1年生編を上京した兄に全巻持っていかれたので手元になかったのですが、知識を深めるためにもう一度買いました。とりあえず10巻分。
……さらば、私の約7000円…(泣)
私、赤井萌の朝は早い。……はずだ。
朝5時に起床し、顔を洗ったら軽く朝食を済ませる。朝ごはんは何派戦争に参加するとするなら、悩ましいけど私はご飯派だろうか。もちろん、パンも食べる。ただ炊飯器でご飯を炊いている分、朝ごはんでもどちらかと言えばご飯を食べる比率が高いだけ。それにパンは腹持ちが悪い。……理想的な朝ごはんというのは結局何なのか。着地点のない問いだが、議論自体は面白い。
朝ごはんを食べ終え、歯磨きをしたら観葉植物に水をやる。これは高校生になってから始めたことだが、成長を間近で見るというのは中々に面白い。ここは寮だから動物を飼う、とかいうことも出来ないし。緑を見ると心が安らぐ、と誰かが言っていた気がするが、私もそう思う。
「……よし、じゃあいってきます」
そう、誰もいない部屋に挨拶をして外に出る。私の日課。それは毎朝のランニングだ。面倒だと感じた時には散歩にすることもあるが、基本的に自分を高めるための行為は嫌いじゃない。幼い頃からずっと続けていたのだから、むしろやらない方が違和感がある。
「あれ……?おーい!そこの君ー!」
「……?」
後ろから声をかけられ、思わず止まる。何やら見覚えのあるストロベリーブロンドに近いの髪の子がこちらに手を振ってきていた。
「にゃはは、ごめんごめん。この時間帯あんまり人見ないからつい声かけちゃった」
「別に大丈夫。……えーっと、君は……」
「あ、そうだそうだ!自己紹介してなかったね。私は一之瀬帆波!1年Bクラスだよ。君は?」
「……赤井萌、Aクラス」
「ああ!坂柳さんの騎士様って君のことだったんだ!」
「……有栖ちゃんの騎士様??」
「うん、坂柳さんのエスコートとかでいつも一緒にいる子がいるってちょっとした噂になってるんだよ。それにしても、騎士様って言ってたから男の子かと思ってたけど……」
「……騎士様なんて初耳だし、私は女の子だよ」
「にゃはは、そうだよね。可愛い女の子でちょっと安心!」
……聞き間違いじゃないみたいだけど、にゃははって何だ……??まあ、この子特有の鳴き声とでも思っておくか。それにしても……。
「うーん……」
「……?どうしたの?」
「君の呼び方を考えてた。……よし、ほにゃにしよう」
「ほにゃ!?あ、帆波だからかな?」
「それもある。あだ名をつけてみたかったから」
「じゃあ私もあだ名で呼んだ方がいいかなー?」
私のあだ名……。クラスメイトから“もえぴー”と奇異なあだ名を貰って以来つけてもらってないけど、あだ名だと私的に反応しにくい。
「いや、普通に名前で。萌でいいよ」
「じゃあ萌さん……萌ちゃん?」
「どっちでもいいよ、他クラスだからってそんな敵対する必要も無いし。これからよろしくね、ほにゃ」
「にゃはは、何だかあだ名つけられたことないから新鮮……これからよろしくね、萌ちゃん」
向こう側から手を差し出されたため、こちらもそれに応じる。……それにしても、ほにゃって付けたけど普通に帆波の方がいいよな。まあ、個性を出すということで……。私が軽く走り出すと、ほにゃもそれに付いてくる。
「そういえば萌ちゃんはこんな朝から何してたの?ランニング?」
「うん、私の日課。そっちは?」
「私は朝の散歩……かなぁ。ねえ、そういえばさ」
「……?」
「今朝のポイント支給額って、いくらだった?」
「……ああ、まだ確認してなかった」
そういえば今日、5月1日か。私はポケットに入れていた生徒証端末を出し、確認する。
「……9万4000Ptかな」
「わあ、高いね!私、6万5000Ptなんだよね……」
「……なんで減ったと思う?」
「この学校は実力で生徒を測るって言ってたから……当初配られてた10万ポイントが入学した私達への価値って考えると、この1ヶ月間で10万ポイントを渡す価値がない、もしくはこの6万5000Ptの価値しかないと学校側に判断された……ってことかな?」
……ふむ。意外にも頭は回る方らしい。まあ、入学の日にクラスを仕切ってた人物だから当然か。
「……そう考えると、萌ちゃん達はすごいね!?60ポイントしか減ってないよ」
「まあ、完全に減らすのを0にするのは難しいとはいえ……60ポイントで抑えられたのはまだいい方なのかな」
「そうだね〜、他のクラスはどのくらいなんだろう?」
「……ところで、そろそろスピード上げるけど大丈夫?」
「え?あ、ちょ、待ってよぉー!」
さっきまで会話出来るスピードにまで抑えて軽めに走ってたけど、ほにゃの発言で私としても他クラスに興味がでてきた。早く帰って、今日はいつもより早めに登校しよう。
___Aクラス、教室。
「おはよ〜」
