Ensemble_BLUE's   作:korotuki

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 お久しぶりです!超久々の投稿です!!

 ブルアカ三周年おめでとう! 盲点だった…ッ。そりゃ周年といったら記念パーティー、そしてそれに合わせたドレス衣装…!

 30,000ちょっとの石で足りっかなあコレ!!?

 えっティーパーティー? 勘はいいのにバイリンガルじゃない方はちょっと……それに去年はティーパーティーがだいぶ全面に押し出されてたから我慢しよ?ね?


蛇の道に、マングースを放て!

     

「……さすがにおかしいです!」

 

 アビドスの危機を救うためブラックマーケットにて便利屋68やカタカタヘルメット団の情報を探すアビドスの面々と現地協力者の三名だったが、ふとヒフミがそう声を上げた。

 

「おかしい、とは?」

 

「手がかりがまったく出て来てないことですっ。ブラックマーケットは元より邪な物が集まる所、隠蔽はあんまりしないのが常みたいなんですが……」

 

「まぁ、そうだね。みんな『ここでケチつけれるならつけてみろ』ってスタンスだし」

 

 ヒフミの言葉に、タタラが追従する。

 

 確かにここまで調査を進めるなかで皆とんでもない数の違法物の売買、怪しげな取引、堂々とした恫喝などさまざまな暗いものを見てきたが。アビドスの問題に関連してそうなものはいっこうに見つからない。

 

 事前の情報収集をきっちりして来たというヒフミや、地区違いではあるがブラックマーケットを根城にしている『夕暮れ教室』の塾生であるタタラ・タマの二人でさえも有用な情報は掴めずにいた。

 

「…ここまで来ると、情報の隠蔽が疑われますね」

 

"でも、ここは普通情報は隠さないんだよね?そこで情報統制をするとなると……一般的な相場よりも高い料金・影響力が必要になるんじゃないかな"

 

「そうだねシャーレの先生。からかう意味も含めてふっかける奴がほとんどだと思うよ」

 

 先生とミキトと、塾生二人の中でも頭脳労働が得意なタタラが言葉を交わす。

 

 会話の流れから自然と『では、情報統制を行っているのはどこか』という話になった。

 

「フツーに考えれば当事者……カタカタヘルメット団か、便利屋連中なんじゃないの?」

 

『ううんセリカちゃん。この前の襲撃であの人たちが撤退したのは傭兵バイトたちの勤務時間が終わったからだから……つまり丸一日雇うだけの資金がなかったと思う』

 

「金があるって前提で話すなら、ヘルメット団も除外だな!そもそもんな金あったら仕事せずに遊び呆けるでしょ?何故なら私がそーするから!!」

 

「……あんま頷きたくないけど言葉自体には賛成。不良なんてみーんな、向こう見ずな刹那主義者だからね。隠蔽しての安全確保なんてまずやらない」

 

 なんならあの人たちがそんな回りくどく確実なことをする/出来るだろうかと、アビドスの面々は白目を剥き大きく口を開いた陸八魔アルの顔芸を思い出す。

 そしてそうしてアビドスに牙を突き立てんとした当事者たちを除くとなると、今アビドス高等学校がなくなって喜ぶ……かどうかは分からないが。こちらに負荷をかけてくる黒く染まったタコと王冠マークの会社を思い浮かべた。

 

「となると…まぁ、あそこぐらいしかないよねぇ」

 

「あそこ……?」

 

「あー、ヒフミちゃんは知らなくて当然だよ。いや、名前は知ってるかな?カイザーって言うんだけど」

 

 その言葉に対する反応は顕著だった。

 

「カイザーですか!?」

 

「お、やっぱご存知か~」

 

「大企業であると同時に、黒い噂も絶えない企業じゃないですか!?そもそも理念が『儲けられるなら何でもいい』ですし……トリニティでも要注意の存在としてよく話題に上がります!そんなところから嫌がらせを!!?」

 

「ううん。まだ決まってない……怪しいのは確かだけど」

 

「落ち着きなよ~。深呼吸、深呼吸~」

 

「うっ、すみません……すぅ~、はぁ~」

 

 人を思いやる性格のためか息巻き始めたヒフミを落ち着かせる二人。

 

