入学から少したち、Aクラス内は完全に葛城派閥と坂柳派閥に分裂した。……いや、完全にと言うのは少し語弊がある。正確には私含めた数名の無所属派もいる。……有栖ちゃんと一緒にいることが多いから、自然と坂柳派閥だと思われているみたいだけど。全く、迷惑な話だ。
「席につけお前たち」
いきなり来た真嶋先生に、着席を促される。……いつもこんなに早く来ないよな?
「今日はお前たちに、各科目の小テストを行ってもらう。このテストの点数自体は成績には反映されないが、真面目に取り組むように」
……ふむ。これが抜き打ちテスト、ってやつか。前から小テストがまわされ、私は名前を書く。
「それでは……始め!」
一斉に解き出すAクラスの生徒たち。ふむ、問題を見た感じでは難なく解けそうなレベルではある。上から順番に目を通していくと、最後の数問で疑問を抱く。
(これは……明らかな難易度上昇?ただの小テストであれば、序盤の問題からこの終盤の数問まで大きく難易度を変えなくてもいいはず……)
……なるほど。成績にはという真嶋先生の発言、中間テスト前の抜き打ち……色々考察は出来そう。とりあえず今は、この小テストに向き合うこととしよう。
__放課後。
「ん……ふぁぁ……やっと終わった〜」
「ふふ、疲れましたか?」
「小テストと言えどテストだし、みんなピリついてたからね〜……早く帰って寝たい」
「残念ですが、それは少し待っていただけませんか?」
「ん?なんで?」
「実は私も生活用品を買いに行きたいのですが、1人では何かと不便でして」
「……なるほど、荷物持ちと」
「それとエスコートもお願いしますね?」
「……他の人に頼めばいいのでは?」
「あら、萌さん以外に頼む人がいるとでも?」
「いるでしょほらー、君の派閥の人とか」
「そんな方々に萌さんの代わりが務まるとでも?」
「……お褒めに預かり光栄ですよ…」
……まずいな。私は普通の女子高校生としての生活が送りたいのに、これじゃ目立ちすぎてしまう。いや、これが相手も普通の女子高校生、とかなんの特徴もない女の子、とかだったら話は別だろう。しかし今行動を共にしているのはAクラスの一派閥のリーダー。そして同クラスだけでなく他クラスにも注目されている、いわば目立ちすぎ有名人……。
……はぁ、でも身体的に不利な有栖ちゃんを放ってはおけないし。いつか献身した分の幸福が訪れると思って今は我慢しよう……。
「それで、どこに行くの?」
「そうですね、まずは……ケヤキモールに行きましょうか」
「ん、りょーかい」
そうして有栖ちゃんの歩幅に合わせること十数分。ケヤキモールへと到着する。
「それで、有栖ちゃんが買いたいものって?」
「そうですね、まずは自炊器具でしょうか」
「へぇ、有栖ちゃん自炊するんだ?」
「料理は人並みですが出来ますよ。この後食べに来ますか?」
「え?いいの?やった〜、有栖ちゃんのお料理〜」
「ふふ、その分労働はしてもらいますがね」
「任せてよ、お料理があるなら気合い入れるよ〜」
その後炊飯器やフライパンなど、主に料理関連てわはあったが様々なものを見て回った。流石に今日買ったもの全部は持てないので重たいものは後日発送。結局今日持ち帰れたのはフライパンとまな板、包丁、タオル数枚、そしてクッションだった。
「ふぅ、これで終わり?」
「はい、しかし両手が塞がってはエスコートはして貰えませんね」
「荷物持ちだけでも感謝してもらいたいくらいだけどね〜?」
「……おや。萌さん、少しコンビニによってもよろしいですか?」
「……?いいけど、どうしたの?買い忘れ?」
「いえ。面白いものが見れそうですので」
……面白いもの?コンビニに目を向けると、人、人、人。その中に同じクラスの女の子と思われる人物がいた。あれは……。
「神室真澄さん、だっけ」
「ええ、同じクラスのまだ無所属の方です」
「……もしかして、取り込もうとしてるの?」
「それは彼女の行動次第ですね」
「あー……じゃあ私先に寮の方に戻っててもいい?私神室ちゃん個人に興味無いし、派閥どうこうなんてもっと興味ないし」
「……そうですね、私としても絶好の機会を逃すわけにはいきませんし。それでは寮のロビーで待ってていただけませんか?」
「はーい、りょーかいっ」
……全く、危ない危ない。神室さん……いや、神室ちゃんがどういう生徒か全然分からないけど、私まで警戒される羽目になるのはごめんだからね。……というかロビーじゃなくて、どうせ同じ階なんだし女子の階で待ってればいいのでは?まあ、待ち合わせ場所としては最適か。
__数十分後。
「___萌さん、お待たせしました」
「お、有栖ちゃん………と、神室ちゃん。やっほー」
「……覚えてたんだ、私の名前」
「ふふん、今はクラスメイトの顔と名前の記憶に努めているからね。今覚えた人はざっと12人ってところかな!」
「いや少な!?それでよく努めてるなんて言えたわね……」
「え?そうかなー……私元々有栖ちゃんと葛城くんしか分からなかったし、そう考えると大した進歩じゃない?」
「……はぁ、まあどうでもいいけど」
