さて、しばらくの暇を貰ったわけだが。
「とりあえず服を買いに行くのは確定だろ?後は……何しよう?」
適当に本でも買いあさるか。こう、疲労が溜まらないトレーニング!みたいな本があればそれでよし。
「あれ?ヴァーディ君お出かけ?」
「おう、プボちゃん。しばらくトレーニング禁止令を出されたんでな、気分転換にリフレッシュしてくる」
「まぁ当然だよね。ヴァーディ君ライブにも出てこなかったし」
「うぐっ」
それを指摘されると凄く痛いわけだが。プボちゃんも心なしか咎めるような目つきだ。ジトーっとした目で俺を見てる。そんな目で俺を見るな!
「息抜きは大事だよヴァーディ君。ただでさえヴァーディ君は無茶しがちなんだから」
「あーはいはい、分かってますよ。バディと一緒のこと言うじゃん」
「それで、なにか目的とかあるの?適当に歩く感じ?」
「とりあえず服見ようかな~って。ホラ、俺の部屋着もう伸びちゃってるからさ」
「……あぁ。あの元のイラストからかけ離れているであろう伸び切った猫がプリントされたTシャツ?」
「おう。この機会に新しいのを買おうかなって」
やはり胸についているコレのせいか、Tシャツが滅茶苦茶伸びる。元々猫がプリントされていたのに、今では生地が伸びて凄いことになった。哀れ猫ちゃん……。
「というかさ、この機会に寝間着買いなよヴァーディ君。冬場とか絶対寒いじゃん」
「え~?寝る用に服とかいるか?Tシャツと短パンで十分じゃね?」
寝間着とか絶対いらんと思うのだが。その辺は拘りでもあるのだろうかプボちゃんは。
「周りが大丈夫じゃないんだよ……」
「なんか言ったか?プボちゃん」
「いや、なんでもないよ。……そうだね、そんなヴァーディ君に耳寄りな情報」
ほほう?俺に耳寄りな情報とな?
「実はパジャマで寝ると睡眠の質が上がるらしいよ。睡眠の質が上がれば、疲労回復にもつながるんじゃないかな?」
「あ~、それは良いかもしれんな。てかそんな効果があったのかパジャマ」
「うん。というよりは、Tシャツで寝るのが睡眠の質に影響を与えるっぽいけどね」
ふむ、それは盲点だったな。パジャマで寝ると睡眠の質が上がる、か。それなら買うのも視野かもしれん。
「パジャマ選びのポイントはリラックスできる……ゆったりとした服が良いんだって。開放的な気分になるらしいよ」
「開放的な気分に……ということは、真っ裸で寝れば「絶対やめてね?」あ、はい」
そ、そんな凄い目で見なくても……ちょっとした冗談じゃん。
「というかさ、ヴァーディ君は私服もどうかと思うよぼくは」
「私服?……なんか問題でもある?」
「あるよ!」
そ、そんなに?おかしなとこなんてないと思うんだけどなぁ。
「なんでそんなにおへそ出してるのさ!?しかもノースリーブにパーカーを着ているだけだし……改めてみると凄い格好だよ!」
「いや……私服でへそ出しぐらい誰だってするだろ」
「誰でもはしないよ!?」
え、そうなの?割と前からこんな格好だったから知らんかった。
う~ん、とは言ってもなぁ。
「この格好割と気に入ってるから変える気はないというか」
「……まぁ、私服に関してはこの際良いよ。寝間着さえどうにかしてくれれば」
「そんなにおかしいか?俺の寝間着」
プボちゃん、そんな高速で首を縦に振らんでも。いくら俺でも傷つくぞ?
「ま、とにかく行ってくるよ。プボちゃんもトレーニング頑張ってな」
「う、うん。いってらっしゃいヴァーディ君」
「いってきま~す」
さて、服を買いに行きますかね。まずはショッピングモールだ。
「クソ……!侮っていた……!」
現在ショッピングモール。俺の状態は疲労困憊。なんでこんなことになってるのかって?
