ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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…………暑い!!!!!







坂柳派閥

 

 

 

 

 __ケヤキモール内、カフェ。

 

「それで……お、赤井!こっちこっち!」

 

 ……誰だかわからない金髪の男子生徒に手を振られる。誰だアレ、いや同じクラスの人なんだろうけど……チャラそうだな。派閥の人達はもう仲良くなっているのか、少しザワついている。

 

「萌さん、早かったですね」

「ん?うん、まあね〜」

「それで、何をしていたんですか?私のエスコートよりも大切なことだったみたいですけれど」

「何って、学校探検だけど……もしかして有栖ちゃん、怒ってる?」

「怒っていませんよ?私ともあろう人がこのくらいのことで怒るはずがありません」

 

 ……嘘だあ。何か不服そうなオーラ出してるもん。いかにも私怒ってますよ、気に入ってませんよその行動みたいな感じだもん。

 

「それより座ってはいかがですか?私の隣があいていますよ?」

「…………じゃあ、お言葉に甘えて」

「……さて。人数も揃ったことですし、始めましょうか」

 

 ……ん?“人数も揃ったことですし”??

 何か大事な話をしていたにしては騒がしいなと思っていたけどまさか、雑談タイムだったってこと?

 

「皆さんは、この学校について、真嶋先生のお話でどれだけ理解しましたか?」

「理解……っていうと、この学校のシステムってことか?全寮制で、毎月10万ポイント貰えて……夢のような学校だよな!」

「その上卒業したら進学率も就職率も100%なんだぜ?ほんと楽だわー」

 

 ……どうやら思った以上に本質に気づいていない生徒が多いらしい。この惨状に対し有栖ちゃんやチャラ金髪くんは他の人が気づかない程度にため息を逃がしている。……仕方ない、有栖ちゃんのためにも一肌脱ぎますか。

 

「……でもさー、それっておかしくない?だって一人10万円も支給し続けるなら、年間で見ると億を超える出費になっちゃうよ?」

「そりゃ……あれじゃん?国とか政府が管理してるんだから、お金なんて使いたい放題とか」

「残念ながら政治ってそんなに甘いものじゃないよ。少なくとも未来ある高校生を育てるっていう名目での資金集めって、あんまり上手くいかないことが多い。それこそ莫大な援助ができるツテがないとね」

「じゃあ来月のポイントってどうなるんだよ?」

「真嶋先生はさっきの説明で、この学校は生徒を実力ではかると言っていた。つまり実力、あるいは学習意欲、日常的な態度。それらを見て実力を見極め、それに見合った額を提供するってこと。葛城くんも来月のポイントについて質問してたでしょ?」

 

 ……流石に納得しただろう。そう思っていると、金髪チャラ男くんから質問が飛んでくる。

 

「でも、そんな実力なんてどうやってはかるんだ?日常態度だって何百人もいる生徒一人一人を見てられないだろ?」

「まず前提が間違ってるよ。確かに何百人もいる生徒一人一人に着目してたらキリがない。だから明確な減点対象を設けるんだよ。分かりやすいところで言えば、私語、遅刻、授業中の睡眠とか、ね。そうすれば違反者だけを数えればすむ。実力をはかるのだって、定期試験とか授業の結果ではかれるものもあるでしょ?」

「……確かに、それもそうか」

 

 ……さて、ワガママお嬢様のお気に召したかな?満足そうに笑ってるし、多分大丈夫だろう。

 

「今、萌さんに言っていただいた通りです。私語、遅刻など……もちろんそのような事をする方がいるとは思っていませんが、私達は監視カメラで監視されています。そのような行為をとった場合、すぐさま減点でしょう。ですので、これから注意していただきたく思います」

 

 有栖ちゃんの一声に、みんなの気が引き締まる。すごいなぁ、有栖ちゃんは。もうクラスメイトを掌握してるんだ。……でもこの空気感はちょっと苦手だなぁ。

 

