負けないと自負しているのですが」

「女っぽさないのよあんたの身体。そっちのクラスの六角並みに貧相な見た目」

「その貧相な身体を使っておいてよく文句が言えますね」

「うるさい…………はぁ〜〜〜〜〜〜〜」

 

 

 深く、長くため息をつく櫛田。頭をグリグリと動かすため、髪が首筋に掠れて若干くすぐったい。

 私は櫛田に対して、何があったのか?やどうしてほしい?などは聞かない。自分が主導権を握りたいプライドの塊である櫛田にとって、それは逆効果だからだ。善意から行われる聴取は、人によっては押し付けがましく感じるだろう。櫛田にとってそれは、上から目線で聞かれている、何ともウザったい行為になる。私が沈黙したまま本を読んでいると、少し気持ちが収まったのか櫛田が顔を上げた。

 

 

「はぁ……無人島試験の前にあんたがいることを知ってれば、綾小路にも目撃されずに済んだのに」

「一応出会ってはいましたよ。確か、一学期中間テスト前の勉強会の時に」

「あの時は堀北と再会したことしか頭になかったのよ……あぁ、思い出しても腹が立つ。ほんっと最悪」

「というか、きよ……綾小路にも“そっち”がバレてるんですか?」

「………外で愚痴吐いてたら見つかったのよ。黙らせたから一旦はいいけど、あいつも退学させないとね」

「次から次へと追い込む相手が増えて大変ですね、応援してます」

「その態度ムカつくんだけど。このスカシポンコツが」

 

 

 怒りを隠そうともせず、眉をひそめて頬を抓られる。

 

 

いひゃい(痛い)いはいれすふひは(痛いです櫛田)

「はは、変な顔。てかあんた、Dクラスの黒幕って知ってる?」

「黒幕?龍園が躍起になって探しているっていう人のことですか?」

「そう。私はペーパーシャッフルで龍園に裏切られたのはそいつのせいだと思ってるんだけど」

「まずペーパーシャッフルで龍園と結託していたというのが初耳なんですが」

「こっちが作成した問題文を見せる代わりにあっちが作成した問題文を見せるって約束だったの。だけど堀北のヤツに対策されてたらしくて、それが龍園にバレて私がやられたって訳」

「それはまた…………」

 

 

 随分と馬鹿な真似を。つまりクラスを裏切ってまで自分の利益を得ようとした結果、それを逆手に取られて反撃されたという事だ。そんな事を画策してるなら初日から体勢を万全にしておけば良かったのに、とも思うが、櫛田には無理だろうな。櫛田は昔から、入れ込むと周りが見えなくなる。少しは頭が回るはずなのだが、肝心なところで致命的なまでに馬鹿なのだ。

 

 

「あんた、失礼なこと考えてるでしょ」

かんふぁえてないれす(考えてないです)いはいれふ(痛いです)

 

 

 どうして女の勘というものはこうも鋭いのか。同じ女性なハズなのにこれだけは一向に分からない。

 

 

「はぁ……いっそのことあんたが堀北と綾小路を退学にさせてくれたらいいのに」

「嫌ですよ、私は面倒事を嫌うんです。というか聞いている限りかなり大胆に動いてますが、大丈夫なんですか?」

「足元をすくわれるって話?ま、そこら辺は大丈夫でしょ。そうならないように普段から気持ち悪い奴らにも愛想振りまいてるわけだし」

「あまり特定の人物に固執しすぎるのも良くないと思いますけど」

「じゃああんたが退学にさせてよ」

「この話は平行線ですね」

 

 

 第12章が終わったところで私は本を閉じ、改めて櫛田に向き合う。すると櫛田はどこか拗ねたような顔をした後、また顔を顰めた。

 

 

「……お腹空いたんだけど」

「清々しいまでに我儘な客人ですね……。夕食を作りますから、そこからどいてください」

 

 

