【エレコド】電子の巨神   作:麟佳さん

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今回はアマネとラグナロクのお話
と言いつつ、彼女達が向かった陸上競技のイベントには見知った顔もいて?


紅蓮駆ける少女

ここは街の競技場。陸上トラックの他、メジャースポーツの施設なら大体あるので、近隣の学校や団体によく貸し出されてイベントや大会が開催されている。本日ここで開催される陸上イベントではスケジュールの一つに人とエレクトリアによる障害物レースが開催される。参加者、観客含め中々の盛況ぶりだが、その一角でベンチに座りうなだれる人影が一つ。

「なんでこうなったかなぁ…。」

気怠げにぼやくのはアマネ。面倒くさがりな彼女の態度としては珍しくないが、その服装はジャージ姿にランニング用のシューズ。普段は降ろしている長い髪をポニーテールにして纏めていることから、選手として参加することは間違いない。この大会の景品の一つにスポンサーのスイーツ店で使用できる割引券1ヶ月分が贈られるので、放課後にアイスをよく食べる彼女にとって魅力的なのは間違いないが、この手のイベントに興味のないアマネは今日のことも元々は知らなかったし、知っていても動く気は無かっただろう。事の始まりは部活にて、顧問が放ったひと言から始まる。

「これ面白そうだから、この日の練習はこのイベント参加ってことで。」

顧問はこの手のイベントにはよく参加していたらしく、普段と違う刺激が心地よいとのこと。今も似たようなイベントがあれば積極的に参加するし、部員達にも勧めている。遊び気分で楽しめるとのことで部員の参加率もそれなりに高いのだが、エースにしてサボり筆頭のアマネの休日は基本寝るか遊びに行くかで、稀に気が向いたら自主練である。当然放っておけば来ないだろうが、そこはやる気の出し方である。明確な餌があるなら、先輩・朱のお手の物である

「一月分のアイス券だってさ。こりゃ来月のお前は機嫌がよさそうだな?」

「誰が出るって言ったの?面倒くさい…。」

「お得意のサボりか?まぁ自由参加って言ってたしな。でもアマネがいないってんなら、アタシが景品獲っちまうね。部活終わりに2人で食べに行こうぜ?」

「……は?」

「大丈夫だって、サービス券は他の人にも分けて良いらしいから、お前にも少しやるよ。」

「……ヤダ。」

「あ?嫌だぁ?」

「デカい顔されそうでヤダ。私が全部食べるから。私の方が速いし。」

こうしてまんまと挑発されて、今日にいたる。隣に座る朱はニヤケ顔が止まらない。思いっきり蹴っ飛ばしたいが、不意打ちでなければ避けられてしまう。因みにエレクトリアがいない生徒は既に別種目に参加したので、観客席から応援している。騒がしい会場の中でもよく聞こえる程度にデカい声だが、馴染みがある分マシである。そんな中、別の馴染みある声がかけられる。

「おや?こんにちはアマネさん。」

「やっほーラグナ〜。」

「──は?」

スラリとした脚、程よくくびれた腰、そこまで伸びる長い黒髪。見上げると端正な顔付きな長身女性。紛うことなき凛音である。ボディラインが見やすかったのはスポーツウェアを着ているためだ。つまりはそういう事である。

「え?凛音さん出るの?」

「えぇ。仕事もなかったので、ちょっと身体を動かそうかと。」

「お前こんな綺麗なお姉さんと知り合いだったのか!?」

「この人といるでっかいエレクトリアと知り合って……。ほらあそこの飛び出た赤髪。それと銀髪の方も。」

指差した先には人混みから上半身が飛び出るスルトの姿。アマネにも気が付いた様で、ニコニコと手を振っている。隣のヨトゥンも会釈をしてくれている。

「あー、あれが前に言ってた…。いやデカすぎんだろ…。というかこの人もデケェ…。」

「もしかして貴方がトリ先輩ですか?初めまして、凛音と言います。仕事は音楽家をしています。」

「おぉぅ…初めまして。え、音楽家?」

「らしい。でも運動出来るの?」

「数時間のライブは体力が必要ですから、軽いランニングはしていますよ。陸上部のお二人がライバルとは、とても楽しいレースになりそうですね。ではまた後程。」

会釈をして去っていく凛音。会話中には気が付かなかったが、その身体つきは太さこそ控えめだが日頃から運動している肉付きが見られた。それ故に2人は同時に首を傾げることになった。

