飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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大阪杯。結果はいかに?


大阪杯 ターニングポイント

 

 

大阪杯

 

 

枠順番号馬名性齢人気

1
1モズベッロ牡56

2
2サリオス牡44

3
3アーデントリー牡513

3
4ブラヴァス牡511

4
5ペルシアンナイト牡710

4
6ワグネリアン牡66

5
7コントレイル牡4
1

5
8レイパパレ牝45

6
9クレッシェンドラヴ牡79

6
10カデナ牡712

7
11ハッピーグリン牡614

7
12グランアレグリア牝5
3

8
13アドマイヤビルゴ牡48

8
14ヴァーディクトデイ牡4
2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに迎えたぜ……この日をよぉ!

 

 

(大阪杯。ここにはコントレイルが出走してくるからな!気合入るぜぇぇぇぇ!)

 

 

 それともう一つ。今回のレースはなんと雨が降っている。ちょっとテンション上がっているのはそのせいもあるかもしれない。

 

 

「いいかいヴァーディ。午後からの雨で馬場は重くなっている。気をつけるんだよ」

 

 

 重くなっている、か。

 

 

(ぶっちゃけ俺からしたら()()()()()()()()()()()()()()。そうでもないのかね?)

 

 

 とにかく返し馬を済ませつつ目的のヤツを探そう。キョロキョロを見渡していると……発見した。ヤツだ。

 

 

(間違えようがねぇ!あの特徴的な額の白い部分!アイツだ!)

 

 

 早速向かうぞ!できる限り自然を装って、と。てかアイツも何か探してるのかキョロキョロしてんな。どうしたんだ?

 

 

『よう、久しぶりじゃねぇか』

 

 

『……君は、皐月賞の時の不思議な子』

 

 

 ……俺はその程度の認識ってことか。まぁいい、このレースでそれを変えてやる!

 

 

『あの時は負けちまったが、今度はそうはいかねぇ!あの時から俺も成長したんだ……このレース、お前に勝ってやる!』

 

 

『そう。今日はよろしくね』

 

 

 ?なんていうか、テンション低いな?素はこんなヤツなのか?

 

 

『ところでさ、ヴァーディクトデイって子を知らない?その子を探してるんだけど』

 

 

『は?そりゃまたなんで?』

 

 

 つか俺の名前じゃねぇか。なんで俺を探してんだよお前。

 

 

『実は、さ。ぼくが初めて負けた相手……アーモンドアイさんっていうんだけど。アーモンドアイさんを負かした馬の名前がヴァーディクトデイっていうらしいんだ。だからちょっと気になって探してるんだけど……特徴聞くのを忘れちゃって』

 

 

 ほーん、そういうことか。

 

 

『ヴァーディクトデイは俺だが』

 

 

『……え?そうなの?』

 

 

 なんか驚いてんな。そんなに意外、って。

 

 

(よくよく考えりゃ俺コイツに名前教えたことねぇな)

 

 

 そりゃ皐月賞の不思議な子で覚えられるわ。名前知らねぇんだから。

 

 

『……そっか。君が、アーモンドアイさんを』

 

 

『あぁそうだ。俺はあの時とは違う……お前もこのレースで倒してやる!』

 

 

『……うん、よろしくね』

 

 

 そのままアイツは返し馬に戻っていった。ちょっと気になるが……まあいいだろう。

 

 

(このレースは絶対に勝つ!そしてコントレイルだけに集中しないようにだな!)

 

 

 他の馬も強者揃いだ。コントレイルに集中しすぎて漁夫の利されるのはごめんだからな!

 返し馬が終わって。今度はパドックに入る時間だ。俺は一番最後。大外枠である。追い込みに変わってからアレだな、スタートが後方からになったからあまり意識し過ぎなくても大丈夫になった。リラックスした状態で臨むことができる。

 

 

 

 

《午後から雨が降っております阪神競馬場。雨の影響で重馬場での発走となりました大阪杯。このレースで注目されているのはやはり無敗の三冠馬コントレイルでしょう!》

 

 

《ジャパンカップではアーモンドアイに敗れましたが、その実力は本物。年明けの始動戦、勝って弾みをつけたいですね》

 

 

《他に注目されているのは三階級制覇を目指す牝馬グランアレグリア、そして秋の天皇賞でアーモンドアイを破ったヴァーディクトデイ。この3頭の三つ巴決戦とも呼ばれております。道悪巧者のモズベッロや目下5連勝中の牝馬レイパパレ。果たして大阪杯を制するのはどの馬になるか?まもなく発走となります》

 

 

 

 

 ゲートで気を鎮めて……ッ!開いたな、今だ!