「さて、それでは雑談も済んだようですし私の部屋に行きましょうか」
「……私、帰っていいわよね?」
「えー!折角神室ちゃんと仲良くなれるチャンスなのにー!」
「いや知らないし。ていうかこいつの部屋なんて行きたくない」
「ふふ、心外ですね。しっかり清潔にしていますよ?」
「ほらほら、神室ちゃんもエレベーター乗って乗って〜」
「いや同じ階だしそりゃ乗るけど……はぁ、何言っても聞く耳持たなそうね……」
お、この感じは……意外と押しに弱そう?やった、何にせよ神室ちゃんと仲良くなるチャンスだね。
「それよりあんた……そんな持ってて重くないわけ?」
「え?私?」
「荷物もってるのあんたしかいないでしょ」
「いやー特には……そんなに量も多くないし、一つ一つは軽いしね」
「あっそ」
「あと、あんたじゃなくて赤井萌だよ、神室ちゃん!」
「……はいはい、赤井」
「やった!ありがと〜真澄ちゃん!いつか萌って呼んでね!」
「その呼び方やめろ、ってかなんでそんな馴れ馴れしくすんのよ」
「ふふ、真澄さん。それが萌さんのいいところですよ」
「あんたも便乗すんじゃないわよ、坂柳……」
なるほど、有栖ちゃんが気に入った理由も分かるかも。自分の気持ちを正直に相手に伝えられる。これは簡単なようで、実は難しい。相手によって態度を変えたり、一貫して自分の主張や本性を明かさず不気味だったりする人よりも、敵は作りやすいけど自分を明かす人の方が何倍も信頼しやすいし使いやすい。そして何より真澄ちゃんは反応が面白い。
「ていうか、2人のラブラブ空間にお邪魔していいわけ?」
「……?別に誰が来ようと自由じゃないの?なんで?」
「いやあんた、知らないの?あんたと坂柳いつも一緒にいるから、付き合ってんじゃないかーって噂になってるじゃない」
「……初耳なんだけど」
「そこの坂柳は初耳じゃないみたいだけど?」
「えー……?有栖ちゃーん、そんな勝手なこと言わせてていいのー?」
「別に構いませんよ。それにこういう噂話は当人同士が否定しても憶測で話が飛び交うものです。時間が経てばなくなる、ということもありますし」
「…………そうかなあ。なんなら付き合ってみる?」
「……冗談はやめてください」
「あはは、ごめんごめーん」
「……そういえば、坂柳の部屋ってどこな訳?あんた主導で歩いてるけど」
「ええ、つきましたよ」
「……嘘、私の隣なの?」
「有栖ちゃん、私は隣の隣だよ!てことは隣真澄ちゃんってことー?やったね!」
「……は?……嘘でしょ?」
真澄ちゃんが先程よりも、露骨に嫌そうな顔をする。あれ、もしかして仲良くなる前から嫌われてる?
「ねーねー、今度真澄ちゃんの部屋にも遊びに行っていい?」
「嫌。私人をあげるのとか無理だから」
「えー?隣の交でさ〜」
「……扉、開けますよ?」
何やら不服そうな有栖ちゃんが確認をとる。それに対し私は笑顔で、真澄ちゃんはため息で反応した。
「どうぞ」
「お邪魔しまーす。うわぁ、女の子って感じ」
「あんた遠慮するふりでもいいからしなさいよ……」
「え?こういうのって遠慮するの?」
あまり頻繁に誰かの家とか部屋に訪問したことがないから常識は分からないけど、まあ自分じゃない人がいると安心できない且つそれは相手も同じ……ってことで遠慮し合うのかな、こういうのって。日本人の謙虚さ、美徳だね〜。
「そうですね……何か食べたいものはありますか?と言っても前日までに買ってある材料しかないので作れるものは限られますが」
「何でもいい。てかいらないし」
「えー?有栖ちゃんのお料理なら何でもいいのは賛成だけど、真澄ちゃんいらないのー?」
「そもそも私連れてこられただけだし。てか料理なんか建前でしょ?」
「ふふ、流石ですね真澄さん。……萌さん、やはり料理を振る舞うのはまたの機会でいいですか?」
「……?うん、いいよー」
「ありがとうございます」
そう言って私たちに紅茶が出される。これは……。
「ダージリン?」
「お見事、正解です」
「なんで分かるのよ……」
「紅茶は好きだからね〜」
「……さて、本当はもう少し後でと思っていましたが……本題に入りましょうか」
そう、有栖ちゃんがいつもの
「そういえば散々お邪魔していいか聞いてたあんたは部屋に誰かあげられるわけ?」
「え?やだよ〜そんなん、自室は私の癒しの空間なのに〜」
「…………あんたねぇ」
夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)
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椎名ひより
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櫛田桔梗
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白波千尋
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綾小路清隆