「音楽とか嘘だろ…。ゲームとかに出てくる楽器で殴り倒す系の奴か?いや背も高ぇから本当はバレーボール部じゃねぇか?」

「ホントに知らないし…。あ、でもダンスとか剣術はやってるんだってさ。」

「そっちが本業じゃねぇだろうな……。こっちもそろそろに移動しようぜ。良さげなスタート位置取られちまう。」

「はいはいー。」

選手スペースには続々と人が集まり、各々ウォーミングアップをしている。メインモニター前の客席やコース周辺に見物客も続々と集まり、熱は高まっている。

 

「皆様こんにちは!こちら障害物レース、エレクトリアとペア参加部門の会場です!人とエレクトリアの絆試すべく用意されたコースはコチラになりまーす!」

 

第一エリア:大運動会、障害物走

運動会で馴染みある仕掛けの他、エレクトリアだけが始動できる仕掛けもあるので、うまく連携して駆け抜けろ。

 

第二エリア:エレクトリアレース

エレクトリア限定コースで、経路にある障害物を避けながらゴールを目指す。道中には次のエリアを有利に進めるマップデータが置かれているが、ダウンロード時間があるため無視してもOK。

 

第三エリア:パルクールゾーン

エレクトリアのナビゲートを受けながら、段差や小さな足場を駆け抜けていく。難易度が分かれており、第二エリアで獲得したデータにはそれぞれの地図と概要が書かれている。

 

最終エリア:スパート400mダッシュ

小細工無しのトラック走。残る体力を振り絞り、ゴールを目指せ!

 

レギュレーションは脚のあるパーツ。つまり乗り物系やタンクなどは使えない。道中の射撃は仕掛けを動かす時のみで、直接攻撃は許可されていない。

「受付を済ませた方は早めにスタート地点までお越しください。同ブロック内では先着順で並びまーす。」

スタート地点に集まる面々を見渡すとカジュアルに楽しみに来た人から、ガチで気合を入れている者、コスプレに興じる者や学生大会で見かけた面子も少々と幅広い。アマネ達は大会実績があるため、前方からのスタートだ。

 

 

「では位置について…………スタートォ!!!」

駆け出した選手は溢れ出るようにスタート地点から広がっていく。アマネは狭い隙間を縫うように進んで走りやすい先頭集団に入り、朱もそのルートに追従して楽々と前に出る。凛音は先頭から少し離れた中団で控えている。選手を待ち受けるのは網やハードル。足首辺りまで水の張ったミニプールなどなど、凛音をはじめとした大人達は懐かしさを感じつつ、仕掛けに挑む。

「こんな運動会みたいなことが出来るなんて……。ふふ♪」

「余裕そうでなりより。アマネ達は…やっぱ速いわね。」

流石はトップ集団。障害物の間の区間を流す程度のランニングでも他の参加者より随分速い。しかし障害物への対応で先頭集団も徐々に縦に伸びている。

「2人で同じマークに乗り継いで行かないとクリアできないみたいね」

「メンドクサ…。」

 

「げ?なんだこりゃ?算数の計算?」

「どうやら答えと同じ数字のパネルを撃てばゲートが開くみてぇだ。解けるか朱?」

「馬鹿にすんじゃねぇ!お前はさっさと射撃ポイント行っとけ!」

 

「ここは2人で射的みたい。他の人ならハズレ枠だけど、私達なら大丈夫ね。」

「ヒナちゃんと一緒に射撃場に行った経験が生きそうです。彼女ならベストタイムが見られたかもしれません。」

「トッププロは反則すぎ…。」

 

複数人を捌くためにルートは幾つかに分岐しているので、仕掛けも様々。時に身体を動かし、時には頭を悩ませ、はたまた吊るされたパンに食らいついたりもする。

「は?これからまだ走るのに口の中パッサパサなんだけど?」

「でもいいペースよアマネ。中継地点に給水所もあるから、ゆっくり休んでて。」

「おっけ。早く帰ってきてよ?」

第二区間ではエレクトリアが専用コースに向かい、パートナーはマップ受信場の近くにあるゴール地点に待機する。コースの様子はモニターで見ることはできるが会話は出来ないので、エレクトリア達は初見でコースに挑む。

