Ensemble_BLUE's   作:korotuki

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 今回のPU性癖に刺さる人多そうだな……


手がかりはブラックマーケット。

 

 無事に便利屋68とそれに雇われていた傭兵バイトたちを退けたアビドス対策委員会の面々。

 

 ひとまずその日は彼女たちを各々で調べ、報告会とその対策会議は明日に回そうということになった。

 

 そして日付が代わり朝日が昇り、会議室に全員が集合する。

 先生とアヤネが途中便利屋68の構成員ムツキに遭遇しからかわれるだけからかわれ、毎月の利息を払うためにカイザーローンからの借金回収車がくるなどはあったが。概ね平穏無事に会議を開始することが出来た。

 

 議題は二つ。

 『便利屋68の情報』

 『ヘルメット団の不審な点』の二つである。

 

 まず便利屋についてだが、昨日の時点でないアヤネの情報収集と。連邦生徒会の人間としてキヴォトス全体に知見のあるミキトによって大方調べあげることが出来た。

 

 曰く、自由と混沌を信条とするマンモス校【ゲヘナ学園】にある非公式の部活であること。

 

「…部活って、勝手にやっていいものなの?」

 

「そこも含めて自由と混沌の校風。ゲヘナではよくあることです」

 

「ということは、ゲヘナに行けばサイクリング部も…!?」

 

「シロコちゃんストップ」

 

 曰く、主な業務は名前の通り『何でも屋』であり、なまじ実力はある分ゲヘナの治安維持を担当する組織の中でもマークされるほどの存在であるということ。

 

「まぁ“美食”と“温泉”に比べたら受動的である分まだマシ。とは友人の言葉ですが」

 

「わぁ!なんだか楽しそうですね〜☆」

 

「…………。」

 

“ミキト?”

 

「いえ、何でも」

 

 曰く、メンバーはそれぞれ『社長』の陸八魔アル、『室長』の浅黄ムツキ、『課長』の鬼方カヨコに『平社員』の伊草ハルカ。そして……

 

「灰九霹ミチユキ…自分と同じ男子生徒にて、便利屋では『幹部候補生』の肩書きを持っています」

 

「幹部候補ってことは……それだけ期待されてるっこと?」

 

 セリカからの質問に、ミキトは神妙な顔で頷いた。

 

「はい。便利屋自体個々の能力や連携によってその危険度は非常に高い集団ですが…あいつはその中に決して埋まらない能力と個性を持ってますから」

 

「おじさんもちょ〜っと、危なかったしね。先生あの時はありがとね」

 

“どういたしまして。とは言っても咄嗟に気づけただけだからね…”

 

「あいつの能力の及ぶ範囲は自分と相手、そして舞台です。一歩離れて全体を冷静に俯瞰できる指揮者(コメンテーター)はあいつの天敵……先生がいてくれてよかったです」

 

 ミキトからのその言葉に、ホシノも首裏にヒヤリとしたものを感じる。ビークルを容易く吹き飛ばしたあの一撃。無論倒れることはなかっただろうがそれなりのダメージは受けていただろうと予測した。

 

「……ま~終わったことは一旦置いといて…。ヘルメット団については何かわかったの?二人とも」

 

 切り換えたホシノからの言葉に、二人は何枚か資料をめくりだす。

 

「はい。回収できた残骸から復元を試みて、いくつかは彼女たちが使っていた銃器の特定に成功しました」

 

「銃の名称、製造会社など細かいことについてはお手元の資料を……確認ありがとございます。種類はかなりバラバラですが、一様にどれも製造時期が古く。ものによっては製造中止になっているものもありました」

 

「ここまでバラバラなのを見ると、恐らくは正規の販売店で買ったのではなく。闇市のようなところで各々が購入したと見るのが自然です」

 

