ダンテ著:囚人が違う世界の鏡   作:何処にでもある

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 R社のウサギチームリーダーのミョです。
 エンディングは3つ考えてありますが、分岐する為のアンケートを何処に入れようか迷ってたりします。ABCです。一発勝負でやり直せないので来たらよく考えて選びましょう。全12〜13話の予定なので既に折り返し過ぎてます。


囚人の違う鏡 ミョの人格VII 人格〖N社直属フィクサー タブーハンター〗

 

 あの後、私達はイサンを連れて始めに居た場所へと戻っていた。囚人を見れば全員が筆を持って自伝を執筆している。ヴェルギリウスは私達が戦っている間に自分とカロンの分を書き終えた様で既に此処には居なかった。

 私も何か書こうと思ったのだが、私はダンテノートである程度賄えそうだったので軽く『あっち』にいく事になった経緯と記憶に残った『あっち』から貰った人格のエピソードを書いて置く事にした。

 こんな悠長にしてていいんだろうかとも思えるが、ここは時間が狂ってるので襲撃が終わり区切りを迎えたと全員が思えば次の日になるんだそうだ。本当に都合の良い場所みたい。

 

[うーん。アンジェラ、少し聞きたい事があるんだけど]

 

『何かしら。私も結構忙しいのだけれど』

 

[人格の記憶でアンジェラが此方に話しかけてきたあれってどうやったの?]

 

 トーマの記憶、グレゴールの立ち位置に居た囚人の人格で、復習に見ようとしたら最後で幼い青い髪の女の子がアンジェラになり話しかけて来た事だ。

 本来ならあの後あんじぇらと名乗った少女と目覚めたリウ協会の部下達と共にシェルターに侵入して来た怪物と戦闘になるシーンが来るはずだったのだが、それがあの様に変化したのはどういう原理か気になったのだ。

 

『……あれは…そうね、幻想体の力…と言えば良いかしら。そういう力を持った幻想体がいるのよ』

 

[幻想体?此処には幻想体から力を貸してもらったり出来るのか?]

 

『…そうね。此処は各階層毎に幻想体の本があって、それを倒せば力を貸してもらえる様になってるから』

 

[転移も出来るみたいだし、何でも出来そうだね]

 

『そうね、私だけなら少しの間世界を移動したり、見た目を変えたり、出来る事は多いわ』

 

「…ふむ」

 

 どうも此処には幻想体の本もあるみたい。さっきみたいに本を使う事で色んな力を扱えるみたいだし、本当に何でもやれそうだ。

 そうしている内にイサンが立ち上がり、近くの本棚に本を入れた。どうやらもう書けたみたいだ。タイトルには「翼」とだけ書いており、何と言うか本というよりは冊子やしおりみたいな薄さをしていた。

 

「…おお、しかと心に芯が刺されん」

 

 イサンの周囲に紙の形をした光が集まって舞うと、いつもの無表情に戻っていた。

 イサンと他の囚人を見比べてぞっとする。何故気づかなかったのだろうか、私の周囲にいる囚人達全員が穏やかに、今まで一度も悩み事なんてないかの様な赤ん坊みたいな無垢な笑顔が顔に張り付いていた。

 比べるまで全く気づかなかった事に驚きつつ、囚人達も気づいた様でしきりに自分の顔を触ったり、書く速度を早めたりと各々危機感を持ち始めたみたい。

 その中でファウストが立ち上がり、そこそこの厚さの「ファウスト」とタイトルをつけられた本を本棚に入れた。フラスコの形をした光が舞い笑顔から無表情に戻る。

 

「ファウストも書き終えました。箇条書きや自身の概要分のみの記載で効果は十分であるとみます。ダンテ、これからヴェルギリウスさんと今後について話し合いますのでついて来て下さい」

 

 ファウストはそう言って近くの廊下のそばで待機した。アンジェラに行きたい所を思い浮かべれば自然と辿り着くと説明を受けていた為、適当に選ばれた近くの廊下だ。

 私はアンジェラに書くのを中断した物でも効果はあるか聞き、少しずつ書いても問題無く途中でも効果はあるとの事だったので本棚に入れ、足下に僅かに時計の針の形をした光が見えるのを横目にファウストと共にヴェルギリウスの元へ向かう。

 ある程度歩いた所でファウストは私に話しかけた。

 

「ダンテ、あまり彼女の事は信用しない方が賢明です」

 

[それはまた…どうして?]