 ホシノは『言ってみたはいいけど、わざわざ借金負わせて毎月勝手に利益産み出させてる存在を潰すわけないか』と内心苦笑いを浮かべる。

 

 だが、それを聞いたタタラが忌々しいと眉を歪めてで口を開いた。

 

「カイザーか……ここでも幅きかせてる奴らだしね」

 

 

 

 

「……そうなの?タタラ」

 

 不意に己が心の内で呟いたそれに反論するようなその言葉にホシノは目を軽く見開き、それに代わるようにしてシロコが疑問の声を上げる。

 

「そうだよ?流石に表でもやってる大企業は違うというか、色々手広くやっててね。マーケットガードを運営するための合同出費でも大層なお金払ってるみたいで……」

 

 そこで言葉を切ると、チラリと電柱のほうを見る。みながそれを追うようにして視線を送ると、そこにはマーケットガードが治安維持用に設置している監視カメラがあった。

 

「――それで、ある程度マーケットガードを好きに動かせる。なんてのが専らの噂としてあるほどだよ」

 

『…………』

 

「ちょいちょいタタラ!うちの塾も買収かけらかけたからって、そんなにかっかするなよー!!」

 

「買収じゃない。塾長は融資の誘いだったって言ってた……十中八九、罠だったんだろうけどね。でも…ごめん」

 

 タタラとしては、単なる情報提供として。そしてついでに腹いせとしてわざわざ悪目立ちするように軽く誇張した程度だったのだろう。

 

 事実タマに宥められた彼女は、少し恥ずかしそうに頭をかいていた。

 

 しかし、アビドスの面々からすればその言葉はたまったものではない。

 

 元より気にくわない、自分たちを苦しめる張本人ならぬ張企業が他所(よそ)でもキナ臭い真似をしている。嫌悪感という薪に、実例を交えた被害報告という名の火がくべられる。

 

『………』

 

「先生…」

 

"……むぅ"

 

 途端に気難しい顔をしだしたアビドスを見て、先生は徐に両手を高く上げ――強く打ち付けた。

 

パ ァ ン !!

 

 大きな音が、空間に響く。驚いた面々の視線が集まるなか、先生は続ける。

 

"落ち着いて。まだそれがカイザーだと決まったわけじゃないよ"

 

 固い声音で言った先生の言葉に、ホシノを始めとしたアビドスの生徒はハッとした顔をして。口々に「ごめん」「焦りすぎました…」と謝罪の言葉を口にする。

 

 謝られたかったんじゃ……と先生がその流れを断ち切ろうとした時、硬質な足音と大型車特有の排気音が響く。

 

「うわっ、マーケットガードの巡回だ」

 

『みなさん隠れてください!』

 

 いちはやく状況を理解したタタラの言葉を聞き、場から離れていたからこそ周囲に気を取られずその声を拾えたアヤネが指示を飛ばす。

 

 弾かれたように音のする方向からは死角になるであろう場所に陣取った面々は、息を潜め通り過ぎるのを待つことにし。何人かは身を隠す壁の端からデバイスのカメラを僅かに出し様子を確認した。

 

「――どうやら追手ではないようです。規模と陣形、そしてあの車からして…護衛、ですかね」

 

「届け先はどうやらカイザーバンクのようですね。現金輸送でしょうか……」

 

 ミキトの言葉に追従するようにヒフミがマーケットガードが進む先を見ながらそう呟く。

 

 ちなみにカイザーバンクはその名前の通りカイザーグループ傘下の銀行であり、この支店はブラックマーケット内にある数少ない公的な銀行でもある。なお評判

 

「……んん? 先生、ちょっと画面拡大できる?」

 

"大丈夫だよ。どこを拡大すればいいかな"

 

「画面中央の車…そう、そこ」

 

 シッテムの箱を介して状況をみていた先生のとなりにいたセリカが、何かに気付いたのか先生に頼み拡大させた画像を注視していた。

 

 

 

 

「あっーー!!」

 

『ッ!?』

 

 暫し眉を潜めて画面をみていたセリカだったが、突如として大声をあげた。

 

『せ、セリカちゃん!?』

 

「あっゴメ――」

 

"…しずかに"

 

 突如として響いたその声に、表道にて護送中のマーケットガードがその視線と銃口を向けるが。先生の号令により偵察から全力の潜伏に切り替えた成果か、それともブラックマーケットではよくあるトラブルの類いだと判断されたのか。ほどなくして警戒を解き歩き出した。

