【エレコド】電子の巨神   作:麟佳さん

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PCのサブ垢にて育成中の華火ちゃん
彼女と華麟を取り巻く環境はいかに……


華火

昼下がりのショッピングモールを歩く凛音。午前はモール併設の小さな会場にて演奏会を行い、撤収作業も一段落したので散歩がてらフラフラとしていた。そんな静かな一時に響く2つの声と駆け足の音

「アメリン先〜輩〜!」

「華麟様〜!」

振り返れば全力疾走で迫る小柄な女性とその肩に乗るエレクトリアがこちらに迫り、射程距離に入った所でプールに飛び込む様な勢いで飛び掛かってきた。もちろんこんな暫定危険人物を見過ごす訳にも行かず、ヨトゥンにがっしりとキャッチされて米俵の様に抱えられている。

「あれ?あれれ?なんかアメリン先輩に辿り着かない…というか浮いてない?華火はどう?」

「華火も同じです。まるで巨人に鷲掴みにされたように動けません。くっ!目の前に愛しの華麟様がいると言うのに…!」

「うわぁぁん!アメリン先輩に抱き着くために海外のお仕事も練習も耐えてきたのにぃぃい!」

捕まっているのにもかかわらずマイペースで騒ぐ不審者達。本人の言動とニコニコ笑う凛音をみれば知り合いなのは察する所なのだが、この暴走機関車を解放するのは抵抗がある。念の為に数歩離してから降ろすと、こちらにペコリと一礼。そして先ほどの助走が無いにも関わらず、凛音目掛けてぶっ飛んでいった。その運動エネルギーは抱き着くと言うには余りにも攻撃的である。それぞれ凛音と華麟の胸に顔を埋める2人。減圧ポンプでも使ったかのような吸い付き具合…、というか深い深い深呼吸をしているので本当に吸い付いているし、脚も絡めてガッチリと密着している。やはり引き剥がそうかと考えるが、抱き付かれている側の2人は優しく頭を撫でているので思いとどまる。そうして数分…。

「はぁ〜、肺いっぱいに先輩の香りを堪能できるなんて幸せぇ〜。」

「まだ不十分ですが、一先ず華麟様を存分に抱きしめられて幸福です…。」

緩々にふやけた笑顔で御満悦な2人。控えめに言って、うら若き女性が人前でしていい顔ではない。もし職質をされようものなら庇ってあげる自信もない…。

「改めまして、アメリン先輩お久しぶりですー!」

「お久しぶりヒナちゃん。最近帰国してきたの?」

「先週です!ホントは直ぐ会いに行きたかったんですけど、手続きやら時差ボケやら家の掃除やらで時間が取られてしまい……不覚っ!でも今日の演奏会に間に合ったのでモーマンタイなのです!」

「見ていてくれたのですか?言ってくれれば席の一つは用意出来たのに…。」

「いえいえ、推しの晴れ舞台は自分の力で見てこそです!それにこうしてサプライズも仕掛けられませんから。」

「飛びつきの勢いは衰え知らずですね。」

「私、鍛えてますから!所でこちらもデッカイ美女達と大きめ可愛いエレクトリアとはどんな関係です?」

外野を放り投げていた環境からようやく帰ってきたが、ヨトゥン達からすればそちらこそ何者だの一言である。とは言え無視していたわけではなく、凛音への思いが強すぎて順番が回ってこなかっただけなのだが。

「私の新しい家族です。皆エレクトリアなのですよ?」

「おぉ…こんなにもデッカイのがエレクトリア…!挨拶が遅れましたが、はじめまして!姫奈です!この娘はパートナーの華火ちゃん!」

「ご紹介に預かりました。華麟様の伴侶、華火と申します♪」

「「はい?」」「( ゚д゚)?」

「真に受けなくていいから、友達以上で伴侶未満だから。」

「んもぅ、華麟様は奥手なんですから♥」

「あなたの超前傾姿勢からしたらみんなそうなるわよ…。」 

輪に混ざれるかと思いきや再び外界と隔絶した世界を生み出そうとする華火。本人は冗談で話している様子は無く、腕を組んで身体を擦り寄せている。その間に入る余地は無い……と思いきやそこに黒い影が迫る。

