「ヴァーディ!今日はわたし取材なんだよ!」
「へ~そうなんですね」
「……な~んか反応薄くない?」
「そんなことないですって!」
今日も今日とてチームでトレーニング。どうやらジェネ先輩が取材を受ける日らしい。この時期というと……秋華賞か。
「グランとラヴちゃんに負けちゃったからね!今度こそ勝つぞ~!……まぁその2人秋華賞に出てこないんだけど」
「アレグリア先輩はマイル路線、ラヴズ先輩は秋華賞回避ですもんね」
「ぐぬぬ~!リベンジの機会が……!で、でも!逆に考えればこれはチャンス!ティアラ最後の一冠はわたしが貰っちゃうんだから!」
「頑張ってくださいジェネ先輩!俺も応援に行きますんで!」
「本当!?」
うおっ、めっちゃ目を輝かせてる。いや、そりゃ勿論応援に行きますよ。
「同じチームの先輩、お世話になっている人ですからね。そりゃあ応援に行きますよ。レースも被ってませんし」
「わーいわーい!ヴァーディが応援に来てくれるなら百人力だよ!よ~し、頑張っちゃうからね!ヴァーディは最前列でわたしの勝つとこ見ててね!」
「はい!」
「お~い、クロノ、ヴァーディ」
あ、海藤さんがこっちきてる。取材の時間か。……いや、なんで俺まで呼ばれてるん?
「トレーナーさん!……ヴァーディも探してたんですか?」
「うん。どうやら先方はヴァーディの取材も並行してやりたいみたいで……勿論急遽決まったことだから断ってくれてもいいんだけど。ヴァーディはどうする?」
うぅん、かなり急だな。
「なんで俺まで?いや、都合が良いってのは分かるんだけど」
「君は次世代のホープ、なんて呼ばれているからね。早くもクラシックの主役候補、なんて言われてるし。是非ともこの機会に取材したい!って言ってるんだ」
あ~、確かにネットかなんかでそう言われてたな。【次世代のホープ!ヴァーディクトデイ!】な~んて見出しも目にしたことがある。
ま、別に断る理由もないか。
「分かった。じゃあ俺も取材を受けるよ」
「本当かい!?ごめんねヴァーディ、この埋め合わせはしっかりとしておくから」
「気にすんなバディ。別に断る理由もなかったからさ」
トレーニングは取材の後に十分できるだろうしな。
というわけで俺とジェネ先輩はみんなとは離れて取材を受けることに。場所は部室だ。
「すいません、こちらの急なお願いでヴァーディクトデイさんも取材を受けてもらうことになってしまって」
「気にしないでください。特に急ぎの用事もなかったので」
申し訳なさそうに謝る記者さんに丁寧に対応。良い印象を持たれるに越したことはない。特にメディアってのは怖いからな。この人は良い人そうだけど、用心するに越したことはない。
「それでは改めて……今日はよろしくお願いしますね。クロノジェネシスさん、ヴァーディクトデイさん、海藤トレーナー」
「「「よろしくお願いします」」」
こうして取材が始まった。
「秋華賞に向けて、クロノジェネシスさんの調子はいかがでしょうか?」
「万全です。桜花賞とオークスは悔しい結果に終わってしまったので、秋華賞こそは絶対に取ってみせます!」
「成程。海藤トレーナーとしては今度の秋華賞どのように見ていますか?」
「そうですね。桜花賞ウマ娘のグランアレグリアにオークスウマ娘のラヴズオンリーユーが出走を回避ということで混戦模様になると思っています。主役不在と思われているかもしれませんが、主役は遅れてやってくる、というレースっぷりを見せてくれると思っています」
「秋華賞で注目しているライバルはいますか?」
「阪神ジュベナイルを勝ったダノンファンタジーちゃんです。桜花賞とオークスではどっちも先着しましたけど、一番のライバルになりそうな相手なので。後はオークスで先着されちゃったカレンブーケドールちゃんにも負けたくないですね!」
「私もおおむね同意見です。特にカレンブーケドールにはオークスで先着された借りがあるので。その借りを返したいと思います」
「成程成程。では……」
