飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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ターニングポイント。というかアフゴ君ってこの頃からいたんですね……。


運命の転換点

 

宝塚記念

 

 

枠順番号馬名性齢人気

1
1トーセンカンビーナ牡411

1
2ペルシアンナイト牡614

2
3グローリーヴェイズ牡55

2
4アフリカンゴールドセ518

3
5サートゥルナーリア牡4
1

3
6トーセンスーリヤ牡515

4
7ワグネリアン牡57

4
8レッドジェニアル牡416

5
9ヴァーディクトデイ牡312

5
10メイショウテンゲン牡417

6
11ラッキーライラック牝5
3

6
12モズベッロ牡413

7
13ダンビュライトセ610

7
14キセキ牡66

7
15スティッフェリオ牡68

8
16クロノジェネシス牝4
2

8
17カデナ牡69

8
18ブラストワンピース牡54

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レース前に、色んなことが頭に浮かんできた。

 コントレイルに言われたこと。

 

 

『一生懸命さが足りない?』

 

 

 ラウダシオンに言われたこと。

 

 

『この先のレースで勝ちたいんだったら、自分の本能を無理矢理抑えつけて走るな』

 

 

 そして、金添さんに言われたこと。金添さんには今日も言われた。

 

 

「君はまだ自分の力の使い方を分かっていない」

 

 

 誰も彼もが俺は本気で走っていないという。だからか、凄く疑心暗鬼になっていた。本当の俺の実力って、こんなものなのか?本当は、もっと先があるんじゃないかって。そう思うようになってきた。

 

 

(……後、さっきから俺に身体を寄せてくるこの馬は誰なんだ?)

 

 

 さっきから俺に身体を寄せてくる馬がいるのだ。誰なんだよこの馬!?どうせ牝馬だろうけどさぁ!

 

 

『ウフフ、可愛いわね君』

 

 

『あ、あの。なんか用ですか?というかどなたですか?』

 

 

『あら、これは失礼。私はラッキーライラックよ。末永くお見知りおきをね』

 

 

 ヒィッ!?なんかゾクってしたんだけど!?何されんの俺!?

 

 

「あの、ラッキーライラックはどうしたんですか?」

 

 

「そ、それガ。ボクにも分からなくテ。いつもハこんなことないんだけド」

 

 

 すいません、俺のせいです。でもどうしよう?このままってわけにも『こらー!ヴァーディ君から離れてよライラックさん!』く、クロノジェネシス先輩!救世主きた!

 

 

『ヴァーディ君怖がってるじゃん!早く離れて!』

 

 

『あら。大阪杯で私に負けたクロノジェネシスじゃない。嫉妬かしら?』

 

 

『ムッキー!うるさいうるさい!今日はわたしが勝つんだから!』

 

 

 これが女の争いってヤツか。俯瞰していると、クロノジェネシス先輩の鞍上に目が行く。

 

 

「ヴァーディ……」

 

 

 滝村さんだった。どうやらクロノジェネシス先輩に騎乗するらしい。あの後聞いた話だが、どうやら滝村さんは俺の主戦騎手を外されたらしい。なんていうか、俺が勝てなかったことが関係しているのか申し訳なく感じる。だからと言って手は抜かないけど。

 

 

《11番のラッキーライラックと16番のクロノジェネシスが睨み合っているように見えますね。おそらく、大阪杯でのことを覚えているのでしょうか?しかし間に9番のヴァーディクトデイがいるのが気になりますね》

 

 

《両手に華ですね。羨ましい限りです》

 

 

 うるせぇよ!だったら今すぐ代わってやろうか!?

 そんなひと悶着があったものの返し馬が終わって枠入りが始まる。今回も奇数番なので最初の方だ。

 

 

「いいかい?ヴァーディ。何があっても僕を信じてくれ。そして……君自身を信じるんだ」

 

 

 枠入りの方で金添さんにそんなことを言われた。何があっても信じる?まぁ、そのつもりだけど。

 

 

(俺自身を信じるってのはどういうことだ?)

