| 皐月賞のリベンジ果たす!ヴァーディクトデイが8馬身差圧勝!
4月4日に開催された大阪杯で2番人気のヴァーディクトデイが2着のレイパパレに圧巻の8馬身差勝利を収めた。同馬はこれでG1を2勝目。 大阪杯当時の状況は午後からの大雨により、馬場の悪化が顕著だった。重馬場と発表されていたが不良馬場に近いこの馬場でもヴァーディクトデイはその末脚をいかんなく発揮し、上がり3ハロン34秒9を記録し同レースの上がり最速を叩き出した。上がり2位となったレイパパレとモズベッロが36秒8というタイムからこれがいかにとんでもない時計か良く分かるだろう。1頭だけ良馬場で戦っていたようなものである。ヴァーディクトデイは今後有北ファームしがらきにて放牧に出された後、宝塚記念に向けて調整していく予定である。 大阪杯の1番人気に支持された無敗の三冠馬コントレイルは馬場の悪化が影響してか4着。重い馬場に対応することができず、初めての複勝圏外となった。コントレイルはこの後放牧に出され、ヴァーディクトデイと同じく宝塚記念に向けて調整していくとのことだ。
レース後のコメント
1着 ヴァーディクトデイ(金添騎手) 「さすがに言葉が出ない。元々雨が好きな子だったので重馬場でも走れるんじゃないか?と漠然と思っていたけれど、これほどのパフォーマンスを発揮してくれるとは思わなかった。最後の直線に入ったあたりからどんどん加速していくし、200mで先頭に立った後はそのまま差を開いていくばかりだった。本当にこっちの予想を軽々と超えていく子だね。どこまでも底が見えないよ。
次は宝塚記念。前回走った時はクロノジェネシスに敗れたので今度こそは勝ちたいって気持ちはあります。万全の状態で宝塚記念に挑みたいですね」
2着 レイパパレ(海田騎手) 「道中ずっといいペースでレースを運べた。楽なペースで逃げることができてましたし、このペースなら問題なく後続を離せるって思ってた。この馬場だから伸びてくるのは難しいはずですから。だけど、さすがに見通しが甘かったですね。まさか勝ち馬があそこまで伸びてくるのは予想外だった。この子には能力の高さを感じていますし、次こそはリベンジしたいですね」
4着 コントレイル(増永騎手) 「スタートは五分だったんですけどね。馬場はそんなに苦にしてなかったから、3コーナー辺りから仕掛けた。けど、それが悪かったですね。最後の直線は完全に脚が上がっていた。馬場の状態が思っていたよりも悪かったです。この状態の馬場であそこまで伸びていった勝ち馬は本当に強かったですね」
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走る度に、期待は大きくなっていった。
レースに初めて出走した時は、期待はされていたけどそんなでもなかった。どこから明確に変わったかと言われたら多分、皐月賞っていう大きいレースを勝った後だと思う。
「無敗で皐月賞を制したな!このまま、無敗でダービーを勝つぞ!」
「「「おー!」」」
そんな人間さん達の言葉。正直、嬉しい気持ちはあった。期待されているってのは、悪い気分じゃなかったから。
そのままぼくは順調に勝ち続けた。ダービーも勝つことができたし、その次のレースも勝つことができた。ぼくのお世話をしている人間さん達は、ぼくが勝つことを我が事のように喜んでいた。
「よくやったなぁコントレイル!お前は本当に凄い馬だ!」
(えへへ)
「このまま無敗で菊花賞を制することができたら……お前は父親のディープインパクトにも並ぶ競走馬になれる!」
ディープインパクト。ぼくのお父さんで、すっごく強い馬だったらしい。人間さん達もぼくのことをよくディープの息子とかディープの後継者とか色々呼んでいたから。
最初は悪い気分じゃなかった。だって、これだけの人間さん達に影響を与えるような馬と同じくらい強いって言われてるんだもん。嬉しくないはずがない。だけど、その期待は──抱えきれないほどに大きくなっていった。
ぼくは菊花賞を勝って無敗の三冠馬……お父さんと一緒の偉業を成し遂げたらしい。そして、お父さんとぼくは史上初めての快挙を成し遂げたとか。人間さん達が凄く喜んでいるのが分かった。ぼくも勿論嬉しかった。次も勝って、その次も勝って。もっともっとみんなを喜ばせよう。そう、思っていた。
