・変更点
モモトーク風会話での名前を変更
"ミチユキ"→"道征"
「うっうぅ……」
「り、リッカさん……元気出しましょう?」
翌日のアビドス高等学校、朝日に照らされた校舎の前で。荷物をまとめたリッカが顔を伏せ鼻をすする。
先程から先生やミキトといった同性、そしてアヤネや言葉少なげとはいえセリカなどの同い年の生徒も声をかけ宥めようとしたが。なかなか収まることはなかった。
"何とかならないかな、ミキト"
「……無理です。自分も機械弄りに覚えはありますが、それはあくまでビークルの整備程度。ミレミアムの……それもエンジニア部謹製となるととてもてとも」
"だよねぇ…部品だけなら何とかできるかもしれないけど。そもそも整備できる人がいない、か"
先生は近くにいたミキトに話しかけるが、ミキトは打つ手なしと首を降る。先生は脳裏にクラフトチェンバーを思い浮かべたが、そもそも今のアビドスや自分たちにそれを修復する技術を持っていないと諦めるしかない。
そもそもこうなっている原因は、リッカの専用武器である【Meteor Breaker】が
【Meteor Breaker】は空冷式と緊急時の強制排熱システムによって連続稼働時間の確保と熱がこもることによる機能低下を防いでいるが、その空冷システムに異常が生じた。
原因はアビドスの砂漠特有の小さな細砂にフィルターが対応できず、内部への砂の侵入による一部機能の異常と空冷システムの機能低下によるオーバーヒートだった。
本人は「まだまだ戦えます!」と言っていたが、先生が説得しエンジニア部に連絡を取ったところ『砂という異物が入った状況で使い続けるとどうなるか分からない。最悪じば……爆発するかも』
『そろそろ実戦データの収集もあるから、修理ついでに帰ってきて』
『砂の混入による【Meteor Breaker】の悪影響についての説明や解説が必要なら!!』との意見があり、ここでリッカのミレニアムサイエンスハイスクールへの帰投が決定した。
「まあまぁ、おじさんは機械のことはあんまり詳しくないけど。新造じゃなくて修理なら、すぐに帰ってこられるんじゃない?」
「それは……ちょっと厳しいかも」
励ますためにホシノはそう言ったが、当のリッカはそう返すと浮かない顔で続きを話した。
「ミレニアムプライス……ミレニアムサイエンスハイスクールにおける最大規模の品評会が近づいてて。エンジニア部のみんなもあぁは言ってくれたけど……本来はそれに向けて心血を注いでいる最中のはずだから――さすがに、修理に着手してくれるのは…」
「え、えっーと……どうしようか?」
まさしく意気消沈、といった顔のリッカに。さしものホシノも言葉に詰まってしまった。
「…~あーもうッ!さっきからウジウジと!!」
ここで動いた――というか爆発したに近い――のは、対策委員会で一番沸点が低く人情に篤いと噂のセリカだった。彼女は大股でずんずんとリッカへと近付く。
「アンタは口で言うより体動かしてるほうが良いわ!さっさとその速い足で帰りなさいよ!」
「セリカちゃんそんな言い方は……」
「だから……だからとっととそれを直してきて。早めに帰ってきなさい」
「…!」
その言葉にリッカは、はっと顔を上げた。少し顔を赤くしそっぽを向いたセリカの横顔をじっと見つめたリッカは、目をつむって「フゥ」と細く息を吐いた。
「――了解しました!立花リッカ、なるはやで帰ってきます!!」
出会ったときのような輝く笑顔でそう言った彼は、アビドスの面々が見えなくなるまでをふりながら帰って行った。
対策委員会、そして変わらずアビドスに残留する二人もまた。リッカが見えなくなるまで見送った。
立花リッカ。武器故障のため一時帰還。
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ピロンッ♪
<ミキト
ミレニアムにはつきましたか?
<ミキト
あまりお気にせずに。
ところで、実際どのくらいかかるんですか?修理には
<ミキト
それは…本当に遅くなりますね。
こちらはこちらで頑張ります。気負わず、ノビノビと品評会を楽しんでください
<ミキト
ところで、知り合いからの頼み事とは……それだけ相手方は切羽詰まってるのか……
失礼でなければ、内容を聞いてもいいですか?
<ミキト
探し物?
<ミキト
……ミレニアム近郊の廃墟?
確か以前は生徒会長の指揮の元閉鎖。しかし現在はその失踪に伴い警備員も退却させた地域のはず……そこに用事ですか?
<ミキト
ダメと言われれば…まぁダメでしょうね。部隊を引き上げさせただけですが閉鎖命令自体は生きているでしょうし。
そもそも閉鎖理由も不透明なので何があるか分からないという危険もあります……あの人は良くも悪くもワンマンでしたから、その弊害ですけど。
<ミキト
いや、行けばいいのでは?
<ミキト
正直もう閉鎖区画であることは形骸化してます。部隊もいないので余程大騒ぎしなければバレることもないかと。
<ミキト
今は先生に付きっきりなのでミレニアムで何が起きてようと知ったこっちゃありませんね。
<ミキト
無関係のやつなら相応の取り締まりをしますけど、リッカですから。
ただし交換条件があります。
<ミキト
はい、では……廃墟内部の写真と、レポートをお願いします。いいですか?
