『あっち』で「こっち」のダンテが同期するのが人格の位置情報を持ってくる条件ですが、『あっち』のダンテにも協力してもらった方がより少ない欠片で人格を持ってこれるので両方やりましょうとファウストは結論付けてます。その事をダンテは知りません。教えた所でやる事は変わらないので当然ですが。
ねじれ探偵の助手にエズラという方がいますしビナーはガリオンです。
「こっちの世界」
ファウストと相談して、『あっち』の人格は一戦闘で一囚人に一回のみとなった。その代わりに瞬間出力を上げる方向に調整したみたいで、扱いとしては罪を消費しないE.G.Oといった所だ。
これはこれで便利なので私としては悪くないのだが、一部の囚人には気に食わない事だったみたい。
「管理人!『あっち』の人格の使用に制限をつけるなんてどう言う事ですか!」
[イシュメール、どうか落ち着いて…]
「できる訳無いでしょう!あれがあれば本来は最低半年は欲しい大湖の適応訓練の短縮にも目処が立つんです!それを…!」
「口を慎め。上官の決定に逆らう事は軍隊では見せしめとして処刑される物だ。管理人、ご希望でしたら今ここで…」
「…あー、お二人さんとも落ち着きな。イシュメール、そんな事したって決まった事は覆らんし、今できる事で何とかするしか無いんだ。」
「今できる事で…?……今まで出来ていた事を!少し体調が悪くなる程度で使わずに!それで無駄死にする事がどれだけ馬鹿馬鹿しいか!!」
ご覧の通りだ。今、私達はバスを改造する為にU社の裏路地でクラップ蟹でスクラップ集めをしているのだが、初めは『あっち』から貰った人格の中にあったT社の人格と過去に存在した「経験」の元E社の翼の人格、更に裏路地のあるねじれた学校の上位成績の学生の人格に大湖出身で知らない者はいない伝説の船長の人格、指折って数えるには億劫な数の人格が持つ技術を組み合わせた強化ブートキャンプを計画していたイシュメールが、酷く不条理な決定に怒りを隠せない様だった。
気持ちは分かる。私ももう少しこうするのを遅らせられないかと悩んだのだが、少し…その…特定一名の様子が…
『ロ♪ラ♩ロ♪ラ♩ローン!』
「…シンクレア君。僅かなれどあちらにて経ちゆく時を数えんや?」
『デーン♬』
「問題、鏡鉄道一号線において合計ターンを100以下にする編成を答えよ。ただし、当時使用可能な人格とE.G.Oかつ、W社ドンキは使えない物とする(配点10)」
「ああ?そんなもん俺とファウストとホンルとムルソーとグレゴールで一発だっただろうが」
「私の活躍が⁉︎…抗議を行いまする!」
『ドウ…』
「ハズレ。正解は予め決めた人格から各戦闘において適切な編成を行う。が正しい」
「く。…フ、上手い事言ってしまったな」
「何でだよ!」
…そう、シンクレアが最近になり常に『あっち』のミシェルの容姿と謎の言動となってしまったからだ。人格の使用には侵食があるとはいえ此処までの事例は初だし、然るに『あっち』の囚人としての人格みたいだった事に違和感を覚えるが、それを考えるのは後にする事にした。
彼はまだ金色の髪と性別はそのままではあるが、顔つきや体の肉付きが彼女の物となってしまった以上、これ以上は本当にまずいし、他の囚人もそうなってからでは遅いのだ。
実際、ロージャとホンルも影響がでていて今は私の側で休憩させている。
「ふふ…あそこの抽出に使った装置の…愉快な娘…いったいいつまで諦めないで…』
「知ってますか?ユリアの工房は熊の…センプ工房の槍は…モーゼス隊長、どうして…』
こっちは第二のシンクレアにしない為にも、徹底して使わせない方がいいだろう。取り敢えず、誰かこの2人を一旦殺してはくれないだろうか。
[ムルソー、この2人を正気に戻したいし一回殺して欲しい]
「問題、良秀の剣は…承知しました」
『ロー!』
シンクレアの翻訳を一旦やめ、私の側で参っている2人を殴るムルソーを横目にイシュメールを見る。落胆した目線を向けるイシュメールに、先にこっちだったかと失敗を悟りつつも、時計を戻し痛みに耐えつつ私は対話を続けるのだった。
因みに〖L社 ネツァク〗の人格は味方に一方攻撃する攻撃があり、それで回復と復活バフを撒きながら高いマッチで敵にエンケファリンの過剰投入による即死を狙うものだ。これからの瞬間利用においては使えば態勢を立て直すのに役立つだろう。