 互いに言葉を引き継ぎなからも説明をしていった二人はそこで口を閉じる。次の言葉をどちらが言うかでアイコンタクトを交えた二人だったが、ミキトが「どうぞ」とばかりに目を伏せ一歩後ろに引いた。

 

「……そして、ここキヴォトスでそれら古い兵器が手に入るのは。ブラックマーケットしかありません」

 

「ブラックマーケット……とっても危ないところじゃないですか」

 

「はい。あそこでは様々な理由で学校を止めた生徒や怪しい企業が集団を形成し、連邦生徒会非認可の部活を運営している集団も多いと聞きます」

 

(まぁそもそも申請出すような殊勝な人間だったらブラックマーケット(あそこ)にはいないでしょうけど)

 

 アヤネの言葉に内心そう補足するミキトは、指をたてながら口を開く。

 

「また、先程話に上がった便利屋も。居所がそこというわけではありませんがブラックマーケットでそれなりに騒ぎを起こしてます。ヘルメット団の真相解明に、あわよくば便利屋を調査したい……以上がアヤネさんと二人で出した意見です」

 

 その言葉に、他の面々は概ね賛成といった風に頷き。みなホシノの方を見た。

 

 少し考えるように目を閉じていたホシノは、ゆっくりと目を開く。

 

「うん。行こうか、ブラックマーケット」

 

 

 

 

 

 

 

"到着だね"

 

『はい。皆さん周囲には注意して進んでくださいね?』

 

 そうしてアビドスの面々は、アヤネをオペレーターとして校舎に待機してもらい。残りの動ける人員全員でブラックマーケットへと来ていた。

 

「へぇ~。想像してたよりずっと賑やかなんですね!」

 

「ん。もっとこう……陰湿な感じを想像してたんだけど、予想が外れた」

 

「あくまで私たちと同じ年頃のヤツらが母体になってるんでしょ?ならこのぐらい明るいのも納得。なのかな」

 

 普段は借金返済のこともあってか滅多にアビドスからは出ない委員会の面々は物珍しそうに周囲を見渡す。

 

"私も話に聴いてただけだけど、かなり違うね……少し治安の悪いチャイナタウンみたいな?"

 

「しかも、地図で見るだけでもかなり広い。連邦生徒会が手を出せない領域がこんなに広大だったなんて……」

 

 シロコのその言葉を聞いたホシノは、ちょいちょいとミキトを手招きする。

 それを見たミキト――アビドスと同じように連邦生徒会としての制服は来ていない――は顔に疑問符を浮かべながら近づく。

 

「それで?実際なんで連邦生徒会はここに手を出さないのかな~……功績、上げ放題でしょ?」

 

「なんか……本当におじさんみたいな言葉ですね」

 

 他の人には聞こえない程度の小声でそう問われたミキトは、ホシノの言い様に何とも言えなさそうな絶妙な顔をすると。すこし考える素振りを見てから答え始めた。

 

「もちろん。ここブラックマーケットでは、合法の物を探す前にその十倍の非合法な物事にぶつかるでしょうから。ホシノ委員長が言うように手柄を多く上げられると思います。が……」

 

 そこで言葉を区切りチラリと先生の方を見つめる。どうやら他の面々と一緒に出店を冷やかしているらしいことを確認することが出来た。

 

「ここは、転げ落ちてしまった生徒が最後に行き着く先です。最低の場所ではありますが…逆に言えばここより下はない」

 

「……受け皿みたいな?」

 

「その認識で構いません」

 

 苦々しい顔をしてミキトは答える。それは、連邦生徒会が本来救う筈の道から外れてしまった生徒の処遇を、受け止める環境があるのをいいことに丸投げしていることを告白するようなものだったからだろう。

 

「それと……ブラックマーケットを無くせば、ここで回ってる違法性はキヴォトス全域を巡り蝕む毒となりかねない。というのもありますね」

 

「……そっか~。答えてくれてありがとね」

 

「いえ。お力になれたのなら幸いです」

 

