飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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サボりとは恐ろしいものです……ズルズルとここまできてしまった。後大百科でBelflameの勝ち鞍を変更しています。


競走馬編 女傑は何度でも甦る

 競走馬Belflame(ベルフラム)。全兄にBatistaを持つ牝馬であり、父ヴァーディクトデイ母エネイブルの良血。全兄がニジンスキー以来のイギリスクラシック三冠に加えて、ニジンスキー超えを成し遂げたこともあり、当然Belflameにも期待が集まった。兄は母親譲りの鹿毛だったが、こちらは父親譲りの黒鹿毛の馬体。見栄えも良く、いかにも走りそうという見た目をしていた。

 ただ、唯一の懸念点として気性が挙げられた。全兄がおよそ気性が穏やかな両親から生まれたとは思えないほどの気性の悪さを見せていたのでこのBelflameも心配されていたのだが……その心配は()()()()()的中することとなった。

 

「ば、バティスタよりはマシとはいえ……こっちもこっちが気性が荒いな」

「ちょっとでも気に入らないことがあるとすぐにへそを曲げますからね……へそを曲げたらその場から数十分動かないし」

 

 ワガママお嬢様……それがBelflameの評価だった。しかし、コントロールさえできれば大人しい性格ではあったためBatistaに比べれば幾分かマシだったようである。

 

 

 

 

 

 

 そんなBelflameは万全なサポートでデビュー戦を迎えることになった。騎手を務めたのはBatistaの主戦を務めた騎手。Batistaの一件もあったのでちょっと逃げ腰だったものの、あちらよりはマシだと思ったのかすぐさま騎乗。デビュー戦で見事に勝利を飾る。道中好位置につけて、最後に先頭の馬を抜き去るという王道の競馬で勝利を収めた。

 デビュー当初から非凡な才能を見せていたBelflame。次とその次も順調に勝ち続けたものの、クラシック初戦となる1000ギニーで敗戦を喫する。3着に敗れ去り、今後のクラシックに暗雲が立ち込めた。

 その後英オークスにも出走するがここも勝ちきれず。Batistaのように上手くはいかない。それでも7月開催の愛オークスではなんとか勝利を収めることができた。

 

「ヴァーディクトデイの覚醒が秋だったのでベルフラムもその可能性がある。この馬は秋が本番だ」

 

 そう発言した馬主の言葉は、見事に的中することになる。

 

 

 愛オークス後は休養を挟んで凱旋門賞へ直行。前哨戦を挟まずに挑んだが──重馬場を軽やかに駆け抜けて4馬身差の快勝を収めた。どうやら、両親と同じように道悪が得意のようである。

 この勝利に気分を良くした陣営は次走にBCターフを選択。アメリカへと渡り、調教を重ねた。アメリカの馬場にも順応したようで不安要素は無し。

 結果、見事に勝利を収めた。2馬身差の逃げ切り勝ちである。

 

「やっぱりヴァーディクトデイとエネイブルの黄金配合はすげぇぜ!」

「どうか兄貴のようになってくれよ~!」

 

 この頃になると気性も落ち着いてきたのかワガママは無くなってきた。それでも多少荒っぽいところはあるのだが。

 その後は欧州へと戻り年内休養。年明けはガネー賞に向けて調整が進められた。

 

 

 年明け初戦となったガネー賞。ここで見事勝利を収めて次走にキングジョージを選択。エネイブルが3回勝ったこのレース、娘であるBelflameにも期待が高まっていたのだが……ここでまさかのしんがり負けを喫する。

 怪我が不安視されていたが、特に異常は見られなかった。この不可解な敗北は陣営に不安を与えることになる。

 キングジョージの後はフォワ賞を選択。凱旋門賞に向けて万全の態勢を整えようとしたものの、ここでまさかの4着敗北。もうピークを過ぎたのか……?と思わざるを得ない結果となった。陣営の不安は募るばかりである。

 迎えた本番である凱旋門賞。Belflameは──その不安を一掃するかのようなレースぶりを見せる。

 