実に便利だが、他の囚人を先程から問題を出し、間違えば強力な攻撃を行うシンクレアの様にしない為に、使わないといけない状況にはしたく無いものだ。
『あっちの世界』
さて、『あっち』での仕事である。相変わらずの戦闘をこなしつつ、紅茶を飲み暇にしていたガリオンさんに『あっち』と「こっち」の違いを聞いてみる事にした。
『ほう、相違を知りたいと。それは何とも可笑しな質問だ。同じ親から産まれた雛を飼育するに全く同じ餌を与えた所でAとCは全く違うのと変わらないというのに、それを尋ねるのは無知な愚者よりも堕ちた獣と相違無い事だ』
[ですけど、知らない事には何も出来ませんから、お願いします]
『何もしないとは言って無いさ。君は此方の管理者よりも外の者だ、今でこそ頭では無いが貴賓には丁寧にもてなすもの。…それが人ならばね?』
要領は得ないが説明してくれる流れみたい。この事についてはユーリからガリオンさんが1番詳しいと聞いたので有難い事だ。
『まず、そちらではL社は折れて、3日の白夜と4日黒昼があり、図書館が作られ、もう一度白夜がおこり、君達は枝を回収する事になった』
[ええ、そうですね。]
『此方ではL社は折れて、白夜のみが14日間都市を照らし、図書館は作られ、枝を私達が回収している』
[少し違いますね]
『側からみればそうだろうね、だが確かで大きな違いだ。実際此方は君達より多くの枝を回収しなければならないし、その分より多くの力を得る必要があった訳だ』
[はい、それは貰った人格の数で理解出来ます]
『そうだろうとも。そしてこれが深く語らない場合の相違点だ。ああ、知りたいと欲は出さないのが賢明だ。それを語るには余りにも多くの血が必要となるし、何より今すぐに君達の道行を終わらせる必要が出てくる。…私はその景色を是非とも眺めたい所だが』
[…遠慮しておきます]
『フフ…賢い犬は私の好みでは無いが、愚かにも手を出す猫よりは長生きするものだ。都市ではどちらも人の獲物に過ぎずとも主菜か副菜かは選べる物、きっと君はCよりも長生きするとも』
[ありがとうございます]
どうにも私が聞くには危険なものらしい。実際、さっきの話の時、青い光が視界の隅を横切っていたので下手すればここで死んでいたかも知れないね?
『さて、話していて喉が渇いたね。どうだい、ここは一緒に紅茶を飲もうじゃ無いか。旧U社のブレンドだ、これは私1人で飲むにはつまらないからね』
[では折角ですし…ブェ⁉︎]
『フフフフフフ…。とても飲めたもんじゃ無いだろう…ああ、美味しいね。最新、新鮮の物に交換、更新するアップデートの特異点、時間を経て深みを持たせる紅茶とはすこぶる相性が悪い悪趣味な味だ』
一つ確かなのは、この人はとても意地の悪い人だという事。飲んだふりで誤魔化そうとしても味合わせてくる術を持っている事だろう。
囚人の違う鏡の物語IV
LCB ホンル→LCB エズラ
[裏路地 12区]
血が辺り一帯に散らばる。指令を遂行出来なかった住民達の血だ。存外に激しい抵抗に私の足に血がかかったのは気分を損なうには十分であった。
「ちょっとー!足にかかっちゃいましたよもー!」
そう私が言えば、エスターはジロリと私を睨み厳粛に事を進める様圧力をかけた。それに渋々と従い義体の排熱機構を利用して血を蒸発させ、移動する代行者の集団の先頭から3番目に立って同行する。
「最近さー、指令に従わない人が増えてない?これは由々しき自体では無いでしょうか!」
次の目的地には262歩を15分かけてから着かなければならず、その間寄り道も出来ないので非常にゆったりと行進する間、暇になった私は先頭を歩くエスターに問いかける。
ここ最近、翼が折れ、あの図書館ができて以来荒れに荒れた治安の中、人差し指の保護下に降ったにも関わらず指令に従わない人が増えていた。
元々そういう人は一定数居たものではあるが、ここ最近はほぼ全員がそうなっていて、明らかに異常な事だと遂行者の間で話題になっていた事だ。
「構わない。我々は唯指令を遂行するのみであり、それ以外は全てが些細なことだ」
