バティスタを捕獲した後すぐに爺やさんに連絡。留学した時に連絡先は交換済みであるためすぐに連絡がついた。
そしてしばらく待っていると、爺やさん達が来た。その中にはベルの姿もある。
「『ありがとうございます、ヴァーディクトデイ様。バティスタ様を保護してくださり』」
「『ヴァーディお姉さま……お久しぶりでございます!』」
「『気にしないでくれ爺やさん。たまたま見かけたからな。ベルも久しぶり』」
ベルは嬉しそうな表情。そんな嬉しそうな顔されるとこっちも嬉しくなるな。今俺に首根っこ掴まれている阿呆も見習ってほしいもんだ。コイツ俺を見るなり顔を青ざめさせてたし。
バティスタは拗ねている。ようやく爺やさん達の監視の目から逃れて好き放題できる!って時に俺に見つかったのだから当たり前か。
「『くっそ~、コイツに見つかるなんて……!しかーし!わたしちゃんは諦めないもんね!』」
どうやらまだ諦めていないらしい。ちょっと釘を刺しとくか。
「『バティ。お前が何を考えているかは敢えて聞かんが……
「ッ!?」
すっげぇ身体が震えてんな。ま、怒ったエネさんは俺の何倍も怖いだろうし当然か。なまじ普段が優しい分余計に、だ。
そんなバティの様子を見ていると、ベルが覚悟を決めた表情で俺にお願いをしてきた。
「『あ、あの!ヴァーディお姉さま!もしよろしければ、一緒に感謝祭を見て回っていただけないでしょうか!?』」
感謝祭を見て回る、か。チラリとラーシーへと視線を向ける。視線に気づいたラーシーは快く許可してくれた。
「いいぞ。アタシは問題ねー。どうせ暇だしな」
「ま、そういうことなら……『いいぞ。じゃあ一緒に見て回ろうか、ベル』」
「ッ!『や、やったっ!』」
う~ん嬉しそうな表情。本当に素直で可愛い子だ。首根っこ掴まれているコイツとは大違いである。ま、こっちもこっちで可愛げがあるが。
そんなわけで、俺とラーシーはベル達と見て回ることになった。
「……大所帯だなおい」
「使用人さんやSPの人達もいるからな……すげぇ人数だぜ」
「大名行列みてーだな」
かなりの大所帯のせいで、嫌でも目立つことになってしまったが。
◇
その後俺達はベル達を色んなとこを見て回っていたわけだが。
「『あ!面白そうな出し物はっけ~ん!』」
「あ!『待ちやがれバティ!』」
バティが俺の拘束を抜け出して出し物のとこに向かいやがった!急いで追いかけるとそこにあったのは……レースか?コレ。
「何々?……ふむ、模擬レース形式のイベントか」
「参加資格はトレセン学園外のウマ娘限定。入学前の子供をターゲットにしたヤツだな」
ラーシーの言う通り、子供を対象にした模擬レース形式のイベントをやっているらしい。バティはこれに興味津々だ。
別に走るだけだし、何もする気はなさそうっぽいからいいか……目をキラッキラさせているし。さすがになんでもかんでもダメというほど束縛する気はない。
「『いいぞ、バティ。手続きはやっとくから準備しとけ』」
「『ふふ~ん!わたしちゃんのために働くとはいい心がけだ!』」
はっ倒すぞテメェ。
手続きを済ませてやって、バティはレースに出走するために並んでいる。
「ふ~ん……中々なイベントじゃね?結構有望そうな子もいるじゃねーか」
「そうだな。こういう時に将来有望な子を見つけるってことでもあるんだろ」
良い走りをする子もチラホラいた。将来は中央に入るのだろうか?ちょっと楽しみである。
しばらく待って、ついにバティスタの出番がやってきた。
《それでは次のレースに参加する子達は用意をお願いします!》
アイツの調子は……うん、相変わらずの不敵な表情だ。自信に満ち溢れた、小生意気な表情。自分が負けるとは微塵も思っていない、強者の余裕。
ドヤ顔しているアイツを見ていると、隣にいるラーシーがこっちに耳打ちしてきた。
「実際さ、あのバティスタって子はつえーのか?」
「どうした?急に」
「いやさ、あんだけ自信満々な訳だし、要人なんだろ?こんだけSPがいるわけだから」
「ま~確かにな」
ラーシーの疑問はもっとも。バティとベルは多くの使用人とSPを引き連れていた。要人であると誰もが思うだろう。要人ならばあまりレースをしたことがないのではないか?そう思ってしまうのも不思議ではない。
その上で回答するなら……バティスタは強い。それも圧倒的に。
「
ラーシーの驚いた表情。そしてレースが始まった。
バティはというと、スタートでちょっと出遅れていた。あんまりスタートは上手くねぇのなアイツ。
隣からはベルの溜息。
「『ベルは不幸。これで……
ま、だろうな。ベルは関係者だし、この後のことを考えたら気が滅入るか。
さて、レースを見ると……バティスタが先頭に変わっていた。アイツはというとま~速い。これまで出走してきた子の中では一番ってレベルだ。
「アッハッハ!『わたしちゃんにひれ伏せ~!』」
バティの速さは圧倒的。誰もバティスタに追いつけない。みんな必死に走っているが、バティの表情にはまだまだ余裕が見られる。うん、やっぱつえーわアイツ。
「おい!誰だあの子!?」
「凄く速いわ!他の子も遅くはないけど……それでもあの子がダントツね!」
「あの子、門のところでメイドさん達連れてた子じゃね?海外の子」
「あ、本当だ!まさかあんなに速いなんて……」
その後バティは誰も寄せつけずにゴールイン。周りからは拍手が沸き起こっていた。
「『そうだそうだ!わたしちゃんを褒め称えるといいぞよ~!』」
わっかりやすいくらいに調子乗ってんな。まぁ、自国とは違う芝で日本のウマ娘を完封したわけだから調子乗っても許される気はするが。
バティに負けた子達は、ちょっと自信を失っているな。あれだけの強さを見せつけられたら無理もないかもしれん。
そんな子達のところに、バティは向かっていた。なにをする気だ?アイツ。
「『お前達!』」
指をビシィ!と突きつけた。
「『
「え、え~っと……」
多分、なんて言ってるのか分からないんだろうな。英語だし。ちょっとアイツのところに行ってやるか。
「『ま、この負けをかてにして頑張ることだな!お前達は強かった!このわたしちゃんがほしょーしてやる!これからも頑張ることだ!』ワーッハッハッハ!」
「『だから言葉が通じてねぇって言ってるだろバティ』。あ~、君達は強かったってこの子は言ってるんだ。これからも頑張ってくれって。悪口を言ってるわけじゃないから安心してくれ」
「「「は、はぁ……」」
困惑している子達をよそに俺とバティは引き上げる。バティは駄々をこねていたが知らん。さっさと連れ戻す。
「あ、あの!」
ただ、大きな声で呼び止められて思わず振り返った。そこに立っていたのは──
(前世の産駒とか、その辺か?)