次のレース。ぼくは初めて負けた。ジャパンカップで、ぼくと同じ無敗の三冠馬らしい子と現役最強と言われてたアーモンドアイさんとの激突で。ぼくは初敗北を喫してしまった。悔しかったし、次は勝とうって思ったけど。それ以上に衝撃的なことを聞いた。
『ヴァーディの坊やはあなた達と同じ世代……今後同じレースで走る機会はいくらでもある。だから、ヴァーディクトデイという馬にはよく注意しておくことね。あの坊やは……本当に強いわ』
あんなに強かったアーモンドアイさんを負かした強い馬。そんな子が同世代にいる。戦う時が楽しみだった──最初は。
ぼくが負けた後、人間さん達はちょっと悔しそうな顔をしていた。そんな顔をさせるのがちょっと申し訳なくて。次こそは勝とうって思えた。
「さすがにお前にも疲れが溜まってたよな?お疲れ様コントレイル。次は勝たせてやるからな」
人間さんがぼくを優しく撫でる。しっかりと身体を休めて、次のレースは頑張ろうって決意した。
だけど、ここからどんどんプレッシャーのようなものを感じるようになった。
「……タイムは?」
「う~ん……悪くはないんですけど、もうひと声欲しいですね」
人間さんは、しきりに難しい表情を浮かべるようになった。原因は分からない。でもなんとなくぼくが悪いんだなって気がして、申し訳ない気持ちになった。
人間さん達はぼくを丁重に扱ってくれた。怪我をしないように細心の注意を払ってくれたし、トレーニングだって無理しないようにしてくれた。ただ、ぼくが感じる重圧は……どんどん重くなってきていた。丁重に扱ってくれるのも、きっとぼくがディープの後継者だから。そんな気がして。
だから頑張らないと。もっと、期待に応えないと。
(しっかり勝たないと……期待に応えるために、ディープインパクトの後継者になるために)
重圧は日増しに増えていって。次第にぼくはディープインパクトの後継者としての地位を守るために頑張るようになった。
偉大なディープインパクトを父に持つんだから勝たなきゃいけない。ぼくはディープインパクトの後継者だから自分で頑張らないといけない。ぼくは──勝たなきゃいけない。
そのせいもあってか、トレーニングも思うようにいかなくなってきた。
「コントレイル、調子悪そうですね」
「あぁ……心配だな」
(心配させちゃった……もっと頑張らないと)
人間さんを心配させないように。
なんとか本番までには調子を戻すことができた。でも、本調子には程遠いし、加えて当日のレースは雨が降って、普段よりも地面が重かった。そんな状況でも、ぼくは
(そういえば、アーモンドアイさんが言ってたヴァーディクトデイってどの子なんだろう?)
その時ぼくは、身体をなんとか温めながらアーモンドアイさんがいっていた子を探すことにした。アーモンドアイさんを負かした子、ヴァーディクトデイという子を。
『よう、久しぶりじゃねぇか』
声を掛けられた。声のした方を見ると……皐月賞の時の不思議な子がいた。
『……君は、皐月賞の時の不思議な子』
この後知ったんだけど、どうやらこの不思議な子がヴァーディクトデイって子だったらしい。ちょっとびっくりした。
それから色々と言われていたけど、正直よく覚えていない。この時のぼくは、勝たなきゃって気持ちでいっぱいだったから。
(ぼくはディープの後継者……だから、どんな状態でも勝たないと)
そんな風に思って、レースの準備を進めていた。
本番のレースは、よく覚えていない。凄く苦しかったし、走るのがキツかった。だけど、その中でも覚えていることがある。
『勝たなきゃ……勝たなきゃ……!みんなの期待に、応えなきゃ!』
その一心で走っていたぼくの目に映った──外から上がってきた姿。
(……あっ)
綺麗だった。思わず目を奪われた。ぼくが抱えていたものを全部忘れさせるぐらい……綺麗な走りだった。
(凄い……まるで、飛んでいるみたいだ)
重心が全くブレない美しいフォーム。加えて凄い力で蹴っているのが分かる、力強さ。全身のバネを余すことなく使って、地面を蹴っている。その子は……レース前に話していた、ヴァーディクトデイくんだった。
目を奪われて。ゴールした後息が上がっても。あの時の光景が頭から離れなかった。
(凄い、凄い!ぼくと同じ歳の子に、あんな子がいたんだ!)
