毎日王冠
| 枠順 | 番号 | ウマ娘名 | 人気 |
1 | 1 | コントラチェック | 8 |
2 | 2 | ワンダープチュック | 11 |
3 | 3 | アイスストーム | 10 |
4 | 4 | ザダル | 4 |
5 | 5 | ダイワキャグニー | 5 |
5 | 6 | トーラスジェミニ | 9 |
6 | 7 | サンレイポケット | 6 |
6 | 8 | サトノインプレッサ | 3 |
7 | 9 | サリオス | 1 |
7 | 10 | カデナ | 7 |
8 | 11 | カイザーメランジェ | 12 |
8 | 12 | ヴァーディクトデイ | 2 |
《空はあいにくの曇り模様。バ場の状態は稍重と発表されています。東京レース場芝1800m毎日王冠はまもなく発走となります!各ウマ娘達はウォーミングアップを済ませている。このレースで注目されている2人のウマ娘はともにクラシック級!果たしてどのようなレースを見せてくれるのでしょうか?》
《1番人気のサリオスは皐月賞で3着、ダービーではコントレイルに力を見せつけられたものの2着に入り込んだサリオス。2番人気は皐月賞以来の出走となるウマ娘ヴァーディクトデイです。そして3番人気は同じくクラシック級のサトノインプレッサ。なんと上位3位はクラシック級ウマ娘で固まっていますね。世代の強さを物語っているようです》
《皐月賞の激走で疲労を見せたヴァーディクトデイ!この毎日王冠でいよいよの復帰です!復帰後初戦でどこまでいけるのか?そしてサリオスとヴァーディクトデイそしてサトノインプレッサ、3人のウマ娘はシニア級の猛者達相手にどこまでいけるのか!人気に応えることはできるのか!》
3番人気までをクラシック級ウマ娘が独占した毎日王冠。
そんな中、皐月賞以来の復帰戦となるヴァーディクトデイはサリオスと話していた。
「久しぶりじゃないか!我が友、ヴァーディクトデイよ!」
大仰に話すサリオスに、ヴァーディクトデイは平然とした様子で構える。
「おう、久しぶり。ようやく復帰だぜ全くよ」
瞬間、ヴァーディクトデイの圧が増す。サリオスは一瞬気圧されそうになっていた。
「だが、勝つのは
ヴァーディクトデイの挑発的な言葉。サリオスも気圧されたものの、負けじと返す。
「ふふ、それでこそ我が友だ!だがしかし、勝つのはこのサリオスだとも!」
2人の会話はここまで。お互いにウォーミングアップを済ませる。
そして、ゲート入りの時間がやってきた。
《各ウマ娘が続々とゲートに入っていきます。3番人気のサトノインプレッサは6枠8番、2番人気ヴァーディクトデイは大外枠8枠12番、1番人気サリオスは7枠9番!上位人気3人は外枠に固まっております!これが一体どう響くのか?そして今大外枠のヴァーディクトデイがゲートに収まりました》
レース場の静寂を切り裂くように、ゲートが開く音が響き渡る。それと同時に、ウマ娘達は一斉にゲートから飛び出した。
《そして今、ッスタートしました!毎日王冠がスタートしました、っとこれは?サトノインプレッサが立ち遅れたか。大外枠のヴァーディクトデイも少し出遅れました。サトノインプレッサとヴァーディクトデイが出遅れ、他は綺麗なスタートを切ります》
《ヴァーディクトデイは最後方に控える形を取りますからこれも想定内、むしろわざとの可能性もあり得ます。サトノインプレッサも後方からの展開を得意としていますので問題ではないでしょう》
《さぁ注目の先行争いとなります。最初に抜け出すのはどのウマ娘か?抜け出したのは6番トーラスジェミニ、トーラスジェミニがリードを取ります先頭!2番手は1バ身差内から接近1番のコントラチェックです。3番手の位置にはダイワキャグニー、その後ろ4番手の位置にサリオスがつけています!》
