飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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色々と質問しに行くヴァーディ。


走る理由・質問

 海藤さんから言われたこと。自分だけの走る理由を見つけろ、というもの。

 理想の幻影(コントレイル)に縛られるだけじゃない、自分だけの走る理由……か。

 

(そもそもの話、どうしてコントレイルをこんな意識しているんだろうか?)

 

 前にも同じ疑問を抱いた気がするが、結局答え出なかったんだよなぁ。理由が判明したところでコントレイルを意識するのは変わらないだろうし、俺にとってアイツは特別なライバルであることには変わりはないのだから。でもなぁ、これじゃダメなんだろうな。

 

(きっと、これが大事なこと……なんだと思う。俺がコントレイルと走りたいと思う理由、今は思い出せないこれにこそ、俺の走る理由に繋がっているのだろうか?)

 

 ……止めだ止め!後はもう明日の自分がなんとかやってくれるよ!さっさと寝よ!

 

「おやすみ~ヴァーディ君」

「おう、おやすみプボちゃん」

 

 電気を消して寝る。明日も朝早くから自主トレだ。……待てよ?自主トレってことは。

 

(早速アイ先輩に話聞けるな)

 

 自主トレなら間違いなくアイ先輩くるし。その時に聞いてみるか。

 

 

 明けた朝。自主トレに向かうとアイ先輩が立っていた。うん、予想通り。

 

「あら、奇遇ねヴァーディ」

「もう今さら奇遇も何もあります?ほぼ毎日一緒に自主トレしてるじゃないですか」

「偶然よ偶然」

「いっそここまでくると清々しさすら感じますよ」

 

 なんでそう頑なに偶然であることを装うんですかねぇ。どうでもいいけど。

 自主トレをしながらアイ先輩に質問をぶつける。アイ先輩が走る理由を。

 

「アイ先輩、ちょっと聞いても良いですか?」

「どうしたのかしら?生憎と、中山の攻略法なら相談に乗れないわよ」

「どんだけ根に持ってるんですか有マのこと……違いますよ」

 

 とにかくアイ先輩が走る理由を聞いてみる。最初こそ怪訝な表情をしていたけど、俺が大真面目に聞いていることが分かってからは相槌を打ちながら聞いていた。

 一通り説明し終わって、アイ先輩は──溜息を吐いた。

 

「やっぱり、あなた頭でっかちなところがあるわね」

 

 ……もう否定できなくなってきたよ。というか前世でも似たようなこと言われたよアイ先輩に。

 

「あなたにもあなたの考えがあるでしょうし、とやかく言いたくはないけど……あまり理由を求めすぎるのも良くないわ。あなたはもっと物事を単純に捉えなさい」

「……はい」

「可愛いけどそう不貞腐れないの。そうね……私が走る理由」

 

 ちょっと考え込んだ後、アイ先輩は教えてくれた。自分が走る理由を。

 

「強さの証明よ。私の強さを証明するために走ってきた……有体だけどそんなとこね」

「強さの証明、ですか……」

「えぇ。中央にいるウマ娘はほとんどそうだと思うわ。自分が他人よりも強いということを証明する……誰もが思うことだと私は考えている」

 

 強さの証明。誰よりも強いということを証明する……それが、アイ先輩の走る理由。

 だけど、それだけじゃないみたいで。

 

「でも……原点に返ればもっと単純な理由よ。私が走る理由なんて、ね」

「え?それはなんです?」

 

 凄く気になったからアイ先輩に聞いてみる……けど。おでこを指で突かれた。

 

「自分で考えなさい。それは、あなた自身が見つけるべきことよ」

「……」

 

 おでこを押さえてジト目でアイ先輩を睨む……が。アイ先輩はウマホを取り出してその姿を撮影するだけだ。いや、なに撮ってんすか。そんな良いもんじゃないでしょ。

 

「ふふ、良い写真ゲットね」

「……まぁいいですけど」

 

