さて、今日はパンちゃん達とのお出かけな訳だが。
「眠いよ~……」
「ほら、起きろってプボちゃん。もう良い時間だぞ?」
「そうはいってもさぁ……ふあぁ……」
プボちゃんと2人、残りのメンバーを待っている。他にもパンちゃんがいたのだが、パンちゃんは飲み物を買ってくる!とこの場を離れているので俺とプボちゃんの2人だ。後はラーシーとサリオスを待つだけだな。
眠そうにしているプボちゃんにちょっと罪悪感が湧くが、これも前日にプボちゃんからお願いされたことなので心を鬼にする。
(プボちゃんはのんびりしてるからなぁ。前世でもそうだったけど)
一度エンジンが入るとそうでもないんだけど、平常時はかなりのんびり屋。ズブい、って言うんだっけか?まぁそんな調子なので、お出かけの前の日にお願いされたのだ。
「お願いヴァーディ君!ヴァーディ君が出る時間にぼくも起こして!」
「いや、そりゃいいけど……大丈夫か?パンちゃんほどではないけど俺も早く出るぞ?」
「良いよ!そうでもしないとぼく、また遅刻しちゃうもん!」
と、まぁ。こんなことがあったのだ。肝心のプボちゃんはやっぱり眠そうにしているけど。
しばらく待っているとパンちゃんも戻ってきて。
「よーっす。やっぱ早いなオメーら……珍しくボンドもいるな」
「ふむ?本当だね。これは珍しい」
ラーシーとサリオスが揃ってやってきた。集合時間の5分前、しっかりしている。プボちゃんも2人が来る頃には完全に覚醒していた。
「いやぁ、ヴァーディ君に起こしてもらったからねぇ。さすがにもう遅刻するわけにはいかないから~」
ふんぞり返るプボちゃんだが、さっきまで眠そうにしていたのは黙っておこう。
プボちゃんの言葉に嬉しそうにするサリオスと悔しがるラーシー。うん?対極的な反応だな。
「フッ、賭けはこのサリオスの勝ちのようだな!」
「チッ、仕方ねぇ……今回のボウリングの代金奢ってやるよ」
「人が遅刻するかしないかで賭けないでよ!」
あぁ、そう言うこと。プボちゃんが遅刻するかしないかで賭けてたのか。プボちゃんはぷりぷり怒ってるけど。
仲良く談笑していると、待ちきれない様子のパンちゃんが走り出した。
「みんな!早速行こうぜ!」
「あーはいはい。分かったからそんなに慌てるなってパンサラッサ。別に施設は逃げやしねーんだから」
「さぁ、今日はしっかりと楽しもうじゃないか!」
「とりあえずみんな、俺から離れないでくれ。離れたら俺になにが起こるか分からんからな」
「ヴァーディ君に何か起こることは確定なんだね。いや、いつもそうだけど」
今日のお出かけ、目一杯楽しむとしますか!
◇
さぁいつも通りボウリング!……と、思ったのに、やってきたのは服の店である。なんで?
「まずはオメーの服装をなんとかするぞ、ヴァーディ」
「え、なんで?……なんか問題ある?」
いつものパーカーにノースリーブのシャツ、そして黒のパンツスタイルだけど*1……問題あるのだろうか?
ただ、俺の言葉が気に入らなかったのか総ツッコミを食らった。
「問題大ありだオメー!百歩譲ってズボンは良いけど、上の露出が激しすぎるんだよ!」
「は、はぁ!?クリスエス先輩だって似たような格好してるだろ!俺だっていいだろうが!」
「いや、クリスエス先輩はジャケットをちゃんと羽織ってるから様になっている。だがヴァーディ、君はパーカーすら着崩しているじゃないか」
「良いじゃんか別に!それの何が問題あるんだよ!」
「問題しかないよ……隣を歩くぼく達の身にもなってよ……」
な、なんだよプボちゃんまで!それにパーカーを着崩してるって言っても、ちょっと肩が出てる程度だろ!?
「ヴァーディのはちょっとで済ませていい範疇じゃないと思うぞ!」
「んな!?ぱ、パンちゃんまで!?……さすがにマズい、のか?」
「そうだヴァーディ。あのパンサラッサまでもが思ってることだぞ。てか肩が出てる程度じゃねーよ。オメーの場合肘まで出てんじゃねーか」
「最早パーカーの体を成していないな」
全員から総ツッコミを食らう俺のファッションである。いや、でも!仕方ない部分はあるんだ!
前提として、俺には前世の……馬としての記憶がある。それが原因でもあるのだ。
考えてもみて欲しい。馬って基本全裸だろ?たまに、本当にたま~に、なんか着せられることはあるけど、それ以外は基本全裸だ。いや、毛とかあるけどね?ともかく、俺はそんな状態で30年近く過ごしていたわけだ。人間だった頃に感じていたことなんてほぼ忘れている。
……まぁ、つまるところ。厚着をしていると落ち着かないのである。こらそこ、痴女とか言うんじゃない。俺だってどうかと思ってんだから。
一度、冬の頃に親に厚着をさせられたことがある。でも、あまりにもムズかゆかったので全部脱いだ。親にはびっくりされたが、俺としては気に入らなかったのである。厚着をすることが。
「ど、どうしちゃったのヴァーディ?寒くないの?」
「なんか……ヤだ!落ち着かない!」
「いや、そう言われても……風邪を引いちゃうよ?」
今となっては良い思い出……なのか?