 

 

 別に自分のことを疑ったことなんてないが。いや嘘ついたわ。現在進行形で疑ってるわ俺。というかゲートで待っている間、やなことばっかり思い出してしまう。

 一生懸命じゃないだの、良い子ちゃんぶるの止めろだの。わけわからんことばかり言われる。俺ってそんなに本気を出してない風に思われているのだろうか?それはそれでなんとなく癪だ。だけど……コントレイル達の言葉を否定しきれない自分がいる。

 本当はもっとやれるんじゃないか?俺の本気は、まだ先があるんじゃないか?限界を決めつけてるだけなんじゃないか?そう思うのだ。

 

 

(バカバカしい。そんなことあるわけが……)

 

 

 けど、完全には否定できない。それが答えのようで……また考えが堂々巡りになる。

 そして、考え事に夢中だから気づかなかった。

 

 

「ガコンッ!」

 

 

 ゲートが開いたことに。気づくのに数瞬遅れてしまったっ!?

 

 

(やっべぇ!?出遅れた!)

 

 

 急いで出ないと!出遅れは確か、かなり致命的なことのはずだ!特に好位置につけられなくなる!だから何としてでも前に出ないとッ!?

 けど、焦る俺に待ったをかけるように金添さんが手綱を締めた。抑えろと、まだ行くなと言わんばかりに手綱を締める。嘘だろ!?

 

 

(このままじゃ好位置につけねぇって!それがどんだけ不味いか、金添さんなら分かるだろ!?)

 

 

 だけど、金添さんは。

 

 

「僕を信じてくれ、ヴァーディ」

 

 

 それだけ答えて、手綱を締めた……あぁもう!

 

 

(わーったよ!だったら我慢するよ!)

 

 

 俺の現在位置は……最後方。前との差は2馬身はついているだろうか?下手すりゃこのままポツンと一人旅になるんじゃねぇの?俺がいるの一番後ろだけど。

 

 

 

 

《宝塚記念が幕を開けました、っと!これはヴァーディクトデイ出遅れた!ヴァーディクトデイが痛恨の出遅れ!対称的にサートゥルナーリア好スタート。キセキはまずまずのスタート、しかしはこれはハナは切れないか?先行争いになります。サートゥルナーリア上がってきて内から6番のトーセンスーリヤが上がってきた!》

 

 

《ハナを切るのはトーセンスーリヤになりそうですね》

 

 

《そして7番のワグネリアンが2番手。ワグネリアンが上がっていきました。続いてラッキーライラックも上がっていく!11番のラッキーライラックが3番手!ラッキーライラックが好位につけている。そしてダンビュライト、ペルシアンナイトと続きます。13番ダンビュライトの後ろにピンクの帽子クロノジェネシスだ!16番のクロノジェネシスも好位につけている!後方グループには14番のキセキ。キセキは後方からのスタート。そして後方集団から2馬身程遅れてヴァーディクトデイ。9番のヴァーディクトデイは最後方からのスタートとなりました》

 

 

《これまで抜群のスタートを決めていた馬ですが自分よりも上の年齢の馬だらけでちょっと委縮してしまったか?ここからどうするか見ものです》

 

 

《3歳馬ヴァーディクトデイは最後方からのスタート。先頭は第1コーナーを回ります。ここからどういった展開を見せるか?》

 

 

 

 

 金添さんは相変わらず手綱を締めている。俺が少しでも行こうとする素振りを見せると、すぐに手綱を締める素振りを見せるのだ。まだこのタイミングじゃない、焦る必要はないとばかりに。

 

 

(何考えてんだ金添さん?)