 自分で気づくべきこと……か。

 アイ先輩との自主トレも終わってプボちゃんと登校。学園に来るとみんなにも聞いてみる。

 

「ぼくが走る理由~?」

「そりゃまた、今更そんなこと聞いてどーすんだよオメー」

「良いだろ別に。減るもんじゃないし」

 

 ラーシーにパンちゃん、プボちゃんに聞く。三者三様の答えだった。

 

「つってもなぁ……そんな凝った理由はねーぞ?アタシが走る理由なんて他よりも強いってことを見せるためだし」

「ぼくはね~おっきなレースを勝ちたいんだぁ。おっきなレースを勝って、みんなに喜んで欲しいから」

「パンはね!先頭で走るのが気持ちいいから!先頭に立って走るとすっごい気持ちいんだぞ!」

「ほうほう」

 

 ラーシーはアイ先輩と一緒、プボちゃんは喜んで欲しいから、パンちゃんは楽しいから……か。

 

「先頭立って走るとそんなに気持ちいいのか?」

「そうだぞ!ヴァーディもどう?」

「う~ん……」

 

 一応、前世で一度だけ逃げたことはある。でも楽しいとか気持ちいいとかはあんま考えなかったな……しかも結果的に逃げる形になっただけだし。

 

「遠慮しておくよ。俺には合わなそうだし」

「そっか。残念だな~」

「悪いなパンちゃん。にしても……どうすればいいんだろうな?俺」

 

 みんなに話を聞いてみたは良いものの、考えが纏まらない。俺は……何を理由に走ればいいのか。

 そんな中聞こえたのは──ラーシーの溜息である。

 

「つーかオメーは難しく考えすぎだろ。もっと単純に考えろ単純に」

「うぐ……アイ先輩にも言われたな、それ」

「オメーは考えすぎなんだよ頭でっかち」

 

 うるせーよバーカ!悪かったな頭でっかちで!どうせ俺は走るのにいちいち理由を求める頭でっかちだよ!

 ただ、ラーシーは呆れつつも優しい目で俺を見てる。な、なんだよ?

 

「もうちょっと単純に考えろヴァーディ。難しく考える必要なんかねーんだよ」

 

 難しく考える必要はない、か……。

 

「……じゃあ、どうすればいいと思う?」

 

 2つ目のリミッターを外せたのは前世でのラーシーとの会話があったからだ。だから今回も「それくらい自分で考えろアホヴァーディ」うっせぇバカラーシー!

 ……まことに遺憾だが有益なアドバイスを貰えたと思う。次に聞くとなれば。

 

 

 生徒会室。ドンナ姉さんに時間を貰って聞くことにした。

 

「それで……ワタクシにどんな相談かしら?ヴァーディ」

 

 優雅に微笑むドンナ姉さん。いつ見ても様になってるわ。花が咲いてそう。

 

「ドンナ先輩が走る理由をちょっと知りたくて」

「……ワタクシが走る理由?」

 

 怪訝そうな表情をするドンナ姉さん。みんなから怪訝な顔されるな。そんなに意外な質問なのだろうか?

 ちょっと考え込んだ後、ドンナ姉さんは教えてくれる。自らが走る理由を。

 

「ワタクシが走るのは、血の証明よ。ワタクシに流れる血を証明するために走っている」

「血の証明……ですか?」

 

 こくりと頷くドンナ姉さん。

 

「ワタクシに流れる血、その遺伝子の強さを証明するためにワタクシは走る。他人からしたら義務感のように思えるかもしれないけど、これはワタクシがやりたいからやっていることよ」

「はぁ……」

「いいねぇ、立派だねぇドンナちゃん!」

 

 なお、この場にはドンナ姉さんだけではなくディープ会長もいる。ドンナ姉さんの言葉を聞いて嬉しそうに笑っていた。

 この際だからディープ会長にも聞いてみることに。

 

「ちなみにディープ会長が走る理由って何ですか?」

「え?楽しいから!」

 

 ……すっげぇ単純な理由。ドンナ姉さんはディープ会長の答えが分かり切ってたのか特にツッコミはしなかった。

 あんなに強いディープ会長の走る理由が気になってたけど、ここまで単純だったとは……。

 

(俺も、ここまで割り切った方がいいのか?)

