「あの、お姉様。凛音を一人残して出掛けるのはいかがなものかと…。」
「いーのよ別に。寧ろ今日の事は独断でやらないとだし。」
「バレンタイン。感謝…伝える、日。」
みんな大好きなチョコを贈る日。エレクトリア達もご主人に感謝を伝えるべく手作りしたり、少し高いショップ品を注文することも珍しくない。華麟一行もレンタルキッチンに材料を持ち込んで下準備を進めていた。ベースの板チョコは業務用が2kgという張り切り具合だ。
「さて、材料とレシピはもう準備してるから形を決めないと…。希望はある?」
「私は無難にハート型を作ろうと思います。」
「四角。シンプル、ベスト…。」
「クロヒメは何にする?」
「ヽ(=´▽`=)ノ」
ニコニコ笑顔で華麟に抱きついたクロヒメ。ハグはいつもの事ではあるが今回は意図が読めない。
「いや私じゃなくて、形を……。」
「お姉様型、のチョコ?」
「(`・ω・´)ゞ!!」
「え、私なの!?」
「なるほど、好きな物を好きな人に贈るのは有効ですね。凛音はお姉様が大好きなのできっと効果アリです。」
「いや…そうかもしれないけど……私が食べられてるみたいで…。」
「ヨトゥン。お姉様、って…美味しい?」
「ぇええ!?いやその…確かに私の中に入れる為に呑み込んではいますが味覚は……。」
「喉越し、歯ごたえ…どう?」
「確かに私もちょっと気になってた。円の事だからそこの機能もこだわってるんじゃない?」
「そうですね…。パーツが無ければ喉をツルリと落ちて行くので、喉越し?は良いのかも…。歯応えも程よい弾力で…。」
「つまり…お姉様、美味しい。チョコ、とお姉様。もっと美味しい。」
「(つ≧▽≦)つ」
「チョコと私のって言われたら私にチョコ塗ってる感じになるんだけど……。」
「(‘◉⌓◉’)!?」
「チョコに濡れたお姉様……。不謹慎ですが……美味しそう…。」
「プレゼント、は…お姉様……!」
「し、視線と圧が痛い……!?と、取り敢えず作るわよ!」
各々の方針が決まった所で本格的に作業に入る。本来のエレクトリアなら専用の道具が必要だが、巨大なヨトゥンとスルトは人と同じ道具を使えるので問題なし。クロヒメも大きなアームパーツのお陰で子ども用なら扱える。
「これだけ人手がいると楽よね〜。」
「去年まではお姉様一人で作っていたのですか?」
「いや、凛音と一緒に作ってた。二人揃って料理好きだし、別に見られても気にしてなかったし。でも今回は皆がいるから当日のお楽しみスタイルにしてみたの。作業的にも皆私より大きいからヘルプ出しやすいし。」
「そういうことであれば、何なりとお申し付け下さい。私達もお姉様の役に立てるなら何でもしますので。」
「じゃあ早速砕いたチョコを入れてくれる?ボウル山盛りは流石に持てないから…。」
そんな調子で作業を進めて数時間。板状に固めたチョコからどんどん型取りを勧めていく。その横では塊のチョコを黙々と削るクロヒメの姿があった。一通り型抜きを終えて、片付けをしながら待つこと30分。見事な等身大華麟のチョコ彫刻が出来上がっていた。服の質感はもちろん、手に剣を持たせるこだわりも光る。フィギュア職人もビックリの作業速度と再現度にクロヒメ本人もご満悦だ。
「お姉様と瓜二つです…!コンテスト出せば優勝出来るのでは?」
「クロヒメってこんなに手先器用だったのね…。」
「(*´ω`*)」
「それじゃ、箱に詰めて、リボンで飾り付ければ完成ね。お疲れ様〜。」
翌日、お昼を食べ終えた頃に各々がチョコを贈る。四人娘が協力して作ったチョコは香りからも味の良さが漂う逸品だ。
「どれもとても美味しそうですね。特にクロヒメの作ったチョコはよく出来ていて食べるのが勿体無いです。さて、どれから…。」
「少し待って下さい、凛音。実は私達からとっておきがあるのです。」
「すーぱー、美味しいチョコ。」
「( ╹▽╹ )♪」
「ん?まさ…むぎゅ!?」
「今準備しますね。」
何かを察するも時既に遅し。ヨトゥンに鷲掴みにされた華麟は儚い抵抗を続けていた。数分後、プレゼントボックスが机に置かれる。箱の中にはチョコの入ったお皿があり、中央にはチョコに濡れた華麟がいる。これには普段にこやかな凛音も珍しく驚いていた。
「お姉様。例のセリフを…。」
「り、凛音!わた…私が、プレゼントよ!」
思わぬ贈り物にポカンとしていた凛音だが、徐々に穏やかな表情に……いや、妖艶な笑みを見せ始めた。
「ふふ、これはとても美味しそうですね。こんな物を出されては、味わい尽くさなくてはなりませんね?」
演技派凛音の悪人ムーブ。艶やかな声や振る舞いはまるで人間を玩び喰らう美しき怪物の様。そんな彼女が操る舌は容赦なく体を舐め取っていく。ヨトゥンと違い水気を帯びたそれは本来なら忌避するものだが、困ったことに大好きな凛音に舐められるのは心地が良かった。柔らかさと擽ったさに緩んだ顔は凛音の舌や手に隠されているので、妹達に見られていないのは幸いか。
「お姉様が羨ましいです。私も凛音に食べられてみたいです…。」
「今度、メビウスに…お願い、する。」
「(≧▽≦)」(私もお姉様と一緒に食べられたい♪)
存在しない助け舟を期待してみるも、やはり仕掛け人達はノリノリだ。その間にも凛音の下は丁寧にチョコを舐め取る。数分ほど経てば小さなエレクトリアの全身は汚れ一つなくきれいになっていた。
「どど、どう?美味しかった?」
「はい。皆さんのこだわりチョコを楽しい食べ方が出来たのでとても美味しいです♪」
「よかった…。じゃあ。」
「でも、お皿にはまだチョコが残っていますね?私は初めに言いましたよ?味わい尽くすと…。」
凛音の手が汚れるのも厭わず、綺麗になった華麟の体に念入りにチョコを塗っていく。
「では続けますよ、華麟?」
「え、ちょ…。皆…。」
「晩御飯の食材を買いにいってきますね。クロヒメも手伝って下さい。」
「(`・ω・´)ゞ」
「スルト…お片付け、する。」
「あああああ!!薄情者ぉ…!!!」
※おまけ
麟佳とエアのバレンタイン
「チョコを口に加えて、両端から二人で食べ進める遊びがあると聞きました。私達もやってみましょう。」
「食べられるの俺だけじゃないですかヤダァァ!?」
「食べてくれないのですか?」
「食べるッ!!」(やけっぱち)