| 【世紀の一戦!三冠馬三頭が揃ったジャパンカップ!
開催が迫るジャパンカップ。今回のジャパンカップは次こそはG1 8勝目を手にしたいアーモンドアイに加え、10月18日の秋華賞で史上初の無敗の三冠牝馬に輝いたデアリングタクト、10月25日の菊花賞で史上3頭目となる無敗の三冠馬に輝いたコントレイルを交えた、三冠馬達の夢の共演となっている。またアーモンドアイは今回のジャパンカップを最後に引退を表明しており、国木調教師は「なんとしてでも勝ちたい」と決意を露わにしていた。アーモンドアイは11月1日に開催された天皇賞(秋)にてコントレイルとデアリングタクトの同期にあたるヴァーディクトデイに敗れ、惜しくもG1 8勝目を逃した。
一方コントレイル陣営は1週間前追い切りで体調不安が心配されていたが、当週の追い切りにおいてその不安を一掃。増永騎手は「調子が良くなってて驚いた」の声。矢萩調教師も「自分で調整してきた。普通の馬じゃない」と評した。
デアリングタクト陣営は騎手・調教師ともに「良い状態で出られそう。前走(秋華賞)のダメージは感じられない」とジャパンカップに向けて万全の状態であるとコメントしていた。
現役最強牝馬のアーモンドアイがG1 8勝目を手にして有終の美を飾るか?それとも天皇賞(秋)同様、新世代の三冠馬が勝利を飾るのか?注目の一戦は11月29日に開幕である。 ・ ・ ・ |
ジャパンカップ
| 枠順 | 番号 | 馬名 | 性齢 | 人気 |
1 | 1 | カレンブーケドール | 牝4 | 5 |
2 | 2 | アーモンドアイ | 牝5 | 1 |
2 | 3 | ワールドプレミア | 牡4 | 7 |
3 | 4 | キセキ | 牡6 | 6 |
3 | 5 | デアリングタクト | 牝3 | 3 |
4 | 6 | コントレイル | 牡3 | 2 |
4 | 7 | ミッキースワロー | 牡6 | 10 |
5 | 8 | ウェイトゥバリス | 牡7 | 9 |
5 | 9 | トーラスジェミニ | 牡4 | 15 |
6 | 10 | パフォーマプロミス | 牡8 | 12 |
6 | 11 | クレッシェンドラブ | 牝6 | 14 |
7 | 12 | マカヒキ | 牡7 | 11 |
7 | 13 | ユーキャンスマイル | 牡5 | 8 |
8 | 14 | ヨシオ | 牡7 | 13 |
8 | 15 | グローリーヴェイズ | 牡5 | 4 |
レースが始まる前、鹿毛の知らない馬がぼくをジッと見ていた。
『……』
どちらかというと、ぼくともう一頭──デアリングタクトって子。ぼくと同じで、無敗の3冠を取った子。つまり強い子だ。
(あの不思議な黒い子は……いないか)
まだ1回しか会ったことないけど。ぼくが負かした子。他の子達と違ってなんというか、闘志が薄かったから覚えている。まぁそれぐらいの認識しかないんだけど。
『あなた達、強いらしいわね?』
そんな時、件の鹿毛の馬が話しかけてきた。まさか話しかけられるとは思わなかったから、ちょっと困惑。
『うん、強いよ。ぼくは強い。みんなそう言ってる』
だけど、それだけは自信がある。ぼくは強いっていう確かな自信が。それはデアリングタクトも同じみたいで。
『そうよ。だから今日はあなた達を抑えて、わたしが最強だということを分からせてあげる』
確固たる自信を持っているみたいだった。だけど、ぼく達の宣言を聞いても鹿毛の馬は特に気にした様子をみせなかった。というか、雰囲気で分かる。あぁ、この馬は強いのだと。
『自己紹介が遅れたわね。私はアーモンドアイ、あなた達と同じ三冠馬……そして、今日のレースであなた達を負かす馬の名前よ』
自信たっぷりに、そう告げた。感じる圧はさらに強くなる。凄いプレッシャー。だけど負けてられない。ぼくにも、意地があるから。
『ぼくはコントレイル。今日のレースで勝つ馬』
『デアリングタクト。威勢だけにならないようにね』
『そう。コントレイルにデアリングタクト……今日は楽しませてちょうだいね……ヴァーディの坊やのように』
ヴァーディの坊や?どの子のことだろう?ぼくと同じ世代だったりするのかな?