「きゃあ!?危ないってこれ!?」

「ぴゃ!?冷たいぃ…。」

「流石にバラエティ豊かね。でもバトルには慣れているのよ!」

扇風機を用いた突風エリアや、威力を抑えた凍結弾など、前区間より過激になる。因みに障害物を除いたコースレイアウトは何処かのサーキットを参考にしているので、障害物が少ない箇所は上手くスピードを調節してコーナーをクリアすることがタイム短縮に繋がる。アスレチックやバトルを得意としているエレクトリア達はやはり順応が早く、後ろとの差が開いていく。撮影用カメラではまるでアクション映画の様な大迫力の映像が繰り広げられる。少し編集を加えればそのまま映像作品としてだせそうだ。バトル経験も豊富なラグナロクは先頭集団に食らいつき、第三区間のマップデータ受け取りに入る。通信速度はあえて遅くされ1分はかかるので、あえてマップを受け取らない戦法も使えるが、パルクールエリアは難度に応じて走行距離も変化する。端的に言えば険しい近道か緩やかな大回り。もし攻めるならマップで事前に予習しなければ転倒、転落は免れない。

 

「ラグナお先〜!」

通り過ぎたのは華麟。バトル面において参加者随一なので、この区間で追い付かれるのはおかしいことではない。おかしいのは彼女がデータスポットに目もくれず飛び去ったことだ。

「華麟あなた、マップはどうするの!?」

「ぶっつけ本番で走るんだってさ!付き合い長いけど恐ろしい事言ってると思う!」

ゴールに迫る華麟を見たアマネは慌てて凛音を探すと、どうやらあちらもこちらを探していたようで既にこちらに向かっていた。

「ねぇ、マップ無しって本気なの?」

「はい。真っ向勝負ではアマネさんに絶対に勝てないので、ここでマージンを作っておこうと思います。」

「お待たせ!」

「では、先に失礼します。アイスを持ってお待ちしていますね?」

「………。っ。」

「痛ぇ!?」

華麟と合流して、パルクールゾーンに入っていく凛音は高難度のコースに進むのを見届けつつ、イラッとしたので隣の先輩に蹴りを入れておく。理不尽?いや、これまでに回避された分を思えば利息はまだまだ残っている。そんなことはさておき、彼女達の選択の結果が知らされる。

「な、なんだぁぁ!?!?パルクールコースを恐ろしい速度で駆け抜けるペアがいるぞ!?」

遠くから聞こえる実況の叫び。大モニターには映されていたのは凛音の少し前の空を飛ぶ華麟。確かにこれならマップデータが無くとも次のコースを把握する事が出来るが、華麟は指示を出していないように見える。声出しは勿論のこと、指先で合図も出していない。ただただ進む方向を示すマーカーとして働いているだけ。その後方を走る凛音が見ているのはすぐ目の前の地形だけ。隠れた段差や曲がり角の先も当然見えない。しかし共鳴能力によって、華麟という第三の眼を得た凛音は一切のミスなくコースを進んでいく。このままでは取り返しがつかない程に差が開く。

「ラグナ!来て!」

「待ってアマネ!データ受信がまだ途中で…。」

「無くていい、早く!」

アマネの指示で受信塔を慌てて中継地点に急ぐラグナロク。それを見送ったトリシューラにも朱から通信が飛ぶ。

「アタシ達も行くぜトリシューラ!珍しい物が見られるかもしれねぇ!」

「おいおい!珍しい物ってなんだよ!?」

「アマネの本気だよ。」

 

第三エリアに入ったアマネが選んだのは凛音と同じく最短にして最難関のコース。細い足場、連続した幅跳び区間や傾いた床、壁走り。段差によって前方が直前まで確認できない場所もある。

「こっちも同じ作戦やるよ。」

「待って!向こうみたいな以心伝心は出来ないわよ!?」

「うるさい。やらないと勝てないし。」

「──もう。その気になったら意地っ張りになるんだから。」

常にそばにいるラグナロクから見てもアマネは張り切っている。誰かに煽られても割と気にせず流すのだが、今日はエンジンのかかりが良い。難所が迫るが、きっとアマネの成長につながると考えるその姿は姉や母のそれである。大モニターで序盤こそ見たがそこからは未知。持ち前の身体能力と直感で走るが、凛音のペースにはまだ届かない。何とか出来ないかと思考を巡らせていると段差に脚を取られ、身体は前に倒れ始める。不運なことにその先は飛び石エリア。穴にはスポンジプールが敷かれているのでケガはしないだろうが、大きなロスになる。何とか態勢を立て直そうと一歩踏み出すが、二歩目の行き先に地面はない。

「アマネ!」

落下するアマネの身体が不意に浮き上がる。眼を降ろすと、脚が崖の端を蹴り出していた。自分の意志より手前で振り下ろされ、大地をとらえたのだ。しかし眼前には迫る次の足場。先走る身体と迫るタスクの処理が全くできていないアマネの思考は空吹かしするエンジンのように空回りしている。