 会話を終えた二人はしばらく黙り込み……ホシノが頭の後ろで手を組み、ミキトに振り返った。

 

「じゃっ、みんなのとこ戻ろっか~……おじさんが言えた義理でもないけど、あんま気にしない方がいいんじゃない?」

 

「時分の仕事には正義感が必要不可欠ですから。理想との解離が辛くとも、目をそれせば意義も意味もなくなってしまいますので」

 

「真面目だねー」

 

「ホシノ委員長ほどではないかと」

 

 そうして二人はほかの面々に近づく。するといち早く先生が気付いた。

 

"あれ?二人ともいつの間にか離れてたんだね"

 

「おじさんちょっと気になることがあったからね~。ミキトくんに聴いてたんだよ」

 

「答えられることで安堵しましたよ」

 

"…そう?とにかく離れると危ないみたいだから、なるべくみんなで近くにいよっか"

 

「ん。みんなでいれば怖くない……だよね。セリカ」

 

「シロコ先輩!?なんで私にふってきたのよ!!」

 

「あらら?セリカちゃん、もしかして……怖くなっちゃいましたか?」

 

「そんなわけないでしょ!こんなトコ、ヘルメット団に誘拐された時に比べれば――」

 

 

 

 バンバンバン!

 

『!?』

 

 セリカがいつもの気炎を吐こうとした時、銃弾の音が鳴り響いた。

 

 即座に先生を囲むやうに円陣を組み、銃声の先を見る。

 

「オラッ!待ちやがれ!!」

 

「逃げてんじゃねぇぞ!!」

 

 まず目に入ったのは、黒い服にバツ印の書かれたマスクが特徴的なスケバン。数は二人であり、不良らしく罵詈雑言を吐き散らしながら銃器を発砲しており。銃声の発生源は彼女たちからだろうと容易く予想できる。

 

「もー!なんで銃使っちゃいけないのさ!!」

 

「ご、ごめんなさい!でも騒ぎは起こしたくなくて…!」

 

「ごちゃごちゃ言う前に足動かして!」

 

 続いて目に入って来たのは三人の少女であり、一番前の少女は…はっきり言ってブラックマーケットという地名には不釣り合いな色合いの黄色の大きなリボンがよく映える純白な制服と珍妙なマスコットキャラクターのリュックサックが特徴的で、その表情からは必死な様子が見てとれた。

 

「……不良と不良が、争ってる?」

 

『そ、そう見えますね……あの白い制服の方が渦中の人なんでしょうか』

 

 残りの二人は、シロコが言ったとおり彼女たちを追っている不良とあまり変わらない外見――よく見れば黒セーラー服をしっかりと着こなしていることは分かったが――であり、その言葉遣いも粗野なものだった。

 

 しかし前述の不良と異なるのは、まるで少女を守るように固まって走っており。時折当たりそうになった弾丸を己の銃器で防ぐ様子も見られ、また先程の少女の言葉を受けてか反撃はしていなかった。

 

 中々のスピードで走っていた彼女たちだったが、後ろにばかり気を取られていたのか。進行方向にいたアビドスの面々には気付かずぶつかってしまう。

 

「あぅ!」

 

「おっとすまねぇ!顔は…よし覚えた!!」

 

「バカ、それじゃまるで因縁つけてるみたいでしょ?すみません後で謝罪はするので……」

 

 それぞれ三者三様の反応をする三人に、距離を積めた不良たちが近づこうとする。

 

「……うん。まぁとりあえず」

 

「そうですね☆とりあえずは…」

 

 何かを言おうとするスケバン二人の前に、シロコとノノミが立ち塞がった。

 

 そしておもむろに片手を肩の高さまで上げ力を込めて――

 

「ふげぇ!?」

 

「おごっ!!」

 

 そのまま振り抜く――つまりはラリアットでほぼ同時にスケバンたちを沈黙させた。

 

「えぇ!?」

 