<ミキト
廃墟が閉鎖された理由を知りたいからで、そのための情報が欲しいからですね。
それに連邦生徒会所属の人間である自分が、この"頼み事"によってリッカと皆さんに調査を依頼したという形に出来ますから。万が一連邦生徒会に咎められても大丈夫ってことです。
<ミキト
いえいえ、アビドスの人たちもリッカが帰ってくるのを待ってますから。その手助けも込みでですよ
<ミキト
……部外者二人が加わっただけで光明が見えたなら。とっくに昔に解決してるってとこですかね。
<ミキト
…復興を手伝う人間として聞く権利はあります。
適当に羅列しますね
<ミキト
セリカさん:マルチ商法(騙されて)
ホシノさん:他校の生徒拉致による生徒増員
シロコさん:銀行強盗(計画立案済み)
アヤネさん:上記の意見に怒り心頭しちゃぶ台返し
先生:傍観。過干渉は避けるスタンスか?
<ミキト
それが正しい反応でしょうね……。
結論出ずで、今は柴関ラーメンにて昼食中です。
<ミキト
ハハハ…すみませんね。流石に勘弁を
<ミキト
なら、今度一緒にこれるよう。地域の大黒柱であるアビドス高校存続を存続させるために今後の英気も養わなくてはいけませんね?というわけで特性とんこつラーメン大盛頼みます。
「へぇ……中々いいシチュエーションだ」
砂漠の熱気に照らされる中、一人のポンチョ姿の生徒がそう呟いた。
「遠路はるばる駆け付け活躍した少年。しかしその少年はトラブルにより離れることを余儀なくされ、残されたメンバーは少年の意志を継ぎこれからも頑張り続けようと奮起する」
デバイスから目を離した生徒の、フードから覗くエメラルド色の縦長の瞳は砂漠の熱気にも負けぬほど爛々と輝く。
「しかし、その前には新たな強敵が立ち塞がる!残されたメンバーの一人はその正体に気付きこう叫ぶだろう――」
「『お前はまさか』ってね?」
その輝きが最高潮に達した瞬間、目にも止まらぬ早さで銃を構え。芝居がかった仕草で「バァン!」と言い、誰に見せることもなく。しかしゆつまくりと見せつけるように銃をホルスターにしまった。
「うんうん。入りとしては中々、王道的じゃない?」
「ミチユキ
ふと、その生徒に声をかけた人物がいた。
ピンクの薔薇をそのまま髪に溶かし入れたかのような鮮やかな長髪に、見るものを竦ませる切れ長の琥珀のような目。
白いシャツにタイトスカートという一見平凡にも見える格好を赤錆色のマントが引き立たせ、鉄火場の最中にいるような錯覚を見るものに与えた。
「あり、アル社長。アルバイトたちとの打ち合わせは終わったので?」
「当たり前よ、ミチユキ候補生。彼女達は元より金のみで働く私たちの手足――指示に従うという意思決定だけ行えれば十分よ」
「――成る程、短い間ではありましたが……慣れぬ土地です。お疲れでしょう?車にて休憩をお取りください」
「えぇ。そうさせてもらうわ」
「………ふぅ」
そんな雰囲気の彼女に飲まれた――実際には合わせたが正しい――ミチユキ候補生の言葉にアル社長と呼ばれた女性が鷹揚に頷き車に向かっていくのを見ていた黒と白のツートンカラーの髪が特徴的な、目付きの悪い生徒がため息をつく。
導かれるまま車へと向かったアル社長を尻目に、残された二人はヒソヒソと言葉を交わし始めた。
「それでカヨコさん。コストカットの方は……」
「向こうが強情なのもあったけど…社長の悪い癖で伝わる?」
「…了解、出番が増えますね」
「頼りにしてる。ミチユキは強いからね」
その言葉に恭しく頭を下げ。礼をして見せる。
「課長の信頼に応えるため、頑張らせてもらいますよ?」
「そのたまにキザっぽいところさえなければ、手放しで褒められるのに……」
二度目のため息をついたカヨコと呼ばれた少女とミチユキと呼ばれた
――アビドスに、新たな"
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「ご馳走さまでした……自分は先に戻ってますね」
"急ぎの用事でもあるの?"
