飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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事の経緯的な。


理由と対策

 発端はアレグリアの一言。

 

「ヴァーディのこともっと知りたい!」

「急にどうしたのですか?アレグリア」

 

 机をバンッ!と叩いて立ち上がるアレグリア。

 それを不思議そうに見るラヴズ──ラヴズオンリーユー。

 ぶっちゃけいつものこと。だから適当にあしらうわたしとラヴズ。

 

「そうですか……それは愛、ですね!」

 

 訂正。ラヴズは毎回生き生きしている。

 

「そう!愛なんだよラヴ!」

 

 アレグリアもそれに乗っかる。大体収集がつかないからわたしが諫める。

 いつもこんな感じだけど不思議と悪い気分じゃない。むしろいつも楽しんでる。

 

「それで?今回はなにが発端なの?アレグリア」

 

 とりあえず話を聞いてみることに。

 アレグリアはいつもヴァーディを知りたい!って言うけど大体理由がある。

 ストイックさの理由とか、使っているシャンプーとか化粧品とか。大体わたしが答える。

 だってわたしとヴァーディは同じ寮だからね!それに、ヴァーディっておしゃれをサボりがちだからわたしがやっているのだ!むっふっふ、役得役得~。

 でも今回はそういうのとはちょっと違う?アレグリアは柄にもなく神妙な顔してる。

 

「実はさ……今回はレース中のヴァーディのことなんだよね」

「レース中の」

「ヴァーディクトデイさん、ですか?」

 

 レース中のヴァーディ、か。

 確かに気にはなる。いくら勝負に真剣だからと言って、別人レベルで変わるものだろうか?二重人格って言われても納得しちゃうよ。

 

「ねーねージェネ。なんか分からない?」

「う~ん……ゴメン、さすがにわたしにも分からないかな。ヴァーディそのことについて聞くといっつもはぐらかすから」

「クロノが分からないのであれば、わたくしに分かるはずもありません……と、言いたいところですが」

 

 ふっふっふ、と笑っているラヴズ。

 

「心当たり、のようなものはあります」

 

 も、もしかして……!ラヴズは知ってるの!?

 

(ヴァーディ、いつの間に毒牙にかかっちゃったの!?)

 

 わたしは知らないのにラヴズは知ってる!?そんなの凄いもやもやする~!

 というか、2人はいつの間に会っていたの!?ラヴズに会う前にわたしに相談して欲しかった!

 

「あれ?ラヴはヴァーディと面識あったっけ?」

「いえ、ありませんよ」

 

 あ、面識ないんだ。

 それにしても心当たりがあるのはちょっと気になるかも。

 

「それってどんなの?ラヴズ」

「そうですね……」

 

 ラヴズは得意げに語り始める。

 

「まず、お2人から聞く限りヴァーディクトデイさんはナニカ、を追いかけているのだとか」

「あ~、そうだね。そんなこと言ってたねボク達」

 

 待って、なんて言うか大体予想出来てきたんだけど。

 わたしが制止する前に、ラヴズは意気揚々と続けた。

 

「我々には見えないナニカを追っている……そこにあるのは、愛ッ!なのではないでしょうか!?」

 

 うん、そんな気はしてたよ。

 隣を見るとアレグリアも同じような表情してた。でもラヴズはわたし達とは違って楽しそうにしている。

 

「レースの度にそのナニカを追いかけている……おそらくそれはウマ娘!ならば!そこにあるのは間違いなく愛と言えるのではないでしょうか!?」

「そうかな?」

「きっとそうです!」

 

 楽しそうなラヴズ。微妙なわたしとアレグリア。多分、このテーブルの光景を見ている人達はラヴズの暴走だと思ってんだろうな~。

 それにしても愛、か。

 

(ヴァーディが見ているナニカ……ちょっと気になるよね)

 

 でもヴァーディは教えてくれないし……どうしたらいいんだろう~!?

 頭を抱えるしかない。だってヴァーディはこのことについては絶対に教えてくれないし。

 何か良い方法ないかな~……

 

「でもさ~、そのナニカを知ることができないんだよね~。ヴァーディ教えてくれないし」

「そうなのですか?では、わたくしに妙案がありますが」

「「何!?」」

 

 まさかそんな妙案が!?

 ワクワクしながら待つわたしとアレグリア。さぁ、ラヴズの妙案とは!?

 

「レースに勝ったら教えてくれ、というのはいかがでしょうか?」

「「あ~……」」

 

 単純すぎて一周回って考えつかなった案だね、それ。

 

「どうでしょうか?それほど悪くない提案だと思いますが」

「うん。単純すぎて考えつかなったよ。よくよく考えればそうすればいいじゃん」

「それこそクロノは今度有マで一緒に走りますし、チャンスはあると思いますが」

 

 確かにそうだ。

 今度の有マ記念はわたしもヴァーディも出走する。ラヴズもだ。

 なら、丁度いい機会……なのかな?

 

(話してみる価値はありそう!)

 

 そうと決まれば善は急げ!

 

「わたし、早速ヴァーディに聞いてみるよ!」

「うん、いってらっしゃ~い!ボクの分までよろしくね~!」

「それにしてもヴァーディクトデイさん、ですか。一度会ってみたいですね……果たして、どのような愛を持っているのでしょうか?」

 

 ラヴズ達の言葉を聞きながらわたしはヴァーディを探しに!