 俺はゲートから飛び出したのだが。

 

 

(やっべ、スタートが良すぎたな)

 

 

 思ったよりも前目につけてしまっていた。鞍上の金添さんも手綱を引いて抑えるように指示してくる。俺もその指示に従って後方に抑える形を取った。

 

 

 

 

《第56回大阪杯が今、スタートしました!真ん中コントレイルは好スタート、っと。大外枠のヴァーディクトデイも良いスタートを切りました!大外からヴァーディクトデイが良いスタートを切る》

 

 

《グランアレグリアも好スタートを切りましたね。注目の3頭は好調な滑り出しです》

 

 

《内から2番のサリオスが上がってくる。スタンド前注目の先行争い。横を見ながらサリオス、前へ行かせます。サリオスはハナを取りません。無敗馬の8番レイパパレがいきました。ハナを切ったのは8番のレイパパレ。ハッピーグリンと最内サリオスその外ワグネリアン。そしてグランアレグリアが早め5番手につけました!そしてヴァーディクトデイはどうやら抑える様子。現在は後方集団につけていますヴァーディクトデイ》

 

 

《ヴァーディクトデイの武器は後方からの末脚ですからね。しかし今回は重馬場、その末脚を発揮することができるか?》

 

 

《各馬第1コーナーを曲がっていきます。先頭はレイパパレ。1と半馬身遅れて11番ハッピーグリン。最注目の無敗の三冠馬コントレイルは中団に控えます!グランアレグリアは5番手、コントレイルは中団、ヴァーディクトデイは最後方!注目の3頭は綺麗に別れました!さぁ先頭レイパパレが後続を引き連れて進みます大阪杯!》

 

 

 

 

 そこから走っていくのだが……なんていうか、別に走りにくいとかそういうのはなかった。というか()()()()()()()()。金添さんは重くなってるって言ってたけど。

 

 

(ぶっちゃけこれは問題ない範囲だな。余裕で力を出せる)

 

 

 とりあえずいつものペースをキープしたいのだが。最後方に位置したいもののペースが微妙に遅めなのでちょっと苦労している。これは仕方なし、か?金添さんも無理に抑える気はないみたいだし、いつものペースで走るとしよう。

 そして向こう正面。俺は変わらず後方に位置している。隣に1頭、後ろにもう1頭いるだろうか?そんな位置。後方だと色んなものが見えて頭がこんがらがりそうだけど……俺のやることは1つだけだ。

 

 

(こいつら全員ぶち抜いて勝つ!最悪そんだけ考えてればいい!)

 

 

 向こう正面半分ぐらいを過ぎた。まだ動かないようである。

 

 

 

 

《無敗馬レイパパレが集団を引っ張ります。その後ろはハッピーグリン、3番手は内にサリオス外にワグネリアン。そして前の4頭を見るように5番手グランアレグリア。再び差がついてクレッシェンドラヴ、アドマイヤビルゴ、アーデントリーがいて。三冠馬コントレイルは中団後ろ!信頼の手綱増永!ここで1000mを通過しました。1000mのタイムは59秒8!》

 

 

《重馬場を考慮すると速いタイムですね。レイパパレの脚は持つか?》

 

 

《コントレイルの後ろにはカデナとモズベッロが控えている。道悪巧者モズベッロはこの位置だ。後方からはブラヴァスとヴァーディクトデイがこの位置につけて最後方はペルシアンナイトです。ここで3コーナーのカーブを迎えますそしてコントレイルが動いていったぁ!コントレイルが動いていって、グランアレグリアのすぐ外までつけました!そしてコントレイルが動いてグランアレグリアも動いた!ロメール騎乗のグランアレグリアもコントレイルの動き出しに合わせるように動いた!》

 

 

《ここで気になるのはヴァーディクトデイの動向ですが、っと。これはヴァーディクトデイも動きましたね!》

 

 

《後方からはヴァーディクトデイも上がってきている!ヴァーディクトデイも仕掛けた!ヴァーディクトデイが後方からグングン順位を上げていきます!その空を飛ぶ末脚は今日も発揮されるのか!?第4コーナー中間点!レイパパレが先頭しかしサリオス・グランアレグリアそしてコントレイルが固まっている!》

 

 

 

 

 第3コーナー辺りから徐々に進出を開始する。でもぶっちゃけそこまで脚は使っていない。芝が重くない時……つまるところいつも通りで走っているのだが。

 

 

(なんか他が遅く感じるな)

 

 

 まぁいい。第4コーナーで発射台を整えて──最後の直線でそれを爆発させるッ!

