天皇賞・秋
| 枠順 | 番号 | ウマ娘名 | 人気 |
1 | 1 | コントレイル | 1 |
1 | 2 | カデナ | 15 |
2 | 3 | モズベッロ | 9 |
2 | 4 | ポタジェ | 5 |
3 | 5 | エフフォーリア | 2 |
3 | 6 | トーセンスーリヤ | 8 |
4 | 7 | ワールドプレミア | 6 |
4 | 8 | サンレイポケット | 10 |
5 | 9 | グランアレグリア | 3 |
5 | 10 | カイザーミノル | 11 |
6 | 11 | ムイトオブリガート | 16 |
6 | 12 | ラストドラフト | 14 |
7 | 13 | ペルシアンナイト | 13 |
7 | 14 | カレンブーケドール | 4 |
8 | 15 | ヒシイグアス | 7 |
8 | 16 | ユーキャンスマイル | 12 |
東京レース場。天気はあいにくの曇り空だが、多くのファンが詰め寄っている。今日はG1レース、天皇賞・秋の開催日。加えて、無敗の三冠ウマ娘であるスピカのコントレイルの出走に始まり、スプリントとマイル路線にて圧倒的な強さを誇る同チームのグランアレグリア、そしてつい先日、日本のウマ娘として初の凱旋門賞ウマ娘に輝いたヴァーディクトデイの妹、皐月賞ウマ娘でもあるエフフォーリアが出走してきていた。ファンはこの三つ巴の戦いになるだろうと予想を立てている。
《天気はあいにくの曇り空。東京レース場芝2000m、天皇賞・秋を迎えました。やはり最注目は三冠ウマ娘コントレイルでしょう!インタビューでもかなり気合が入っているのが確認できました。宝塚記念ではグランプリ王者クロノジェネシスと凱旋門賞ウマ娘ヴァーディクトデイを退けた彼女、果たして今回はどのようなレース運びを見せてくれるのか?》
《コントレイルだけではなく、グランアレグリアにも注目したいですね。大阪杯ではバ場に嫌われての敗戦。ですが今回は良バ場の発表です。雪辱を果たしてもらいたいところではないでしょうか?》
《そうですねぇ。後は
張りつめた空気に包まれているターフの上。各々が天皇賞を勝つために気合を入れている。その中でも、コントレイルは一際気合が入っていた。
(このレースは負けられない……今もリハビリを頑張っているタクトちゃんのためにも。それに、凱旋門賞を勝ったヴァーディ君に勝つためにも!)
頬を叩いて自らを鼓舞する。その様子を、スピカのトレーナーは不安そうに見ていた。
「……」
「コントレイル、大丈夫かしら?」
「う~ん、なんとも危ない雰囲気ですな」
「気負い過ぎてる……悪い結果に繋がらなければいいけど」
スピカのメンバーもトレーナーと同様の視線を向ける。最終追い切りのタイムも悪くなかったし、体調も万全そのものだ。だが、やる気を出し過ぎている……それが唯一の不安要素だった。
エフフォーリアは今回のレースを考えながら、淡々とウォーミングアップをこなす。
(グランアレグリアさんはあまり警戒しなくていい。確かにあの人のスピードは驚異的だけど、それはマイル以下に限ったらの話。中距離ではもたない。だから狙うべきは……コントレイルさん)
彼女が目標に定めたのはコントレイル。彼女をマークすることを決めた。
「徹底的に追い詰める。ターゲットは無敗の三冠ウマ娘……私が勝つ」
そう呟いて、ゲートへと向かった。他のウマ娘もゲートへと向かう。ゲートインの時間がやってきた。
出走するウマ娘達が続々とゲートに入っていく。東京レース場に緊張が走っていた。
《順調にゲートインが完了しております。今1番のコントレイルがゲートに入りました。次走に向けて弾みをつけたいこのレース、果たしてどのようにレースを展開するのか?クラシック級からの参戦、エフフォーリア。姉に続いての姉妹制覇を成し遂げるか?三階級制覇がかかっているグランアレグリアにも注目したいところだ!》
最後のウマ娘がゲートに入る。少しの静寂の後──ゲートの音が鳴り響いた。ウマ娘達がゲートを飛び出して一斉に駆け出す。