まずショッピングモールに来るまでの間。
「あぁ困ったわ……どうしましょう?」
「あの、どうかしたんですか?」
「あ、実は……」
道中困っているウマ娘がいたので手伝ってあげたりしていたらショッピングモールに着くのが大分遅れ。しかも結構探し回ったので疲れた。
そして服を見る前に小腹が空いたのでご飯を食べようと思ったのだが。
「あの~、相席良いですか?」
「うん?あぁ、勿論いいですよ!」
「すっごいイケメン……!ありがとうございま~す、じゃあ早速「ちょっと、なにかってに隣に座ろうとしてんの?」……ッチ」
「この人の隣には私が座るんだけど。あんたは向かいの方に座りなさいよ」
「は?そっちこそ勝手に決めないで。隣に座るのはあたしよ」
「は~?声かけたの私なんだから私が座るに決まってんでしょ?」
「いや、あの……け、喧嘩しないで<ガシッ!>あの、なんで俺の手を掴むんですか?」
「「「誰が隣に座って欲しいですか!?」」」
「いだだだだだだ!?言いながら俺の手を引っ張らないで!というか誰でもいいですよ!」
相席を頼んできたウマ娘達の友情を崩壊させそうになったり。
いざ服を見るぞ!ってなったら。
「あの、すいません!娘を見なかったでしょうか!?」
「娘さん?見てないですけど……もしかして迷子ですか?」
「はい、アミューズメント広場で少し目を離した隙にいなくなってしまって……!」
「成程、分かりました!俺も手伝います!」
「あぁ、ありがとうございます……!」
迷子を捜している親御さんに遭遇してお子さんを一緒に探し回ったり。お子さんはちゃんと見つかった。
とまぁ色んなことがあって疲労困憊というわけだ……なんで服見る前からこんなことなってんだよ俺は。
「と、とにかく!これでようやく服を見れるぞ!とりあえずは寝間着「寝間着をお探しでしょうか!?」うわぁ!?ビックリした!」
服屋の前に来たら爆速で店員が来たんだが。しかし寝間着素人なのでこれはありがたいところ。
「はい。今までTシャツ短パンで過ごしてたんですけど、寝間着にすると睡眠の質が上がるとかで。なので寝間着を探してみようかなって」
「Tシャツ短パン?……そのスタイルで?」
店員さんの信じがたいものを見るかのような目つき。だが事実なんだなコレが。
「はい。なにかいけなかったでしょうか?」
「い、いえ!何も!では、早速ご案内しますね!」
店員さんの反応は気になるが案内してくれるとのことなので着いて行く。その間に色々と聞かれた。
「なにかご要望などはありますか?こんな寝間着が良いとか」
「う~ん……ぶっちゃけ着替えるのが楽な格好だとありがたいです。あんまり着替えるのが面倒くさいのだとまたTシャツ短パンに戻りそうなので」
「あ~それは確かにあるかもしれませんね。ですがご安心を!実はですね~」
言いながら店員さんは嬉々として説明を始める。
「パジャマ用のTシャツというのもあるんですよ。こちらは従来のTシャツと同じように着替えることができるので、お客様にピッタリかと思われます!」
「へ~、そんな服が」
初耳だ。やっぱり材質とか違うんだろうか?
「お客様は材質に拘りなどは?」
「別にないです。着られればなんでも」
「成程成程。サイズはいかがなさいましょうか?」
「できるだけ大きめのを。前に使ってたTシャツはプリントされてた猫が凄いことになったので」
「あ~……はい。そういうことですね」
胸をチラチラ見る店員さん。はい、そういうことです。
「色の指定などはありますか?赤とか青とか」
「あんまり拘りはないですね。強いて言うなら白?」
「ほうほう。でしたら……」
店員さんが服を見繕ってくれる。こういう時は本当にありがたいよな店員さん。
「こちらなんていかがでしょう!寝間着に使えるTシャツですよ!」
「へ~……あ、確かに肌触りが全然違うな」
「そうでしょうそうでしょう!後はこちらなんかも……」
そのまま店員さんに色々とアドバイスしてもらって。無事に買うことができた。
「ふ~、オススメされたものを結構買ったな。ただ、これで俺の睡眠の質が上がるぞ!」
実際のとこどうなのかは知らんが。でもこのTシャツだとよく眠れそう……な気がする!