 

 何かそんな気がしてきた。

 今後の方針に悩んでいると、なにかを思い出したかのようなディープ会長。ただその表情はなんと言うか……不安げ?こっちを心配するような表情してるけどなんで?なんかあったのか俺?

 

「あ~……ヴァーディ?あれからコンちゃんと会ってる?」

「コントレイルと?……いや、別に会ってはいないですけど」

 

 クラスも違うし、特段会う理由もないから接触してないけど……アイツがどうかしたのか?

 ディープ会長は煮え切らない態度。なんでそんな態度取るんだろうか?

 

「そ、そうだ、ね。うん。ヴァーディ。君にお願いがあるんだ」

「俺に?別にいいですけど……なんですか?」

「あ~……コンちゃんも悪気があるわけじゃないんだ。だから、あんまり嫌いにならないであげてね?」

 

 あの、本当に何があったんですか?すげぇ気になるんですけど!?ドンナ姉さんはどう思う……ちょっと!ふいって目をそらさないでくださいよ!マジで何があったんですか!?

 結局教えてもらうことはできず。生徒会室を後にした。

 

 

 後聞こうとしたのはタイド先輩。たまたま会ったので話を聞いてみることに。

 

「わたしなんかの意見が参考になるかなぁ……ヴァーディ強いし……」

「参考になりますって!だから教えてくださいタイド先輩!」

 

 ネガりそうになっているタイド先輩を励まして話を聞く。

 

「う~ん……あんまり考えたことないなぁ。そりゃ最初の頃はわたしが強いってことを証明するために頑張ってたけど……今は御覧の有様だけどね。アハハ……」

「重賞勝ってるだけで上澄みも上澄みですよ」

「でもプイちゃんは無敗の三冠だしなぁ……ヴァーディも秋天と大阪杯勝ってるしなぁ……キタサンなんて……」

「元気出してくださいって!」

 

 でも、タイド先輩の雰囲気が急に柔らかいものになった。

 

「でも、そうだね……あまり深く考える必要はないと思うよヴァーディ」

「……やっぱり、そうですかね?」

 

 こくりと頷くタイド先輩。みんなから同じこと言われんな俺……そんなになの?ちょっと落ち込むんだけど。

 落ち込んでいる俺の頭に、なにか置かれるような感触。ふと見上げると──タイド先輩が微笑みながら撫でていた。

 

「ヴァーディ、たくさん悩んで、たくさん考えればいいと思う。その上で、自分が納得できる答えを見つければいいと思うよ」

「タイド先輩っ」

「ま、まぁわたしは頼りない先輩だけど……ヴァーディの相談には乗れるから。いつでも頼ってね?……頼りないけど」

 

 自虐するタイド先輩だけど……そんなことはない。

 

「そんなことないですよタイド先輩。現に今、凄く頼りになりましたから」

「そ、そう?それならよかったぁ」

 

 ふにゃりと笑うタイド先輩。

 

 

 その後もいろんな人から話を聞いた。ほとんどが同じ答え……自分の強さを証明すること。

 ただ、一番多かったのは──走ること自体が楽しいから。それがみんなが走る理由だった。

 

(……それでじゃあ俺も!ってならないよな)

 

 これはあくまで他人の理由。俺が心の底から走りたい!って思える理由を見つけないと……意味がない。

 

「……凱旋門賞までには見つかるといいな」

 

 そう呟いて。俺は寮へと戻っていった。まだ、答えは出せそうにない。




次のガチャはサトノクラウンか……まだ貯めれるな。
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