「アッチの方が悪そうだったから倒した」

 

「おぉ!血の気が多いな!」

 

「なに感心してんの…?」

 

「一先ず、何が起こってたのか確認してもいいですかね?」

 

 驚く少女たちを余所に伸びたスケバンを道端に置いておいたアビドスの面々は、とりあえず追われてた理由(わけ)を聞くことにした。

 

 少女たちも…黒セーラー服の冷静そうな方は離れたそうにしていたが、助けてくれたのは事実だからと仕方なしに/快く話に応じてくれた。

 

「助けてくれてありがとうございます!あと、お二人も…」

 

「どういたしまして。にしても一緒に逃げるしかしてなかったけどね、それで……経緯を話せばいいの?」

 

「ん、さすがにないと思うけど。そっちが悪いかもしれないし」

 

「……それは、気合いを入れて話さないとね」

 

 そうして三人は各々で保管し合いながらも、なぜ追われていたのかを話し始めた。

 

 まずことの原因としては、白い少女が"あるもの"を欲し学園に無断でブラックマーケットに訪れ。そこでスケバンたちに制服から己がキヴォトス屈指の伝統と資金の学校――トリニティ総合学園の生徒であることを露見され身代金目当てに誘拐されそうになっていた。

 

 そこで通りかかった黒セーラーの二人は、その現場を見て放っておけないと介入。最初こそ言葉での説得を試みたが。口より先に銃口が出ることが大半のキヴォトスで、しかもスケバン相手に通じることもなく交渉決裂。

 

 即座に暴力で語りたいなら暴力で――と己の愛銃で迎撃しようとしたところ、少女が『騒ぎを起こしたくない』と懇願し。それに悪態をつきながらも少女と共に逃走。今に至るとのことだった。

 

「ふーん…ところでさ~、なんで助けようと思ったの?」

 

「『一、常識と己で清濁を鑑みて』『ニ、濁ってても飲み込めるか確認し』そして『三、それでムリってなら立ち向かえ』ってのが()の教えなので!!」

 

「塾?なんだか……その、以外ね」

 

 今まで話を聞くのに徹していたセリカが思わず口を開く。本人も『しまった』と顔を青くしたが、それをみた冷静そうな方気にするなと言わんばかりに片手を突き出した。

 

「その気持ちはよく分かるよ。実際私たちも、数ヶ月前まではそこのスケバンどもと同じ感じだったし。その時なら一緒に誘拐しようとしてたんじゃない?」

 

 その科白に、アビドスの面々は「やっぱり?」と納得したが、白い少女は思わずと言った感じで声を出した。

 

「そ、そうなんですか?すごく……その、落ち着いていらっしゃると思ったのですが…」

 

「……賢い事と悪いことは成立するでしょ、フツー。それなりに小賢しくやってたよ」

 

「だなー!」

 

 そう同意したもう一人のスケバンとともに、黒セーラーの冷静なほうは笑った。

 

「そういえばトリニティの……えーっと」

 

「あ!阿慈谷ヒフミです」

 

「そう、私はタタラ…ヒフミさん。そもそもこんなところまで来て買うものってなにさ?聞く暇はなかったから知らないは当たり前なんだけど……教えてくれない?」

 

「いえいえ!?寧ろ私の方こそ今まで目的と告げずに申し訳ありません。私がほしいのは――」

 

 少女――阿慈谷ヒフミはそこで一瞬タメ(・・)を作ると、バッと自分が背負っていた珍妙なキャラクターのリュックサックを取り出し掲げた。

 

「この、ペロロ様の限定グッズです!!」

 

 ずすい!と差し出された死にかけのペンギンとも、またアヒルとも表現出来るそれと。何人かはたまたま目が合い……無機質なそれから思わず目を背けてしまった。

 

「わぁ☆モモフレンズのペロロちゃんじゃないですか!私はMr.ニコライさんが好きですね~」

 