ハナを切ったのはトーラスジェミニ。トーラスジェミニから1バ身の差がついて2番手コントラチェック、ダイワキャグニーと続く。ダイワキャグニーから3バ身程離れてサリオスが追走。
向こう正面。隊列は縦に長くなっている。そんな中ヴァーディクトデイは最後方に控えていた。
ただ前だけをじっと見据え、前にいるカイザーメランジェから2バ身離れた位置をキープ。第3コーナーへと入っていく。
《立ち遅れたサトノインプレッサは後方から3人目。サトノインプレッサから4バ身離れた位置にカイザーメランジェがつけて、そのカイザーメランジェのさらに後ろ!2バ身の位置にヴァーディクトデイがつけています》
《彼女の末脚はどこであっても届きますからね。皐月賞の衝撃の末脚から約半年、果たしてどういったレースを見せてくれるのか?》
《第3コーナーを抜けて第4コーナーに向かいます。先頭はトーラスジェミニ!トーラスジェミニが快調に飛ばしますリードは3バ身!2番手はコントラチェック、コントラチェックから3番手ダイワキャグニーは5バ身は開いているでしょうか?3番手ダイワキャグニー!》
《サリオスは良い位置につけていますね!そのサリオスの後ろ、サンレイポケットも徐々に上がってきてますよ》
逃げるトーラスジェミニを追うウマ娘達。サリオスは前から4番手の位置をキープし続け、いつでも抜け出せるようにと虎視眈々と前を狙っていた。
最初の1000mを通過する。1000mの通過タイムは57秒9だ。
第4コーナーへ入る。毎日王冠に出走しているウマ娘達は、外を警戒するように動き始めた。
外を警戒する理由は1つ、現在最後方に控えているであろうヴァーディクトデイの存在。
ヴァーディクトデイは全てのレースを大外からの追い込みで勝ってきていた。彼女の末脚はこのレースに出走しているウマ娘の中でもトップレベル。だからこそ、彼女達は外を警戒する。
《外を警戒するように動き始める隊列。ヴァーディクトデイは、進出を開始する!ヴァーディクトデイがじわりじわりと上がってきているぞ!》
《外はかなり警戒されていますね。しかしそれも当然でしょう》
《これまで全てのレースを大外からの追い込みで勝利してきたヴァーディクトデイ!だがそれは同時に警戒されるということ!第4コーナーのカーブ、隊列は縮まってきました!サンレイポケットの後ろ5番手ザダルが上がってきました!残り600を切ります!最後の直線へと向きます!》
最後の直線で先頭に入ったのは序盤から逃げていたトーラスジェミニ。しかしその差は1バ身と心もとない。
トーラスジェミニは逃げるが、後続との差は縮まるばかりだ。
残り400m。400を越えた瞬間、ウマ娘達は総毛立つ。
「ッ!?な、なに!?」
「こ、この感じは……っ!」
全員が、思わず外を見る。彼女達の視界に映ったのは……大外から凄まじい勢いで上がってくるヴァーディクトデイの姿だった。
全員が驚愕する。
ビデオでチェックはしていた。どれだけの速さかなんて分かっていた。
だが、全員の心が一致する。
(ここまで速いなんて聞いてない!?)
外を警戒したところで無意味とばかりに追い抜いていく。冷酷に、ただ無慈悲に撃ち落とされていく。
ただ1人、サリオスを除いては。
「ハハハッ!やはり上がってくるか!我が友、ヴァーディクトデイよ!」
サリオスは織り込み済みだった。ヴァーディクトデイの速さがさらに上がっていることも。どれだけ外を警戒しても上がってくるということを。
だからこそ、先んじてサリオスは動いていた。坂をものともせずに上がってくるヴァーディクトデイとの差を十分なものにするために、自分が逃げ切れるように。サリオスは早めに仕掛けていた。
《東京レース場の坂を上るウマ娘達!さぁここでヴァーディクトデイが爆発的な加速を見せる!