「……さて、有栖ちゃん。折角カフェにいるんだし、なんか頼もうよ〜」

「……萌さんは相変わらずマイペースですね」

「あ、見てみて有栖ちゃん。このパンケーキとか美味しそうじゃない?」

「そうですね、頼んでみては?」

「そうしよそうしよ〜」

「お、赤井はそれにすんの?じゃあ俺も同じやつ頼もうかな〜」

「……てかずっと思ってたけど、君誰?」

「おい!教室で自己紹介してたろ!!橋本正義だよ!」

「あー、橋本くん……いたような、いなかったような」

「いたって言ってんだろ……俺は覚える価値もないってか?」

「いや、単純に人の名前と顔を覚えるのが苦手なだけだから安心して」

「それはそれで安心できねえよ……」

 

 しばらくして、みんなが注文した物が届き始める。

 

「有栖ちゃんは紅茶だけでいいの?」

「ええ。萌さんこそ、太る心配をした方が良いのではないですか?」

「ちょっと、乙女にそれは駄目なんじゃないのー?」

「あら、萌さんも乙女でしたか。それは失礼しました」

 

 ……この子、さては楽しんでるな?いい性格してるよね、ほんと……。やられっぱなしでは少しつまらないので、パンケーキを指したフォークを片手にじっと有栖ちゃんを見る。

 

「……?どうかしま……」

「えいっ」

「……!?」

 

 突然の出来事に有栖ちゃんが見たことも無い表情になる。ふふ、いきなり口にパンケーキ突撃作戦、略してお口突撃作戦はどうだ有栖ちゃん!

 

「ふっふ〜」

 

 有栖ちゃんがパンケーキを食べ終わったところで、私は優雅に残りのパンケーキを食べ始める。無論、有栖ちゃんが口に入れたフォークを強調して。

 

「……!!?」

 

 そう、いうなればこれは関節キス。気にしないという人も一定数いるが、この歳になると例え同性同士であろうと多少の恥辱が生まれるもの。特に有栖ちゃんみたいな「今まで全然人と仲良くしてきませんでした」みたいなタイプ(独断)には効果抜群だろう。見る見るうちに有栖ちゃんの顔は赤くなっていく。

 

「ふふ〜、油断したね有栖ちゃーん」

「やってくれましたね……!」

「お前、坂柳さんとほんと仲良いよなあ」

「ん?そう?たまたま席が隣だっただけだよ」

「だとしても、その距離感で接せられるのなんてお前くらいだって」

「……??なんで?有栖ちゃんは有栖ちゃんじゃん。他の女の子と変わらないよ」

 

 変なこと言う人だなあ、この橋本くんって子は。そんなことを思いながらパンケーキを食べ終わる。うん、甘くて美味しかった〜。また来ようかな、ここ。

 

「それではみなさん食べ終わったようですし、ここからは解散して自由行動にしましょうか」

「よし、遊びに行こうぜ!」

「カラオケでも行く〜?」

「ばっかお前、節約しなきゃだろ」

「えー?カラオケくらいよくない?」

「でも……なぁ」

 

 有栖ちゃんの方をちらっと見る男子生徒。なるほど、立派な忠犬ぶりだ。

 

「そこまで制限するつもりはありませんし、元よりポイントの使用は個人の自由です。何をしても構いませんよ」

 

 あくまで私はお前らに干渉する気はないから潰れるなら自分で潰れろ、と。……いや、流石に直接は言ってないけど意訳したらこんな感じだよね。

 

「あ、もえぴーも行く?カラオケ!」

「も、もえぴー?」

「うん!赤井萌だから、もえぴー!」

 

 ……なるほど、これがあだ名文化というやつか。まさか自分が付けられるとは思ってもなかった。

 

 

「いや、遠慮しておこうかな。私は家電品とか小物とか見てまわりたいし」

「そっか、じゃあまた明日ね〜!」

「うん、また明日」

 

 

 

 ……ところで私に“もえぴー”という奇異なあだ名をつけたあれは誰だったのか。……どうやらまず優先すべきは、クラスメイトの顔と名前の把握みたいだ。

夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)

  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 櫛田桔梗
  • 白波千尋
  • 綾小路清隆
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