 

 

 少なくとも、俺なんかよりもよっぽど考えているだろうけど、それでも焦りは生まれてしまう。最後方からのスタートなんて初めてだし、経験なんてしたことない。前を走る馬が、滅茶苦茶()()()()

 

 

 

 

《各馬第2コーナーを回っています。ファンのみなさんの夢18頭散らばりました。先頭から見ていきましょう。先頭は6番のトーセンスーリヤ。その1馬身後ろ増永騎乗のワグネリアンがつけています。3番手は内にペルシアンナイトその横にはダンビュライト。5番手にラッキーライラック、大阪杯覇者のラッキーライラックはこの位置だ。内から4番アフリカンゴールド、外から大外枠18番のブラストワンピース》

 

 

《ラッキーライラックは好位置につけていますね。折り合いもついているように見えます》

 

 

《そうですね。これは好走に期待できます。15番のスティッフェリオ、その外に16番のクロノジェネシス滝村騎乗。折り合いはついているかどうか?そしておぉっとここにいましたサートゥルナーリア!サートゥルナーリアは丁度中団の位置につけています!後方の位置からはキセキがじんわりと上がっていきます。グローリーヴェイズも後方集団に控える。ヴァーディクトデイは変わらず最後方。金添との初コンビヴァーディクトデイ。この騎乗にはどのような意図があるのか?》

 

 

 

 

 クソ!向こう正面に入っても変わらず最後方……!気持ちだけが焦っていく。気持ちだけが先走りしそうになる。

 

 

(もしかして、金添さんは勝つ気がないのか?)

 

 

 そんなことを一瞬だけ考えるが、それだけはないとすぐに切り捨てる。何故って、そんなことしても金添さんには何の得にもならないからだ。だからきっと、この騎乗にだって意味があるはずなんだ。

 第3コーナー。変わらず最後方。そろそろ気持ちが爆発しそうになってきた。

 

 

(もう第3コーナーの半ばを過ぎて、第4コーナーに入りそうだぞっ!?いつになったら行くんだよっ!)

 

 

 そう思った第4コーナーの中ほど。6のハロン棒が見えたその瞬間。ついに金添さんの鞭が入った。つまりは、ここで行けという指示。だけどっ。

 

 

(本当に大丈夫か?けど、行くしかねぇっ!)

 

 

 俺は、()()()()()()()()()()()走る。前との差を徐々に縮めていく。

 

 

 

 

《第4コーナーの中ほどを過ぎました。依然としてトーセンスーリヤの逃げですがあぁっとここで!ここで動いてきた!ここでクロノジェネシスが動いてきた!その内からラッキーライラック!ラッキーライラックが一気に先頭に立ちます!ラッキーライラックの外にクロノジェネシス!大阪杯の2頭が第4コーナーで並んできた!現役最強を証明するかラッキーライラック!大阪杯の雪辱を晴らすかクロノジェネシス!この2頭が先頭で最後の直線に入った!》

 

 

 

 

 

 最後の直線に入る前、嫌でも気づく。

 

 

(こっから、どう頑張っても追いつけねぇ……!)

 

 

 ただでさえクロノジェネシス先輩は速い。何度も併走したことがあるから知っている。だからもう、追いつけないッ!?

 

 

(なんでだよ、金添さん)

 

 

 金添さんから、もう一度鞭が入った。そして、鞭を通して伝わってきた。

 諦めるなと。お前の力は、まだこんなものじゃないと。

 

 

(なんで俺をそんなに信じるんだよっ)

 

 

 これが俺の全力だ。だから、もう追いつけないんだ!そう思った時、金添さんの言葉を思い出す。

 

 

「僕を信じて欲しい」

 

 

 その言葉を思い出して。向こうは俺を信じてくれるのに、俺は信じなくていいのか?そう考えて。

 

 

『あぁ分かったよ……!だったら、やってやるよ!』

 

 

 俺は、()()()に頑張ってみることにした。そのために、今以上に体勢を低くする。

 こっちはさっきからフラストレーションが溜まってんだよ……!これを全部!解放してやる!

 

 

『全員、ぶち抜いてやらぁ!』

 

 

 最後の直線。俺は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の直線に入る前。ヴァーディにもう一度鞭を入れる。

 

 

(君の限界は、こんなものじゃない!もっとやれるだろう、ヴァーディ!)

 

 

 そんな意味を込めて。僕はもう一度鞭を入れる。ヴァーディの全力を引き出させるために、僕は鞭を入れた。

 前との差はかなりある。ここから追いつけるかどうかはかなり微妙なところだ。だけど、ヴァーディならここからでもきっと!