(間にあ…(合わせる!)。)

ギアが入った思考は猛スピードで追いつき、適切な指示を送る。足場を一つ飛び越える度に蹴りが強くなり、こっちに来いと言わんばかりに引き寄せられる。前にいるのは小さな少女。

 

「付いてこられる、アマネ?」

 

何事も面倒、サボってしまえという怠惰な彼女だが、その深奥には強烈な負けん気。見据えた敵を灼き尽くさんばかりの熱意が眠る。そして全てを超越する天賦の才能を宿す。勢いも向きも適当な炎の行き先を導いてやれば、後は手を付けることなく自らその勢いを増していく。

「……うざい。付いてくるのはそっち!」

 

燃えたぎる身体に、雷電のような思考速度。駆け出したアマネの前に障害物は意味を成さなかった。足場を飛び移り、壁を登り、坂を落ちる勢いで走る姿は韋駄天と評するほどに素早い。それに呼応してか、いや追い合う様にリードするラグナロクのペースも上がる。それに負けじとアマネも興奮気味に口を釣り上げながら、地面を蹴る

『もっと前に!もっと早く!まだ足りない!』

『あなたはまだ本気を出し切っていない!』

凛音と華麟が完璧な調和とすれば、こちらは意地のぶつかり合い。お互いが譲らないその根底に強い絆があるからこそ、より大きな力を引き出そうと邁進する。怠惰も甘えも許さないその走りは洗練され尽くした美しさも内包していた。

「アマネ選手、第三区間突破!まるで飛んでいるかのように駆け抜け、二番手で最終エリアだァ!」

中継地点を通り抜けた際のタイムは先行した凛音のタイムどころかコース作成時のスタッフレコードをも上回る大記録を叩きつけた。会心の走りを見せたアマネは給水スペースで息を整えつつ最終エリアに入る。

「凛音!アマネがトラックに来たわよ!」

「もう……ですか…!」

先を走る凛音は50mほど先行しているが、ペースはかなり遅い。身のこなしの良さと華麟との共鳴による底上げにより先ほどのエリアでスパートをかけたため、残る体力は僅か。とは言えアマネも同じルートを踏破した直後でスタミナは削り取られている。

「アマネ。」

こちらを見るラグナロクの手には御旗が翻る。それは彼女の意思、誇り、勝利の象徴。自信に満ちた瞳がこちらを見つめる。貴女は負けないのだと。

「────よろしく。」

標的を見据えたアマネは飲み終えたコップを放り捨てて地面に伏せる。その意を理解したラグナロクはアマネの少し前に降り立つ。

「set!」

旗を伏せると共に、腰を上げる。一刻を争う時だが、2人はまるで写真で切り取ったように2人は微動だにしない。その時を待つように、内圧を高めるように留まる。

「Go!!」

振り上げた旗を炎が通り抜ける。限界まで蓄えた力は、少女の体を前に前に押し出していく。一連の動作に数秒かかり、さらに差が開いたがそれは自身の豪脚で踏み潰せばいいだけのこと。アマネが生み出す気流の渦に乗って、今度はラグナロクが追いかけていく。

 

「アマネ選手、ここまで走り抜けたにも関わらず、物凄い速度で飛び出した!まさかそのまま走り抜けるつもりなのかぁ!?」

「いや、アマネはこんなもんじゃねぇさ。」

この激走を前に会場の熱量は最高潮に達する。そんな大勝負をゴール付近の特等席で見守るのは朱とトリシューラ。パルクールゾーンはさっさと諦め、後輩の勇姿を観るためにここに陣取ったのだ。

「ちゃんと録画しとけトリシューラ。こんなのめったに見れねぇ!」

「当たり前だ!バッチリ格好良く撮ってやる!」

徐々に差が縮む2人、いやアマネに関してはスパートに向けてペースを上げている。コーナーも失速することなく曲がり終えて最終直線。見据えた先にはゴールゲートが待つ。遠かった凛音の背中だが、もうじき手が届くほどに迫る。

「もう少しよ凛音!」

残った力を振り絞って、ペースをあげる凛音。息は上がっているが、ここまでくれば根気の勝負。ここにきて膠着する2人。

しかし彼女はあくまでも身体能力が高いだけ。勝負所と力の残し方、そして限界を根性でねじ伏せる走りを知っているのは…。

「アマネ!」

「─────ッ!」

凛音の影から直角と錯覚する程の鋭さで飛び出したアマネはこれまでにない渾身の力を込めた一歩から、最高速に達した。残っていた差をあっという間に埋めて、凛音を捉える。

「ここで並ぶか!?…並ばないッ!突き抜けて行ったァァァ!!」

横から風が通り抜けたと錯覚する程の速度差に、凛音は横顔を見る間もなく、美しい銀髪が顔を撫でる。

 