「(⁠눈⁠‸⁠눈⁠)」

「クロヒメ?どうしたの?見たこと無い目してるけど…。」

華火に構わず華麟を抱き上げたクロヒメ。目は口程に物を言うが、分かりやすい直球の不満で睨みつけている。一応姉妹という括りにいるが、元々は華麟に一目惚れして付いてきたクロヒメ。願わくば一親等を狙っているのに、突然競争相手が出てきたとなれば機嫌も悪くなるのは仕方のない所。

「……貴女も華麟様を狙っているのですか?凛音様は家族と言っていましたが…。もしやこちらの皆様は華麟様の妹なのでは…?」

「よく解ったわね?ヨトゥンがお姉様って呼んでから、どんどん広まっていったのよ。でも確かにクロヒメは私に一目惚れしたらしいから、妹兼嫁志望かもね。」

「( #・Д・)」

「ふふ、そんな風に邪険にしないでください。華麟様の妹ということは華火の義妹。仲良くいたしましょう?もしくは同じ方を愛する者同士、好敵手(友)という関係性でも構いません。はたまた華麟様絶対守護連盟というのも悪くありませんね。例え私のことを嫌っていても、華麟様が大切にしている方なら、心の底から愛しますとも、クロヒメさん。うふふふ…あははは♪」

「(;・Д・)…」

威嚇していたはずだが逆に気圧されるクロヒメ。穏やかな人達に囲まれて生活している彼女にこのロケットランチャー様な好感を受け止める準備は無い。気付くとクロヒメの手掴んでいた華火。しっかりと握られているが痛みは無いが、簡単には離れない圧力。コレに逆らうのは得策ではないとクロヒメは理解した…。

「仲良さそうでよかった〜。それにしても…ヤバ…クロヒメちゃん可愛すぎ…。というかみんな綺麗すぎ…。ぎゅ~ってしていいかな…?話したすぎるぅ…」

「折角ですからカフェでゆっくり話しませんか?」

「いいですね、私もこの後空いてるのでずーっとダラダラ出来ますよ!」

そうしてカフェへ移動した一同。この移動中も席についても華麟の両サイドはクロヒメと華火にがっちりホールドは継続され、抱き枕と何も変わらない。温かい飲み物とデザートを数品注文して昔話に花を咲かせる。ヒナこと空星 姫奈は大学の音楽サークル時代の後輩。何でも出来る天才肌で、学問も武芸も知らない事はドンドン体験したいと様々なサークルを飛び回っていたらしい。そんな中で凛音の演奏する姿と奏でる音に一目惚れし、すっかり懐いたのだ。卒業後はデザイナーとして働きつつ、射撃競技者としても活動している。

「射撃?唐突…」

「やってみると楽しくって〜。それにアメリン先輩は剣術やってますから、2人で並べば映えるなぁって。」

「世界大会にも出ていましたね。」

「前は不覚にも準決に勝てず…。もっと金キラなメダル欲しかったぁ……。」

「デザイナーというのは具体的には?」

「衣装デザイン!キャラクターとか小物のデザインとかも大好き! 華火の着てる服も自分で描いて特注しちゃった。」

「見栄えと機能性を両立した素晴らしい衣装です。アリーナでじっくり見たいと何度声をかけられたことか。」

「そんな華火に出会ったのは社会人になってからなの。初めの頃は服のデザインずーっと考えたな〜。射撃のコツも私が教えたらドンドン上達して、アリーナもバンバン勝てちゃって!」

「そのアリーナで出会ったのは華火の運命の人……華麟様。あの時の華麟様はとても可愛らしい姿を見せてくれました。」

「あれはビビった…攻撃せずひたすら抱き着きに来るから、へとへと…。因みにその後ちゃんと戦ってもらったけど、射撃武器オンリーだと私勝ち目ないから。」

「え?お姉様が不利ではなく、勝てないのですか?」

「マジマジ。近接の八重、射撃の華火ぐらいに思っていい。それに剣は不得手でしてーー、とか言うけど銃剣や両刀でしっかり戦うし。」

「そんな事はありませんわ華麟様。華火に剣は重くてとてもとても。」

「お淑やかにプラキャとかガトリングとか振り回す奴が言うな。そうだ、クロヒメも射撃教えてもらったら?剣術は八重に教えてもらってるから、華火の銃とクロヒメのスペックが噛み合えばとんでもなく強くなれそう。」