《最後のウマ娘がゲートに入りました。芝2000m天皇賞・秋!秋の盾を賜るのは一体どのウマ娘になるのか?注目の一戦が今っ、スタートしましたッ!》
天皇賞・秋が幕を開けた。
◇
《大きな出遅れはありません、綺麗なスタートを切りました!1番人気コントレイルも好調なスタートを切る!》
《グランアレグリアとエフフォーリアも良いスタートを切りましたね。今回の三強は皆好位置につけています》
《誰がハナを切ってレースを先導するか?注目の最初のコーナー。ハナを切るのは外からカイザーミノル!カイザーミノルが外から来ました!10番のカイザーミノル、そして6番のトーセンスーリヤが先頭に立とうかという勢い!この2人が争うかっ?おっと、ここでコントレイルだ!コントレイルも行った!これは珍しい!》
ハナを取って逃げようとしているのはカイザーミノル。外から内へと切り込んで逃げようとしているが、ここで内からコントレイルが競りかけてきた。普段は中団に位置することが多い彼女にしては珍しい積極策である。向こう正面に回っても変わらず、コントレイルは前へと積極的につけている。
「頑張れー!コントレイルー!」
「応援してるぞ~!」
声援を飛ばすファンを尻目に、スピカのトレーナーは意図を考える。コントレイルの積極策の要因を考え、すぐに気が付いた。
「まさかアイツ、
「「「えぇっ!?」」」
トレーナーの言葉にスピカのメンバーは驚いた声を上げる。トレーナーとしても信じたくはないが、他に納得のいく答えが出なかった。
「アイツは本来、好位置からの差し切りタイプだ。だがあんなに前につけてたら、最後まで脚を残せねぇぞ!」
「あぁもう!やっぱりやる気が空回りしてるじゃない!」
「だだ、大丈夫ですよ!コントレイルちゃんなら逃げても勝てます!」
「だといいけどよぉ」
「対してアレグリアは落ち着いてるね。後は……」
「スタミナを残せるかどうか、我慢できるかどうかですわね」
開幕早々不安が押し寄せるスピカ陣営。向こう正面でもコントレイルは先頭に競りかけていた。
《向こう正面を越えて先頭はカイザーミノル。そしてそのすぐ近くに1番人気のコントレイルがつけています!1バ身後ろにはトーセンスーリヤと4番手にグランアレグリア!マイルの女王が4番手につけている!後ろはカレンブーケドールにポタジェ、そしてこの位置に皐月賞ウマ娘エフフォーリアがつけています!》
エフフォーリアは先行集団の好位置につけている。冷静にレースを俯瞰していた。
レースを観戦しているヴァーディクトデイも、妹の勇姿をしっかりと見ている。
「良いぞー、エフー!その調子でいけー!」
エフフォーリアの後ろには1バ身後ろにヒシイグアスとサンレイポケット。縦長の展開でモズベッロ、ムイトオブリガード、春天を制したワールドプレミアにユーキャンスマイル、ペルシアンナイトが後方に控えていた。最後方はペルシアンナイトからさらに2バ身後ろ、カデナである。
まもなく前半の1000mを通過するところ。前半1000mのタイムは──59秒3。
《前半の1000mを通過。1000mのタイムは59秒3というタイム!少し早めですね》
《そうですね。先頭の2人が競り合っているので、タイムも少し早めになっているのかもしれません。最後まで持つのでしょうか?》
《先頭はカイザーミノル、そしてコントレイル!グランアレグリアが第4コーナー手前で3番手に浮上!大阪杯の雪辱を果たせるかマイル女王!エフフォーリアは外につけた。エフフォーリアは外へと進路を取る!後続がペースアップしてくるぞ、さぁ粘れるか先頭集団!》
「む、む~り~!」
第4コーナーを回って最後の直線へ向こうかというところ。ここで10番のカイザーミノルが脱落した。コントレイルが先頭に立つ。
(ッよし!このまま逃げ切る!)
コントレイルは逃げ切りの態勢をとる。そうはさせまいとグランアレグリアが外から飛んできた。
「うおおおぉぉぉ!勝つぞ勝つぞ勝つぞ~!」
マイル女王が無敗の三冠ウマ娘に襲い掛かる。最後の直線へと勝負は入っていった。
最後の直線、先頭で入ったのはコントレイル。そのすぐ近くにグランアレグリアが突っ込んできた。東京の急坂を上っていく。エフフォーリアは、
(……ッ!ここだ!)