 その後無事にヴァーディを見つけたから約束を取り付ける。

 今度の有マ記念。わたしが勝ったらヴァーディがはぐらかしていることについて教えてもらう。わたしが負けたらヴァーディの言うことを何でも聞く。

 

(よ~し、有マ記念頑張るぞ!)

 

 これはヴァーディのことを知りたいってのもあるけど……一番は違う。

 一番は、グランプリ女王としてだ。新・グランプリ女王として負けるわけにはいかない。

 秋天ではヴァーディに負けてしまった。でも、次こそは!

 そのためにも

 

(ヴァーディのこと、しっかりと研究しないと!)

 

 わたしは勇み足で教室へと戻り、先に戻っていたアレグリアとラヴズに成功の報告をする。

 

「よ~し、頑張れジェネ!吉報を期待してる!」

「わたくしも負けませんよ、クロノさん」

 

 授業を受けながらも、有マの対策について考えていた。

 

 

 そして放課後。ひとまず授業中に出したヴァーディ対策をまとめる。

 

(ヴァーディ最大の武器は直線での末脚。最後の直線を向いてのよーいドンになったらほぼ勝ち確)

 

 秋天で見せた末脚は驚異の31秒台。東京レース場では初の記録だ。

 トレーナーさんに秋天のタイムを見せてもらったけど、上がり3ハロンはずっと加速し続けていた。

 反面、弱点として最後方からレースを展開するという都合上捲りという形になる。そして有マが開催される中山レース場は……捲りが決まりにくいコースだ。

 勿論決まりにくいというだけで決まらないわけじゃない。ヴァーディの皐月賞を見ると、中山が苦手ということは決してない。

 

(ただ得意というわけでもない……やっぱりヴァーディとしては、最後の直線が長い方が力を発揮しやすい)

 

 後方待機だからどうしても展開に左右される。これがヴァーディに勝つために念頭に置いておくことだろう。

 じゃあどうするべきか?やれることはたくさんある。

 

「まずスローペースを作ること……でもわたしは逃げじゃないしな~」

 

 でもやれることはある。やれること全部尽くさないと!

 

「もしくは後方で控えてヴァーディと進出?いや、それ普通に負けるし……なら、早めに抜け出して差を広げる……うん、これだ!」

 

 あーでもないこーでもないと試行錯誤をして、自分の中の最適解を見つける。

 その最適解を見つけたら今度はそれに向けてのトレーニング。

 

「よし、クロノの要望通りのトレーニングだよ」

「ありがとうトレーナーさん!」

 

 長く使える脚を作るためのトレーニング。期間は短いけど、やれることはやる!

 どこで仕掛けるか、どれだけ差をつけていればヴァーディに勝てるか?それら全てを予測する。

 

「最後の直線で10バ身は離せば勝てるかな?でも油断はできない……どこからでも差し切ってくるのがヴァーディだから」

 

 そうしているうちにファン投票の結果が発表。わたしは──ファン投票1位だった。

 ヴァーディはファン投票4位。これまでも評価はされていたけど、定まったのは秋天での勝利。アイさんに勝ったというのが一番大きかったみたい。

 

「これでレースに出れるぜー!」

 

 って本人は凄く喜んでたな~。ちょっと微笑ましかった。

 ヴァーディも有マに出走するからか凄く気合が入っている。わたしも、負けていられない!

 出走してくるメンバーが固まる。その中にはラヴズもいたし、ライラックさんもいた。

 メンバーの対策。そこから考えられる展開をトレーナーさんから教えてもらう。ヴァーディも隣で聞いていた。

 

「NIKKEI賞とセントライト記念を勝ったバビット。この子がペースメーカーになるだろうね。後気をつけるべき相手として……」

 

 トレーニングを重ねる。ヴァーディの対策を練る。

 

(トレーナーさんとしても、片方に肩入れなんてことはしない)

 

 わたしにもヴァーディにも、不平等にならないように指示をしている。

 わたしの弱点もヴァーディは知ってるだろうし、ヴァーディの弱点もわたしは知っている。

 ただ、どうしようもない不確定要素……ヴァーディのレース勘だけは対策の取りようがない。

 

(やっぱり秋天でのことがチラついちゃう。今まで大外一辺倒だったヴァーディが見せた、バ群の中央突破……あれが脳裏にチラついちゃう)

 

 あんなのは一度きりだ、なんて言えない。というか、その一度が重要だと思う。

 ヴァーディの末脚で、大外からじゃなくても使えるというのが大事。

 たった一回、たった一回見せるだけでもいいのだ。そしたら、嫌でも警戒せざるを得なくなる。

 

「きっと他の子達も警戒するはず……だから抜け出しは少し容易になる」

 

 わたしの準備は着々と進む。

 グランプリ女王としての意地は勿論のこと、1人のウマ娘としてレースに勝ちたい。

 ヴァーディというウマ娘を理解したい。そして……ヴァーディの苦しみを分かりたい。

 

(ヴァーディが辛そうに走っているように見える原因……その原因は、きっとヴァーディが追いかけているナニカにある)

 

 それを知ることができたらあるいは……頬を叩いて気合を入れる。

 体調に気をつける。ヴァーディも、宝塚記念の時のようなことにならないように細心の注意を払っていた。

 

 

 そして──有マ記念当日を迎える。




ヴァーディは有マ記念に。適性は如何程?
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