 

「……行きましたね」

 

「…流石のおじさんも、肝が冷えたねぇ」

 

 ホッと胸を撫で下ろす一同。

 

 タタラとタマの二人は呆れたような怒ってるような視線をセリカに向けたが、他の面々は「まぁセリカなら仕方ない」と同情のこもった視線を向ける。因みにヒフミは普通にフォローしようとしていた。

 

 それに気付いたセリカはボッと火が吹きそうなほどに頬を紅潮させたが、気を取り直すようにゴホンと咳払いをする。

 

「お、大きな声だしてごめん。それはそうと!……あの車。うちの学校に借金の徴収に来たカイザーの現金輸送車よ!!」

「えぇ!?それは…本当なんですかセリカちゃん?」

 

「憎らしいからこそ印象に残ってたんでしょうねッ!ナンバープレートから細かな傷までまったく一緒!!」

『記録として撮影した写真と照合……セリカちゃんの言う通りです』

 

 アヤネからの通信に、みなの目がスラリと鋭くなる。

 

 誰かが何かを言うこともなく足音を殺しながら尾行を開始し、車と護衛たちの後を追う。

 

 しばらくするとブラックマーケットには不釣り合いなほどな銀行――ヒフミ曰く、黒いお金を白いお金にしたり。もしくはそのまま次なる黒いお金を入手するための武器へと変換する銀行とは言い得て妙の混沌の胴元――へと車はたどり着き。雇われの門番と思わしき不良生徒と二、三言話したかと思えば。書類と車内の物資を交換し別れていく。

 

「今渡したのってさぁ~…」

「……お金でしょうね」

 

 ホシノとミキトがそう答え合わせのように呟いた。

 

「状況がイマイチ飲み込めないけど……アンタらが借金返済のためにあの現金輸送車に渡した金が今。あのクソバンクの中に入ってったてこと?」

 

" 大体そんな感じかな"

 

 タマの言葉に先生が答えると、タタラも含めた二人は露骨に「うへぇ」と言わんばかりの表情となった。

 

「さっきヒフミも言ってたけど、あそこに入った金がクリーンなことに使われることはまずないよ」

「だよなぁ。カイザーのことだし下手すると、みんなを苦しめるために(・・・・・・・・・・)あのお金が使われてるマッチポンプの可能性すらあるな!」

 

 その言葉に、皆の視線はカイザーの現金輸送車から今しがたそのお金が吸い込まれていった闇銀行の方へと目が移る。

 

「つ、つまりよ…?私たちはそんな白黒(グレー)な会社の真っ黒(ブラック)なところにみすみすお金を渡した……加担させられたってワケ!?」

 

「まだそうと決まった訳では……さっき受け渡してサインしていたのが、そのお金の調書だと思うので。それさえ手元に到着したれば確定すると思いますが…」

 

 ヒフミの言葉――そうだったらいいなという思い――とは裏腹に、雇われ門番は一度銀行の中へと入り。戻ってきた時その手にもっていたはずの書類はきれいさっぱり失くなっていた。

 

「うーん、とは言ってもさすがにおじさんたちには見せてくれないよね~。そもそも守秘義務だし」

 

「正規の手続きが通じる手合いではなさそうですけどね」

「じゃあどうするの? このまま帰るってのはちょっと癪に障るんだけど」

 

 おそらくは中の銀行員に渡したのだろう。とその場にいる全員があたりをつけたところで……シロコが呟いた。

 

 

「ん、それなら取れる手は一つ……あれをやろう」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、アビドスとシャーレの面々の多少なりとも砂狼シロコという少女を知る人間は「まさか」という顔をした後に、「いや仕方ないか」と諦めと覚悟をないまぜにした表情を浮かべた。

 

「うー、あれ。あれかぁ……」

「でもでも、こんな状況だったらしかたないですよね☆」

『た、確かに速度と確実性という面では高いかもしれませんが……』

 

 口々にいうアビドスの面々。

 

「え、あれ? "あれ"ってなんですか…?」

 

「まさか、正気?」

「豪胆だね!」

 

 外野であるため頭頂部にハテナマークを浮かべて狼狽するヒフミ、そして外野でありながらブラックマーケットで過ごすゆえに身に付けた過激な思考とその反応からおおよそのあたりをつけた夕暮れ教室の二人。

 

「元よりただでは終わらない覚悟はしてきましたが……これが伏線回収ってことでしょうか。先生」

" どちらかと言うと不発弾や地雷の類いじゃないかな?"

