ダンテ著:囚人が違う世界の鏡   作:何処にでもある

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頭からこのネタが離れ無いからメインの息抜きに書いた。続き思いついてるけど誰か続き書いて。


囚人の違う鏡 ユーリの人格I 人格〖開花 E.G.O::今日の顔〗

 

 ガタンゴトンとバスが揺れ、囚人達は騒々しくこれから行くレストランで何を食べるかで盛り上がり、私は疲れからうとうととしていた最中の事である。

 

「ダンテ」

 

 その声にタッタッタッと秒針を鳴らし意識を浮上させて振り返る。振り返った先には服を血で汚した、黒い髪に眠たそうな半目をした囚人…イサンが立っている。先程から窓から都市の夜景を見ていた彼が自ら私に声をかけに来る。

 K社から枝を回収して、祝いの会場に行く途中に、一体どういった目的なのだろうか?少しばかり身構えて要件を聞く。

 

[イサン、どうしたんだ?]

「此度は普段より多く迷い惑わせたとあらば、そなたには送りゆくべき物を用立てるべきと思いけれ。故にこの鏡を送り渡そう」

[これは…いつも人格を抽出する時に使う鏡…]

 

 渡された手鏡を見て、普段の大きな鏡を連想するも、何だか手で持てる程度には小さいし、立体的で、端的に言えば不恰好な物だったから、困惑で言葉が途切れる。

 どうやらプレゼントの様だけれど、ヒビも入っているし人に渡すには適して無い様に感じ、カチコチと疑問に首を捻っているとイサンは此方に構わずに説明を続ける。

 

「今に我々が使う鏡の試作、その一つ。私が立てばもう一人の私が映るべき物が、異なる者を映すが故に不出来となった物なり」

 

 試しに覗き見ると、成程。私が映らずにバスの天井を背景にイサンの足元が見える。鏡から目を離し同じ場所を見れば、バスの床を背景にイサンの足元があった。どうやらこれは風景に対しては鏡である物の、人にはレンズやガラスと言った方が適切な物であるらしい。

 

「試しに幾らか刺激を与えども背負う景色と服が変わるばかりなれば、人こそを映したき我らに沿わず。されど都市を知らぬそなたには都市の景観を知り得る良き友にもなり得ると思い立ちけり」

 

 その説明を聞き、記憶喪失で成り行きでバスに乗っている私には確かに有用な物であると納得する。呼び出した囚人達の人格からちまちまと都市について聞いてはいるものの、やはり人伝よりも見た方が早い事もあるし、特に場所については人格との同期で見える僅かな所に直接行った事のある所しか知らないから、こういった物が欲しいと思っていたのだ。

 

[ありがとう、イサン。]

「うむ。では私はこれにて去らん」

 

 そう言ってイサンは自分の席に戻り、暫くして鼻歌をし始めた。グレゴールやロージャ、シンクレアもそうだったがその歌は都市で流行っているのだろうか。もしそうなら私も歌える様にした方が囚人に親しみ易くなるかも…いや、今のままでも十分か。

 そうつらつらと取り止めのない事を考えつつ、貰った鏡を突いたり、回したりして弄る。覗きながら辺りを見れば時折り真っ暗な夜中の森や何処かのリゾートの様な景色、赤い液体を背負った人が蠢く路地と普段見ない光景が見えた。

 中々面白いな、とご機嫌に針を鳴らし、ヴェルギリウスに煩いとばかりに睨まれ、冷や汗で背筋を凍らせながらもそっと手鏡を握り直して座る事にした。

 流石に今日は遅いしまた明日にでも使おうかな、と眠気に身を委ねた所で

 うっかり手の力が抜けて手鏡を落としてしまった。

 慌てて拾ったはいい物の、元からあったヒビはより酷くなっている。

 やってしまった…。私は床に転がる鏡の欠片を拾いつつ、どうすれば直せるか思案していた時の事だ。

 