《迎えました最後の直線!注目のベルフラムが早くも抜け出した!3番人気ベルフラムがロンシャンの直線を独走する!なんという強さだ!?後続との差をグングン広げていく!恐ろしい強さだベルフラム!これがピークを過ぎた馬の力なのか!?まさか、ここでまたも覚醒か!?ベルフラム独走!ベルフラム独走!追いつく馬は無し!ベルフラム独走ゥゥゥゥ!》

 

 最後の直線で一気に抜け出すと、Belflameは後続との差を広げるばかりで誰にも影を踏ませなかった。最終的に、Belflameは後続に大差をつけて勝利を収める。そしてこの勝利を持って、父と母に続く凱旋門賞二連覇を成し遂げた。

 

《なんという強さだベルフラム!最後の直線でまさかの独走!父ヴァーディクトデイと母エネイブル、どちらも凱旋門賞を連覇した親の娘が!凱旋門賞を連覇した!おめでとうベルフラム!》

 

 大喝采のロンシャン競馬場。Belflameはウイニングランを決めていた。

 その後は去年と同じローテでBCターフへ。ここも快勝すると、陣営はジャパンカップに出走することを表明した。

 

「かなりキツいローテだが、ベルフラムならやってくれるだろう」

 

 日本としてもこれだけの馬が来るのだから期待が高まったのだが……Belflameは感冒になったためジャパンカップ参戦は白紙に。しかし陣営は来年の現役続行を表明し、来年度こそは必ずジャパンカップに向かうと宣言した。

 

 

 迎えた次のシーズン。始動戦はドバイシーマクラシックになった。最後の直線、もう少しで勝てる!というところまで来たのだが……日本のコントレイル産駒、アトミックフライトの差し足に敗北。勝利を許してしまう。

 その後はエクリプスステークスに昨年の雪辱を果たすかのようにキングジョージへと出走したがピリッとせず。インターナショナルステークスも何とも言えない結果に終わった。

 インターナショナルステークス後は凱旋門賞に直行。ここにはアトミックフライトが出走を表明。今シーズン調子が良かった向こうは現地でも人気を博していた。なにより、ドバイシーマの直接対決でBelflameに勝っていることからさらに評価を上げていた。

 迎えた凱旋門賞。Belflameは──再度甦る

 

《ベルフラム先頭!ベルフラム先頭!アトミックフライトとの叩き合いだ!アトミックフライトが競りかける!しかしここは負けられないベルフラム!母が成し遂げられなかった凱旋門賞三連覇は私が成し遂げる!そう言わんばかりにベルフラム激走!アトミックフライトが必死に競りかける!しかしベルフラム抜け出したぁぁぁぁ!》

 

 アトミックフライトとの叩き合いを制し、Belflameが史上初の凱旋門賞三連覇を達成。鞍上の騎手は渾身のガッツポーズをしていた。

 凱旋門賞後、陣営は昨年の約束通りにジャパンカップへと出走。三度目の対決となるアトミックフライトとの勝負が期待された。しかしアトミックフライトは遠征の疲れが抜けずに出走を取り消しとなる。

 そのジャパンカップはというと。

 

『なんでむかつくアイツがいないのよー!?ふざけやがって~!』

 

 Belflame渾身の走りによって、アーモンドアイのタイムに匹敵する2分20秒9で勝利した。

 その後は現役を引退。ジャパンカップで見事に有終の美を飾った。

 

 

 全兄のBatistaは無敗で競走馬を引退。Belflameはというと、19戦11勝のG1を7勝。凱旋門賞で史上初の三連覇を成し遂げたということでかなり注目を集めていた。

 時に圧倒的な強さを見せたかと思えば、時に信じられない惨敗をすることもある。兄と比べて煌びやかではないと揶揄されたこともあった。それでも、終わったと思う度に復活する。そんなBelflameは人々に愛されていた。

 

 

 

 

 

 

 ……なんだろう。俺はまたここに帰ってきたな。

 

『俺シャドモンドに呼ばれ過ぎじゃね?俺のこと大好きか?』

 