「でもさでもさ、こうも増えるのはやっぱりおかしいよ?ねー、ヤン君の命令に従うのはいいとしてさ、こうなってるのってヤン君の仕業じゃ無いの?」
「エズラ、それは彼に対して失礼な発言だ。何より、指令が従えと言った以上は彼の行動は指令にとって有益だと判断された事だ。慎みなさい」
「はーい」
指令。裏路地を差配する5つの指の一つ、人差し指が絶対としている命令。私にとっては幼い頃から付き従うべき父の様な存在だ。
いずれかの工房で全身義体を依頼する。このとき右足、左肺、右肩、右足裏はそのままにするよう依頼する。
内骨の内16本を鎖の武器にする。手段は問わない。
ペング通りの3股通りの2歩下にある地点まで地面をほり、そこにある眼球を頭部にせよ。
21:33のマーラクパチレストランに違反者がいる。
伝令ヤンの頭部を全力で17回殴る。
組織「愉快な電気太鼓」から太鼓マスターの称号を得る。
K社製の牛乳を3パック纏めて一口で飲み切る。その後4時間トイレに行っては行けない。
1日の内に72時間の睡眠をとる。ただし、T社の特異点は使用してはいけない。
10分以内にヘンリー老人の髪の毛を全て抜きかつらを全て燃やす。
マッピーのグッズをコンプリートする。
これはあくまでも一例ではあるが、今までの内私がこなしてきた指令だ。一つこなせば1月こない事もあれば直ぐに次の指令が来る方もある。そうしている内にいつの間にか代行者としてこうして違反者を殺す指令が多くなった。今では立派な代行者だ。
「皆様。到着しましたね」
「あ、ヤン君やっほー!ベルシーモナ!」
「…なんだ指令か。やっほー、べルシーモナ」
ヤン君とは別の伝令から伝えられた指令をこなしつつ、目的地に到着した。ヤン君が伝令を伝える事が多くなったとは言え稀にこうして別の伝令に指令が渡される事もある。
そんな時は決まってヤン君は顰めっ面になった後に渋々と指令を察してこなすのだ。うんうん、返事を返してくれなかったら40分息を止める必要があったから楽で助かるよー!
「伝令ヤン。ここにいる筈の違反者はどうした?」
「彼等は僕がここに来た時点で逃げ出しました。指令はそこにいる違反者を殺せ。ですので逃げても追いかける必要はありませんから、この指令はこれで完了です」
「えー!ここまでとっても暇だったのに!何も無いなんて!逃げない様に出来なかったの?」
「…指令には書かれていませんでしたから」
「むー。それならしょうがないか」
ここ最近、指令でヤン君の命令に従う様に言われてから、誰かを殺す事が少なくなった。指令に違反しないならそれでいいが、こうも何も無いと不満も増えてくる。
「じゃあヤン君、今から工房巡りに行こうよ!きっと楽しいよ!」
「…いえ、僕はまた別の指令を届ける必要がありますので、それはあなた方で行ってください」
「…私は構わない」
「指令に従うのみだ。そうでは無いなら待機していよう」
ヤン君はそのまま別の代行者に指令を届けに行き、ヒューバートはいつでも動ける様に交通路の中心部に向かった。
私はエスターと何人かの遂行者と一緒に工房で巡る事にした。普段から指令を忠実にこなす私だが、無い時はこうして工房を巡っていい武器を見繕うのが趣味なのだ。
中には指令で破棄する必要がある武器もあるが、大抵はそのまま義体に組み込む事のほうが多い。
「…エズラ、何故指令も無いのに工房を巡るんだ?」
「え?それは勿論、好きだからだよ!スティグマ工房の火花もスラン工房の斬撃に残る残像も、工房によって持ち得る理念も技術も違う。その沢山の積み重ねを私達が振るうのは素敵な事よ!」
「…そうか。エズラ、君は指令以外にも付き従いたい事があるのだな」
「指令が1番だよ?」
「…そうか」
「失礼します、伝令です。」
そうしている内にヤン君の伝令が届く。私達は紙を開いて確認して、工房を出ていく。
今回はクル通りのトカゲの怪物を殺す指令だ。暫し走って到着する。現場には既にヒューバートと何人かの遂行者が戦闘を始めて居た。私達も指令通りに武器を構え、義体を戦闘状態へ移行させる。
「…抜刀。厳粛に殲滅する」
「剔抉と行こう!」
いつも通り、指令をこなしていこう。何をしようと大丈夫、指令は絶対なんだから!
分岐
煙戦争でモーゼスと縁を切って人差し指の保護下に降る。