 そう思った矢先。

 

 

(?なんだ?ヴァーディの雰囲気がっ!?)

 

 

 そんなことを思ったのもつかの間。僕の身体に、凄まじい衝撃が走った。思わず手綱を離しそうになるけど、気合で持ち堪えるッ!

 

 

(な、んだっ!?いや、これは……もしかしてっ!)

 

 

 さっきまでのスピードや、これまでの調教とは()()()()()()()()を感じる。今までとは比べ物にならない、段違いの手応えだ!他馬を外から、瞬く間に躱していく!

 

 

(は、ハハハ。成程、成程ッ!これが、本当の君か!)

 

 

 これなら、いける!ヴァーディは外から他の馬を一気に躱していく!残り200!いける、いけるぞ!

 

 

 

 

《トーセンスーリヤとアフリカンゴールドも粘りますがラッキーライラックとクロノジェネシス相手に粘り切ることはできてませんね。徐々に沈んでいってますっと、サートゥルナーリアこれはっ!》

 

 

《サートゥルナーリアはおっと!サートゥルナーリア中団に下がった!サートゥルナーリアピンチだ!もしかしてここで終わってしまうのかサートゥルナーリア!そして先頭はクロノジェネシスに代わった!16番のクロノジェネシスだ!クロノジェネシス先頭!残り200を切ってクロノジェネシスが2馬身!3馬身と差を開いていく!》

 

 

《強い走りですね!これはもう決まったっ!?な、なんと!?》

 

 

《どうされましたか?先頭はクロノジェネシス!これはクロノジェネシスで決まっ、とこ、これはぁ!?外から猛然とヴァーディクトデイが上がってきたぁ!?今回の宝塚記念唯一の3歳馬ヴァーディクトデイが凄まじいスピードで上がってきている!?コレは凄まじい脚だ!1頭、また1頭と躱していく!そして2番手キセキを躱したぁ!クロノジェネシスに襲い掛かるヴァーディクトデイ!残り100を切りました!クロノジェネシスが粘る!しかしクロノジェネシス以上のスピードでヴァーディクトデイが上がってくる!2馬身!1馬身と差を詰めていく!まさか!偉業を成し遂げるのかヴァーディクトデイ!》

 

 

 

 

 クロノジェネシスとの差を詰めていく。滝村君が凄く驚いた表情でこちらを見ていた。悪いけど、貰ったよ!そう思ったけど。

 

 

 

 

《しかしクロノジェネシス譲らない!これはさすがに届かなかったヴァーディクトデイ!宝塚記念を制したのはクロノジェネシスだぁぁぁぁ!2着はクビ差でヴァーディクトデイ!3着は6馬身離されてキセキ!キセキです!》

 

 

 

 

 

 さすがに届かなかった。徐々に減速しつつ、反省点を考える。

 

 

(仕掛けるのをもう少し早めれていれば……勝てたかもしれない)

 

 

 それぐらいの勢いがヴァーディにはあった。今回の宝塚記念、仕掛けるタイミングをもう少し早めていれば勝てたはずだった。

 だが、これが結果だ。受け入れるしか?

 

 

「ヴァーディ?どうしたんだい?」

 

 

 ヴァーディは、頭を俯かせたまま動こうとしない。も、もしかして!怪我でもしたのかっ!?僕は急いで降りてヴァーディの様子を見る!

 

 

 

 

《いやぁ、これはもう、あわや!ってところまで追い詰めましたね!クロノジェネシスもこれにはホッとしていることでしょう!》

 

 

《そうですねぇ!続々と他の馬がゴールしています。タイムも、出ました。稍重となった今回の宝塚記念クロノジェネシスのタイムは2:13.5!2:13.5です!しかしそれ以上に衝撃を残したのはヴァーディクトデイ!間違いなく今回の上がり最速を計測したのはヴァーディクトデイでしょう!が、おっと?コレはヴァーディクトデイにアクシデント発生か?ヴァーディクトデイがうつむいたまま動かないぞ!?》

 

 

 

 

 ヴァーディの様子を見るけど。

 

 

