飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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ヤバいヤバいマジでサボり癖がつくとヤバい。本当に遅れてすいませんでした。


フランス遠征

 長いこと飛行機に乗ってついに着いたフランス。ここにある宿舎でお世話になるわけだが。なんとこの宿舎、エネさんとこのものらしい。わざわざ俺達のために使わせてくれるとのこと。

 やはり一言お礼を言っておくべきだと思ったので宿舎に着いたら早速エネさんに電話をした。

 

「良いのです、ヴァーディ様のためですから。それに……フフフ、あなたのことだから是非お礼を!と言ってくださるのでしょう?」

「え!?なんで分かったんですか!?」

「ヴァーディ様分かりやすいですから。なので、お礼の方に関してはまた後日……」

「はぁ。まぁ……良いですけど」

 

 俺の行動は見透かされていたらしい。とにかくエネさんには今度お礼をすることになった。なにされるのかは分からんが、悪いようにはしないだろう。エネさんだし。

 エネさんの宿舎はトレーニング場も併設されている。しかも、かなり広めの。こりゃすげぇわ。

 

「これを個人所有……ぐ、ぐぬぬ!」

「いや~広いですねぇ。トレーニングのし甲斐がありそうだ」

「そうだね~。ぼくとヴァーディ君はレースがあるし頑張ろ~」

 

 そういえばジェネ先輩結局どうするんだろうか?体調が良ければ前哨戦使うらしいけど。

 

 

 始まるトレーニング。プボちゃんとジェネ先輩はまず芝に慣れることから始まった。

 

「ッフ!やっぱり、ちょっと芝が違うね!」

「でも、本当にちょっとの差だ~。これなら対応できるかな?」

 

 今日の天気は晴れ。芝の状態も良だ。これならジェネ先輩達も対応できるだろう。

 だが問題は……()()()()()()。水を吸って重くなったフランスのバ場はえげつないことになる。前世も最初の凱旋門賞でえらい苦労したからな。

 ジェネ先輩達は芝に慣れるための走り込み。俺はというと、2人とは別のメニューをやっていた。

 

「俺は俺で坂路のトレーニング、っと!」

 

 こっちの芝には留学した時にある程度対応済み。なので一足早く坂路トレーニングの方に移っている。ジェネ先輩達が走っているのは平坦なコースだ。

 うん、やっぱり良の状態でも問題なく対応できるな。これなら大丈夫だろう。

 その後は地道にトレーニング。芝に慣れるために走り込み、俺も坂路で地道な基礎トレ。特に変わることはなかった。初日なんてこんなもんだろ。

 

 

 トレーニングを終えた後は宿舎で休む……のだが。

 

「『ヴァーディ様!あ・な・た・の!エネイブルが参りました!』」

 

 何故かエネさんが待ち構えていた。なんで?しかもエプロンである。

 ジェネ先輩は微妙に怒りが見える表情。というよりは威嚇している。プボちゃんは……苦笑いだな。

 

「え、え~っと……『なにか用!?ヴァーディは渡さないんだから!』」

 

 ジェネ先輩の威嚇。エネさんに効果はないようだ。涼しい表情してら。あ、なんかキッチンぽいところからいい匂いがする。

 エネさんは頬を赤らめている。

 

「『ヴァーディ様のために、お夕食をご用意させていただきました。爺やに習いながら作りましたので、味に関しては問題ありません!それでは是非!ご賞味ください!』」

「『ありがたいですけど、ジェネ先輩達のためにもですね……』」

「『それも勿論ありますわ。ですが、一番はやはりヴァーディ様!これは変わりません!』」

 

 あ、はい。

 キッチンに着くと──。

 

「「「おぉ~!」」」

 

 所狭しと豪華な料理が並んでいた!いやいやいや……やべぇ!見てるだけでよだれが出てきた!

 

「「「いただきまーす!」」」

 

 早速席について料理に口をつける俺達。味の方は──めっちゃうめぇ!