『ダンテさんは何を注文します?やっぱりビーフステーキですよね!』

『何を言っているんだい?チキンに決まってるじゃ無いですか。鶏肉こそがお肉の中の王様なんですよ?』

『どっちでもいいではないか。同じ肉なんだから無駄に争う必要は無いだろう』

『野菜が1番だって言うつもりなのはその頭を見れば分かるのでちょっと黙ってて下さい』

『……』

 

 聞こえない筈の声。ついさっきまで聞いていた声。何処かで聞いた事のある声。

 カチ、と時計の針が止まる。汗が縁を伝う。指で摘んだ手鏡の破片が酷く揺らいでいる。眠気はすっかりと無くなり、心臓がどんどん速くなっていくのを実感した。

 ある筈のない息を整え、ゆっくり、ゆっくり声のする方を見る。

 赤い髪と片目に包帯を巻いた女と

 緑の目を持った長身の優男と

 虫の頭をした中年の男が

 確かに、囚人のそれと同じ服を纏って立っていて、

 ポトリと落とした鏡の欠片が、虚しく跳ねて落ちた。

 

 

 

 

 

 その後、私はヴェルギリウスと同じ様に振る舞うアルガリアと名乗る者と、ファウストの様に振る舞う赤い髪のユーリさんの協力により元の世界に戻り、無事にレストランで食事にありつけたのだが…

 更にその後日、この事をファウストに話した所、少しテンションの上がったファウストから向こうの人格と同期する事が仕事に加えられる事となった。

 何でも、別世界の囚人の人格と同期する事でこちらの世界の囚人の可能性をより広げより多様に引き寄せる事が可能となるらしい。

 可能塑性によるひも螺旋とか、多角観測から成り立つ多重的人格生成とか、もっと色々と小難しい事を言っていたが、概ねこういう意味合いだろう。

 なぜこの手鏡からこんな現象が起こるのかも聞いてみたが、二度も意味のない説明はしないと跳ね除けられてしまった。

 そんなこんなで、この記録は他の人が囚人になった世界の人格の記録となる。とは言え、私のノートに書くのにも限界があるので、特に記憶に残った事の抜粋になる。一つの世界で12人もいる訳だから、本当に多様で色々有ったわけだが…

 一つだけ確かなのは、他の世界の私も苦労していたという事だろう。

 

 

 

 


囚人の違う鏡の物語I

LCB ファウスト→LCB ユーリ

 

 

 

[旧L社支部 2F]

 

 

 

「グ…カハ…」

 

 血を吐き、立ち眩む。この支部に閉じ込められ何日経ったのだろうか。私は先程まで殺し合っていた同僚の首を切り落とし、社員証と首を持って歩く。

 17人。私が殺して、そしてあの土偶共に捧げた人の数だ。

 

カタカタ カタカタ

 

 土偶が私に近づく。私は首を投げ、それに群がる土偶を見つめていた。それを見て、酷く不快な感情が湧き上がり、それを封じて殺した肉を切り取って食べ、血を啜る。

 

「…うっ」

 

 生臭さと、何日もこれしか食べてない事からくる拒絶感。最初こそ食べていなかった物も、飢えに抗えずに食べ、何度も吐いては腹に収めた物も、何日かすれば慣れ、またこうして吐きそうになっている。

 

「…ハハハ」

 

 絶望。それから発狂。残りの社員は私を含めて三人になった。このままだといずれ全員死ぬだろう。土偶と同じ被り物をして、少しでも襲われない様息を潜めた同僚に切り取った肉を分け与える。すっかり動かなくなったそれらは、肉を食べようともせずに横たわっている。

 構やしない。どうせ次には殺すのだから、どうしようとも私には関係ない。

 

「………」

 

 更衣室のロッカーを開ける。中にある社員みんなで撮った集合写真、17つあるばつ印を一つ増やした。

 

 やれる事が無くなり、ただ立ち尽くす。

 

 此処が崩壊して、残った社員と逃げた社員がいた。私は残り、逃げた人達は何人も死んだ。1人か2人は生き残るのだろう。だけど、私はその1人になれる自信は無かったからこうして同僚を殺して、その対価に生き残っている。

 

 何の為に生き残っている?何故こうして他者を贄にしてまで私は意地汚く生きている?