 

 苦虫を噛み潰したような顔のミキトと、微かに苦笑いを浮かべながらも「それが生徒を助けることになるなら」とその視線を銀行へと向ける先生。

 

 高まる機運、沸いた疑問。

 

 その両方をひとまとめに片付ける一言を、シロコは言い放った。

 

 

 

 

「銀行を襲う」

 

 

「……言いきりましたね?」

「ん、言いきってやった」

 

 仮にも治安維持を担当する連邦生徒会員であるミキトで前で堂々と犯罪宣言をしたシロコ。

 

 それに軽い皮肉を込めてミキトが茶化すが。彼女は恥ずかしがるどころか寧ろ誇らしげにピースまでした。

 

 鬼に金棒、弁慶に薙刀。砂狼シロコに銀行強盗と言ったところか。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 銀行強盗!? 銀行強盗ってその……あの!?」

 

 こりゃダメだとミキトは首をふると、そこでみなとようやく同じ目線に立ったヒフミが酷く狼狽していた。さもありなん。

 

「仮に銀行に無許可かつ違法な手段で侵入して金品なり物品を強奪するのが銀行強盗の定義だとするならそうじゃな~い?」

「あぁよかった私の認識は間違ってないんですね――ってそういう話ではありませんよ!!?」

 

「違うわヒフミ。まずアイツらは犯罪に加担してるから、わたしたちも犯罪でやり返すだけなのよ。悪いのはあっち!!」

 

「それに、時間が経って書類が銀行奥の金庫に仕舞われちゃったらそれこそもう見れなくなっちゃうかもしれませんから。転んだ傷が化膿する前に応急処置をするのと一緒だお☆」

 

「そ、そうなんでしょうか……それとその口調は一体…?」

 

 言いくるめ、もとい説得されかけているヒフミ。

 

 またいつの間にかアビドスの面々はシロコお手製の目出し帽をかぶり始めており。ノノミに至ってはキャラになりきっている事態………そして今しがたヒフミの頭にたい焼きの紙袋がプットオンされた。

 

「うえぇ!? えっちょっと待ってください! もしかして私も参加するんですか!!?」

「ここまで来たら、一蓮托生ですよー☆」

「ええええぇ!?」

 

 憐れ阿慈谷ヒフミ。その性格からNOと言えないキヴォトス人である彼女はまんまと覆面水着強盗団の一員へとカウントされてしまった。南無阿弥陀仏!

 

「へー、いいじゃん!私たちも一枚噛ませてよ!!」

「……まぁここまで来たのなら、手伝うのもまた筋。ってところかな?」

 

 その様子を見て、タマとタタラ。二人も近くに適当に被り物はないかと――

 

" あっ、二人はダメだよ?"

 

 探し始めた二人に待ったをかける先生の声。その声に速やかに反応し二人は先生の方へと顔を向けた。

 

「ちょっと!? ここまで一緒に来て仲間外れはナシじゃん!!」

「……さすがに、それは納得できないけど?」

 

 じとりと二人からの視線を受けた先生は、ややあってからその視線と意見を真正面から受け止めんと真面目な顔になると。ややあってから話を始めた。

 

" 君たちはいざとなれば逃げられる私たちと違ってここブラックマーケットで生活している身だから、万が一にも身元がバレた時に大変なことになるかもしれない。それに――きっと、このまま二人を巻き込むと。君らの"塾長"に怒られちゃうかもしれないから"

 

「……むぅ」

「タマ…残念だけど」

 

 一息に語られたそれに、二人は納得してしまう。

 先生が話す"理由"に正当性を見出だした二人は、不服そうな顔をしながらも準備を進めるアビドスやミキトたちから半歩離れた。

 

" 二人とも、ここまでありがとうね"

「お礼ならヒフミにも言ってあげて、あの子がいなかったら。きっと助けてなかったから」

「うぅ~…今度! 今度は絶対に助けますから!!」

 

 その言葉と行動に先生は申し訳なさとを押し殺したような笑みを浮かべると、準備を終えた七人へと向き直った。

 

「今回自分は男性のため身体的特徴から看破される可能性が高いので、先生と一緒に後方支援・指揮に回ります」

" わかった。よろしくミキト……みんな、準備はいい?"