「( ゚Д゚)!」

「ええ、構いません。華火の全てをお伝え致しますわ。」

「そう言えばこのカフェはエレクトリア用のバトル施設がありますから、お手本を見せるのはどうでしょう?」

「丁度いいわね。華火、ちょっとお願いあるんだけど」

「なんでしょう?華麟様の頼みであればなんなりと…。」

「あのゴッツイ狐装備って今持ってる?ド派手に暴れる華火が久しぶりに見たくってさ。」

「ふふ…あははは!えぇ、ええ!ありますとも!華麟様が華火の暴をご所望なのでしたら、何時でもお見せいたします♥ヒナ!」

「あいよ!お着替えターイム!」

手早くパーツを交換した華火を端的に表すなら黒鉄の狐。手には大型レーザーキャノンとクロスディフェンダー。背中にはフォックスブースター、マルチエネルギーキャノンとどれもこれも大型武装。それらを身に着けても安定感を見せるフォーミュラボディは黒く煌めいていた。いざバトルが始まれば華火の一人舞台。エネルギー弾とミサイルが飛び交い、次々と敵を吹き飛ばしていく。苦労して花火に近づいたとしても懐から取り出したツインエッジで鎧袖一触。

「アハハハ!!華麟様に迫る全てを吹き飛ばしてあげますわ!ハハハッ、ハァハハハハッ」

一応タッグバトル設定のはずだが、華麟が倒したのは1割にも満たない。初めて見たヨトゥン達はその確かな技術と狂気を交えた暴れっぷりに目が点になる。華麟が自分以上と評した事に偽りは無く、アリーナでもここまでの使い手はそうそう見つからない。と言うかこんな狂気的な叫びを上げる相手は出来れば出会いたくない。

「華麟様!華麟様ぁ〜!華火の勇姿を見てくれましたか♪」

「オールレンジ攻撃に磨きがかかってるわね。やっぱ対戦したら勝ち目薄そう…。」

「ふふ、華火が華麟様に銃を向けるなんて決してあり得ませんわ。それでその……よろしければご褒美を…。」

「はいはい、私服に着替えたら抱き着いても良いわよ。」

「華麟様ぁ♥♥」

着替えて席に戻った華火は再開した時と変わらぬ密着具合。頭を撫でられていると時折喜びの声も漏れ、ハートマークが弾幕の様に飛び交っている。それを眺めていた姫奈もヨトゥンとスルトの間に挟まり、大きな胸の柔らかさを堪能していた。両手に花といえば聞こえはいいが、その顔はやはり蕩けきっているため、事案が発生しそうである。

「ぐふ…ヤバイ、このままじゃ変態になっちゃう…。その大きな谷間にダイブしちゃう。」

「ヒナさんなら構いません。悪い人ではないともう分かっていますので。」

「スルトも、大丈、夫。あ。良いこと、考えた。ヨトゥン、こっち。」

「はい?」

促され横に向いたヨトゥンと向き合うスルト。姫奈の前門にはヨトゥン、後門にスルトの胸が浮かぶ形だ。何が起きるのかとヒナがワタワタしていると、突如視界が暗闇に包まれる。4つの大きな膨らみに包まれた姫奈の頭は外界から閉ざされ、逃げ場を失う。もし立った状態であれば、小柄な姫奈は二人の抱擁に飲み込まれ、宙吊りになっていただろう。ヨトゥンは離れようとしたが、スルトはより強く密着するようにヨトゥンの腰に腕を回す。体を動かせばまるで咀嚼するように姫奈の体を押し潰していく。しかし柔らかな胸とは言えこの圧力ではプレス機と変わらず、顔を包み呼吸を阻害する。命の危険があると判断しスルトを強引に離そうとしたヨトゥンだが、その腕を待ったと掴んだのは姫奈。もう一方の手を見ると余りにも力強いサムズアップ。その後より強くとねだっているのか、自らヨトゥンに抱きついた。ならば良しと更に強く抱きつき、そのまま数分後…。

