今回、とあるテレビの企画に来ている。
「かつて伝説のジャパンカップを彩った2人!ヴァーディクトデイさんとコントレイルさんの対談!テンション上がりますね~!」
「よろしくお願いします」
「フフ、よろしくねヴァーディ君?」
当時のジャパンカップを振り返る、コントレイルとの対談である。ジュニア級の頃からお互いをライバルだと意識していた俺達、そんな俺達が繰り広げたジャパンカップでの激闘を、この機会に振り返ろうというものだとか。というかあのジャパンカップも懐かしいな。確かレコード勝ちだったっけ?
(エクリプスステークスとキングジョージでもレコード勝ちだったからアレだけど、普通にすげーことだからな)
しかもワールドレコードだワールドレコード。とんでもないぜ。
それはさておき対談だ。さて、どんな話が飛び出してくるのか。
「まずはやはり!あのジャパンカップを語る上では外せないでしょう!」
やっぱレコード勝ち「コントレイルさんがヴァーディクトデイさんを押し倒していたあの光景!まさしくベストショットですよ!」ちげーだろバカ!どう考えてもワールドレコードだろおい!なんで最初に触れるのがそこなんだよ!?コントレイルも頬を染めてるんじゃねぇ!何乙女っぽい感じ出してんだよ!
「あの時は僕も夢中で……気づいたらヴァーディ君を押し倒してました。ちょっと恥ずかしかったですけど……でもヴァーディ君の温もりを感じれたからいいかな?」
「そうか。俺は自分の貞操の危機とジェネ先輩達から送られてくる絶対零度の視線で死の恐怖を感じていたよ」
あの後マジで怖かった。控室ではみんな祝福してたけど、後日学園で会った時がヤバかった。アイ先輩は無言で圧をかけながら詰め寄ってくるし、ジェネ先輩とアレグリア先輩はプリプリ怒りながら詰め寄ってくるし、ドンナ姉さんとエネさんなんて笑顔で詰めてくるから恐怖を感じた。寿命が縮んだかと思ったわあの時は。
「恥ずかしがり屋だね、ヴァーディ君」
「これが恥ずかしがっているように見えるならお前の目は節穴だってことだ」
「仲の良いお2人ですね~」
どこをどう見たらそう見えるんだ?あれ?俺がおかしいだけ?
「さて、あのレースでお互い意識していたことは?」
この質問にはコントレイルが先に答える。
「やっぱり、終盤まで脚をしっかりと溜めることですね。後は位置取り。少しでもミスをしたら負けに繋がるような、綱渡りの状況だったなぁ。まぁ負けちゃったんだけど……」
「どんなに離されても冷静さを保つことですね。あまり差をつけられると、コントレイルに逃げられる可能性が高かったので。ミスができないのはこちらも同じでしたよ」
「というかヴァーディ君速すぎるよ。なにさあの末脚」
「こちとら速さに全振りしてるもんでね。誰にも負けねぇ自信がある」
これは本当のこと。最後の直線の速さ比べなら誰にも負けないという自信があるからな。
「お2人ともジュニア級の頃から意識していたような発言がありますが……どちらが先に意識したとかは?」
「あ~……多分同じタイミングですよ。コイツと目が合ったら、こう、ビビッ!ときたというか」
「僕もヴァーディ君と同じかな?なんていうんだろう……運命的な何かを感じたんです。ヴァーディ君は生涯の宿敵になるって」
「俺も同じ感じですね」
正確には前世の記憶があるからちょっと違うけど。ただ本能で分かる。コイツにだけは負けられないと。
「2人は出会った時から意識し合う間柄だったんですね!」
「概ね合ってます」
なんか含みのある言い方だけど今更だ。ツッコんでたらキリがない。
「他の同世代の方々とはどのように過ごされていますか?」
「僕は……同じチームだからタクトちゃんと良くいるかなぁ。2人でお出かけしたりもするし。後はサリオスやポタジェちゃんなんかと仲良いよ」
「俺はパンちゃん……パンサラッサにラウダシオンですかね?後は同室のディープボンド、サリオスも良く一緒にトレーニングしますよ」
「一番尊敬している先輩は?」
「難しいなぁ……やっぱり、ディープインパクト会長でしょうか?入学した頃から気にかけてもらえてたので」
