前の話から2週間……!?2、3日くらいのつもりだったのに……!!
期間をあけてしまって申し訳ないです。また多忙の期間に入ってしまったので、更新が不定期になるかもしれません。良ければ気長に待っていただけると嬉しいです<(_ _)>
12月25日。本日はクリスマス当日。
いつもより遅めの朝6時に目を覚まし身体を起こすと、ふと勉強机の方に見知らぬ物体があることに気づく。何かと思って近づいてみると、明らかに「プレゼントですよ!」みたいな小さな箱。もしかしてこれって……。
「……さ、サンタさん…………!?!?」
まさか、有栖ちゃんの話は本当だったのだろうか。とはいえ得体のしれない物体であることは変わらないため、恐る恐るといった様子で箱を慎重に開けると、中から出てきたのは銀色を基調とし、紫色のアメジストが主張する小さなネックレス。
「……なんか、すごい高そう。サンタさんってお金持ちなんだなぁ……というか、サンタさんの良い子の基準低すぎない?私、お世辞にも学校で良い子ではないと思ってたんだけど……」
まあ龍園くんとか高円寺くんよりかは遥かに良い子ではあるのかな。ちょっと部長を脅して部員の実力向上に貢献してるだけだし。……そうだ!サンタさんにプレゼントもらったこと、有栖ちゃんに報告しないと。
「えーと……有栖ちゃんのチャット……あ、あった。有栖ちゃんが1番上に設定してくれたんだった。あ、り、す、ち、や………小さい『や』ってどうやってうつんだ」
その後15分かけてやっと有栖ちゃんへのメッセージを生成することに成功する。はあ、やっぱり機械って嫌いだ……予測変換で変な変換されるし、『!』をうちたいのに『れ』になるし。
さて、日課のランニングと植物への水やりをして、櫛田とのお出かけの準備に備えないとな。
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お昼。ケヤキモールに向かった私は櫛田との待ち合わせ時間の前に注文の品を受け取る。注文したのはヘアピン。夏休みに制作依頼を出し、昨日やっとお店に届いたらしい。わざわざヘアピンを?というのは最もな疑問だが、これは特注品なのだ。そのヘアピンをつけた状態で、私は待ち合わせ場所である映画館の前にやってくる。
「……意外と人多いな。しかも昨日と同じ男女2人のペアばかり。皆が噂してた人気作は公開延期になったんじゃなかったっけ?」
まあ、何も観ない選択よりかはマシということなんだろうか。……そういえば櫛田は何を観るつもりなんだろう?いつも櫛田のやる事に付き合わされる感じだったから、特に聞いてなかったな。そんなことを思っていると、櫛田が小走りでこちらに来ていることに気づく。
「萌ちゃん、お待たせっ!」
「おはよう櫛「桔梗」…………桔梗」
「うん、おはようっ!」
「ねえ、呼び方ってそんなに大事?」
「大事だよ〜?呼び方は心の距離を表すものなんだから。帆波ちゃんとか坂柳さんのこと、名前で呼んでるんでしょ?」
「まあ、そうだけど。あんまり慣れないんだよね、昔の呼び方から変えるの」
映画館の中に入ると、櫛田が慣れた様子で端末を機械にかざして紙の券を手に入れる。こういう時の手際は流石だな。
「今日は何観るの?」
「萌ちゃんが最近恋愛小説を読んでるって言ってたから、今話題の恋愛映画を観てみようかなって。ハートフルなストーリーが人気らしいよ?」
「へぇ。それは楽しみだね」
「ほんとに思ってる?」
「思ってる思ってる」
指定された席につくと、間もなく辺りが暗くなり、映画が始まる。どうやらもとは海外の映画だったようで、登場人物は全員英語。字幕として日本語で補完されてる形だった。
物語はヨーロッパ各国を親善訪問中の王女が身分を隠して大使館を抜け出し、街を散策することから始まる。
『たとえ死しても地からそなたの声を聞く。この心が土と化しても、喜びに満ちるであろう』
散策の後に出会った記者の家に泊まり、身分を隠しながらも共に行動しているうちに惹かれ合っていく。打算で始まった関係はお互い真実の愛に変わっていくが、最終的には身分の差から恋愛をお互いに諦め永遠の別れを選択する、悲しい結末を迎える映画だった。
決まった運命からは逃れられない。束の間の逃避行が自分の人生において大きな影響を与えたとしても、最後は別れの道を辿り、決められた道に戻らなければいけない。なんて皮肉な映画だろうか。最後の記者と王女が見つめ合うシーンを複雑な気持ちで観ていると、隣の櫛田が私の左手を握る。
「……櫛田?」
「なんて顔してんのよ、あんた」
「…………そんなに酷い顔してた?悲しい映画だなーって思ってさ」
「ふーん……」
私の手を握ったまま映画のエンドロールまで観続けた櫛田。会場が明転すると共に、櫛田は私から手を離した。……何だったんだ?