そんなやり取りがあったレース前。現在はすでに終盤戦。ぼくは真ん中から先頭に躍り出ようとしていた。
《ジャパンカップ先頭のキセキが第4コーナーを回りました!先頭はキセキ、キセキの強烈な一人旅が続いておりますジャパンカップ!三冠馬3頭が揃ったこの世紀の一戦を制するのは一体どの馬なのか!?キセキが逃げて、逃げて。逃げまくって!最後の直線を迎えております!アーモンドアイは前から4頭目!その近くにはデアリングタクト!デアリングタクトもおります!そして外から!馬場の真ん中から6番のコントレイルが上がってきている!頑張っているのは4番のキセキ!このまま逃げ切ることはできるか!?頑張れるかキセキ!》
《2番手はまだかなり差がありますね!》
今回はハイペースということで中団に控えていた。前を走る馬達のペースは落ちている。後はこのまま先頭に躍り出て勝利を勝ち取る。それが今回の勝ちパターン。坂を上り終わって、後は先頭を捉える。
(これで、勝てる!)
その、はずだった。
だけど、どれだけ必死に走っても──アーモンドアイって馬には追いつけない。必死に脚を回すけど、アーモンドアイさんには追いつけないのだ。疑問を挟む前になんとか追いつこうと粘る。
《15番のグローリーヴェイズ!グローリーヴェイズ!それを追いかける2番のアーモンドアイ!アーモンドアイが2番手に躍り出た!最強女王が2番手に躍り出る!残り200を切った!外から6番のコントレイル!無敗の3冠馬コントレイルが来ている!そして内にはデアリングタクト!デアリングタクトが追い込んでくる!しかしアーモンドアイがついにキセキを捉えて先頭に立った!アーモンドアイが後続を突き放す!》
《コントレイルとデアリングタクトもアーモンドアイに肉迫しようとしていますが、これは!》
《三冠馬の共演だ!三冠馬の夢の共演だ!しかし、しかし!アーモンドアイ突き放す!アーモンドアイが新世代三冠馬の2頭を突き放す!アーモンドアイ強し!グローリーヴェイズとカレンブーケドールも上がってくるがこれはアーモンドアイだ!》
不味い、不味い!このままだと負けちゃう!それは嫌だ、絶対に嫌だ!だから、もっと頑張ってぼくの脚!
その願いとは裏腹に。アーモンドアイさんの姿はさらに遠くなる。おかしい、ぼくの脚だって負けてないはずなのに、どうしてかあの馬には追いつけない。
『……あっ』
気づいた時にはぼくはゴール板を駆け抜けていて。それよりも先にアーモンドアイさんは駆け抜けていた。
《なんとアーモンドアイ!アーモンドアイが今先頭でゴォォォォォォォォルイン!ついにルドルフの壁を越えた!アーモンドアイ強し!見事に有終の美を飾りましたアーモンドアイ!そして、これでG1を8勝目!3度目の挑戦でついに皇帝越えを成し遂げましたアーモンドアイ!これが現役最強牝馬の実力だ!新世代三冠馬の2頭をまとめて下した最強女王アーモンドアイ!2着はコントレイル着差は3馬身!3着はデアリングタクト!三冠馬3頭が上位を独占しました!》
《いやぁ……今後このようなレースが見れるのだろうかという世紀の一戦!最高のレースでしたね!》
《そうですねぇ、しかしやはりアーモンドアイは強かった!ついに成し遂げた皇帝越え、見事という他ないでしょう!》
……負けた。初めて、負けた。
(あぁ、ぼくが負かしてきた子達は……こんな気持ちだったのか)
悔しい、凄く悔しい。なんて言えばいいんだろう?とにかく悔しい。次走る時はリベンジしたい。リベンジして、今度はぼくがアーモンドアイさんを負かす。それはデアリングタクトも同じみたいで。ぼくと同じように悔しがっているような声が聞こえる。
ただ、悔しいのと同じようにアーモンドアイさんに対する憧憬も生まれた。世の中にはこんなに強い馬がいたのかと。そう思わずにはいられなかった。
(そう言えば、上の人が現役最強って言ってたっけ?)