 

「おいし~い!いくらでも食べられるよ~!」

「ぐ、ぐぬぬ……!悔しいけど美味しい……っ!」

「ありがとうございますエネさん!料理すっごい美味しいです!」

「『そんなに喜んでいただけて、嬉しい限りです。まだまだたくさんありますので、しっかりと食べて英気を養ってください』」

 

 薄く微笑むエネさん。まさか、料理まで作ってくれるとは……本当に頭が上がらねぇよ。

 その後のお風呂もエネさん達はいる……いや、なぜエネさんまで?

 

「……『クロノ様?ヴァーディ様に何をなさっているのですか?』」

 

 ()()()()()()()ジェネ先輩に髪を洗ってもらっていると、エネさんの鋭い視線を感じる。すんごい睨みつけられてる!?

 ただ、ジェネ先輩は勝ち誇った表情。スゲェ嬉しそうにしていた。

 

「『ん~?何かな~?わたしはい・つ・も・の・よ・う・に!ヴァーディと洗いっこしてるだけだもんね~!』」

「なっ!?う、『嘘ですよねヴァーディ様!?』」

「『いや、本当のことですね……ジェネ先輩、いつも言ってますけど前は別にいいです』」

 

 エネさんの絶望しきった表情、ってそんなに嘆くことか?ちなみにプボちゃんは我関せずの態度。ただちらちらとこっちの様子を窺っていた。ジェネ先輩?ずっとエネさんに勝ち誇った表情をしてたよ。

 んで。風呂に入った後は寝る時間。

 

「『さぁヴァーディ様!私と一緒に寝ましょう!』」

「『何言ってんの!?ヴァーディはわたしと一緒に寝るんだから!』」

 

 寝る時も争ってるよこの2人。もう仲いいだろこの2人。

 

「「『仲良くない(ありません)!』」」

「『俺の心読まないでくださいよ!?』」

 

 というか言い争ってるけど個人部屋でしょうが!

 そんなひと悶着があったものの、無事?に遠征初日を終えることができた。……この調子で遠征は大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 フランス遠征から結構な月日が経って。もうすぐアイリッシュチャンピオンステークスだろうか?って時期になってきた。初日は大変だったし何なら数日は大変だったけど、さすがに鎮静化した。大人しくなってくれて助かった……毎日のように張り合ってたからな、ジェネ先輩とエネさん。

 そんな日々ももう終わって、黙々とトレーニングに打ち込む日々である。ジェネ先輩は結局前哨戦を使わないらしい。

 

「ちょっと調子がね……すぐに良くなるとは思うんだけど」

 

 急な環境変化の影響か、少し体調を崩していた。今日もトレーニングは休み。後でお見舞いに行こう……そう考えていた時だった。

 

「『久しぶりだねヴァーディクトデイ!元気にしていたかな?』」

「こ、この声は……」

 

 何というか、聞き覚えのある声だった。どこで聞いたかといわれたら、()()()()()()……!でも、なんでここにいるんだ?という疑問が湧いてくる。

 声のした方へ振り向くとそこには──フランケル生徒会長が立っていた。

 

「『久しぶりだねヴァーディ。留学以来だ』」

「……」

「『おいおいどうした?驚きすぎて声も出ないのかい?』」

「『いや……なんでここにいるんです?』」

 

 あなた生徒会長でしょ?ここにきていいんですかね?いや、そんなすっとぼけた表情されても。

 

「『まぁ細かいことは良いじゃないか』「『いや、細かくないと思いますけど』」『それよりも、君は今困ってるらしいじゃないか。エネイブルに聞いたよ?』」

 

 どうやら聞く気はないらしい。仕方ないからナサニエルさんにでも連絡入れとくか……爆速で既読がついた。今すぐこっちに来るらしい。

 ウマホをしまってとりあえずフランケルさんと話すことに。にしても、俺が困っていることか。

 