「んー、映画なんて久しぶりに観たよ」
「そうだねっ、あれかな?私たちが中学二年生の時以来?」
「多分そうかな、次はどこ行こうか。お昼は少し過ぎちゃったけどお腹すいたし、何か食べる?」
「んー、そうだなぁ……」
私たちが歩きながら話していると、映画館から出たところで後ろから声をかけられる。
「えっ、もえぴー!?!!……と、櫛田じゃん。ぐ、偶然だな!ハハハ……」
「あれ、里中くん。やほー、里中くんも映画みてたの?」
「あ、ああ。観ようと思ってた映画が公開延期されちゃってたから、テキトーにアクション映画観てたんだよ。でもまさかもえぴーと櫛田がいるなんて」
「里中くん、偶然だねっ。一人なの?それとも誰かと一緒かな?」
「や、一人だよ」
「へえ、意外だね。里中くんカッコイイから、彼女さんとかと一緒に来てるのかと思った!」
「いやぁ、彼女なんて出来ないよ。ってかそうだよもえぴー!俺、もえぴーにメッセージ送ったよな!?今日空いてる?って」
「え、そうなの?未読のやつ多すぎて嫌になっちゃうから、全然メッセージ開かなくて……ごめんね?」
「いや、まあ……その、別にいいけどさ。2人はこれからどうすんの?良かったらさ、一緒に行動しない?」
「ご飯でも食べようかなって思ってたところだよ。ね、桔梗」
「うん、でも里中くんも予定があるだろうし、これ以上呼び止めてちゃまずいよ!」
笑顔で私の腕を引っ張る櫛田。……これ以上里中くんと一緒にいるな、という圧を感じる。里中くんも無意識に感じ取ったのか、一緒に行きたいと言っていたが少し諦めた様子。……可哀想に。櫛田も2人の方がいいのかな?まあ素性を知らない人が近くにいると気を遣わないといけないだろうし。別のクラスなら尚更か。
「……あのさ、もえぴー!じゃあ、その……しゃ、写真だけ撮っていいか!?」
「写真?私と?」
「ああ、だめかな……」
「全然それくらいならいいよ〜。ちょうどね、夏休みの時に真澄ちゃんに自撮りの仕方を教えてもらったんだー」
「……神室が?なんか意外だな」
私は里中くんの方に寄り、距離を詰める。里中くんもカメラの画角に入るようにとしゃがんでくれたため、里中くんの顔に自分の顔を寄せる。
「も、もえぴー。ちょっと近くないかな……」
「だって遠すぎたら入らないでしょ?はい、撮るよー!」
カメラの音がなり、写真がアルバムに追加される。里中くんもこれで満足かな?そう思っていると、改めて櫛田から腕を引かれる。
「じゃあまたねっ、里中くん!三学期に学校で!」
「ああちょっと、引っ張らないでよ桔梗……また冬休み明け会おうねー!ばいばーい!!」
呆気にとられている里中くんを置いて、私たちはエスカレーターで下の階へと下がった。
「ねー桔梗、そんなに急がなくてもいいんじゃない?それにさっき撮った写真、里中くんに送ってあげたいし……」
「萌ちゃん、ちょっと静かにしてくれるかな?」
なんか怒ってる……。無駄に反抗するのも面倒だし、櫛田の好きにさせるか。そう思い、私は櫛田に手を引っ張られるがままカフェに入っていった。
「はいっ、萌ちゃん!メニューどうぞ!」
「……ありがとう」
メニューを開きながら櫛田の顔色を伺う。……まだ怒ってそうだ。櫛田は一度イラついたら後が長いから面倒なんだ。
「萌ちゃん?」
「いやー、ここのサンドイッチ美味しそうだなー!桔梗の分も頼んじゃおっかな!?」
笑顔で威圧された。怖い。有栖ちゃんといい櫛田といい、なんで怖い笑顔をする子が私の周りには多いのだろうか。真澄ちゃんが恋しい……。私はサンドイッチを、櫛田はパスタを頼み、お互いの料理が運ばれてくる。
「……ん、ん〜〜……!!」
「……美味しい?」