 

「ゴォォール!!1位は激走を見せたアマネ&ラグナロクコンビだぁ!」

会場が歓声に包まれる。それを一身に受ける少女は喜びを爆発させる事はなく、静かに勝利を噛み締めながらクールダウンに入る。身体は直ぐに整えられたが、親しい友人との真剣勝負とエレクトリアとの共鳴という初めての経験に与えられた高揚感はまだまだ落ち着かず、頬を染めて恍惚気味に笑っている。

「おめでとうございますアマネさん。興奮冷めやらぬといったところですね。」

「2人ともおめでとう、ラストのスパート滅茶苦茶速かったわね。」

「ありがと。それを言うならマップなしで走ったそっちもヤバいんだけど?」

「手応えは合ったのですが、奇策は通じませんでした。すぐに追いついたということはお二人も?」

「そうよ。アマネったらムキになっちゃって、ねー?」

「ウザイ…。」

「では困難に打ち勝った勝者に細やかな壇上を…。失礼しますね。」

「お?…おぉ〜!?」

アマネが疑問を抱くより早く、リュックを背負うような軽い動作で肩車をする。ゆっくりと歩きながら客席の声援に応える凛音に対して、アマネは恥ずかしいのか、それとも火照った熱が引かないのか真っ赤である。

「お、降ろしてよ。まだ汗乾いてないし…。」

「……そうですねぇ。でも汗で蒸れたアマネさんは温かくて柔らかくて気持ちいいですよ。」

「ヘンタイ…。」

「凛音って可愛い女の子大好きだからねぇ…。そのまま頭叩いたり、太ももで締めてやっても良いわよ〜。」

「えっと…それってご褒美ってやつじゃないの?」

提案通りに足に力を入れて締め付けてみるも力が入り切らず、程よい圧力で揉む程度になり、うふふとほほ笑む声が下から届く。

そうして意地悪な大人や大勢で押し寄せてきた陸上部の面々に弄られながら閉会式まで済ませて念願のアイス券を手にする。

そそくさとシャワーと着替えを済ませて、凛音達とアイス店に向かう。部員達が付いてこようとするが、大勢で行くのは気分が悪いので睨みつけて帰らせる。元々よく行く店舗で、店員も顔見知りだったので祝いとしてサービス券にさらに追加トッピングしてもらい、ご機嫌なアマネであった。とはいえ話し始めるとコースについて愚痴ったり、トンチキ作戦に愚痴り、トンデモペースにため息とアマネがグダグダと喋っていた。その途中でラグナロクとの一体感について話が出た際、凛音と華麟は直ぐにその正体に気付いたらしく、丁寧に説明してくれた。しかし共鳴能力と言われてもアマネにはピンと来ない。凛音と華麟の話を聞く限り、お互いの絆や相手への共感や信頼が大切な様に聞こえたが、あの時のアマネは負けたくない一心で力を振り絞ったら何故か発動し、その後も互いに煽るようにぶつかり合っている。とりあえずゾーン現象的な奴だと取り敢えず認識しておく。

 

「今はどうなの?いつでも出来そう?」

「うーん…さぁ?」

「私もなんだかぼんやりしているの。自分の意思で出来るなら、アマネのやる気を引っ張り出せると思ったのだけれど…。」

「むしろアマネさんのやる気に依る所が大きいのかもしれませんね。私達はいつでもスイッチを押せますが、アマネさんはそっぽを向いてそうです。」

「ふーん。じゃあもう出来ないかもね。」

「えぇー!?私はアマネと一つになれたみたいで嬉しかったのに…。」

「だって二人一緒じゃないと出来ないなら、大会で使えなくない?じゃあ私何も得しないでしょ?」

「でも私のバトルの時は使えるわよ?」

「やらなくてもラグナは勝つでしょ?」

「ふふ。お互いの絆は強いようですね。やはりアマネさんのやる気次第のようです。」

「そうだ。先生から逃げるときとか、遅刻しそうな時なら本気で走れるかも。」

「そんな不純な動機に巻き込まないで欲しいわね……。」

後日、結局遅刻回避のために使われたのは別のお話。

 

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