そう思っていると、その子は勇気を振り絞るように言った。
「わ、わたしはクロノパラドックス!もしよろしければ、また一緒に走ってくれますか!?」
それはバティと一緒にまた走ろうというもの。だが、バティにはなんて言ってるのか分からない様子。
「『おいなんて言ってるんだ?さっさと教えろ』」
「『お前それが人にものを頼む態度かよ……また一緒に走ろうだとよ』」
その言葉を翻訳して教えてやると、バティは目を輝かせた。
「『勿論だ!また一緒に走ろう!』」
「また一緒に走ろうだってさ」
「っ!は、はい!」
今度こそ本当に別れる。うんうん、友情が芽生えたな……てか。
(クロノパラドックスってことは、あの子か~……)
やっぱりそういう繫がりか、と思いながらベル達の元に戻っていった。後は囲まれる前に退散するだけである。
今はバティのレースも終わって、褒美としてコイツに屋台のご飯を奢ってやった。ベル達とはちょっとの間別行動だ。
「『おいし~!やはり日本の料理は最高だな!』」
「『はいはい、零さないように気をつけろよ?』」
分かってる!と答えるバティ。それにしてもコイツのレースを見ていたが……あれだな。
(やっぱ自信にあふれてるよな、コイツ)
「どこからそんな自信が湧き出てくるんだか」
「ん?『なんだ、この焼きそばならやらないぞ!』」
焼きそばを隠すバティ。取らねーよ。
「『お前のレースはいつも自信にあふれてるな、って思っただけだよ』」
「『なんだそんなことか。とーぜんだ!わたしちゃんは最強だからな!』」
その自信はどこから来るんだか本当に。
「『それに小難しく考えるよりもそう考えて走った方が良いからな!』」
「……?『どういうこったよ?』」
「『簡単な話だ!小難しく考えるのなんて性に合わない!わたしちゃんが最強という事実は変わらないんだから、わたしちゃんはわたしちゃんらしく走ればいい!そーした方が強いんだ!』」
……考えないで走った方が強いから、自分らしく走ればいい、か。
「『それに、あれこれ考えて自分の走りを見失うなんてバカのやることだ!そうなるくらいだったら、周りからなんと言われよーとわたしちゃんはわたしちゃんの走りを貫く!それがわたしちゃん流の走り方だ!』」
めっちゃ割り切ってんなぁ、コイツ。……でも、それがコイツに合ってるんだろうな。
バティの頭に手を置いて撫でてやる。
「……『ま、お前はそのままでいいんじゃねぇの?とにかく、今日のレースは頑張ったな、お疲れさん』」
「ッ!?」
瞬間、凄い勢いでバティは飛びのいた。おい、なんだその反応は。さすがに傷つくぞ?
バティは自分の身体を抱きしめて震えて……そんな嫌かおい!?
「だ、『誰だお前!?お前本当にあのヴァーディか!?』」
「『本物だよ!何疑ってんだテメェ!』」
「『そんな訳あるか!わたしちゃんの知っているヴァーディは厳しくてわたしちゃんに意地悪でわたしちゃんを虐める悪いヤツだ!そんなヴァーディがわたしちゃんを褒めて撫でるわけがないだろ!本物のヴァーディをどこにやった!?』」
「『失礼なヤツだな!つーか大体テメェの自業自得だろうが!』」
ここから始まる俺とバティの追いかけっこ。決着は。
「『バティ?ヴァーディ様?お2人はなにをやっていたのでしょうか?』」
「ヴぁ、『ヴァーディと追いかけっこしてました……』」
「『周りのことも考えずにバティを追いかけてました……』」
エネさんの介入によって終わる。エネさんは、それはもう素敵な、恐怖すら感じるような笑顔で。
「『ヴァーディ様?じっっっっっくりとお話聞かせてもらいますね?』」
「は、はい……」
俺の説教が決定した瞬間である。
「憐れだなオメー。ま、元気出せや」
「ありがとよラーシー……」
説教終わった後のラーシーの言葉が身に染みたファン感謝祭だった……。
一緒に説教されるヴァーディであったとさ。