 

 …何故だろうか。私は、巣の中で生きた羽に過ぎない。少しだけ貧しく、日々を勉強と鍛錬に費やして生きて来た。生憎、それ程頭も才能も無かったからその分、友達を作るとか、遊んだりした事も無かったっけ。

 …招待状。L社からきたそれを見て、私の両親は大層喜んだ。私も、両親が嬉しそうだった事が嬉しくて、一緒に喜んでいた事を今でも覚えている。

 

 お前に価値はあったのか?逃げ出す勇気も無いお前は生きてて良いのか?

 

 此処来て仕事をして、死と隣り合わせの日々だったけれど、食堂で一緒に食べた食事は死体よりも美味しかったし、教育チームの先輩も、安全チームの後輩も、みんな、こんな事で死んでほしく無かった。

 だから、私は逃げる選択をした人達を責めることは出来ないし、残った人達で立ち向かおうと言った言葉に反対した。だって、それは絶対に誰か死んじゃう選択だったから。

 

 本当に?それはただ、貴女自身が死にたく無かったからそうしたんじゃ無いの?

 

 そうかも知れない。だけど、本当に私は死んで欲しくは無かったし、もしそれでも立ち向かう事になったのなら、1番前で戦っていたと思う。でも、そうはならなかったし、みんな他の人を犠牲にすれば確実に生き残れる道を選びたがったから。

 だから、私が生き残ったのはただの偶然の結果。価値があるのかは分からないけど、私が生き残って…

 

 そして犠牲にする誰かも居なくなって死ぬ。

 

 それでいいでしょ?みんなを犠牲にした報いだ。

 

 貴女は何も悪く無いしこうなったのは不幸な巡り合わせよ

 

 だから、犠牲はしょうがない事。だって偶然で、日々貴女が頑張って来た結果だもの 

 

 …そうなのだろうか。だけど、この都市ではそう言ったことは日常だから、確かにそうなのかも知れない。

 なら、私が生き残る為に殺したのは、しょうがない事なんだろう。この都市では、それは人を殺すのには十分過ぎる理由だ。

 

 そうよ、ユーリ。犠牲はしょうがない。貴女は悪く無い。ユーリは悪くない

 殺すのはしょうがない。生きる為に誰かを犠牲にするのはみんなやっている事よ

 

 そうだ。しょうがない。私は生きたかった、だから殺した。それはみんながやっている。なら私がやってもいい。それでいい。

 

 その通り。だから、自分の為に生きるの。誰かに報いる為に死ぬのは良くないわ。だから…

 

 自分の為に、自分の為に。私の為にみんな犠牲にしてしまえば… 

 

 

 視界に写真が写った。

 

「………」

 

 ロッカーの中を見る。

 家族と誕生日を過ごした写真だった。

 同僚と遊びに行った時の写真だった。

 初めて貰った給料で買った服があった。

 新人で仕事に慣れてなくて、疲れた時先輩に貰ったお菓子のおまけだった。

 後輩から普段の感謝の気持ちとして貰った香水があった。

 

「………」

 

 少し、目を閉じた。

 

 ごめんなさい、知らない人。きっと私の為に言ってくれたんでしょう。だけど、私は私に親切にしてくれた人の為に頑張りたいから。

 そうだ、私の価値はきっとこれなんだと思います。私には私と言える顔は無いですけど、誰かの為の顔は持っているから。

 

 声はもうしなかった。

 

 目を開ける。

 気づけば顔には人の皮で作られた布を被り、人の皮に表情のついた服を着ていて、血のように赤くぼんやりと光る剣を持っていた。

 

 更衣室を出て、下の階層に向かって歩いていく。途中、土偶が襲いかかるのを切り捨てる。

 

 階段前、時計のような円盤と赤い線を捩らせた胴体を持ったアブノーマリティまで辿り着く。

 

 出現した土偶を切り捨て、それを合図に戦闘が始まった。

 

 

 さあ、やろう。私にはその為の顔があるのだから。







開花E.G.O::今日の顔のユーリ概念。折角二次創作し易い鏡という物あるのだしもっと増えてもいいと私思うんだ。
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