 多分大好きなのはエネさんなんだろうけど……まぁいい。ここでまた種牡馬生活だ。にしてもな~、こっちに帰ってきたんだから久しぶりにバー君と併走してみたいんだが。

 

『ま~無理だよな。牧場が違うし』

 

 にしても、フラ君は元気にしているんだろうか?ただでさえ丈夫ではないから心配だ。というか、俺日本にいる時間が少なすぎて最早シャドモンドの方が長くいるんじゃね?と錯覚し始めた。引退後の俺ほぼシャドモンドだし。たまに欧州の違う牧場に行くけども。

 適当に道草でも食って時間潰しますかねっ?

 

(なんだ?知らん馬がこっちをジッと見てるな)

 

 さすがに俺も年を食ってきたから年上牝馬の範囲が狭くなってきた……と、思いたい。あれが年上牝馬なのか、それとも違うのかは分からんが。俺と同じような黒鹿毛の馬がじーっと俺を見ている。

 

(なんか、居心地の悪さを感じるな)

 

 視線に悪意はないが、それでもあそこまで見つめられると居心地が悪くなってきた。移動しよ。

 ……待って。移動したらあっちもとことこ歩いてきたんだけど。俺の方に寄ってきてるんですけど。

 

(俺と話したいだけか?)

 

 そう思って近づくと……逃げなかった。なんかちょっと焦ってるように見えるけど。

 

『あの、なんか俺に用?』

『あ、あ、あの、その……!』

 

 しどろもどろになりながらも、その子は目を輝かせて俺を見ていた。

 

『か、カッコいい!ですね!』

『……はぁ、ありがとうございます?』

『そ、それに……っ!わ、私とお揃いの色……!し、シンパシーを感じちゃいます!』

 

 まぁ、確かに似てるっちゃ似てるが。別に珍しくもなんともない毛だと思うぞ。

 

『な、名前!名前教えてください!』

『あぁ、うん。ヴァーディクトデイだけど』

『ヴァーディクトデイ……ヴァーディ、ヴァーディ様……!』

 

 よし、すぐさまこの場から立ち去ろう。そうした方が良い。そう思っていたら。

 

『それではヴァーディ様!また会いましょうねぇぇぇぇぇぇ……』

 

 凄い勢いで去っていった。何だったんだ?あの子。というか名前聞きそびれたし。

 

 

 というわけで、ちゃっかり馬房を隣にされたバカ息子に聞いてみることに。

 

『……って子なんだけど、お前なんか知ってる?』

『あー、それあれっすね。ベルフラムつって、俺様の妹っす』

 

 バティスタの妹?つまりは……俺とエネさんの子ってわけか。

 

『俺様みたいに無敗ではないですけど、アイツもアイツで強いっすよ!ま~俺様ほどじゃないですけど!』

 

 自慢気に語るバティスタ。コイツ割とシスコンだったりするのか?ずっと楽しそうに妹のこと語ってるし。

 聞けばあの子、あんまり牡馬に関して興味を示さないらしい。唯一興味を持った馬が日本にいるらしいけど、その馬の詳細は分からず。そんな中で俺に興味を持ったわけだ。

 あの子、俺の正体知ったらどうなるんだろうな?

 

(……考えないようにしよう)

『どうしたんすかヴァーディさん?なんか落ち込んでるように見えますけど』

『あぁ、いや……そのベルフラムに好かれてるっぽいんだが、この先どうなるかなって……』

『あ、あ~……まぁ、大丈夫じゃないすか?……不憫だな、アイツ』

 

 何となく哀愁が漂う雰囲気。いたたまれなくなったな……。

 

『しっかしヴァーディさんも罪っすね。母さんもヴァーディさんがいないとうるさいらしいですし』

『あぁ、うん。そんな気はしてた』

『ま~これから短い間よろしくっすよ』

 

 その後ベルフラムとはちょくちょく会った。バティスタも交えて一緒に散歩したりな。シャドモンドでの種牡馬生活は順調である。




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