《ヴァーディクトデイが上がってくることを予期して早めに仕掛けていましたね!これはサリオスがっ!?》
残り200を切ってサリオスが先頭を向く。
サリオスは、ここから粘るだけだ。そして、自分の脚ならば粘れる。そう、思っていた。
だがヴァーディクトデイは、サリオスの想像のさらに上を行く。
「ッ、な、んだ?なにかが、
サリオスは聞いた。パァン!と、なにかが破裂するような音が。
思わず後ろを振り向く。ヴァーディクトデイは──すぐそこまで迫ってきていた。
サリオスは偶然彼女の瞳を見た。ヴァーディクトデイの目は濁りきっており、こちらを見ているようで見ていない。見えないナニカを追いかけている。そんなおぞましさを感じた。
「抜かせ、る、かぁぁぁ!」
サリオスも懸命に粘る、が。ヴァーディクトデイはサリオスさえも瞬く間に躱し、一気に先頭に躍り出る。
《残り100を切って先頭はヴァーディクトデイだ!ヴァーディクトデイ突き抜けた突き抜けた!久々の復帰戦でもその末脚は炸裂する!》
《疲労明けで心配されていましたが、これはもう決まりですね!》
ヴァーディクトデイの勢いは衰えず。彼女の身体は誰よりも早く毎日王冠のゴール板を翔け抜けた。
《ヴァーディクトデイが差を広げる!ヴァーディクトデイ、ヴァーディクトデイだ!毎日王冠を制したのはヴァーディクトデイだぁぁぁぁ!久々のレースでもまるで問題なし!2着は1バ身差サリオス!懸命に粘りましたがヴァーディクトデイの2着です!》
《ヴァーディクトデイの末脚を織り込んで早めに仕掛けましたが、ヴァーディクトデイが想像の上をいきましたね。しかしサリオスも大健闘でした!》
《ヴァーディクトデイは次走を秋の天皇賞と決めています!果たして秋の天皇賞ではどのようなレースを見せてくれるのか?非常に楽しみです!》
続々とゴールするウマ娘達。
息を整える者、負けた悔しさをこらえる者、反省点を探す者……様々な反応を見せていた。
そんな中サリオスは、俯いて呼吸を整えているであろうヴァーディクトデイをジッと見つめる。
「我が友よ……」
サリオスがヴァーディクトデイを見つめる目は、悲しみを帯びていた。サリオスの胸中は、穏やかではない。
「君は、なにを見ているんだ?」
あれほどの目をするのは普通ではない。おぞましいという感情を抱いたが、それと同時にヴァーディクトデイに対する哀れみのような感情を抱いた。
不思議な感情。だがサリオスはその感情を振り払い、ヴァーディクトデイへと近づく。
「ふぅ、負けてしまったか」
ヴァーディクトデイは俯いたまま。だがサリオスは気にせずに言葉を続ける。
「だが!次は負けないとも!次もまた良いレースにしよう、ヴァーディよ!」
ヴァーディクトデイはしばらく俯いたまま──顔を上げて、
「へへん、俺の勝ちだな!次も俺が勝つぜサリオス!」
先程の濁りきった瞳がサリオスの脳裏にフラッシュバックする。
だが、それを表に出すことはなく。サリオスも笑みで答え。
「同じようにはいかないさ!次戦う時が楽しみだよ!アーッハッハッハ!」
お互いに固い握手を交わした。
ついでに。
「あぁ……!やっぱり素晴らしいお方!あの冷たい目も素敵ッ!」
「へっ?」
「むっ?」
ゼッケン1番のコントラチェックがヴァーディクトデイを熱っぽい視線で見つめる。彼女の体操服は、
「ヴァーディクトデイさん!是非とも私とも握手を!」
「え?あ、あぁ……はい。これで良いですか?」
戸惑いつつもヴァーディクトデイはコントラチェックに手を伸ばし、彼女と握手を交わす。
コントラチェックは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「私!この手はもう洗いません!」
「いや、洗った方がいいと思いますよ?」
困惑しながら至極冷静に返すヴァーディクトデイ。そんなヴァーディクトデイをサリオスは笑いながら見ている。
「アッハッハ!相変わらず好かれているなヴァーディよ!」
「おう、今すぐにでも代わってやろうか?」
笑うサリオスをジトーっとした目で見るヴァーディクトデイ。サリオスはどこ吹く風である。
「ま、まぁ。これで済んだだけマシか」
ヴァーディクトデイはそう呟いて。毎日王冠は終わりを迎えた。
レース後の控室。ライブの準備をしながら身体の調子を確かめる。
脚……問題なし。疲労……ちょっとはあるけど、まぁ予想の範囲内。秋の天皇賞までの調整……問題なしだ。
「ここまででやれる幅は増えた。だからこそ、後は2つ目のリミッター……か」
そこに至ることができれば、俺は。
とにかく、毎日王冠を勝った。次は秋の天皇賞。あのアイ先輩との対決だ。
誰が相手だろうと関係ねぇ。
「勝つ。絶対にな」
そう決意を新たにして、ウイニングライブへと向かった。
毎日王冠は無事勝利。ちゃっかり前世よりも着差開いてる。