ジェネ先輩の秋華賞インタビューが続く。こっちが本命だからジェネ先輩中心だ。俺は基本横で聞いているだけ……と思っていたのだが。
「ヴァーディクトデイさんはクロノジェネシスさんのことをどう思っていますか?」
「えあっ?」
あ、やっべ。こっちに話振られると思ってなかったら間抜けな声出したわ。
「先輩をどう思っているか、ですか」
「はい。是非ともヴァーディクトデイさんの意見をお聞かせ願えたらと」
ふんふん。そんなの決まってる。
「そりゃあ勿論、今度の秋華賞はウチのジェネ先輩が勝ちますよ!そのために毎日頑張ってますからね!」
「ヴ、ヴァーディ!」
「いっつも遅くまでトレーニング頑張ってますし、今度こそ勝つんだって頑張ってますので!今度の秋華賞はきっと勝ってくれますよ!」
「ほほう。クロノジェネシスさんを尊敬しているんですね」
「はい!お世話になってますから!」
ジェネ先輩は感激したように目を潤ませている。海藤さんは……ちょっと呆れているけど。でも止める気はないようだ。
それから何個か質問が飛んで。インタビューは終わった。
「……はい。ではクロノジェネシスさんへのインタビューは以上となります。本日はお忙しい中ありがとうございました」
「ありがとうございます!良い記事書いてくださいね!」
「はい!それは勿論。では次に、ヴァーディクトデイさんへのインタビューですが……よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
ついに俺の番か。しっかりと答えないとな。
「まずは先日の野路菊ステークス勝利おめでとうございます。大差で圧勝でしたね」
「ありがとうございます!でも、まだまだこれからですから。クラシックに向けて精進あるのみです」
「ストイックなんですね。では、ヴァーディクトデイさんの次走はどこを予定していますか?」
「順調に調整が進めば、デイリー杯ジュニアステークスを予定しています。ヴァーディクトデイにとっては初の重賞挑戦なので、今まで以上に調整を頑張っていこうかと」
「デイリー杯ですか!ヴァーディクトデイさん、意気込みの程は?」
「出走する以上は勿論勝ちます。前走の疲れもないですし、後は体調を崩さないように「嘘だよねヴァーディ。ちょっと疲れ残ってるでしょ」……ソンナコトナイデス」
「本当に君は分かりやすいね……ただ、疲労も本当に少ししか残ってないのでデイリー杯までには回復するでしょう。後はこの子が無茶しないように見張るだけです」
「あ、あはは……」
なんでバレたし。みんなから言われるけど俺本当に分かりやすいんだな……。
「ヴァーディクトデイさんといえば、世間からは【イケメンウマ娘】なんて呼ばれていますね。女性人気もかなり高いとの統計が出ています」
「あ、あはは。応援してくれてありがたい限りですね」
「ムッ!」
あの、睨まないでくださいジェネ先輩。応援してくれるのは本当にありがたいんですから。
「後は、【漆黒の撃墜王】だとか。最後方から前を走るウマ娘を冷酷無慈悲に撃ち落とすレースマシーン……それが由来となった【漆黒の撃墜王】の称号。ヴァーディクトデイさん的にはどう思っていますか?」
……落ち着け。落ち着け俺。この人がぶつけているのは純粋な疑問だ。怒るってのは筋違いだろ。
「……ありがたい話ではありますけど、個人的にはちょっと、ですかね。カッコいいから好きではあります」
「ふむ?なにか気に入らない部分が?」
「王、ってのが気に入らないんですよ。いや、撃墜王でエースパイロットってのは分かってるんですけど……まだ世代の上になったわけでもないのに王がついているのはちょっと納得できないというか」
「ほうほう……」
これは本当に個人的な感情だ。だから、当たり散らすわけにはいかない。
「ヴァーディクトデイさんはあのディープインパクト生徒会長やジェンティルドンナ副会長からも目をかけられているとか。どう思っていますか?」
「そうですね。目をかけてもらえて嬉しい限りです。特にジェンティルドンナ副会長には学園で知り合って以来とてもお世話になっていますので。その恩をレースに勝つことで少しでも返せたらなって思います」