 

「もちろん」「平気です~」「思い知らせるわよ!」「サラリと終わらせようかー」「が、がんばります…?」『精一杯サポートします!』

 

 準備が終わったメンバーからの返事を受けて、先生は頷き。万が一にも銀行に聞かれないように小さく、しかしはっきりとよく通る声音で言う。

 

" じゃあ、銀行を襲うよ!"

 

 

 

 

 

 

 

 銀行襲撃のための大前提は、まず銀行内部へと侵入すること。それに必要な三手を覆面水着団は速やかに遂行した。

 

 遠方のミキトが爆発物を発破することにより、警備の眼を銀行やその周囲から外へ向けさせ、シロコの目算とアヤネのナビゲートにより即座にブレーカーがある部屋へと到着。

 そしてブレーカーを落とすタイミングに合わせ、先生……正確にはその手の中にあるシッテムの箱の住人、無敵のスーパーAI(誇張抜き)であるアロナが銀行を周囲のネットワークから遮断。短い時間ながらも銀行を孤立無援の状態へと陥らせた。

 

 無論そんなことをしてはすぐさま銀行からの刺客やマーケットガードがやってくるだろう。

 

 だが元より――彼女たちはそこまで時間をかける気はなかった。

 

 ズダダダダダンッ!

 

 ブレーカーを落とす寸前に記憶した、警備員なのであろうマーケットガードの位置に銃撃を放ち。意識を失わせる。

 

「全員その場に伏せなさい! 持ってる武器は床に落として!!」

「言うこと聞かないと、ひどい目にあわせちゃいますよ?」

 

 突然の暗闇と銃声に狼狽えた銀行員たちが、それでもマニュアルどおり非常電源のスイッチを入れると。そこには色とりどりの覆面を被った彼女たちの姿を捉えた――その手に銃器を握りしめた状態で。

 

「あ、あはは……皆さんケガしちゃいけないので、伏せてくださいね…?」

 

 覆面2号(シロコ)覆面3号(ノノミ)の言葉に突発的な状況に目を白黒させていた銀行の人々は、他のメンバーとは異なる紙袋の覆面5号ことファウスト(ヒフミ)の言葉で阿鼻叫喚の様相を見せる。

 

「非常事態発生! 非常事態発生!」

 

 いち早く動いたロボットの銀行審査員は、外へと異常を伝えるボタンを叩くが……反応はない!

 

「うへへ~無駄無駄~。外に繋がるその手の連絡手段の電源は、ぜーんぶ切ってあるからね」

「ッ……ヒ、ヒィ!?」

「ほらそこっ、さっさと伏せる! チンタラしてるとあの世行きだよ!!」

 

  ホシノからの言葉で心が折れたのか情けない声を上げたロボットは、覆面4号(セリカ)からの言葉に従い地面に伏せた。

 

 ――これにて、銀行の制圧が完了した。

 

『マスク1、マスク2。こちらに治安維持のマーケットガードが出現。遅延戦術を展開しますが持って5分です。どうぞ』

「マスク2了解……速やかに完遂するよ。ホシ…マスク1」

 

「うむ、作戦をフェーズ2に移行しようか。リーダー・ファウストさん、指示を請う!」

 

「えっ……わ、私がリーダーなんですか!? しかもマスク+No.ではなくて固有名詞を――で、では手筈通りに。目標物を銀行員から提出させその強奪を!!」

 

 外部からの連絡によって、残された時間があまり多くないことを再確認した覆面水着団は。その比類なきリーダーの指示を仰ぎ、狼狽えながらも出された的確な指示に皆動き始める。

 

「うちのファウストさんは恐いよ~? 手足なんかそこらのソーセージみたきにへし折っちゃうからね」

「お、お助け…!」

「なら、このバッグの中にブツを詰め込んで。具体的にはさっき受け取ったであろう現金輸送の――」

「現金でも金塊でも債権でも何でも詰め込みます!!」

 

「え、あちょっと……」

 