コントレイルとグランアレグリアは東京の急坂でわずかにだが失速した。グランアレグリアは距離適性の差、コントレイルは無茶なペースアップが祟ったのだろう。
エフフォーリアはここで仕掛けるべきだと判断する。自身の末脚を爆発させた。
「くっ!」
「あえっ!?」
外から急襲してきたエフフォーリアに驚くコントレイルとグランアレグリア。しかし抜かせまいと必死に粘る。
《残り400を切った!先頭はコントレイルとグランアレグリアか!コントレイルとグランアレグリアが先頭!そしてここで!外からエフフォーリアだ!エフフォーリアが急襲してきた!猛然と差を詰めてくるエフフォーリア!カイザーミノルは脱落!トーセンスーリヤもさすがに脚がないか!?皐月賞ウマ娘エフフォーリアがコントレイルとグランアレグリアに襲い掛かる!》
コントレイルは必死に粘る。
(負けられない、負けられない!ここで勝って、タクトちゃんを安心させて!)
「僕は、ヴァーディ君に……!」
勝つ。そう言葉にする前に。
外からエフフォーリアが飛んできた
あっという間にコントレイルに並ぶエフフォーリア。
「……ッ!」
彼女はコントレイルのことなど見てもいない。ただ真っ直ぐに、ゴールだけを見ていた。
がむしゃらに走る前の3人。コントレイルとグランアレグリア、そしてエフフォーリアが集団から抜け出していた。もっとも……
《坂を越えた!やはり三つ巴、やはり三つ巴の戦いだ!コントレイル、グランアレグリア、エフフォーリアの3人が抜け出した!コントレイル粘るがっ、残り200mでエフフォーリアが抜け出したぁぁぁ!エフフォーリアが先頭だ!先頭はエフフォーリア!皐月賞ウマ娘が突き進む!撃墜王の妹が、天皇賞の盾を射程圏内に収めた!コントレイルとグランアレグリアも必死に追走!だがエフフォーリアはさらに上を行く!》
先頭に変わるエフフォーリア。コントレイルは必死に走るが……思うような加速はない。
(なんで!?どうして!いつもなら……ッ!)
何故普段の加速がないのか?それは当然だろう。いつもより前につけていたのだから、ペース配分が乱れていたから。脚など残っているはずもなかった。
エフフォーリアが後続を突き放す。その差が2バ身になったところで──エフフォーリアの身体がゴール板を通り過ぎた。
《エフフォーリアだ!エフフォーリアだ!皐月賞ウマ娘が天皇賞・秋を制した!なんとなんとエフフォーリア!三冠ウマ娘とマイル女王を下して!クラシック級のウマ娘がレースを制した!これがエフフォーリアの実力だ!姉だけではない、私もこれだけ強いのだ!天皇賞姉妹制覇だぁぁぁ!》
「「「わあああぁぁぁっ!!」」」
《しかし、コントレイルはやはり前目につけていたのが失敗でしたね。積極策が裏目に出ました。それでもエフフォーリアは見事!彼女もまた強いウマ娘ですね!》
《それは間違いありませんね!そして2着は2バ身差コントレイル、3着はクビ差でグランアレグリア!》
ゴール板を駆け抜けた後、コントレイルは掲示板へと視線を向けて──絶望する。
(に、2着……っ)
それも、明らかに自分のミスによる2着だ。ショックは相当なものだろう。
(トレーナーさんからも、ずっと言われてたのに……っ。どうして僕はッ!)
コントレイルは自らのミスを恥じる。散々忠告されていたのにこの様。悔しさから歯噛みするしかなかった。
そんなコントレイルの下に、エフフォーリアが足を運ぶ。
「……」
エフフォーリアは、コントレイルをジっと見ていた。咎めるような目つき、侮蔑のような感情が混じっているその視線に、コントレイルはたじろぐ。
「な、なに?」
そう問いかけるコントレイルに、エフフォーリアは──溜息を吐く。
「なにがあったか、興味はないし聞く気はない。だけど」
エフフォーリアはコントレイルを強く睨みつける。
「姉さんはあなたとの対戦を凄く楽しみにしている。多分だけど、ずっとずっと前から」
「ッ!」
「今日みたいなレースをして、姉さんを悲しませたら許さない。それだけ」
そう告げて、エフフォーリアは去っていった。残されたコントレイルは──涙を流す。
(やっちゃった……)
今回の敗戦は──コントレイルの心に影を落とした。
ここからどうするのかコントレイル。