「『とりあえず話してみなよ?オレでも力になれるかもしれないぜ?』」

「まぁ……『ならちょっとお聞きしたいことが』」

 

 フランケル生徒会長にも聞いてみた。みんなにしたような質問を。この人はどんな気持ちで走っているんだろうか?それは純粋に気になるし。帰ってきた言葉はというと。

 

「『走りたいからだな!自由気ままに、オレの気が向くままに走る!それがオレの走る理由さ!』」

 

 どうしよう。この人ディープ会長と同類かもしれない。

 

「『というか、そんなことで悩んでいたのか?ヴァーディは』」

「『悩んでいたというか、もうすぐ解決しそうというか』」

「『なんだつまらん』」

 

 つまらんて。こっちは割と一生懸命に悩んでいたんだが。

 フランケル会長は呆れ……はない。ただ、優しい微笑みを俺に向けていた。

 

「『ま、解決しそうなら何よりだ。バカになった君は──強そうだからな』」

 

 え、ちょっと待って。それ褒められてるの?

 

「『キミはどこか、理知的に走るところがあるからね。それもまた強いのだが……それはキミには合わないと常々思っていたんだ』」

「『いや……どこで仕掛ける~とか、どこで抜け出す~とかは大事では?』」

 

 特に俺は追い込みだ。位置取りが非常に重要。そんなの分かり切ってることだと思うが。

 フランケル会長は首を横に振る。違うと言いたいらしい。

 

「『キミは間違いなく()()()()のウマ娘だ。ウマ娘の本能を解放し、圧倒的な力で蹂躙するスタイル……それこそが君のスタイルだと思うがね』」

「は、はぁ……」

「『まぁそれは置いておくとして、だ。走る理由だが……まだ答えが曖昧といったところかい?』」

 

 それは、そうだ。素直にうなずく。俺の反応を見て、あごに手をやって考え込むフランケル会長。

 しばらく待っていると、フランケル会長は口を開いた。

 

「『あらゆるものを排除したまえ、ヴァーディ』」

「『あらゆるものを……排除?』」

 

 訳も分からず聞き返すと、頷くフランケル会長。

 

「『走っている最中に思考のあらゆる雑念を取り払いたまえ。1つずつ、1つずつ取り払っていって──最後に残ったものこそが、君の走る理由になるんじゃないかな?』」

「『最後に残ったものが、俺の走る理由……』」

「『より正確に言えば、本能だね。これだけは譲れないというものでもいいし、ただただ走ることに快楽を求めるのもいい。それは千差万別だ。キミだけの答えがきっとあるはず』」

 

 後はそうだね、といいながらフランケル会長は立ち上がって。俺にウインクをしながら告げる。

 

「『──原初に立ち返ってみるのも、良いかもしれないね』」

 

 それだけ告げて、フランケル会長はこの宿舎を後にした……が。

 

「『ようやく見つけたぞフランケル……!貴様、仕事をほっぽり出して何をやっていた!?』」

 

 ナサニエルさんが血相を変えてやってきた。やべ、そんなに長いこと話してたかな?

 フランケル会長はというとおどけた様子である。全く反省しているように見えない。

 

「『おっと、予想外に早く見つかったね!ここは退散するとしよう!』」

「『待て!フランケル!……ヴァーディ、協力感謝する!また後日ゆっくりと話そう!』」

「あ、はい。『ナサニエルさんも気を付けて』」

 

 フランケル会長とナサニエルさんは追いかけっこしながらどこかへといった。

 ……原初に立ち返る、か。

 

(もう少しで、掴めそうだ)

 

 フランケル会長から言われたことを反芻し、トレーニングに打ち込む。もうすぐアイリッシュチャンピオンステークス……絶対に、勝つ。




賛否両論ありますが私はウマ娘3期好きでした。自分にはない視点や考え方、捉え方もあって成程、と思うこともありましたし。
ただ個人的にはうまゆるの続編を作ってくださいお願いします()。あ、映画は見に行きます。
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