ぼくの上に乗ってる人。その人と調教師って呼ばれている人がアーモンドアイさんのことを凄く強いって言ってた。こうして実際に戦ってみると、その強さが良く分かった。確かにこれは強い。追いつこうとするばかりか離されていく一方だったから。
減速して。アーモンドアイさんがぼく達を見ていた。どうしたんだろう?なんというか、訝し気?そんな気がする。
『どうしたんですか?アーモンドアイさん』
『……強いわね。だけど、
その言葉に、ちょっとムッとした。そのヴァーディの坊や?という馬は分からないけど、その子と比べてぼくは弱いらしい。だから、ちょっとムッときた。
『誰なのよ?そのヴァーディの坊やって。わたし達よりも強いの?』
デアリングタクトも気になってるみたい。ちょっと苛々してるけど。
『そうね……ヴァーディの坊や、ヴァーディクトデイは。私を負かした馬よ』
『……アーモンドアイさんを?』
アーモンドアイさんは頷く。驚いた。こんなに強いアーモンドアイさんを負かした馬がいるんだ。どんな馬か、ちょっと興味が出てくる。
『1ヶ月経たないぐらい前かしら?天皇賞で私はあの坊やに負けた。それだけじゃないわ。あの坊やから感じた圧は──恐ろしいの一言に尽きる』
『そ、そんなに?』
『そう。もっとも、その敗戦があったからこそ、私はこのレースに万全な状態で臨んだ。絶対に負けない、女王としてのプライドがある。もう負けるわけにはいかないってね』
アーモンドアイさんは自信に満ち溢れていた。それは、現役最強の女王としての自信。この姿勢は、ぼくも見習うべきだろう。
最後に。アーモンドアイさんからの忠告。
『覚えておきなさい。ヴァーディの坊やはあなた達と同じ世代……今後同じレースで走る機会はいくらでもある。だから、ヴァーディクトデイという馬にはよく注意しておくことね。あの坊やは……本当に強いわ』
ぼくと、同じ世代。僕と同じ歳で、アーモンドアイさんを負かした馬。そしてアーモンドアイさんが感じた──恐ろしい圧。
(そんなに、強いのか)
心が震える。その子と走ってみたいと、その子の強さを知りたいと。心が震える。あの不思議な黒い子もそうだけど、ヴァーディクトデイという馬の名を覚えておこう。きっと、戦える日はくるから。
『そんなに強いのに、どうしてこのレースにはいないのよ?』
あ、それはぼくも気になる。ただアーモンドアイさんも分からないみたいで。
『さぁ?さすがに分からないわよ。怪我でもしてなきゃいいんだけど……心配ね』
怪我?それは困る。まだ戦ってないのに、怪我で戦えないというのは困る。
(ヴァーディクトデイ……戦えるといいなぁ)
そんなことを漠然と思いながら。ぼくにとって初めての敗戦となるジャパンカップは終わった。とても苦い経験。だからこそ、ぼくは思う。
(次こそは絶対に負けない。誰にも、ヴァーディクトデイって馬にも)
そう誓った。
史実より着差が若干開いたジャパンカップ。アーモンドアイ陣営が史実以上に仕上げました。