とにかく、俺は厚着をするというのが好きじゃない。今の格好だって結構ギリギリなんだぞ?
「オメー、その格好で今度コントレイルと出かけるんだろ?断言してやる、ゼッテーろくな目に遭わない」
「コントレイルに対する信頼0だなお前」
いくらアイツでもそこまで……いや、ちょっと怪しいな。
「だからせめて、我々でヴァーディの服を見繕ってやろうと思ってね。素材は良いわけだし」
「ヴァーディ君イケメン寄りだからね。なんでも着こなせそうだし。後コンちゃんが心配だし」
「コントレイルがヤバいっていうからパンも頑張るぞ!」
悲しきかな、この場にいる全員コントレイルへの信頼は0である。アイツもアイツで良いヤツではあると思うよ?俺が絡まなければ。
「ちなみに、コントレイルの方はどうなんだよ、ボンド。ヴァーディが見ても大丈夫か?」
「コンちゃんは普通だから問題ない、と思う。さすがのヴァーディ君でも大丈夫でしょ」
「コントレイルばかりが目立つが、ヴァーディも大概だからね……この2人は本当に」
「そーしそーあい?ってヤツだな!」
聞こえてんだよ!誰が相思相愛じゃい!アイツにはライバル以外の感情は湧かねーよバーカ!
そして始まる俺の服選び、もといひとりファッションショー。
「どーよ?やっぱこういうのは王道で攻めるべきだろ」
ラーシーがチョイスしたのは普通にカッコいい系の服装だった。俺のパンツスタイルはそのままに、上をちょっと厚着したような感じのヤツ*2。
「お~、カッコいい~。でもなんか……」
「ありきたりすぎて普通だね。こう、意外性が欲しいな」
「服に意外性とかいるのかよ。なんだかんだこいつにはこーいう王道系が似合うっての」
悪くないが……やはり落ち着かない。いつもの格好が落ち着くんだけどなぁ。
次はサリオスのチョイス。サリオスのチョイスはというと……。
「どうかな?私は意外性、そう!カッコよさではなく可愛さを追求してみせた!するとどうだ?新しい扉が開いたではないか!」
「おぉ~……これは確かに」
「悪くねーな」
ラーシーとは真逆の可愛い系だ。こう、ゆるふわ系のポップな服装。一見ミスマッチか?なんて思ったものの、思いの外好感触である。
「ヴァーディ君って意外と童顔なんだね。こういう系も似合うんだ」
「なんでも着こなせるじゃねーかコイツ。腹立つな」
「うるせーよ」
これも落ち着かないが……せっかく選んでくれたものだ。これも籠にぶち込んでおこう。
次にプボちゃん。プボちゃんは。
「どうどう?ガーリー系も悪くないと思わない?」
「こうなると印象変わってくるな……てか本当に何でも着こなすね、ヴァーディ」
「そうかぁ?あんま自分じゃ分かんねぇけど」
ガーリー系、少女っぽい感じの服装である。プボちゃんがこういうのを選ぶとは珍しい。てっきりもこもこしたものを選ぶと思っていたのに。
「ふふ~ん、ぼくだってやる時はやるんだよ?」
「ボンドのチョイスも悪くねぇ。これも視野だな」
「とりあえず籠に入れておくか」
そして最後。パンちゃんチョイスなんだが。
「どうどう?パンと同じ服!」
「……これはこれで似合ってるのは一周回ってすげーよオメー」
マフポケット?っつーポケットがついてるパーカーだ。なんていうか、こう、子供っぽい感じのパーカー*3。しかもスカートである。落ち着かないとか別にそんなことはないけど、アレだな。
(ゆーてプボちゃんのもスカートだったか)
なんやかんや悩んだものの、パンちゃんがキラキラした目で見てくるので結局これも買い。服のレパートリーが一気に増えたな。ちなみにその後も何着か着たけど、明らかにネタ臭が凄かったのでNGである。何だ地雷系ファッションって。マインスイーパーかなにかかよ。
◇
服を買い終わった後はいつも通りみんなと遊んだ。ボウリングだったり。
「うあうあ~、またガーターだよ~……」
「変に手をねじってるからボールが曲がんだよ。真っ直ぐ投げることを意識してみな」
「ところでヴァーディがまた女性にナンパされているが、助けに行くべきか?」
「ほっとけ」
「助けろや!」
カラオケに行ったり。
「う~、ウマだっち!」
「「「うまぴょい!うまぴょい!」」」
「ところでうまぴょいって何だろうな!」
「多分触れてはいけないものだろう、パンサラッサ。深く考えたら負けだ」
学生らしく過ごした……スッゲー懐かしい気がする。こうやって過ごすの。悪くねぇな。
夕焼けに染まった空、俺達は学園へと帰る。
「あ~遊んだ遊んだ!やっぱ楽しいな、みんなで遊ぶのは!」
「パンも楽しかったぞ!またみんなであそぼーな!」
「ま、同意だ。こーやってバカやるのが一番楽しい」
みんなも同じ気持ちだったようで、口々に楽しいと話していた。うん、このメンバーがやっぱ落ち着くわ。
「いつまでもこうやって過ごしていたいね~」
「過ごせばいいじゃねーか。大人になってもまたこーやって集まって、みんなでバカすればいい」
「お、たまにはいいこと言うじゃねぇかラーシー」
「ウッセ。お前らだって同じこと思ってるだろうが」
「「「当然!」」」
笑いながら学園へと戻る。今日も楽しかったな!
次はコントレイルとのお出かけ回ですかね。大変なことになりそう。