「分かります!ニコライさんの哲学的なところ、痺れますよね……!最近出た『善悪の彼方』も――」

 

 ノノミが乗っかったことによって始まったモモフレンズトークは、しばらく途切れることはなかった……

 

「ふむ、最近の若いヤツにはついていけん」

 

「あんまり年変わらないでしょ……」

 

「てっきり魔除けかなんかかと思ってたわ!マスコットなんだ!!」

 

「魔除けってあんた……まぁ分かるけどさ」

 

『か、かわいいと思いますが……』

 

「「モモフレンズに興味が!?」」

 

『ヒェ』

 

 そうして皆は親交(?)を深め合っていたが……

 

「おい!アイツらだ!!」

 

「いたぞー!!」

 

 さきほど撃退したスケバンの仲間なのか、かなり大人数のスケバンたちが襲撃を仕掛けて来た。

 

「っと……流石にこう大人数になると、逃げても撒くのは難しそうですね。迎撃しますか?先生」

 

"そうだね…そもそも私たちには大した土地勘もないし。別れるのも得策じゃなさそうだ。ヒフミさん、いいかな?"

 

「あっうぅ~…――そうですね、助けてもらってサヨナラ。は出来ません!私もお手伝います!」

 

「よっしゃ!さっきは撃てなかった憂さ晴らしだー!!タマの狩りを見せてあげるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「へー、それじゃあその塾ってのはブラックマーケットにあるの?」

 

「そうだよー!さすがにここからは遠いから、案内は出来ないけどさ」

 

 スケバンたちを先生の指揮の元ひとまず迎撃したアビドス+シャーレ+トリニティ+黒セーラーの二人(冷静な方は「タタラ」、活発な方は「タマ」と名乗った)という突発の連合部隊は、血気盛んな面々はそのまま大本まで叩いてしまおうと追跡からの追撃をしようとしたが、ブラックマーケットの事情に詳しいタタラとヒフミは『これ以上事を大きくするとマーケットガードが来る』とみなを止め、そこで攻撃を止め逃走することでスケバンたちを撒くことに成功した。

 

 ちなみにマーケットガードとは、ブラックマーケットに巣くう幾多もの企業や団体が共同出費することによって生まれた治安維持部隊――実体はただの暴力装置に近いが――であり。その潤沢な資金から高性能な装備やオートマタを揃えているため、接敵することは基本避けるべき相手である。

 

 閑話休題。

 

 そんなマーケットガードに目をつけられる前に火消しに成功した一同は息の整え。「そういえば」とタタラとタマ、そしてヒフミはアビドスがなぜここに来たのかを問うた。

 

 一緒に危機を脱した仲だしとアビドスの面々は、己の置かれている状況とここに来た目的を全て話し――「ところでお前らやけにここに詳しいじゃん。案内役として雇われる気はない?手切れ金ならあるぞ鉛玉だけど」と言わんばかりの強引さで三人を仲間に引き込んだ(みちづれにした)

 

 現在は情報を探すために足で稼ぎつつも、雑談に興じているところである。

 

 話題は、タタラとタマが所属しているという「塾」についてだった。

 

「そう言えば、その腕章って何なの?」

 

「これ?」

 

 セリカからの質問に、タタラはその細腕に通している腕章を手にとってみせる。それは空色から赤へと移り変わっていく夕暮れを表現したグラデーションが下地となっており、その中心にはデフォルメされた太陽が描かれており。その周囲には文字が刻まれていた。

 

「ええと『夕暮れ教室』……これが塾の名前なの?」

 

「うん。まぁ塾といっても、講師は塾長一人しかないちっさなトコだけどね」

 

 皮肉るような言葉とは裏腹に、タタラは誇らしげに口角を僅かに上げ腕章を見ていた。

 

「……その塾のこと、好きなのね」

 

「ん、母校に親しみを持っているのは。いいこと」

 