「さ~て、帰る前に本でも見て帰るか」
……なお立ち寄った本屋さんで万引き現場に遭遇し、犯人を捕まえることになったのはここだけの話。ちなみに良い本はなかった。ちくせう。
「じゃじゃ~ん!どうよプボちゃん、おニューの寝間着!」
「お~!……あんまり変わらなくない?Tシャツじゃん」
ふふん、そうは言うがなプボちゃん!
「なんとこれ、寝間着用のTシャツらしい!材質とか結構違うんだぜ?」
「へ~……あ、本当だ。肌触りが寝間着に似てる。でも下は変わらないんだね……」
短パンはこれが合ってるから別にいい。ぶっちゃけ普通に買い忘れただけだけど。
「それにしても……ダボっとしてるからか太って見えるね。今までおへそが見えてたから余計に」
「確かにな。ま、仕方ねぇだろ」
どうしても胸に突っかかってしまうし。ここはもう気にしても仕方ない。シャツインはちょっと窮屈だし。
そんな中聞こえる、なにかを落としたような音。おい、今ガシャン!って鳴ったぞ。誰かドライヤーでも落としたんじゃないだろうな?
「そ、そんな……!」
視線の先にはわなわなと震えているジェネ先輩の姿が。な、何かあったのか!?
「どうしたんですかジェネ先輩!そんな信じられないようなものを見るような目をして!」
「ヴ、ヴァーディが……ヴァーディが……!」
「俺?俺がどうかしたんですか!?」
知らんうちに何かやってしまったか!?隠れてトレーニングなんかしてねぇ「ヴァーディのおへそがぁぁぁぁ!」……心配して損したわ。
「そんな、ヴァーディ!わたしに黙ってイメチェンだなんて……!」
「寝間着ぐらいでイメチェンとかになります?」
「ヴァーディのおへそはどこにいったの!?」
「寝間着で隠れて見えないだけでちゃんとありますよ」
「もうあのヴァーディは見れないんだね……およよ」
そんな残念がらんでも。「でも!」うわ、急に復活するじゃん。
「わたしには秘蔵のヴァーディフォルダがあるもんね!ヴァーディの前の寝間着はウマホにバッチリと保存済み!」
「あ~、そう言えばなんか撮ってましたね」
別に困るようなもんでもないから許可したけど。
「ふふ~ん!これでアイさんやアレグリアも拝めないような恰好をわたしは拝んでるわけだからね!同じ寮で万々歳!」
「あの2人美浦寮ですもんね」
「ものすごく悔しがってそうだね、2人とも」
実際プボちゃんの言う通りで、あの2人は凄く悔しがってそうだ……悲しいけど予測できるのがな。
「あら、装いを変えたのねヴァーディ」
「あ、ドンナ先輩」
改めて凄いスタイルだよなドンナ姉さん。ドンナ姉さんは俺の格好をまじまじと見た後微笑んだ。
「素敵な装いね、あなたにとてもよく似合っているわ」
「あ、ありがとうございます」
「それじゃ、身体に気をつけて寝るのよ。ディープボンドも、クロノジェネシスもね」
「「は、はい!」」
ドンナ姉さんはそのまま大浴場へ。今から入るらしい。俺達はもう上がった後だけど。
「それじゃ、部屋に戻るかプボちゃん」
「そうだね、ヴァーディ君」
「じゃあねヴァーディ!また学園で!」
色々とあったものの、充実した休日を過ごせた。
Tシャツからちゃんとした寝間着に!というか睡眠専用のTシャツなるものもあるんですね。