「いえ。セリカさん誘拐の件で気になることもあるので」
柴関ラーメンにて、死んだ目のセリカに案内されラーメンに舌鼓を打っていたアビドス一行。大盛にも関わらず一足先に食べ終えたミキトが席を立ち、そう言った。
昨日のセリカ誘拐事件のことでカタカタヘルメット団の装備に不審な点が見られたことを気にしていたミキトの言葉に先生は頷くと、そのまま彼を見送った。
「いやぁマジメだねーミキトは」
"そのマジメさに、いつも助けられてるからね"
「だねー。会議にも真剣に取り組んでてくれて、ちゃぶ台返ししたアヤネちゃんが無言でもとに直したの始めてみたよ~」
「ホ、ホシノ委員長!?」
自らに飛び火し顔を紅潮させるセリカをからかっていると、カランカランと柴関ラーメンの入り口から来客を告げる音が鳴った。
「あ、あのう……」
来客の数は五人。その先頭にいた紫の華奢な少女だけが店に入店し、セリカに声をかける。
「このお店で一番安いメニューってなんですか…?」
「柴関ラーメンが570円ですよ!定番メニューで、おすすめです!」
満面の接客スマイルと共にそう答えたセリカの笑みに負けず劣らず、少女は値段を聞いた途端パッと瞳を輝かせ。それを合図としたかのように他の四人も次々と入店してきた。
「あ、あったわ!やっぱり探せばあったのよ600円以下のメニューは!」
「では、お席にご案内しますね!」
「いえ、ひとつの席で大丈夫。一人前しか頼まないから……」
「い、一人前だけ!?」
「大人数なのに売り上げに貢献できなくてすみません…でも箸は五つください……」
威厳のある見た目だが、それが簡単に崩壊してしまう程に朗らかな笑みを浮かべる長髪の少女。
先程の紫の華奢な少女と白と黒のツートンカラーのクールな少女と、対策委員会に負けず劣らずの個性な少女たち。
"…………。"
だが、先生が目を奪われたのはその誰でもなく。少女たちの最後尾にいた一人の生徒だった。
特別目立つわけではなく、寧ろ短い黒髪と翡翠の目は。その集団の中では比較的地味で。見に纏う黒いロングコートも砂漠においては物珍しいが珍妙ではない。
先生が日を引かれたのは……その生徒の
「アルしゃちょ~。最悪お金なら自分のポケットマネーから――」
「ダメよ!一蓮托生の社員だからと言って個人の私財にまで手を出したら社長として失格よ!!」
「…まっ、かっこいいからいっか!さすがですアル社長!!」
「さすがです!!」
「くふ。二人とも甲斐甲斐しいねー」
紫の華奢な少女とともにアル社長と呼ばれた少女を褒める生徒は――男性だった。
「ん?………♪」
"おっと……"
ふと視線に気付いたのか、先生の方を向き目があった男子生徒は堂に入ったウィンクをして見せ。それを食らった先生はその生徒に軽く会釈することによって謝罪をしつつ視線をもとに戻す。
("いけないいけない。マジマジ見るのは失礼だよね……そっかあの子が"三人目"。ミキトの話だとちょうど半分か…")
最初にミキトと会ったときの会話から『キヴォトスには六人の男子生徒』がいると言うことを思い出した。
「お待たせしました!柴関ラーメンです!!」
「ええ!?これ十人前はあるんじゃない!?」
「ち、注文間違い…!!?」
「いえ!これが柴関ラーメンです! だから気にせず食べてください!」
「ああ。手元が狂っちまってよ。少し多くなっちまったが……気にせず食ってくれ」
先生が思案する背後ではそんな柴大将の粋な計らいから、五人は最初に食べたシャーレの面々と同じようにうまいうまいと言いながら食べ始めた。
「ん、柴関のラーメンはおいしい」
「えぇ。このレベルのラーメン、中々お目にかかれないわ!」
「うれしい~☆これ、アビドスの名物なんですよ!」
「め、名物…!そんなのを私が……!?」
「吐き出そう、なんて言わないでね~?」
そして同じく柴関のラーメンを愛するアビドスの面々と速攻で意気投合していた。
和気藹々とする少女たちのオーラに先生が当てられ、癒されたような悲しいような複雑な感覚が先生を襲っていた。
(アビドスのメンバー、及びシャーレの先生を確認しましたよームツキさん、カヨコさん)
(やっぱりそうだよね~、アルちゃんに言う?)
(…変な覚悟を決めてここで始めようってなっても困るし、黙っとこう)
(さ~んせい!面白そうだしねー!)
(ですねぇ。あと、シャーレから二名出向者がいたんですが、一人は急用で帰ったみたいです)
(それは…どこからの情報?)
(個人的なルートです)
盛り上がった会話の裏で行われたそんな密会には……先生は気付かなかった。
・立花リッカ
ミレミアムに期間。
以前ゲーム開発部にゲーム内で"かくとうか"のモーションを作るために協力したことがあり、戦闘力が高く一年生ということで気を遣う必要がないということで登用された。
アビドスの日々の中でシャーレ正部員の証である部員カード(本作の独自設定)を持っており、正真正銘先生の生徒。
【Meteor Breaker】がなくともロボをスクラップに出きる程度の地力は持っている。
・秋茜ミキト
私物のバイクを持っていることから分かる通りビークル全般が好き。整備と改造もある程度こなせる。
ラーメン屋に留まると便利屋の正体看破からのミチユキと"OHANASHI"しようと外に出てドンパチを始めようとするため今回は早退した。
・???ミチユキ
便利屋所属の階級候補生という名の仮入部員
砂漠のアビドスでも黒いロングコートを着ている。
究極のプライベートとも言える男子生徒間のグループモモトークからの情報を躊躇なく利用する狡猾さを持っているが……?
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