 

 

(見せてやるよコントレイル……生まれ変わった俺の力を!テメェに刻んでやる!)

 

 

 そして第4コーナーを抜けて最後の直線に入る。馬群は固まってきていて、前との差は10馬身あるかないか。まぁいい。俺は──一気に加速した。

 

 

 

 

《コントレイルは一番外に出して直線コース……いや違う!?コントレイルのさらに外から!コントレイルのさらに外からヴァーディクトデイが飛んできた!飛んできたがこれは!?》

 

 

《ッ!?》

 

 

《さ、最後の直線に入った!各馬最後の直線に入った!先頭は依然としてレイパパレですが!外からヴァーディクトデイ!大外からヴァーディクトデイが飛んできた!?内からはサリオス!レイパパレは真ん中に持ってきた!レイパパレの内にはグランアレグリア!コントレイルはどうか!?しかし、しかし……!1()()()()()()()()()()()()()()!大外からヴァーディクトデイが飛ぶ末脚を炸裂させている!》

 

 

《お、重馬場ですよね?なのにこれだけの脚を!?》

 

 

《ヴァーディクトデイ!ヴァーディクトデイだ!ヴァーディクトデイが残り200mでレイパパレをあっという間に躱した!そのままグングン差をつけていく!なんというスピードだ!?まるで良馬場だと錯覚するようなスピード!ヴァーディクトデイ強い強い!後続をさらに突き放す!》

 

 

 

 

 俺は()()()()()()()自分の全力を出していた。完成したあの走りを使って、走っていた。

 先頭にいけばアイツが、コントレイルがいると思った。皐月賞の時みたいに、俺に勝てないヴィジョンを植え付けるようなすげぇ走りをして、俺はそれを克服して。アイツに勝つって考えてた。だが。

 

 

(……テメェ、なんでそんなとこにいやがる?)

 

 

 他を躱して上がっていく俺が視界の端に捉えたのは、苦しそうに走っていたアイツの姿。

 どういうことだ?アイツは強いだろ?なら、あの姿はなんだ?だが、考えるのは後回しにして今は走ることに集中する。これは後でもいい。残り200を切ろうかというところで先頭の馬を躱した。後はこのままぶっちぎるだけである。

 

 

 

 

《つ、強い強い!ヴァーディクトデイ圧巻の強さ!なんという強さだ!?()()()()()()()()()()!コントレイルは厳しいか!?コントレイルは厳しいか!?その間にもヴァーディクトデイが後続を突き放す!他を置き去りにしてその差を4馬身!5馬身と突き放す!これはもう決まった!完全に決まった!》

 

 

《いやぁ……これは見事という他ないでしょう。しっかりと脚を残していましたね!》

 

 

《ヴァーディクトデイが飛んだ!重馬場だろうが関係なし!ヴァーディクトデイ、飛翔ぅぅぅぅぅぅ!》

 

 

 

 

 俺は全力を出して走る。ここから、きっとここからコントレイルは上がってくると思っていた。だが……アイツどころか、他の気配もどんどん離れていくばかりである。

 そして、そうこうしているうちに──俺はゴール板を駆け抜けていた。

 

 

 

 

《突き抜けた突き抜けた!圧巻の強さだヴァーディクトデイ今ゴォォォォルイン!重馬場だろうが関係なし!ヴァーディクトデイが最後の直線で飛んだ!他の馬を置き去りにして!ヴァーディクトデイの末脚が炸裂した!圧倒的な強さを見せつけて!ヴァーディクトデイが大阪杯を制した!》

 

 

《他の馬とはまさに一線を画すスピードでしたね!見事な末脚でした!》

 

 

《ヴァーディクトデイが後続を8馬身突き放しての圧勝!無敗の三冠馬コントレイルに、皐月賞での雪辱を果たしましたヴァーディクトデイ!これでG1を2勝目です!2着はレイパパレ、3着はモズベッロ!無敗の三冠馬コントレイルはなんと4着に沈みました!》

 

 

 

 

 俺は大阪杯を勝った。だがそれよりも。

 

 

(アイツは、どこにいやがる!?)

 

 

 俺はコントレイルの姿を探していた。アイツは、アイツはどこにいる!?