 要求を伝える前に「ここにある全ての利権」と早とちりしたロボット銀行員の後ろ姿に、覆面2号は伸ばした手落とした……まあ目的のものも入るだろうし、いいかと彼女は思い直す。

 

「余計な気は起こさない方がいいわよ! もしかしたら……支柱に爆弾でも仕込んであるかもね?」

「なっ…自分たちも生き埋めになる気か!?」

「だから~、言うこと聞いてくれればそんなことはしませんよ。ねっリーダー?」

「こ、これでもしバレたらティーパーティーの顔に泥を塗ることに……ッ」

 

 事実と虚偽を織り交ぜ、実際よりも自分達が恐ろしいものだと喧伝する覆面4号と3号に、武装解除された警備員は非難の言葉と視線をぶつけるが二人はそよ風のように受け流した。

 

 そして、それを我関せずと――まるでここが鉄火場ではない。リラックス出来る場なのだとでも言うように悠然と佇むファウストの姿に、警備員たちはその戦慄を一層強くする。

 

「グッ、くっ……!?」

「そのまま無駄足踏んでて下さいね~」

 

 いざとなれば侵入者を迎撃するための銃器を持つ手に力が入らない。

 それを撃った瞬間、はたして自分たちはどうなってしまうのか…それを考えただけで警備員たちは指からトリガーを離さざるを得なかった。

 

「ブツはまだ!!?」

「お、おおお待たせしましたッ!!!」

 

 牽制している間についに詰め込みが終わったらしく。それなりの容量があったハズのボストンバッグはパンパンに膨れ上がった状態で渡され、覆面2号はその覆面の下の顔を驚愕で埋めながらも受け取った。

 

 覆面4号による恐喝によって渡した途端柱に逃げていく銀行員。

 

 それを見送りながらも、ついに目標物(オマケ多数)を手に入れた覆面水着強盗団。となれば最後は――

 

「…ブツは確保出来た。撤収しよう」

「そだねー。そんじゃあ全員撤収ー!!」

「了解!」

 

 包囲されないうちに逃げ帰るだけである。

 

「それではさようなら~☆ あっちなみに爆弾なんてどこにもないですから安心してくださいね~」

「だ、誰も傷ついてませんよねっ!? ……いないようですね――ではっ、ご迷惑おかけしました~!?」

 

 バビューン!

 

 そんなオノマトペが似合いそうな、まさに疾風のように彼女たちは去って行き。その数瞬の後に――

 

「っ! あのっ巫山戯た奴らを捕えるぞ!!」

 

 ようやく銀行の者共は飲み込まれた雰囲気から解放された。萎縮した表情に憤怒に歪ませ、矢継ぎ早に仕返しをせんと動き始める。

 

「道路の封鎖指示急げ! マーケットガードと共に挟撃だ!!」

 

「――ひとり残さず捕えろ!!!」

 

 こうして初戦は奇襲によって流れを掴みきった覆面水着強盗団が完勝。しきしリベンジに燃える銀行とその要請に応えたマーケットガードによって直ぐさまラウンド2の火蓋が切って落とされようとしていた。

 

 ……そして、そんな様子を待ち合い椅子から。それも第三者的な視点から眺めていた人間がいて。

 

(か、―――)

 

(かかかか、カッコいい――!!!!!)

 

 仲間は以前やり合った相手だと気付く中で、自分の琴線でギターソロをかますかのようなアウトローっぷりを見せた覆面水着強盗団(アビドスメンバー)の背中を憧憬の念を込めた眼で見送っていた。




・秋茜ミキト
流石に覆面をした程度では背格好は誤魔化せず、身バレの可能性もあるため銀行には突入せず近所で適当に暴れまわっている。

・灰九霹ミチユキ
肝が座っている…というよりも変に鈍いところがあるのな強盗している最中も爆睡。アルが「追いかけるわよ!」と立ち上がったあたりでカヨコに起こされた。

・立花リッカ
落ちた地下から延びる扉の先で少女を確保。
頭の中の冷たい場所が彼に警告を鳴らしていたが、目覚めた彼女が表現的な物ではなく正しく無垢と呼べる代物で。同級生二人の声もあり連れて帰ることに。
名前は同級生の一人が少女の近くにあった何かの型式番号らしきものを簡略化し「アリス」となった。

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