「あら、萌さん。今日は早いですね」
「……なんで有栖ちゃんはそんなに早いのかな?」
「見ての通り、遅く登校しては遅刻する恐れがありますから」
「……真澄ちゃんとかはまだ来てないんだ」
「ええ。ところで萌さん」
「ポイントなら9万4000Ptだったよ」
「……流石ですね。私も同じでした」
「やっぱりこれ、クラス単位のポイントか〜……じゃあ、ちょっと行ってくるね」
「おや、どちらに行かれるんです?」
「他クラスの視察ー」
……よし、行くか。……あ、そうだ。せっかく仲良くなったんだし、あの子も連れていこう。確かさっき教室に……いたいた。私はその子に熱い視線を送り、廊下に出てくるよう伝える。その子は程なくしてその意図に気づいたようで、急ぎめにこちらに来る。
「あの、どうしたんですか……?」
「山村ちゃんも行こ、ほらっ」
そう言って手を引っ張り、半ば強引に山村ちゃんを連れていく。困惑した様子の山村ちゃんだったが、何をしたいかは汲み取れたようだ。
「あの、この時間そんなに生徒さん登校してないと思いますよ……?」
「いいのいいの、むしろ少ないからこそバレにくいでしょ?」
「はあ、まあそうですね……」
「さて、Bクラスにとうちゃーく」
まあ、視察と言っても廊下でクラスを見るだけなんだけど。Bクラスの子は集団で話し合ってるようだった。……ふむ、ほにゃはまだ来てないようだ。
「動揺してますが、困惑は少ないですね……?」
「お、山村ちゃんにもそう見える?」
「はい、多分リーダーの方は気づいててそれとなく注意喚起してたのかな、と」
「うんうん、じゃあ次はCクラス〜」
Cクラスの前を通ると、罵声のような大声が私たちを出迎えてくれる。…なるほど、こういうクラスかぁ。
「……すごい、ですね」
「あはは、ちょっと不良くんが多いのかな?」
山村ちゃんも怖がってるみたいだし、次に行こう。そう思った途端、隣を抜けたDクラスと思われる人達が口を開いた。
「なあ、お前ポイント振り込まれてる?」
「いや、昨日から変わってねぇわ」
「だよなー?学校側のミスか?」
「ホント勘弁して欲しいぜ。俺なんて残り42Ptしかないんだからよ〜」
……なるほど。どうやらDクラスの今月分のポイントは0らしい。そして何より、その事実に誰も……いや、大半が気づいていない。きっと目先の10万というポイントに気を取られ、深く考えることをやめてしまったのだろう。……というか今の、水泳の授業の朝に時に叫んでた人?
「……よし、山村ちゃん、帰ろ〜」
「あ、はい……もういいんですか?」
「うん、知りたいことは知れたから」
「……その、坂柳さんからの指示……ですか?」
「……?ううん、私が知りたかったから勝手にやってるだけ。そもそも私、無所属だし」
「そうなんですか……?坂柳さんと仲が良さそうなので、てっきりそうなのかと……」
「あはは、まあ大多数には勘違いされてるけどね。……あ、そうだ。山村ちゃんも今のところ無所属だよね?」
「あ、はい……一応は」
「ならさ、今度一緒にどこか行こうよ!派閥の人達と一緒に行くとそういうイメージついちゃうから誘いづらいんだよね〜」
「わ、私でよければ……」
「やった、じゃあ連絡先交換しよ〜」
……よし、同じクラスの子の連絡先ゲット。ふふ、これで有栖ちゃんと真澄ちゃん以外にもお友達ができた……。
Aクラスに戻るともう大半の生徒が登校しているようで、特に葛城派閥は少しザワついていた。その様子からは焦りや困惑が見受けられる。時間は……ああ、もうそんなに経ってたのか。やばいやばい。少し経って全員が登校してきた頃、真嶋先生が筒を持ちながら教室に顔を出す。
「席につけ。朝のHRを始める。……だが、その前に質問を受け付けよう。何か質問のある生徒はいるか?」
「先生!今朝振り込まれたポイントを見たら、10万ではなく、9万4000ポイントだったんですけど!」
「そうだろうな」
「……毎月10万ポイント貰えるんじゃないんですか!?」
そんなことを言ったのは葛城くんに忠実な服従心を持っている、戸塚くん。彼の一言に坂柳派閥の人達は呆れのような、小馬鹿にするような笑いを向ける。
「……入学式の日に言っただろう。この学校は実力で生徒を測る、とな。だが安心していい。これは歴代のAクラスでも優秀な成績だ」
「ならどうして!」
「他クラスよりは圧倒的に少ないにしても、授業中の私語、端末の操作、居眠り。そんなことをしている生徒に、100%の価値があると判断するか?」
「っ、それは……」
戸塚くんが言葉につまる。それもそのはずだ、戸塚くんは今言ったことの全てを最低1回はしている。そして何より、真嶋先生の言っていることは正論だ。
「戸塚の質問は以上か。他に質問のある生徒はいるか?」
