有栖ちゃんが放った一言で、何やら緊張感のある雰囲気がこの狭い空間に放たれる。
「単刀直入に言います。萌さん、私の派閥に入っていただけませんか?」
「嫌だ」
「即答!?……いや、もう少し迷ったりするもんじゃないの」
「えー?いや、だって私Aクラスの派閥争いに興味無いし、どこにも所属するつもりないもん」
「はぁ、あんたってマイペースなのね……」
「どこにも所属するつもりがないということは、葛城くんの方にも行く気がないということでしょうか?」
「うん。というか葛城くんは性格的にも合わなそう」
「確かに、私と真逆の考えを持ってそうですしね、彼は」
「まあ、確かに。あんたの方が好戦的よね、何かと」
「それにしても、そうですか……なるほど。今はその一言が聞けただけでも良しとしましょう」
……諦めてなさそうだな〜。ほんとに、派閥争いとか面倒くさい。誰が仕切ろうかなんて私には関係ないし、というか私は青春が謳歌できればそれでいい。クラスメイト同士仲良くすればいいのに。普通はそういうものじゃないのだろうか……私の過去はあてにならないし、今度誰かにでも聞いてみようか。
「ねぇ、私もう帰っていい?」
「ええ、構いませんよ」
「全く、なんで私来たのよ……」
そう不満を垂らしながら、真澄ちゃんは帰っていく。……そんなに不満を垂らすなら元からこなければよかったのに。お願いされたら断れないってタイプにも見えないし……ツンデレってやつ?
「……私に対するお話も終わり?」
「まだお話したいことはありますが……ふふ、今はよしましょうか。このお茶会を楽しみましょう」
「後回しにされるのは嫌いなんだけどなー……まあいっか」
そう、有栖ちゃんがいれてくれた紅茶に口をつける。うん、美味しい。
「ところで萌さん、なぜ真澄さんを同席させたのか……理由はわかりますか?」
「…………普通に考えるなら私が誘って真澄ちゃんが断ることを諦めてそうだったから。でも、有栖ちゃんなら帰らせることも出来るよね。そこから考えられることは、私の発言についてを保証する立会人が欲しかった……かな?」
「お見事です。流石ですね」
「……そんなにすごいことじゃないけどね」
人の行動や心情は、他人であってもある程度推測することは出来る。心理学的側面、もっと広義的に見れば人間行動学的側面……その他視線や仕草、表情からも読み取れる思考は数多にある。それらが平生と何ら変わらない人は推測するのが難しいが、真澄ちゃんみたいな感情が表に出やすい人は分かりやすい。
「ところで、先程の話の続きをしてもよろしいでしょうか?」
「何?」
「私の派閥に入っていただけませんか、という提案の話です」
「……やっぱり諦めてないんだね」
「生憎と、諦めが悪いもので」
「知ってる。何となく分かるし」
「そこで一つ、勝負をしませんか?」
「……勝負?」
「ええ。時期的に、この後は中間試験が始まるでしょう。そこでもし私が勝ったら、私の派閥に入っていただきます」
「……私が勝ったら?」
「その時は萌さんの自由にしていただいて構いません」
「私に旨みが少ないけどね、その勝負」
「そうですか?言ったはずです、私は諦めが悪いと。いつだろうとどこだろうと、勧誘は行うつもりですよ?」
「…………それは嫌だなー」
「なら、受けていただけるということでよろしいでしょうか?」
「…………分かった、受けるよ。でも私が勝った時の報酬に一つ追加して」
「何でしょう?」
「私が勝ったら今後私が何をしようと何も関与しないこと。いい?」
「私が負けるはずもありませんし、構いませんよ」
「それはすごい自信だね、私は負ける自信しかないよ」
「それではご提案に乗っていただけるということでしょうか?」
「それとこれは別。口約束は成立したでしょ?」
そう言い、私は有栖ちゃんを待っていた時に押した録音ペンを見せる。
「じゃあね、有栖ちゃん。約束は守ってね?」
「……ふふ、萌さん。貴方は……」
何か言っていた有栖ちゃんを残し、私は有栖ちゃんの部屋を出た。
「…………ふふ、本当に面白い方です。萌さん」
1人残った部屋で、坂柳はそう呟く。
「私が勝つか、萌さんが勝つか……勝率は五分五分と言ったところでしょうか。ですが私は勝ちます。そして何としてでも、貴方を手に入れてみせる」
小さな少女の爛々とした瞳に、炎が宿った。
夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)
-
坂柳有栖
-
神室真澄
-
一之瀬帆波
-
椎名ひより
-
櫛田桔梗
-
白波千尋
-
綾小路清隆