 

「管理人は余り隠し事が向いてませんので詳細は省きますが、彼女は言うとまずい事を避けながら会話している傾向にあります。事実のみしか喋れない事は本当でしょうが、それは言いたく無い事を誤魔化せない理由にはなりません」

 

「事実、先程彼女は何故人格の記憶に登場出来たかについて、ただそれが出来る幻想体が居ると言ったのみでその後は管理人の新しい質問に答えています。よって、彼女は記憶に登場した方法を喋らず、ただそれができる幻想体がどこかに居るという前置きのみで管理人の質問を凌いでいます」

 

[それは…随分と]

 

「管理人。貴方は今回の問題において行うべき事は我々囚人を連れて元の世界へと帰還する事のみです。今回の事がどれ程この世界において重要な分岐点でもそれは我々が関与すべき事でも、責任を負うべき事でもありません。最初に彼女の言った通り、囚人を回収したら即座に帰還しても問題ないのです」

 

[………]

 

 ファウストは此方を見て、一息大きく吐いた後、続けて言った。

 

「…ダンテ、これは横道であり、この世界は数ある枝分かれした枝の一つに過ぎません。…全ての事が済みましたら今後此方の世界で回収した人格の情報を検閲し、一切の使用を禁止とします。私としても開発した技術の道を閉じるのは抵抗が有りますが…この人格の技術はあくまでも我々が各々の目的を叶える為の手段に過ぎないのです。それ以上の出力は好ましい事ではありません」

 

 手厳しい言葉ではあったけど、一連の騒動に流されそうになっていた私を冷静にするには十分な言葉だった。

 この世界でどの様な事が起きても、それは私達には関係ない事だ。その事は今後何か決断する様な事が起きた時、思考の片隅に置いておいて損は無いだろう。

 だが、この世界で私は僅かだが『あっち』の囚人と触れ合い、知見を広める事が出来た。「こっち」の世界では死んでいた人達が生きていて、苦労しながらも幸福を求めて戦っていた。その上で見て見ぬふりをするのは、都市らしい選択ではあったが、正しい選択なのか…きっと選ぶ時が来るだろう。

 

[分かった。心に留めておくよ]

 

 廊下を抜け、黒と白が混ざった灰色の部屋、空高く本を積み上げた部屋にたどり着いた。其処にはヴェルギリウスとカロン、そしてガーネットとヴェルギリウスに呼ばれた男が居て、誰かと戦っていた。

 よく見るとグレゴールとドンキホーテと良秀だった。

 

「………」

 

[…どうやら、手伝う必要がありそうだね?]

 

 火花が舞い、白い装甲に刃のついた物体と赤い双眸から漏れる光と黄色と黒の残像を残し、武器を目まぐるしく変えて戦っている様子を見ながら、私はファウストを〖W社 整理要員〗と同期させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

囚人の違う鏡の物語VII

LCB 良秀→LCB ミョ

 

 

 

[路地裏 14区]

 

 

「それで、録画記録がこれだけ出て来た訳だけど、何か言い残す事ある?」

 

 私はそう言って目の前に横たわっている違反者に遺言があるか訊ねる。N社の管轄する区域では録画そのものを禁止するルールがあり、目の前のゴミ屑はそれを破った違反者だ。しかもコイツは録画だけでは飽き足らずそれをL社支部で販売されているPDAのアプリで広めようとしやがった。

 これは非常に重い罪であり、命を持って償う必要のある事だ。

 

「何で…俺はただ、路傍に咲いた綺麗な花を撮ってフォロワーに見てもらおうとしただぐぁ!!」

 

 下らない私欲と言い訳だ。これ以上生かす価値も無いので心臓を短剣を用いて抉り出して捨てる。

 

「ふう、終わりっと…あ、メールだ……エェー⁉︎また違反者出たのー⁉︎」

 