大半の生徒の疑問点は戸塚くんの質問で解消されたであろう。その証拠に、手を挙げる生徒は一人もいない。
「それでは本題に移る。これは各クラスの成績だ」
筒から白い厚手の紙を取り出すと、黒板に貼る。そこにはAクラスからDクラスまでの名前と、その横に数字が表示されていた。Aクラスから順に940Pt、650Pt、490Pt。そして圧倒的な存在感を放つ、Dクラスの0Pt。やはり朝の会話からの推測は間違っていなかったようだ。
「あまりに綺麗ですね」
そう、隣の有栖ちゃんが呟く。確かに有栖ちゃんの言う通り、AクラスからDクラスに行くにつれてどんどんポイントが低くなっている。
「この学校では、優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。最も優秀な生徒はAクラスへ。ダメな生徒はDクラスへ、と。大手集団塾でもよくある制度だ。このポイントは卒業までずっと継続する。クラスのポイントは毎月振り込まれる金と連動するだけでなく、この数値こそがそのままランクに反映される」
……なるほど。仮に私達が私語、居眠りなどの減点行為を繰り返し、Bクラスの650Ptを下回っていたら、私達はBクラスへ、逆にほにゃのいるBクラスはAクラスになっていた、と。……なるほど、少し面白いシステムだ。
「そして次に。これは先日やった小テストの結果だ。優秀な生徒が多く、全員が平均点より半分の赤点を大きく上回っているな」
「……赤点の話をするということは、赤点をとった場合は何かペナルティーがあるということでしょうか」
「その通りだ、葛城。この学校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学ということになる。私個人に文句を言っても構わないが、これは学校のルールだ」
……なるほど。ザワついたクラスメイト達は案外優秀のようで、最低点は戸塚くんの65点。いや、中学の基礎レベルだったぞあれ。最高点は有栖ちゃんや葛城くんを含めた計4人の100点。私は90点だ。どうやら最後の3問ができなかった生徒が多いらしく、大半の生徒は85点を取っている。
「それからもう一つ。国の管理下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇っている。それは周知の事実だ。が、世の中そんな上手い話はない。この学校に将来を託すのであれば、Aクラスに上がるしか方法はない。それ以外の生徒には、この学校は何一つ保証することはないだろう。死に物狂いでAクラスを守ることだ」
真嶋先生がそう言い終わると、HRの終わりを告げるチャイムがなる。
「……少し長くなってしまったようだな。中間テストまではあと3週間ある。退学をしないよう熟考することだ。お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信しているからな」
そう言って締めくくると、真嶋先生はドアを閉め、教室を後にした。程なくして、葛城くんの周りに生徒が集まり始める。何やら抗議をしている様子だった。
「葛城くんの方は大変そうだね〜、まあ私には関係ないけど」
「ふふ、彼が失脚してくれるならこちらとしては願ってもないことですが……こうも張り合いがないと、競争相手としては不足ですね」
「おぉ、怖い怖い。まあ色々と頑張れー。勉強会でも行なうの?」
「ええ、特に真澄さんと鬼頭くんはこちらの中でも学力が低いようですから。……徹底的に教えてあげます」
……うわぁ。サディスト有栖ちゃんの笑顔だ。こわぁ。……うん。真澄ちゃん、鬼頭くん。頑張れ。
どうしても説明や重要な場面があると文字数として多くなってしまいますね。きっと次は中間テストに入れるはず。
夏休み、誰とデートする?(一話投稿予定)
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坂柳有栖
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神室真澄
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一之瀬帆波
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椎名ひより
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櫛田桔梗
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白波千尋
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綾小路清隆