 意外にも素直にどいてくれたため、キッチンに移動して冷蔵庫を適当に漁る。櫛田はスマホをいじりながらこちらに来て、キッチンの空いているスペースに椅子を持ってきて座った。

 

 

「相変わらず色のない部屋。もっと女子っぽくしないわけ?」

「私の部屋に尋ねてくるのは櫛田くらいなものですから。彩る必要がないだけですよ」

「…………ふーん」

 

 

 どこか嬉しそうに髪をいじり出す。何を作ろうか。あんまり材料はないし、チャーハンでも作ろうかな。

 

 

「そういえば、ちゃんと冬休み……25日の予定はあけてるわけ?」

「ええ、1ヶ月前に言われれば流石に。ですが何をするんですか?また何かお買い物の荷物持ちにされるのです?」

「まあ似たようなもん。映画も観に行くから」

「いつも通り、ついて行くだけで良さそうですね。……はい、出来ましたよ」

 

 

 出来上がったチャーハンをお皿に盛り付け、部屋の机へと移動する。それにしても、不思議なものだ。私がまたこうして、他人のために料理を振る舞う機会ができるとは。

 

 

「いただきます。……ムカつくけど、ほんとにあんたの料理は美味しいわよね」

「褒めていただいてありがとうございます。最初は慣れませんでしたけどね。回数を重ねるうちに何とか」

「ふーん……」

「櫛田。1つ、貴方に聞きたいことがあるのですが」

「何」

「所謂……『友人』と『恋人』?その感情の境界線は何なのでしょう。どうやって、友愛から恋愛に変わるのですか?」

「……は?何、急に。頭でも打ったの?」

「私はいつも正常ですよ。この学校に入ってから、少し気になったんです。櫛田ならそういう方面にも詳しいかと思いまして」

「何それ、思春期?……私だって付き合ったこととかないから人伝に聞いた回答しか出せないけど。何回か話して、一緒の空間にいても気まずくないのが『友達』。その友達と過ごしていくうちに、何か自分にとって革新的な一言を言われたり、そいつのことが頭から離れなかったり、自然と目で追ったりするくらい気になるのが『恋愛』への入口。……そんなもん?まあ、一目惚れとかいうのもあるから一概にまとめられないけど」

 

 

 革新的な一言……目で追う……どれも白波には当てはまらなさそうですね。そもそも彼女は誰か別の方に好意を寄せていたはずですし。

 

 

「ありがとうございます。やはり櫛田は頼りになりますね」

「こんな回答で良かったわけ?」

「ええ、私だけでは思いつかなかったので。櫛田は三学期からどうするのですか?」

「どうするも何も……この状態じゃ今までみたいに出来ないでしょ。ムカつくけど、しばらくは大人しくしてるつもり」

「では、私から一つ頼みたいことがあるのですが」

 

 

 私は櫛田が座っている方へと赴き、距離を詰める。

 

 

「っ、何よ……!」

「一之瀬帆波について、調べて欲しいんです。彼女の基本情報から強みや過去、弱み、短所まで」

「なんで私がそんなことしなきゃいけないわけ」

「貴方にしか出来ないことですから。……出来ますね?」

 

 

 私は櫛田の目を見る。数秒の沈黙の後、櫛田から顔を背け深くため息をついた。

 

 

「わかった、分かったから。でも期待はしないで。一之瀬の周り、いつも人がいるしあいつも善の塊みたいな奴だから全然ボロが出ないの」

「ええ、動いてくれるだけでも助かります。プライベートポイントを送っておきますね」

「当たり前。……そうだ、ついでだから報酬としてあんたの交友関係を教えなさいよ」

「……交友関係?」

 

 

 その後不思議な尋問が1時間にわたり行われ、夜になってやっと解放された。

 翌日、有栖ちゃんが妙に不機嫌だったため真澄ちゃん達に何があったのか聞くと、高円寺くんにリトルガールって言われてたらしい。可哀想。でも私もそう思う。

 

 

 

 







次回はデート回!!!!!!!!



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