「どう?楽しい?」

「姫奈さん、大丈夫ですか?」

「私……幸せで死ねる…。悔いなし…ガク…。」

「姫奈さぁん!?」

「やりすぎた…」

白く燃え尽きた姫奈は余りにも幸せそうで、どこからかスポットライトが当てられているようにも見える。満足してゆっくりと息を引き取る姿はまさに大往生と言っても…。

「ヒナちゃん。皆さんに服を作ってくれないのですね?」

「ヤッベェ!?悔いの塊だそれぇ!?!?」

撤回。満足して消え去ったはずの煩悩は次々とあふれ出し、欲望は底知れず。再び活力を取り戻した姫奈は蘇ったどころか数年若返った様な生きの良さで立ち上がった。

「そうよそうよ!こんなに綺麗な美女達に服を着せないなんてデザイナーとして恥ずかしか!しかもアメリン先輩の家族の服とか誉れしかない!!」

「その誉れ、谷間の中で死にそうだったのですが…。」

「と!いうわけで!どんな服が良いかな!?演奏用のドレス?イケてる私服?カッコいいスーツ?露出マシマシの水着とかどう!?ちょ〜っと待っててね、今すぐラフ描くから…リクエストあったらじゃんじゃんヨロシク!」

「派手、露出、カッコ良。」

「オッケィ!世間様が許すラインを攻めちゃえ!」

「私は落ち着きがある方が…。」

「よしよし、控えめにしつつ主張はしっかり。」

「( ノシ゚д゚)ノシ」(訳:フリル沢山のドレス欲しい)

「未来のヒナちゃんはフリル地獄だ!」

「マジか…今の伝わるの?」

そう言って鞄の中からペンとリングノートを取り出すと恐ろしい速さで服のデザインを描き始めた。口はずっと話し続けているが、ペンも淀みなく走り続ける。完成図は既に頭に出来ているようで、皆に見せてあげたいと瞳はキラキラしている。それを眺める凛音はまるでアシスタントの様に机を片付けたり、飲み物やお菓子を注文している。そうして描くこと数時間。

「ムフー♪ お陰様でいい感じにまとまった〜。空いてる時間にコツコツ作ろ〜。」

「いいえ、駄目ですよヒナちゃん。ちゃんと私から正式に注文しますからね。それとヨトゥンとスルトの服については開発者の円さんにも話をしたほうが良いと思いますから、後で紹介します。」

「マジですか!?好きな服作ってお金が貰える、ヤッター!」

「演奏会用の服に普段着、水着まで…。ほ、本当に良いのですか?」

「大丈夫大丈夫!強いて言えば…出来上がった服を着て、撮影会させて欲しいな〜なんて…。」

「でしたら宣材写真をお願いできますか?私だけでなく、皆も演奏会に出る機会が増えると思うので。」

「アメリン先輩……神か?週明けのお仕事がわくわくして来ました!」

「それじゃあ一段落した所で解散しましょうか。日が傾き始めていますから。」

凛音の一言を合図にノートへ集まっていた視線が窓へ移すと、薄く赤の入った空が広がっていた。周囲の客もすべて入れ替わっており、壁時計の短針は地平線をとっくに過ぎている。

「あっれぇ……こんなに経ってました…?」

「こんだけ占領して、よく店員に声かけられなかったわね?」

「実は追加注文の際にメモを渡されまして…『美人さんと神イラスト見られて幸せなので、時間はお気にせず♪ 店長』だそうです。」

「大丈夫このカフェ?店長の頭のネジちょっと緩いけど?」

何の気なしに近くを通った店員さんをみてみると笑顔のピースサインが返ってくる。更に奥のレジを見ると(b・ω・)bと顔を覗かせる暫定店長の姿。スタッフのポーズを合わせるとハッピーで賑やかな集合写真になりそうだ。

「皆さん可愛いですね。雰囲気も良いカフェなので、また近くで用事がある際はお世話になるかもしれません。ところでこれから夕飯の材料を買いに行くのですが、ヒナちゃんも一緒に食べませんか?」

「あばばば、アメリン先輩の手料理ィ!?是非ともよろしくお願いします!」

「華麟様と一つ屋根の下……、うふふふ♪」

「あれ?これお泊りコースまで入ってる?一応明日はフリーだけどさ…。」

「と、ということはご飯にお布団…いやお風呂にリビングタイムにもアメリン先輩が…。」

「華麟様。これはもはや紛うことなき同棲かと。つきましては急ぎ婚姻の準備をしましょう。」

「いやどう見てもお泊り会だからこれ。」

「よーし、私達の休日はこれからだ!」

「あ、私聞いたことがあります。打ち切りエンドですね?」

先輩と後輩の一時は日を跨ぐまで続いたそうな。

 

 

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