アーモンドアイさんが負けたのだって納得がいく。だって、それほどまでの強さを感じたのだから。
そんなぼくを襲ったのは、凄まじい疲労感。どうやら、思っていたよりも体力を使ったみたいだ。それと同時に湧き上がる……また負けたという気持ち。
(……そうだ。負けちゃったんだ。ぼくはディープの子なのに……ディープインパクトの、後継者なのに)
こんな様じゃ後継者なんて言えない。どんな状況でも勝たないと、ディープの後継者にはなれない。こんなぼくは……ディープの後継者に相応しくない。
『おい、コントレイル』
負のスパイラルに陥りそうなところに、ヴァーディクトデイくんがぼくのところにきた。こころなしか、怒っているような気がした。
『……ヴ、ヴァーディクトデイ、くん?』
『ヴァーディでいい。それよりも……お前、不調だったんだな』
ドキリとする。ヴァーディクトデイくん……ヴァーディくんにはぼくの調子が悪かったことを見抜かれていたらしい。ただ、ぼくの言葉を待たずにヴァーディくんは。
『次こそ本気の勝負をするぞコントレイル。お互いに全力を出して勝負をしよう。俺はこれでお前に勝ったとは思わない』
『……ッ』
そんな風に言ってくれた。
不思議だった。ただ真っ直ぐにぼくを見ているような気がして。ディープの後継者としてではなく、ぼく個人を見てくれているような気がして。
『きみは、ぼくをディープの後継者として見ないの?』
『はぁ?』
思わず、そう口にした。ヴァーディくんは戸惑っていたけど、まぁ当然だと思う。ぼくもなんで口にしたのか分からないから。
『人間さんは、ぼくをディープの後継者として見るんだ。他の子だってそう。だけど、きみは違うような気がして……』
いつからだろうか?ディープの後継者として頑張らないとと思うようになったのは?ディープの後継者として勝たないと、ディープの後継者として相応しい自分にならないと。そう思うようになったのは。
ぼくは偉大な競走馬、ディープインパクトの後継者なんだ。そう思っていたぼくに。
『何を言うかと思えば……』
ヴァーディくんは。
『ディープはディープ、コントレイルはコントレイルだろ。何より、俺が勝ちてぇのはディープなんかじゃない……お前なんだよコントレイル』
『ッ!』
ぼくはディープなんかじゃなくて、コントレイルなんだってことを……思い出させてくれた。
(……そうだ、そうじゃないか)
確かに、ディープの後継者になるのも大事かもしれない。だけど、それ以前にぼくはコントレイルなんだ。そのことを、いつの間にか忘れていた。その認識に……囚われてしまっていた。
『お前がディープの後継者だろうが
そしてヴァーディくんは。ディープの後継者としてのぼくじゃない。
(本当に、やっちゃったな。ぼく)
勝手に責任を背負って、調子を落として。それで負けてたんじゃ世話ない。本当に、恥ずかしいな。
『……』
大事なことを忘れていた。それを思い出させてくれたヴァーディくんにお礼を言おう。そう思ったけど。
『ねぇねぇねぇねぇねぇ!!』
ヴァーディくんは、いつの間にか知らない子に絡まれていた。横から話を聞いていると、どうやらグランアレグリアさんという子らしい。多分、ぼくより上。そのままヴァーディくんはグランアレグリアさんに絡まれてどっか行ってしまったためお礼を言う機会を失くしてしまった。
(まぁ、次会った時でいいか)
その間に、もっと強くなっておこう。
ヴァーディくんは、ぼくを凄い奴だって言ってくれた。こんなに情けない姿を晒してしまったぼくを、凄い奴だって。なら、その期待に応えっ。
(これがダメだね。誰かの期待に応えるんじゃない……ぼくは、ぼく自身の意志でヴァーディくんに勝ちたい。とりあえずは、もっともっと強くなろう。ヴァーディくんに勝つために)
ヴァーディくんは強い。あの走りは、いまだにぼくの頭に焼き付いている。飛んでいるような走り、凄くて、綺麗で……目を奪われるような走り。だから、頑張らないといけない。
皐月賞のアレは、きっとヴァーディくんは不調だったのだろう。全然レーススタイルが違ったし、走りも普通だった。だからきっと、あの時のヴァーディくんは不調だったんだ。なら、今度こそお互い全力でぶつかり合って勝負をしたい。
ヴァーディくんに勝つんだ。強くなったぼくを見せて、ヴァーディくんとの勝負に勝つ。
(よし、頑張ろう)
決意を新たに。ぼくは今日もトレーニングを頑張る。
コントレイル君に強化フラグ。