 その様子に、実利ではなく愛情ゆえに今なおアビドス高等学校に居続ける自分たちと同じようなものを感じたのか。シロコとセリカはしみじみとした様子でウンウンと頷いていた。

 

 タタラはその視線に気付くと、頬をほんの少しだけ赤く染め。なんでもない風を装った。

 

"一人だけの講師……謂わば先生か。ちょっと会ってみたいかも"

 

 その話を聞いていた先生は、二人の言う塾長にして『夕暮れ教室』唯一の講師に興味が湧いた。

 

 タタラとタマ、二人とも格好こそ服をきっちり着たスケバンだが。見ず知らずのヒフミを助ける正義感や、初見であるアビドスの面々とのチームワークは良好で先生の指示を満点に近い形で遂行できる能力。

 

 無論それは彼女たち自身のものが多分にあるのは承知のことだが、それでもなお。二人を守り育ててきた人物――生徒にものを教える教職同士として先生は会ってみたいと感じていた。

 

「あー……会いたいですか?」

 

 ふと、その先生の言葉に一人反応する。

 

 しかし反応したその生徒は、タタラでもタマでもなく……ミキトだった。

 

"……?ミキトは塾長の人と知り合いなの?"

 

「知り合いというか……」

 

 口ごもるミキトに先生は首をかしげる。

 

「あっ!そうそう、あんたミキトさん?だよな!」

 

 ふと、そこでタマがミキトに声をかける。その明朗な声を聞いたミキトは、一旦迷うことを止めてタマに向き合った。

 

「えぇ、秋茜ミキトです」

 

「あんたに塾長から伝言だって!えぇと……『来るならモモトークでアポ取ってから来い。こっちにも体裁はある』だってさ!!」

 

「……相変わらず呆れた先読みですね」

 

 演技のつもりなのか、気持ち声を低くしてタマから伝えられたその言葉にミキトは迷いが一周回って冷静になったかのように目を細めた。

 

"…えぇ?ミキトも、もちろん私たちも。誰もここに来るなんて他の人は話してないのに……"

 

「男子生徒六人で、グループ会話を作ってますから……そこからの断片的な情報から推理したのかもしれませんね」

 

 だとしても便利屋とカイザーの関連性が疑わしい。しか言っていない。ブラックマーケットもことも、なんならアビドスの借金についてもまったく話していないのに。とミキトは内心舌を巻いた。

 

「なに言ってるのかはよく分からないが、塾長がスゴいって話か?」

 

「……えぇ、そうですね」

 

 それをおくびにも出さず、ミキトは頷いて肯定した。

 

「ッ、だよな!!セキドーのアニキは凄いよな!」

 

「せきどー?……あぁいえ、なるほど」

 

 誇るようなタマの言葉に、賛同する前にふと首をかしげたが。数秒後何事かに合点がいったのか微かに首を動かした。

 

「なら、そんな凄い講師の教え子が自分たちに協力してくれているんです。頑張って目的を達成しないといけませんね」

 

「応!こっちも、精一杯頑張るよー!」

 

"よろしくね。二人とも"

 

 それぞれ気を入れ直して、目的のために行動を再開した。




・秋茜ミキト
力はあるのに……いやむしろ力があるからこそそう易々と動けない連邦生徒会の腰の重さに思うところがある。

・タタラ タマ
オリキャラ生やしたほうが話を進めやすいな…と邪推した作者によって急遽生やされたキャラ。
名前はそれぞれたたら製鉄、玉鋼から。

・セキドー?
『夕暮れ教室』の塾長。

・立花リッカ
ロボットとの逃走劇で逃げ込んだ工場らしき場所で、アナウンスから『生徒証から"先生の生徒"であることを確認。資格を一時発行します』との声の後。床が抜けた。
下に落ちて行った同級生を小脇に抱え壁を蹴る形で落下の速度を緩めながらなんと着地した。

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