「ヴァーディ!わたしは?わたしは!?」
「クロノは少し黙ってようね」
「あはは……クロノジェネシスさんはヴァーディクトデイさんのことをとても気に入っているんですね」
「勿論です!」
そう言ってくれて嬉しい限りだ。だけどちょっと抑えて欲しい。
「後は……注目しているライバルなどは「コントレイルです」あ、はい。コントレイルさんですか」
何故か引き気味だが……まぁいい。
「コントレイルさんは確か、ディープインパクト生徒会長が特に目をかけているウマ娘でしたね。メイクデビューも圧勝だったとか」
「はい。俺は、コントレイルが最大の壁になると思っています」
「そこまでですか……他に注目しているライバルなどは?」
「う~ん……すいません。ちょっと注目しているライバルが多すぎて絞れないです。すいません」
「いえいえ。ということは……走る相手全員がライバルだと?」
「はい。俺は常にそう思って走っています」
その後も何個か質問。好きな食べ物とか欠かさないルーティーンとか。そういうのに答えていった。
「……はい!ヴァーディクトデイさんに対するインタビューもこれで終わりですね。本日は急な予定だったのにありがとうございました!」
「いえいえ。最初に申し上げた通り、急ぎの用事もなかったので。大丈夫です」
「お礼といっては何ですが、良い記事に仕上げますので!楽しみに待っていてください!」
記者さんは退室。さ~て俺もトレーニングに「ヴァーディ、ちょっといいかな?」行こうと思ったらなんか呼び止められた。
「どうしたんだよバディ。なんかあったか?」
「……いや、疲労はまだ抜けきってないんだから無茶だけはしないでね」
なんだ、そんなことか。
「当たり前だろ!というか、お目付け役のジェネ先輩がいるから無茶はできないって!」
「……それもそうだね。呼び止めて悪かった、行ってきていいよ。クロノも、ヴァーディのことよろしくね」
「はーい!それじゃあ行くよヴァーディ!今日もビシバシ鍛えちゃうんだから!」
「はい!よろしくお願いします!」
こうしてトレーニングに向かうことに。去り際の。
「……」
不安そうな海藤さんの表情は、どういうことか分からなかった。
クロノ達が退室した部室で1人呟く。
「ヴァーディ……」
先程までクロノと一緒にインタビューを受けていた、俺が担当するチームのウマ娘。活発で、誰にでも分け隔てなく接する明るい子だ。
ヴァーディは嘘を吐く時が凄く分かりやすい。性格的に、嘘がつけない子なんだろう。だからこそ、あの時のインタビュー。
「君は、レースで走る全員がライバルだって言った。だけど……」
その言葉自体に偽りはないんだろう。だけど、本当は違うんじゃないか?と疑念を抱いている。
……ヴァーディの嘘は分かりやすい。けど、本当に大事なことは……絶対に教えない。というよりは、分からない。自分の心に抱えているものをあの子は、他人に絶対に教えない。
「嘘は分かりやすいのに、本心は分かりにくいなんてね……」
心の内で抱えているものを、ヴァーディは絶対に他人には教えない。きっと、大事な妹であるエフフォーリアとペリファーニアにも教えていないんだろう。2人も分からないと言っていたから。そして、その抱えているものこそが──ヴァーディがレース中、人が変わったように冷酷になる理由にも繋がってくるんじゃないか?そう直感めいたものがあった。
「どうして教えてくれないんだろうか……そんなに、頼りないのかな?」
1人呟く。俺の呟きに答える者は……誰もいなかった。
アーモンドアイ
身長:164cm
体重:美しいほどに完璧
B/W/H:85/56/88
一言メモ
淡い茶色の癖の多い髪をポニーテールに纏めている、瞳が特徴的なウマ娘。真面目であり学業・実技共にクラスでもトップレベルの成績を誇る。レースの成績も素晴らしいの一言。だが本人は慢心することなくただ上を見ている。
最近はどうにかして栗東寮に移れないかと画策しているが寮長に怒られたので止めた。