(……見た感じ、どこにも異常はない。健康そのものだ)

 

 

 だけど、ヴァーディは俯いたまま動かない。どうしてだろうと考えて、ふと気づいた。

 

 

(もしかして、悔しいのか?ヴァーディ)

 

 

 よく見れば、目から涙が流れていた。それだけヴァーディは悔しかったのだろう。今日の敗戦が。

 

 

(だけど、ヴァーディはこれからだ)

 

 

「君はこれからだ。これから頑張っていこう。ヴァーディ」

 

 

 僕はヴァーディを撫で続けた。ヴァーディが自分の意志で歩き出すまでずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう少しだった。もう少しで今日のレースは勝てた。

 勝てなかったことは勿論悔しい。それは、皐月賞の時もNHKマイルの時も感じていた。でも今日の敗戦は、前の2つとは比べ物にならないぐらい悔しい。

 だが、それ以上に感じるのは──自分に対する軽蔑。

 

 

(なんだよ……今日の、最後の直線のアレは?)

 

 

 よく覚えている。今までの自分とはまるで違う、段違いの加速。自分が本気だと思っていた加速とは全然違う、別次元の加速を感じた。

 それがあらわすことは。

 

 

(今までの、俺が本気だと思っていた走りはっ)

 

 

『全然、本気じゃなかったってことかよッ!』

 

 

 自分が強いという嬉しさよりも、自分が今まで本気だと思っていたスピードが全然本気ではなかったということに心底軽蔑する。

 

 

『あぁもう!負けた負けた!黒鹿毛君慰め、って!?ど、どうしたの!?』

 

 

『ヴァーディ君に近寄らないでよライラックさっ!?ヴ、ヴァーディ君!?どうしたの!?』

 

 

 何が本気で走っているだ。自分で限界を決めつけて、その限界を全力だと思っていただけの、ただのバカ野郎じゃねぇかよ俺はッ!

 今ならコントレイルやラウダシオンが言っていたことが分かる。俺は本気で走っていたつもりでも、アイツらには俺が余力を残していたように感じていたんだろう。あぁ間違いねぇよ。だって、他ならない俺自身がそう実感しているんだから。

 

 

(本当に、本当に、クソ野郎じゃねぇかッ!俺はッ!)

 

 

 他は一生懸命走っていたのに、俺は一生懸命じゃなかった。そんなこと、勝負に携わる全員に対する()()()()()だ。

 そして、気づく。気づいてしまう。

 

 

(これが俺の本気ならっ。皐月賞だって、NHKマイルだって!)

 

 

 勝てるレースだったんだ!俺が、俺がもっと本気で走っていれば!どっちも勝てるレースだったんだ!だけど落としてしまった!俺が、本気で走らなかったから!この宝塚だってそうだ!俺が最初っから金添さんを信じていればっ!勝てるレースだったんだ!疑ってしまったから、仕掛けが遅れてしまった!それさえなければ勝てるレースだったんだ!

 思えば滝村さんはNHKマイルの時浮かない表情をしていた。それに、海藤さんとの会話で俺の力を引き出せていないという言葉を聞いたことがある。

 あの時は分からなかった。だけど、今なら分かる。つまりは、俺が本気を出さなかったせいで滝村さんは。

 

 

(俺の、せいだ。俺が、本気で走らなかったから。滝村さんは責任を感じてッ!)

 

 

 そしてそのせいで、滝村さんを追い詰めてしまったんだ。

 

 

(滝村さん、あなたは悪くねぇよ!全部、全部俺がっ!)

 

 

『悪いんだ……ッ!』

 

 

『ヴァーディくん!本当にどうしたの!?』

 

 

『あ、脚が痛むのかしら!?とにかくしっかりなさい!誰か!誰かー!メディーック!』

 

 

 金添さんに撫でられている。ラッキーライラックさんとクロノジェネシス先輩の心配するような声を聞きながら。

 

 

『ごめんなさい……ッ!ごめんなさい……ッ!』

 

 

 懺悔をするしかなかった。




気づいた自分の本当の実力。感じたことは──自分に対する軽蔑。
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