 そして探して……見つけた。

 

 

(……おい、なんだそのざまは?)

 

 

 アイツは、コントレイルは。

 

 

『ハァ……ハァ……』

 

 

 とても苦しそうにしていた。

 なんでだ?テメェはそこまでやわじゃねぇだろ?皐月賞の時はもっと凄かっただろうが。あの時から成長しているし、もっと強くなっていると思っていた。だが……なんだその走りは?

 憤りを感じたものの。レース前のコントレイルの様子を思い出す。

 

 

(……もしや、テンションが低かったわけじゃなくて)

 

 

 コイツは不調だった?調子が良くなかったのか?

 ……成程。それなら納得がいく。そうだ、コイツはすげぇ馬だ。その強さを俺は知っているし、見せつけられたんだ。今日のレースは調子が悪かっただけ。成程、それなら。

 

 

(リベンジは次の機会ってことか)

 

 

 こんなのを俺は勝利とは認めない。万全のお前と戦って勝利をもぎ取らないと、お前に勝ったとは胸を張って言えない。だから。

 

 

『おい、コントレイル』

 

 

『……ヴ、ヴァーディクトデイ、くん?』

 

 

『ヴァーディでいい。それよりも……お前、不調だったんだな』

 

 

 俺は、コントレイルに宣言した。

 

 

『次こそ本気の勝負をするぞコントレイル。お互いに全力を出して勝負をしよう。俺はこれでお前に勝ったとは思わない』

 

 

『……ッ』

 

 

 コントレイルがどういう感情で俺を見ているのかは分からない。返答を待っていると、コントレイルは奇妙なことを言いだした。

 

 

『きみは、ぼくをディープの後継者として見ないの?』

 

 

『はぁ?』

 

 

 いきなり何を言い出すかと思った。ディープって言えば……確かコイツの父親で、すげぇ偉大な馬だったか?

 

 

『人間さんは、ぼくをディープの後継者として見るんだ。他の子だってそう。だけど、きみは違うような気がして……』

 

 

『何を言うかと思えば……』

 

 

 はっきりといってやるか。

 

 

『ディープはディープ、コントレイルはコントレイルだろ。何より、俺が勝ちてぇのはディープなんかじゃない……お前なんだよコントレイル』

 

 

『ッ!』

 

 

『お前がディープの後継者だろうが()()()()()()。お前の父親がどれだけ偉大だろうと、俺が勝ちたいのはお前であることに変わりはない。お前は……すげぇヤツなんだからよ』

 

 

『……』

 

 

 コントレイルがどんな感情なのかは……うん、分からん。とりあえず俺は『ねぇねぇねぇねぇねぇ!!』うわぁ!?な、なんだぁ!?

 

 

『君すっごく速いんだね!名前!名前教えて!』

 

 

 めっちゃグイグイ来るやん!?誰だよ!

 

 

『ヴ、ヴァーディクトデイです』

 

 

『ヴァーディクトデイ……じゃあヴァーディ君だね!ボク、グランアレグリア!よろしくねヴァーディ!』

 

 

『あ、はい』

 

 

『それにしてもヴァーディ君すっごく速いね!ボク速い子大好き!だから君のことも大好き!』

 

 

『そ、そうですか。それは嬉しいですね』

 

 

 なんだろう、めっちゃグイグイ近づいてくる。

 

 

『初対面だけど君のこと気に入っちゃった!一緒に帰ろうよ!帰るよね?帰る!ハイ決定!』

 

 

『押しが強い!』

 

 

 何だこの馬!?滅茶苦茶押しが強いんだけど!騎手の人どうにかしてくださいよ!

 

 

「なんかグランアレグリア興奮してますねロメールさん」

 

 

「ウン。前もこんなことがあったネ。グランアレグリアじゃなかったけド」

 

 

「モテモテだなぁヴァーディ」

 

 

 呑気に話してんじゃねーよ!

 

 

『ねぇねぇどこ住み?好みのタイプってある?ボク頑張るから!』

 

 

『何を!?』

 

 

 ……色々あったものの。この後アレグリアさんはロメールさん?って方に引かれて去っていった。凄く名残惜しそうに去っていたけど……。

 色々とあった大阪杯。コントレイルには結果の上で勝つことはできたが。

 

 

(気持では納得していねぇ!そもそもアイツが不調だったからノーカンだノーカン!次はお互いに万全の状態で勝ってやる!)

 

 

 そんな決意を固めた大阪杯だった。




重馬場得意なヴァーディである。
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