 L社が販売しているPDAにメールが届き、次の違反者の位置情報を確認し移動する。

 最近、L社の発売する商品を用いた違反者が急増し始めていた。各地の巣に格安でエネルギーを売り出した新しいL社は、エネルギーだけでなくそれによって動くPDAも一緒に販売した。

 何処にいても高速で通信でき、一切のラグを発生させず、充電は通信が繋がっている限り自動で何処でも無料で行われて続け、幾つもの機能を搭載した上でネズミでも半月分の生活費を貯めれば手の届く値段設定のそれは、ただでさえ格安なエネルギー販売で稼いだ莫大な信用と共に瞬く間に都市に広がった。

 今やこれが無くては都市では時代遅れとまで言われる、生活の必需品としてその地位を確立させた。

 とは言え、ただ高性能なPDAというだけならこうは行かない。これには仕組みがある。L社はこのPDAと共にある宣言をした。

 それは、「このPDAの購入者から素質のある者、あるアプリで優秀な成績を残した者をネズミでも落ちた羽でも我が社に採用する」というものだ。

 宣言当初こそどうせ優秀な羽しか選ばれないと笑っていた者も、幾つものネズミや家に引き篭もった落ちた羽の採用報告がL社制作のアプリで流れると、目の色を変えて購入し広まる事になった。

 この流れは底辺だけでは無い。巣の学校や既に路地裏の職に就いている者、巣の企業では有るが翼では無い会社、様々ではあるがより翼の企業という上に行ける夢のある切符を欲しがった者達が挙って買い、そしてそのアプリの数々に嵌り、抜け出せなくなっていった。

 

「到着っと。さーて、何処にいるかな」

 

 沢山の人と繋がり、呟いて日々の不満を吐き出せるX、ネットに繋がり様々な知識を得られるM、幾つもの動画があり面白可笑しく笑えるT、各巣のニュースや交通状況を取り扱うW、そして過去に存在した無数のゲームとアプリ開発ツールを扱うL、このPDAの制作に関わった錚々たる各社の名前を持ったそのアプリ群は、この都市に内心うんざりしていた人々に、匿名の仮面を与えて好きに出来る場所を提供した。

 そして此処までくると都市の上流もその利便性に眼をつけ活用し始め、その結果がこの違反者の増加である。

 確かに便利だし私も会社の備品として貰っているが、そこまで熱中してはいない。MやWは便利なのでよく使うが、他の物にはあまり手を出していない。

 

「首切ってー、お、ご家族もやってるねー、じゃ心臓抉ってー」

 

 悲鳴を歌代わりに聴きながらだらっと考える。

 この現象はN社だけでは無い。各巣でも似た様な事が起こり、予測では来年には万は到達するだろう。だが決して都市の星にはならない。今の都市にこの様な便利な物を手放したい者はいないからだ。

 誰も賞金をかけようとはせず、むしろこれを消そうとする人物に賞金がかかるだろう。実際、都市疾病級の奴をWのニュースで見かけた事がある。

 広告、宣伝、コネ作り、手軽さ。もう既に新しい市場で、もしかすれば頼もしい友人が出来て、ほんの少しの暇を楽しいで埋められる。

 それで得た利益をL社は自分の巣に使い、更にはどんどん路地裏を住んでいた住民ごと巣に取り込み一年の教育と税の免除を公布して、お陰でL社の巣の周りの土地は住んでるだけで巣に入れる希望の地扱いだ。職業斡旋までやるんだから徹底して気味が悪い程に優良な会社だ。何なら私も行きたい。

 

「時間は…もう20時か、退勤アプリ開いて押してっと。よし!このまま直帰するかーっとそう言えば…」

 

 その前に頼まれたねじれ探偵の調査進めないとか。仕方ない、サビ残だ。友人の為に〜憧れの英雄を目指して〜。

 …はあ。かつて居た伝説のフィクサー、赤い霧。憧れて頑張った結果がこうして夢見る人を規則に則り殺す事だとは。ああ、ままならないなぁ。

 

「今は何してるんだろうな」

 


 

 

 

「あー、ヴェルギリウスの旦那。お手をかけさせてしまい申し訳ありませんでした」

 

「…大変、反省しておりまする。…次はこの様な事が無いよう疑い深くしたいと…」

 

「無・ダ。俺は謝らん。其処の時計頭がこうなる事に気づかなかったのが悪いだろう」

 

2人は床に正座し、1人はライターに火をつけて吹かしたが、火の付いた所が斬られてポトリと落ちた。睨み合っている両者を置いて何故こうなったか聞く。

 

[ガーネット。いつ3人が来たんだ?]