「うん、パンがすごいふわふわ!野菜もすごいシャキシャキしてるし、たまごも美味しい!」
「食べてる時の萌ちゃんはほんとに幸せそうだよね」
「それ、前にも誰かに言われた気がするなあ」
「この後は沢山荷物持ってもらうから、今のうちにお腹いっぱいにしといてねっ!」
「ん、分かったよー」
櫛田はウィンドウショッピングが好きなのか、あちこち色んなところに周ることが多い。体力がいるため、その事前準備として腹ごしらえは必須だ。
櫛田の分もまとめて支払い、私たちはカフェを後にした。
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カフェを出てからは、櫛田に手を引かれる形で色んなお店を見て回る。しかし、昔から意見を求められるのは苦手だな。「どっちがいい?」とか「どっちの方が似合う?」とか言われても、正直「どちらでも良い」としか言えないのが悩みだ。櫛田は春服を買いに行きたいのか、色んな服屋さんを見比べていた。
「ねえ桔梗、これとこれ、何が違うの?」
「何が違うって……根本的に違うよ!こっちは生地が軽くて通気性がある素材だけどあんまり柄が好きじゃないんだよね。こっちは少し生地が重めで着ると重いんだけど、私的にはこっちの方が好きなの……どっちがいいと思う?」
「どっちでも…………なんでもないです」
「それは禁止だって前から言ってるよね?」
「じゃあ、櫛田の好きな方で」
「き・きょ・う !」
「……桔梗の好きな方で」
「じゃあこっちにしよ〜!」
……最初から決まってる質問を何でこちらに聞くのだろうか。女性というのは、甚だ謎な生き物である。……私も女性だけど。
色んな服屋をまわって満足したのか、次は雑貨店に向かった櫛田。既に私の両腕は紙袋でいっぱいだ。筋トレも思えば楽ではあるから、我慢するしかない。
「ねえ萌ちゃん、これとか可愛くない?」
「うん」
「あ、これも可愛いよね?迷っちゃうなー!」
「うん」
「…………萌ちゃん、今日の夜ご飯何にしよっか」
「うん…………
「ちゃんと話は聞こうね?」
「
頬を解放された為、言われた通り商品に意識を集中する。櫛田が興味を示す商品はどれも系統が似ていた。如何にも可愛い、オシャレな女性が持ってそうなものばかり。パステル系、といえば想像がつくだろうか。櫛田も背伸びをしたいお年頃なのかもしれない。と、私は一つの商品が目に留まる。
「……あ、これ」
私が手に取ったのは、アロマディフューザー。しかもナイトライトとしても使用できるものだった。正直機能性はどうでもよく、ゆるい猫のような見た目に惹かれたからだが。
「これ、桔梗に似合う」
「……私に?それ、萌ちゃんの本心?」
「うん。……ほら」
櫛田の顔の隣にアロマディフューザーを並べると、なんとも可愛らしい構図の出来上がりである。これなら櫛田の部屋に置いていても違和感はないのではないだろうか。
「……ふぅん」
櫛田は私の手からそれをひったくると、興味深そうにじーっと見つめた後、散々迷ってたのが嘘のように即決購入した。
「あれ。買っちゃっていいの?」
「いいの!ほら、この後は萌ちゃんの部屋でクリスマスパーティーだからね?ケーキ買って帰ろっ!」
「わっ、ちょっと引っ張らないでよ櫛田……!」
「もうっ、桔梗って言ってるでしょ?……ふふっ♪」
何故か機嫌の良い櫛田に手を引かれ、私たちは次の目的地であるケーキ屋さんに。そこで苺のショートケーキを2切れ購入した。ケーキ屋さんを出る頃にはすっかり日も暮れて夜になっていたため、寮に帰ることを選択する。