「……誰を選んでも後々待ち受けている運命が怖い……しいて言うならクロノジェネシス先輩です。チームでお世話になってますし」
これ詰んでね?誰選んでも最終的に詰め寄られね?俺。
「お2人の好みのタイプを教えてください!」
「俺に安らぎをくれるなら誰でもいい」
「うわ、バッサリ……」
当たり前だ!真面目に答えるつもりなんかさらさらねぇ!……まぁほんのちょっと本気だけど。コントレイルは、と?即答するかと思いきや結構悩んでるな?真面目に答えるタイプなのか。
「これも難しいなぁ……ヴァーディ君と同じかもしれません。一緒にいて、安心できる人がタイプです」
「ほうほう……ヴァーディクトデイさんだったりしないんですか?」
おい、誰かこの記者つまみ出せ。誰だコイツ抜擢したやつ。私情入りすぎだろ。コントレイルも苦笑いしてんじゃねぇか。
「ヴァーディ君はどっちかというとライバルって気持ちの方が強いなぁ。好きなのは間違いないし、意識する相手ではありますけど」
記者さんはがっくりした後つまみ出された。残当である。
その後も対談企画は続いていく。
「日々のトレーニングについて、なにか気を付けていることはありますか?」
「僕はあんまり脚が丈夫じゃないので、特に注意してますね。怪我でもしたら大変ですから」
「俺は疲労が溜まりやすい体質でして……ちょっとでも無茶すると明日に響くんですよ。練習量なんかは特に気を付けてます」
記者が変わったことで質問内容もまともなものになっていた。これで一安心である。
「好きな食べ物なんかはありますか?」
「無難に人参かなぁ?これでも結構うるさいですよ」
「なんだろう……生姜焼き?」
「普段出かける場所とかはありますか?」
「静かな場所ですね。最近お気に入りのスポットを見つけたんですよ」
「出かけると大概碌な目にあわないので、基本的に誰かと同伴ですけど……ショッピングモールですね」
「お2人の中で印象に残っているレースを……とは言っても、答えは決まってますかね?」
「そうですね。僕とヴァーディ君も一緒だと思います」
「んじゃ、せーので答えるか。せーのっ」
「「ジャパンカップ!」」
とまぁ。こんな調子で答えていく。
「お互いに、相手の長所はなんだと思っていますか?」
「ヴァーディ君の長所はなんと言ってもスピードですね。最後の直線の末脚が凄いですから」
「賢さ、計算高いところですね。レースを支配している。後コントレイルもコントレイルで最後の直線の伸びが凄いです」
「ドリームトロフィーで戦ってみたい相手は?」
「ヴァーディ君」
「コントレイル」
「ブレませんねぇ」
「まぁちょっとした冗談ですけど。ディープ会長とは戦ってみたいですね」
「アイさんとはまた戦ってみたいかな。後はドンナ先輩とか」
「もし、お2人がお互いが出走したレースのどれかに出れるとしたらどれに出ますか?」
「……秋の天皇賞かなぁ?」
「う~ん……日本ダービー?良く分からん」
「お互いの印象は?」
「ヴァーディ君、キリっとしてますけど凄く人懐っこいですよ。誰とでも仲良くなってますから」
「真面目な優等生。後受話器」
「……それ、僕の白いとこ見ていってるでしょ?」
「いや、だってマジで受話器なんだもん」
「うるさいよ!」
「からかうのはこの辺にして、優等生ですよ。成績も優秀ですし。後お坊ちゃまっぽい雰囲気ある」
◇
小一時間ほど経ち、俺達の対談企画は終わった。
「前半はすいませんでした。ウチの記者の暴走が……」
「アハハ……まぁ気にしないでください」
「そうですよ。それに、僕とヴァーディ君の愛の記録「ないからな?」……フフ」
おい、本当に俺に対してはライバルって気持ちしかないんだよな?怪しい含み笑いには何の意味もないよな?
こうして俺達の対談企画は終わった。結構充実した時間だったな。
「帰りになんか食べて帰るか」
「いいね。実はヴァーディ君といってみたかったお店があるんだよね~」
「マジか。じゃあそこ行こうぜ」
俺とコントレイルは飯を食べて学園へと帰った。
普段は割と仲の良い2人なのかもしれない。