 

「あー、すみません。何を言っているのか…」

 

「いつから戦闘を始めたのか、貴方は誰かを聞いてますね」

 

 どうやら話が通じない方だったみたいだね?

 

「それでしたら…僕はガーネット、この図書館の元召使いで此処、総記の階の司書を勤めて居ました。戦闘は…その、ラピスが招待状を拾って開けちゃいまして、それでこの方々が招かれました」

 

「招待状とは何でしょうか」

 

「この図書館の本来の機能の一つですよ。本が欲しい方に向けて自然な形で渡して招く物です。本来私達が開けても意味はないんですけど、今は黒昼の最中なので少しでもきっかけがあれば何かしらの特異点を用いてこうやって侵入するんです」

 

 これまでの説明を聞く限り、この図書館とは本を餌に人を呼んで本にして、その本を使って強くなる物みたいだ。一体どういう訳でこれが作られたのか、アンジェラが元館長と言っていたから何か知っているかもね?後で聞いてみるとしよう。

 

[所で、ラピスって誰?]

 

「ラピスという人物について聞いてますね」

 

「………僕の幼馴染…保育園からの友人ですかね。其方のカロンさんと同じ見た目をしている人です」

 

「カロンはラピス違う。カロンはカロン。本登るの楽しい。ぼっふぼっふ登れる。てっぺん目指す」

 

「カロンの嬢ちゃん、危ないから登るのは止して…止まっ⁉︎」

 

 グレゴールを〖ツヴァイ協会〗と同期させ、落ちたカロンをグレゴールがキャッチした。こういう時〖ツヴァイ協会〗の人格は便利だ。解除して会話を続ける。

 

「管理人の旦那、助かった。…怪我は無いか?」

 

「カロン平気。もう一度登る」

 

 グレゴールの人格を〖ツヴァイ協会〗にして会話を続けた。

 

[ガーネットは何故此処でアンジェラを手伝ってんだ?]

 

「アンジェラの手伝いをしている理由を聞いてますね」

 

「あ、それ聞きます?まー色々ありまして、ピアニストのネット公演の犠牲になったローラン夫妻の敵討ちとか、色々と。簡単に言えば白夜による被害を何とかしようとして来たら彼女もただの被害者だった…みたいな。今はこうして協力して何とかしてるんです」

 

「この世界の都市では記憶が消えていくと聞きましたが平気そうなのは何故と言ってますね」

 

 言ってないが、ファウストが気になるなら大事な事だろう。ふとドンキホーテと良秀はどうしてるか見て見たら、其処ら辺の本を広げてペラペラとめくって読んだり燃やしたりしていた。ヴェルギリウスはカロンの下でグレゴールと一緒に見守っている。

 

「それは僕にはさっぱり。アンジェラは自分の光がしっかりあったからと言ってたけどそれっきりなので」

 

 うーん。何だか表面的な事は解るけど、それ以上踏み込ませない様な距離感だ。これ以上聞いても意味は余り無いだろう。最後に一つだけ聞くことにする。

 

[社会科学の階には誰が居るの?]

 

「社会科学の階の司書は誰か聞いてますね」

 

「あの人ですか、達観してるというか、ずっと遠くを見てて要領を得ない方です」

 

「エノク。かつてあったL社の前身で大事な役割を成し遂げた人とアンジェラが言った方です」

 






 ベンジャミンが不在なので記録や採用方法をどうするかL社が考えた結果。TがXにならなければこの話は生まれなかった。
〖タブーハンター〗は自身の速度と相手の速度差分マッチが上がります
分岐
R社では無くN社に入る
『あっち』分岐3
エノクが実験でねじれる
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