相変わらずライトアップで彩られた並木道。これが見られるのは今日までなんだろうか?それとも、冬休み中は続くのだろうか。そんなことを考えながら白い息を吐いていると、櫛田から話しかけられる。
「ねえ萌ちゃん、今日楽しかった?」
「ん?うん、楽しかったよー」
「ほんと?……私ね、ずっと萌ちゃんのこと見てたから分かるんだ。萌ちゃん、この学校に来て、坂柳さんとか神室さんと一緒にいる方がよっぽど楽しそうだよ?」
「……私が?気のせいだよ」
「ううん。気のせいじゃないよ」
ある種の確信を持っているようで、櫛田は前を向いたまま話し続ける。
「……正直、今の萌ちゃん、すっごく気に入らないかも」
「そう?じゃあ、なんで今日誘ったの?」
「は?そんなことも分からないの?あんたってほんとに……」
いつの間にか裏の櫛田になっていた。櫛田は私の有栖ちゃんから貰ったマフラーを引っ張ると、私を櫛田の方へと引き寄せた。そして私の目を見て一言。
「これをあげた、あのムカつく坂柳有栖にあんたをやらない為に決まってんでしょ?」
「これ貰ったの昨日なのに、そんなことまで分かるの?」
「当たり前。私の情報力舐めないでくれる?」
ふん、と鼻で笑いドヤ顔をする櫛田。やはり櫛田は顔が広いようだ。この情報収集力は私には使えないし持ちえない。となれば、今後私が滞りなく使うためにも、ここで櫛田の機嫌を損ねるのは悪手。
「櫛田には取り繕う必要がないと感じてるだけですよ。正直私は、坂柳や神室といるよりも櫛田といる方が楽です。なので、今日は誘っていただいてありがとうございました」
そう、少し微笑んで返す。本来私はそこまで明るい性格でも、笑顔を沢山振りまくような気質でもない。だからこそ、何も取り繕う必要がない櫛田の前はストレスが少ないことは言うまでもない。そういった、少しの本音を含んだ言葉。心の裏を読み取るような櫛田には、効果はてきめんだろう。
「っ……まあ、分かればいいよ。というか、最初からそう言ってればいいのよ」
顔をふいっと逸らす櫛田。どうやら選択は間違ってなかったようだ。私はまた白い息を吐き出し、櫛田の手を握って歩き出した。
「ちょ、ちょっと!引っ張らないでよ!」
「寒くなってきました。早く帰ってケーキを食べましょう」
「あんたって本当に勝手……」
「櫛田には言われたくない言葉、Part2ですね」
そう苦笑すると、無人島試験でのことを思い出したのか櫛田もフッと笑った。……それにしても、坂柳や神室といる方が楽しそう、か。他でもない櫛田がそう言うなら、私はそう感じているということなのだろうか?であれば、何故。……答えは出ない。何度模索しても、この夜の空のような暗闇を彷徨っている。
「……あのさぁ」
「……何ですか」
「何に悩んでんのか、あんたは自分から話さないから分かんないけど。……少しは人に頼るってことも覚えなさいよ。自分で見つけられないなら、人に見つけてもらってもいいんじゃないの?」
……人に。……つまり、櫛田に?櫛田が、この暗闇から抜け出すための、光になってくれるのだろうか。
「……ありがとうございます。いつか、必ず」
「ん。ほら、あんたの部屋行くわよ。私鍵持ってるから」
「…………ん?鍵?私の部屋ですよね?」
「言ってなかった?あんたの部屋の合鍵作っといたから」
「……………………は!?」
「知らないの?この学校、申請すれば合鍵作れんのよ」
この学校にプライバシーはないのか?外部からの連絡を制限しているとはいえ、内部の統制を緩めすぎじゃないか?あまりにも自由主義すぎるでしょ。
……訂正。やっぱり櫛田は、私の光になんかならない。そう、櫛田が見せびらかした合鍵のキーを見ながら確信した。
本人が知らないところで合鍵が作れる制度、普通に考えてヤバいですよね?